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いつかの冬に  作者: 眠氷魔氏
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2/11

第2話

いわゆる2話なし~に、ならないようww


(童話、っぽさはちょい難しいから、、、とりあえず書きたいことを先に、、、あーパワプロ(ry)

【ハーネスの国】、冬季(とうき)の九十六日目のこと。


「次!″甲殻類(こうかくるい)の煮込みスープ″、予定より四分ほどの遅(おく)れですよ!!」


今日もまた、いつものように。


王宮の料理場に、給仕長(きゅうじちょう)の、きびきびした声が響(ひび)き渡る。


ここは早朝(そうちょう)から、さながら戦場同然の有(あ)り様(さま)だった。


「副菜(ふくさい)の″旬魚(しゅんぎょ)のムニエル三種の冬野菜添(ぞ)え″、急いで急いでっ!!」


給仕長の指示が、配膳担当(はいぜんたんとう)の給仕師(きゅうじし)に飛ぶ。料理の盛(も)りつけられた皿は車輪(しゃりん)のついた配膳台に載(の)せられ、王族のみがそこで過ごす会食の間(ま)へと運ばれていった。


給仕長は指示を出しつつ、自(みずか)らもまた鍋番(なべばん)をし調理もこなしているのだから、さすがである。


自分は、どれくらいの期間(きかん)を経(へ)ればあれだけの仕事をこなせるのだろうと思いつつ、給仕師として末端(まったん)のツムギは、食器や食材を用意するなどの雑務(ざつむ)を、彼なりに精(せい)いっぱいこなしていった。


「こら、そこ!手が止まってる!!」


調理場の向こうの辺りで、ひと息吐(つ)こうとしていた給仕師の青年に、給仕長の叱責(しっせき)が飛んだ。


叱責された青年は弾(はじ)かれたように姿勢を正し、また調理作業に戻っていった。


「ツムギ!」


と、給仕長の声。


呼ばれたツムギは、「う・・・・・・」と小声でうめきつつ、しかし小走りに給仕長のもとへ向かった。


「この、料理を」


と、調理台に乗った、一人分の料理を指し示しつつ、


「【季節の塔(とう)】の、【冬の女王様】のところまで配膳をしに向かいなさい」


と、不意打(ふいう)ちぎみに大仕事を命じて来たのだ。


「え、いや。しかし・・・・・・」


給仕長の言葉に、ツムギは戸惑(とまど)いの色を隠せない。【季節の塔】の【冬の女王】に、つまり王族の者が食するものを配膳するのは、それなりに勤めの長い者がなすべき役目なのだ。


自分など、あと五年は調理具(ちょうりぐ)ひとつ持たせてもらえなさそうな、その程度(ていど )の身分なのだが。


「その特例を、今回出さざるを得ないのです」


と、給仕長。何かを思い出すかのように、目を閉じながら、


「ああ何度も給仕師を″凍(こお)りづけ″にされてしまっては、仕事がまわらなくなってしまいます」


深々(ふかぶか)と、ため息を吐(つ)いた。


ここ最近の、ことだった。


【冬の女王】の機嫌(きげん)を損(そこ)ねると、凍りづけにされてしまう・・・・・・そんな話が城内の噂(うわさ)になっていたが。やはり、本当のことだったのか。


【冬の治め】が執り行えるかーーつまり、【冬の女王】が【季節の塔】から出てくるかーーそれが、近頃の【ハーネスの国】の焦点(しょうてん)となりつつあり、特に大人らは皆(みな)やきもきし始めているのだった。


えっ、と。つ、つまり自分は・・・・・・【冬の女王】に″凍りづけ″にされても、仕事に差(さ)し障(さわ)りのない人員(じんいん)ということで?


