第2話
いわゆる2話なし~に、ならないようww
(童話、っぽさはちょい難しいから、、、とりあえず書きたいことを先に、、、あーパワプロ(ry)
【ハーネスの国】、冬季の九十六日目のこと。
「次!″甲殻類の煮込みスープ″、予定より四分ほどの遅れですよ!!」
今日もまた、いつものように。
王宮の料理場に、給仕長の、きびきびした声が響き渡る。
ここは早朝から、さながら戦場同然の有り様だった。
「副菜の″旬魚のムニエル三種の冬野菜添え″、急いで急いでっ!!」
給仕長の指示が、配膳担当の給仕師に飛ぶ。料理の盛りつけられた皿は車輪のついた配膳台に載せられ、王族のみがそこで過ごす会食の間へと運ばれていった。
給仕長は指示を出しつつ、自らもまた鍋番をし調理もこなしているのだから、さすがである。
自分は、どれくらいの期間を経ればあれだけの仕事をこなせるのだろうと思いつつ、給仕師として末端のツムギは、食器や食材を用意するなどの雑務を、彼なりに精いっぱいこなしていった。
「こら、そこ!手が止まってる!!」
調理場の向こうの辺りで、ひと息吐こうとしていた給仕師の青年に、給仕長の叱責が飛んだ。
叱責された青年は弾かれたように姿勢を正し、また調理作業に戻っていった。
「ツムギ!」
と、給仕長の声。
呼ばれたツムギは、「う・・・・・・」と小声でうめきつつ、しかし小走りに給仕長のもとへ向かった。
「この、料理を」
と、調理台に乗った、一人分の料理を指し示しつつ、
「【季節の塔】の、【冬の女王様】のところまで配膳をしに向かいなさい」
と、不意打ちぎみに大仕事を命じて来たのだ。
「え、いや。しかし・・・・・・」
給仕長の言葉に、ツムギは戸惑いの色を隠せない。【季節の塔】の【冬の女王】に、つまり王族の者が食するものを配膳するのは、それなりに勤めの長い者がなすべき役目なのだ。
自分など、あと五年は調理具ひとつ持たせてもらえなさそうな、その程度の身分なのだが。
「その特例を、今回出さざるを得ないのです」
と、給仕長。何かを思い出すかのように、目を閉じながら、
「ああ何度も給仕師を″凍りづけ″にされてしまっては、仕事がまわらなくなってしまいます」
深々と、ため息を吐いた。
ここ最近の、ことだった。
【冬の女王】の機嫌を損ねると、凍りづけにされてしまう・・・・・・そんな話が城内の噂になっていたが。やはり、本当のことだったのか。
【冬の治め】が執り行えるかーーつまり、【冬の女王】が【季節の塔】から出てくるかーーそれが、近頃の【ハーネスの国】の焦点となりつつあり、特に大人らは皆やきもきし始めているのだった。
えっ、と。つ、つまり自分は・・・・・・【冬の女王】に″凍りづけ″にされても、仕事に差し障りのない人員ということで?
