「龍神に生贄として嫁がなければ日照りで村が滅びる」状況を全力でハッピーエンドにしてください。
#バッドエンドを覆せ
shindanmaker.com/716282 より
みきぼーさんは
「龍神に生贄として嫁がなければ日照りで村が滅びる」状況を全力でハッピーエンドにしてください。
クリアできた貴方の人間レベルは【44】です。
このお題を元にTwitterで書いたものを修正、加筆したものです。
初投稿です、よろしくお願いします。
とある理由で旅をしていた私は、
「龍神に生贄として嫁がなければ日照りで村が滅びる」と嘆く村へとやってきていた。
「その生贄って、誰でもいいんですかね?」
「ええ、嫁いでくれるのなら、とくに指定はされておりません。龍神さまは、ただ嫁がほしいとしか。細かな指定はとくになく。」
町の雰囲気がどことなく暗いので、町長にたずねたところ、そんな話が出たので私が問いかけると、町長はやや面食らったような反応をしつつもそう答えてくれた。
しかしそうか。なら。
「ならば私がその生贄に立候補してもよろしいでしょうか?」
「よろしいので?嫁とはいえ結局のところは生贄。どのような扱いをうけるかわかりませんよ?」
確かに。でもなあ、、
「それもそうですね。私も全く知らない相手に嫁ぐのは不安があるので、ちょっと会いに行ってみたいかな。」
やっぱり無理かなあ。しかしダメ元!
「前例はありません。龍神さまが許されるかはわかりませんが、生贄に立候補していただけるのは正直私どもとしてもありがたい。試していただいても良いでしょう。しかし、不興をかうようなことはくれぐれもないようお願いいたします。」
マジですか!いいの?いいの町長?!大丈夫か町長!!
そんな、ありがたいけども!!気をつけるけども!!
だがしかし、善は急げだ!
「わかりました。場所は?」
「案内しましょう」
そうして案内されたのは、大きな滝壺の裏側にある、大きな祠。いや深いな。洞窟?
どうやらこの奥に、私のお見合い相手はいるらしい。
「くれぐれも、お気をつけて。」
「ありがとうございます、行ってきます。」
町長が用意してくれた松明を掲げながら、暗い祠だか洞窟だかを慎重に進んで行く。
そういえば、相手は龍神さまだ。
このまま二度とここから生きて出られない可能性もあるんだなあと考える一方、
ないない、万が一にもないよ、大丈夫さと
もう一人の私が全否定しつつ、
私は奥へ奥へと進んで行った。
「おまえが我の新たな嫁か?」
そこには大きな龍が、とぐろを巻いて静かに佇んでいた。
身体は蛇のように長く、しかしトカゲというより鳥類の鉤爪のようなあしが4つ。
立派な鬣と、そこから覗く鹿のようなこれまた立派な角。
爬虫類や鳥類独特の下瞼から閉じるタイプの瞳は理性を確かに感じさせながらこちらを静かに見つめている。
顔は鰐顔。でも全く恐ろしさを感じない。
「はじめまして。一応、龍神さまの嫁を希望するものです。
此度は自分のような人間でも嫁にしてもらえそうか、龍神さまに見て頂こうと思い、やってまいりました。」
「なんだ、なんぞ問題でもあるのか?」
「はい。嫁とはいえ生贄でしょう?自分で務まるのかと。」
というか龍神さまは本当に誰でもいいのか?
本当にどんな奴でも問題ないみたいにみえるから、なんか嫁と称しつつ、子ども産ませたらもう用はないって、次の日には逆に自分が腹のなかに収まってるんじゃないかとか、そんな想像しちゃうぞ?
「なにも我には問題は感じないがな。」
それは腹に入れても問題なさそうってこと?
いやいやいや。この人(?)は素直に答えてるだけだ。女独特の勘がそう言ってる。
「そう言って頂けてひとまず安心しました。私も龍神さまと直接お会いして、大丈夫そうだと心底ホッとしております。」
私の勘は当たるからな!
「なんだ、なにも心配などなかろうに。」
「いえいえ、まず会話ができなかったらどうしようとか、見た目がアウトだったらどうしようかと。龍神さまなんて、全くお会いしたこともございませんでしたから。」
あと食べられたらどうしようとか。
龍神さまに問題がなくても、私の方も相手に問題ないかを確かめたかったんだよ。
大変恐れ多いけども。
「グハハハハ、なかなかに失礼なヤツだが、まあ褒められてるようにも捉えられる。なかなかに愉快なヤツだ。我の見た目は問題ないか。」
「はい。ただ人型でないから夫婦の営み的なのはどうなるんだろうとは思いますし、卵を私が産んだりするとしたらなかなか怖いなーなんて思ったりしますが」
見た目はスゴくカッコよくてステキですが、夫婦の大事なお仕事するさまは、全く想像つきません。
あれ?嫁ぐんだから、当然することするんだよね??