給仕長の言いぐさに内心、唖然(あぜん)としつつ、しかし「わ、分かりました・・・・・・」と、ツムギ。


食事の盛られた食器を、車輪(しゃりん)四つで手押しする配膳台に載(の)せて、仕度(したく)を整えた。


「くれぐれも」


と、給仕長。調理場から配膳台を押し城内の廊下に出るツムギに、くれぐれも粗相(そそう)のないようにと、念押ししてくる。「行ってきます」とひと声上げて、ツムギは【季節の塔】で役目を果たしている【冬の女王】のもとへ、朝食を届けに向かった。



○○○○○○○○○○


しん、しんと。


自分の身体よりやや大きな配膳台を、手押ししつつ。ツムギは城内の小さな勝手口(かってぐち)を通って、城の外に出る。道中(どうちゅう)、城の見回りをする衛兵(えいへい)らに【季節の塔】へ向かう旨(むね)を伝えつつ、城から【季節の塔】へ続く庭道(にわみち)を、一人行った。


しん、しんと。


今日も、外は大粒(おおつぶ)の牡丹雪(ぼたんゆき)が降っている。冬だから、それは当然と言えば当然だろう。


【ハーネスの国】の冬は、粒のきれいな牡丹雪が代表的な風物詩(ふうぶつし)になっている。雪にちなんだ観光(かんこう)の名所(めいしょ)も、いくつもあるのだ。


無論(むろん)、小さい子供なんかも、降り積もるほどの雪が毎日のようにあってご機嫌(きげん)なのだとか。


しかし、である。


このまま【冬の治め】が執り行われなければ、つまり【春】が来なければ、どうなるか・・・・・・。


十四の少年ながら、ツムギはその想像にゾッとしつつ、【冬の女王】の待つ【季節の塔】へ向かう。


庭師の者らが、この庭道いっぱいに積(つ)もるはずの雪を脇(わき)にどけておいてくれている。本当に、ありがたい仕事ぶりだ。


間もなく、【季節の塔】が見える辺りまで来た。


「着いた・・・・・・っ」


ふぅと、ひと息吐(つ)くツムギ。


辺り一面、銀の雪景色(ゆきげしき)の中、目の前にそびえ立つ【季節の塔】。一見(いっけん)、何の偏(へん)てつもないレンガづくりのような、それでいて、その外観(がいかん)にどこか惹(ひ)かれる神秘的(しんぴてき)なものを感じるような。


人づてに聞くと、どうやら″魔法(まほう)″の力の宿(やど)る建物だとか、一般人が入ると二度と外には出られないだとか、塔の周りのあの辺りは健康に効(き)くとかあるいは色恋沙汰(いろこいざた)なんかに効くとか、まあそういう噂話(うわさばなし)みたいなのはいくつかあるくらい、この国で有名な場所なのだ。


さて。そんな特別な塔を、しばらく物珍(ものめずら)しい気持ちで見上げ眺(なが)めるツムギ。


用事を果たすため、やがて塔の入り口にあたる正面の観音扉(かんのんとびら)へ足を向けた。


と、そのとき。


「っ・・・・・・っッ!?」


不意に、ツムギはその場に立ち止まってしまう。


ぴきき、と。


自分の足元(あしもと)、積もった雪の中からいきなり、大きな氷柱(つらら)の尖(とんが)りが、突き出すように飛び出してきたのだから。


「な・・・・・・っ!?」


唐突なことに一瞬(いっしゅん)面食(めんく)らい、次には驚いた勢いあまって後ろに尻餅(しりもち)をついてしまうツムギ。


そこに突き出した氷柱(つらら)は、まるでツムギをにらみ下ろすかのような威圧感(いあつかん)を放(はな)ち、その全体が間もなく溶(と)けるように霧散(むさん)し、雪の中へと消えていった。


『また・・・・・・』


と、声。『また来たのね』と、ため息混(ま)じりの女声(じょせい)。それは雪の降る辺り一面から、響き渡るように聞こえてくる。


ツムギは、その声の出どころを探るように見回し、しかし周りには誰の姿も見られないので、ただ戸惑うしかなかった。


『私を″塔″から出そうなんて、百年早いわ!』


と、ため息から一転(いってん)し、その声が威勢(いせい)よく言う。


その声が言う″塔″という言葉に、ツムギはもしやとの思いで、目の前にそびえる【季節の塔】へ、恐々(こわごわ)と視線を向けた。


「えっ、と・・・・・・?」


また、どこからか氷(こおり)の柱(はしら)が突き出てこないか、心配しつつ、


「えっ、と。【冬の女王様】、えっ、と・・・・・・そこに、いらっしゃるのでしょう、か?」


と、ものを尋(たず)ねる言葉をかけた。


『いないわよ!そんな人っ』


ツン、とした返事。尊大(そんだい)な、しかし声の響きにはまだ、多分に幼(おさな)さの含(ふく)まれた、そんな女声。『私の名前はユキネよ!ユ・キ・ネ!』と、何だか屁理屈(へりくつ)を・・・・・・いや、一応(いちおう)、理(り)にかなった反論(はんろん)を受けた。