給仕長の言いぐさに内心、唖然としつつ、しかし「わ、分かりました・・・・・・」と、ツムギ。
食事の盛られた食器を、車輪四つで手押しする配膳台に載せて、仕度を整えた。
「くれぐれも」
と、給仕長。調理場から配膳台を押し城内の廊下に出るツムギに、くれぐれも粗相のないようにと、念押ししてくる。「行ってきます」とひと声上げて、ツムギは【季節の塔】で役目を果たしている【冬の女王】のもとへ、朝食を届けに向かった。
○○○○○○○○○○
しん、しんと。
自分の身体よりやや大きな配膳台を、手押ししつつ。ツムギは城内の小さな勝手口を通って、城の外に出る。道中、城の見回りをする衛兵らに【季節の塔】へ向かう旨を伝えつつ、城から【季節の塔】へ続く庭道を、一人行った。
しん、しんと。
今日も、外は大粒の牡丹雪が降っている。冬だから、それは当然と言えば当然だろう。
【ハーネスの国】の冬は、粒のきれいな牡丹雪が代表的な風物詩になっている。雪にちなんだ観光の名所も、いくつもあるのだ。
無論、小さい子供なんかも、降り積もるほどの雪が毎日のようにあってご機嫌なのだとか。
しかし、である。
このまま【冬の治め】が執り行われなければ、つまり【春】が来なければ、どうなるか・・・・・・。
十四の少年ながら、ツムギはその想像にゾッとしつつ、【冬の女王】の待つ【季節の塔】へ向かう。
庭師の者らが、この庭道いっぱいに積もるはずの雪を脇にどけておいてくれている。本当に、ありがたい仕事ぶりだ。
間もなく、【季節の塔】が見える辺りまで来た。
「着いた・・・・・・っ」
ふぅと、ひと息吐くツムギ。
辺り一面、銀の雪景色の中、目の前にそびえ立つ【季節の塔】。一見、何の偏てつもないレンガづくりのような、それでいて、その外観にどこか惹かれる神秘的なものを感じるような。
人づてに聞くと、どうやら″魔法″の力の宿る建物だとか、一般人が入ると二度と外には出られないだとか、塔の周りのあの辺りは健康に効くとかあるいは色恋沙汰なんかに効くとか、まあそういう噂話みたいなのはいくつかあるくらい、この国で有名な場所なのだ。
さて。そんな特別な塔を、しばらく物珍しい気持ちで見上げ眺めるツムギ。
用事を果たすため、やがて塔の入り口にあたる正面の観音扉へ足を向けた。
と、そのとき。
「っ・・・・・・っッ!?」
不意に、ツムギはその場に立ち止まってしまう。
ぴきき、と。
自分の足元、積もった雪の中からいきなり、大きな氷柱の尖りが、突き出すように飛び出してきたのだから。
「な・・・・・・っ!?」
唐突なことに一瞬面食らい、次には驚いた勢いあまって後ろに尻餅をついてしまうツムギ。
そこに突き出した氷柱は、まるでツムギをにらみ下ろすかのような威圧感を放ち、その全体が間もなく溶けるように霧散し、雪の中へと消えていった。
『また・・・・・・』
と、声。『また来たのね』と、ため息混じりの女声。それは雪の降る辺り一面から、響き渡るように聞こえてくる。
ツムギは、その声の出どころを探るように見回し、しかし周りには誰の姿も見られないので、ただ戸惑うしかなかった。
『私を″塔″から出そうなんて、百年早いわ!』
と、ため息から一転し、その声が威勢よく言う。
その声が言う″塔″という言葉に、ツムギはもしやとの思いで、目の前にそびえる【季節の塔】へ、恐々と視線を向けた。
「えっ、と・・・・・・?」
また、どこからか氷の柱が突き出てこないか、心配しつつ、
「えっ、と。【冬の女王様】、えっ、と・・・・・・そこに、いらっしゃるのでしょう、か?」
と、ものを尋ねる言葉をかけた。
『いないわよ!そんな人っ』
ツン、とした返事。尊大な、しかし声の響きにはまだ、多分に幼さの含まれた、そんな女声。『私の名前はユキネよ!ユ・キ・ネ!』と、何だか屁理屈を・・・・・・いや、一応、理にかなった反論を受けた。
(えっ、と・・・・・・)
とりあえず自分の″役目″は果たさねばと思い、ツムギは恐々しつつも、さらに【季節の塔】へと近づいていった。
「【冬の女王様】、あ。【ユキネ、様】?えっと、給仕の者ですが。朝食を、こちらにお持ちしましたので・・・・・・」
ぴきき、と。
再び、ツムギの足元から尖った氷の柱が突き出てきて、ツムギは慌てて飛び退こうとして、再び尻餅をついてしまう。『そうやって!』と、『冬の女王』の罵声を浴びつつ、身を守るようにその場に膝まずいた。
『そうやって!また、食事を″エサ″に私を説得に来たんでしょう!?冬が終わらないと、あなたたちは困ってしまうんですものね!?私が、どうして【季節の塔】から出てこないとか、そんなの大人のあなたたちには関係ないものねえ?ええ、ええ、出て行きますよ!とりあえず、百年くらい経ったらまた迎えに来てちょうだい。私は、私はまだ・・・・・・この塔から、出る気分になれないのよ』
ひと息に、【冬の女王】はそんなふうに言い分を主張し、そのお姿こそ見えないものの、恐らくプイとそっぽを向いたような、後にはそんな余韻がおとずれた。
「あー、ん。え、っと・・・・・・」
ひとしきり【冬の女王】の言い分を聞いたツムギは、ただただ呆気に取られてしまう。
噂どおり、というか、実際はそれ以上だったというか・・・・・・。
新しい【冬の女王様】は、″このような性格″をした″女の子″なのである。
(どう、しよう?)