「なあに、人型もとれる。出産など人より楽なものだ。心配ない。そら、どうだ?」
そういって、人の大きさにしてはややデカイ、筋骨隆々な強面の、でも頭良さそうな、
私なんて平気で何人でも担げそうなイケメン、いや、ダンディな男の人が、龍神さまと入れ替わりに現れた。
ひゅう!なんか心の中で変な声出た!!
「おおう、ムッキムキ、神だけあってなかなかなイケメン!なんかほんと、私なんかで良いのか逆に不安に、なんかほんと。」
なんかほんと、なんか、なんかほんとさあ。
うわあああ、ちょだ、これ、ダメなやつや、
一目惚れってやつかもしんない。
うああってなる。お、おちつけ!
「ハッハッハ!そんなに動揺してなにを不安がることがある。我はコレでも神たる存在、心配など必要ないぞ?」
ああっ、神さまがいるなら今このピンチをどうにかしてほしい!!
目の前の神さまが原因なんだけども!
ああしかし、話さなければ。
「じつは私、家事全般、自分の面倒すらまともに見られないようなダメなヤツで、なんの役にも立てないような人間でして。
旅に出たのも、こんな私の面倒見てくれるような奇特な結婚相手はいないものかなって。
ほら、私の髪なんかフケだらけで汚いでしょう?
旅人だからって誤魔化せてるけどお風呂も下手なだけでっていうか面倒で。」
ちゃんと話せた、かな。泣きそうになったけど。
もし家事とか雑用を任せたくて嫁という生贄をこの人が必要としていたのなら、私は適任じゃない。
ヤバい。いっそ腹のなかに納めてもらえたらとか、気色悪いことまで思考が及び出した。
あーん、でもこんな汚い私なんて、
食べてすらもらえないんだー!!
「ふむ。ならば私がおまえの面倒を見よう。安心して嫁いで来れば良い。我が生贄を欲するのは、暇で何かを構いたかったからでな。
しかしこれまでのは怖がるばかりで、あまり構うとかわいそうでな。
その点おまえは我を恐れる様子もなく、我が構うのも問題ないようだ。」
「マジですか!最高です!!」
間髪入れずに返事が出た!
神はココにいた!あ!本当に神さまだった!!龍神さまだった!
しかも嫁ぐの前提だったわけで、本当に、これ、本当なんだ。
ふあああああ!奇跡かよ!!運命かよ!
「ということで私が生贄として龍神さまに嫁ぐことになりました。」
そんなこんなで気にしてるだろう町長の元へと報告に来ています。
「ありがたい。本当によろしいので?」
「いえいえ、もうこれ以上にない相手に巡り会えたって気分です。」
村長驚いてるけど本当にこれ以上ないから。
「そうですか、私どもとしても誰を生贄にするかと揉めていたところ。あなたが来てくださって助かった。」
私の方こそ助かったよ。
それに嫌々生贄なる子を出さないで済んだのって、龍神さまにも村人たちにとっても良かったことなら、私なんかでも役に立てたってことだよね。なんか、すっごい嬉しい!
そんなことを祠(?)に戻って龍神さまに話す。
「しかし、我はずいぶんと嫌われているものだ。我は嫁がほしいとだけしか伝えていなかったはず。叶わねば日照りにするなど言った覚えはないのだがな。」
「もしかしたら、龍神さまに嫁がせないといけないもっともらしい理由がないとみんな誰も腰を上げないだろうって当時の人が考えたのかも。
神さまってスゴイってイメージだけど、実際にはよくわからないし、怒らせちゃったら怖そうじゃん?
でも拒否なんてそれこそできなかっただろうしね。」
「やはり我は嫌われているのだな。」
二回言うくらい、しかも確認するように『嫌われてる』と言う龍神さま。
かわいそうだけど可愛い。
「その生贄の話を盛られちゃったのが要因になってるのもあると思いますよ?それに、私はそうやってしょんぼりしてる龍神さま、可愛くて好きです!!」
「そ、そうか?」
「それにこんなに頼り甲斐があって、嫌な顔せず私の面倒見てくれて。エヘヘ」
「?」
思わず笑いが漏れた私を不思議そうに見つめる龍神さまに、また笑いが漏れた。
私の笑みが止まない理由。
「龍神さまが売れ残ってくれてて良かった!!大好きです龍神さま!これからもずーっと私の面倒見てくださいね!」
こんなに理想的な相手はいない。
そんな相手が自分の面倒を好きでやってくれるというんだから、笑いが止まらないのは仕方ない。
「構い甲斐があって、こんなに嬉しそうに我に甘えてくれるおまえがきてくれて、我も幸せだ。悪い噂も良い方向に働いたというわけだな。さて。風呂に入れようか。」
一人のときは面倒で大嫌いだったお風呂。
今は私の大好きな、幸せな心地よいひととき。
さすが龍神さまさまである。
私の神は、ここにいた。
あー頑張って旅立って良かった!!
ハッピーエンド!
こんな旦那さんほしい。。
2017/05/20 続編書きました。
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「龍神さまとズボラ女子」よりどうぞ。
シリアス風味ではありますが、楽しんでもらえたら嬉しいです。