困ったなと、積もった雪に膝まずいたまま、ツムギは内心呟く。
ただ、朝食を届けに来ただけなのに。
氷の柱が刺さりそうになるわ、【王族の女の子】には怒られるわ、朝から散々である。
と、とにかく。″仕事″は、しっかり片づけてしまおう。
「えっ、と・・・・・・」
『何っ!?』
ツムギが口を開くや、【冬の女王】はすぐさま言葉をかぶせるように噛みついてくる。ツムギは恐れ慄きつつも、言うべきことは言わねばとの思いで、言葉を続けた。
「こちらの、朝食ですが・・・・・・。えっ、と。扉の前に、置いておくという・・・・・・ことで、よろしいでしょうか?」
『・・・・・・』
ツムギは、そう呼びかける。しかし返事がないためどうしたものかと思っていると、やがて、
『それで?』
と、【冬の女王】から言葉が返ってきた。ツムギが戸惑いつつ、「はっ、はい・・・・・・?」と問うと、
『それで。朝食が欲しかったら、塔から出て来いって?あなた、そのために来たんじゃないの!?』
鬱陶しそうに、答え返してくる。さすがのツムギも、【冬の女王】の言わんとすることを察して、
「いえ、ボク・・・・・・あ、私は」
と、自分が食事を運んできた経緯について、努めて丁寧な言葉づかいで説く。「朝食を配膳するのが、私の仕事です」と言うと、
『そう』
と、【冬の女王】。どうやら、聞き入れてもらえたようだ。
『そこに、置いておいて』
朝食の載った配膳台のことを指し、ツムギに【季節の塔】の正面、観音扉まで来るようにと示してくる。
ツムギは雪に足をとられないよう注意しつつ、【季節の塔】の観音扉まで近づいていった。
「では、私は・・・・・・」
朝食の載った配膳台をそこに置き、城へ引き揚げようとする。しかし【冬の女王】が、
『待ちなさい』
と、ツムギを呼び止めた。
『ちょっと』
と、居丈高な口調で。【季節の塔】の観音扉まで来るようにと、そんな感じに言われて、ツムギはやはり恐々しつつ、その扉まで近づいていった。
『面を』
面を、上げるようにと。そう言われて、ツムギは、自分の顔と目線を、その扉の真正面に向ける。
『・・・・・・ふーん』
しばらく、【冬の女王】はそんなことを呟き。『なるほどねえ~』とか、『まあ、そうよね・・・・・・』とか、ひとりごちるような感じに。
呼びつけられたツムギは落ち着かない面持ちでその場に立ちつつ、【冬の女王】の命令を待った。
『給仕の責任者に、伝えなさい』
「は、はい!」
一体何を言われるのだろうと、ツムギ。背筋を正し、
『明日から、私の給仕は一切あなたが担当すべし。と』
その姿勢から、思わず真顔で「は?」と間抜けな声を漏らしてしまうくらいの、衝撃的な命令を受けた。
「は・・・・・・」
この後、のこと。王族の面前(お姿は見えないものの)にも関わらず「はああああぁぁぁぁぁっ!?」と失礼にも大声を上げたツムギが、【冬の女王】より『うるさい!』と言われ、気がつくと地に積もった雪の中に顔から突っ伏すように吹っ飛ばされていたのは、もう間もなくの話になる。