(えっ、と・・・・・・)


とりあえず自分の″役目″は果たさねばと思い、ツムギは恐々しつつも、さらに【季節の塔】へと近づいていった。


「【冬の女王様】、あ。【ユキネ、様】?えっと、給仕の者ですが。朝食を、こちらにお持ちしましたので・・・・・・」


ぴきき、と。


再び、ツムギの足元から尖(とが)った氷の柱が突き出てきて、ツムギは慌(あわ)てて飛び退(の)こうとして、再び尻餅(しりもち)をついてしまう。『そうやって!』と、『冬の女王』の罵声(ばせい)を浴(あ)びつつ、身を守るようにその場に膝(ひざ)まずいた。


『そうやって!また、食事を″エサ″に私を説得に来たんでしょう!?冬が終わらないと、あなたたちは困(こま)ってしまうんですものね!?私が、どうして【季節の塔】から出てこないとか、そんなの大人のあなたたちには関係ないものねえ?ええ、ええ、出て行きますよ!とりあえず、百年くらい経(た)ったらまた迎(むか)えに来てちょうだい。私は、私はまだ・・・・・・この塔から、出る気分になれないのよ』


ひと息に、【冬の女王】はそんなふうに言い分を主張(しゅちょう)し、そのお姿こそ見えないものの、恐らくプイとそっぽを向いたような、後(あと)にはそんな余韻(よいん)がおとずれた。


「あー、ん。え、っと・・・・・・」


ひとしきり【冬の女王】の言い分を聞いたツムギは、ただただ呆気(あっけ)に取られてしまう。


噂(うわさ)どおり、というか、実際はそれ以上だったというか・・・・・・。


新しい【冬の女王様】は、″このような性格″をした″女の子″なのである。


(どう、しよう?)


困ったなと、積もった雪に膝まずいたまま、ツムギは内心呟(つぶや)く。


ただ、朝食を届けに来ただけなのに。


氷の柱が刺さりそうになるわ、【王族の女の子】には怒られるわ、朝から散々(さんざん)である。


と、とにかく。″仕事″は、しっかり片づけてしまおう。


「えっ、と・・・・・・」


『何っ!?』


ツムギが口を開くや、【冬の女王】はすぐさま言葉をかぶせるように噛みついてくる。ツムギは恐れ慄(おのの)きつつも、言うべきことは言わねばとの思いで、言葉を続けた。


「こちらの、朝食ですが・・・・・・。えっ、と。扉の前に、置いておくという・・・・・・ことで、よろしいでしょうか?」


『・・・・・・』


ツムギは、そう呼びかける。しかし返事がないためどうしたものかと思っていると、やがて、


『それで?』


と、【冬の女王】から言葉が返ってきた。ツムギが戸惑いつつ、「はっ、はい・・・・・・?」と問うと、


『それで。朝食が欲しかったら、塔から出て来いって?あなた、そのために来たんじゃないの!?』


鬱陶(うっとう)しそうに、答え返してくる。さすがのツムギも、【冬の女王】の言わんとすることを察して、


「いえ、ボク・・・・・・あ、私は」


と、自分が食事を運んできた経緯(いきさつ)について、努(つと)めて丁寧な言葉づかいで説(と)く。「朝食を配膳するのが、私の仕事です」と言うと、


『そう』


と、【冬の女王】。どうやら、聞き入れてもらえたようだ。


『そこに、置いておいて』


朝食の載った配膳台のことを指(さ)し、ツムギに【季節の塔】の正面、観音扉まで来るようにと示(しめ)してくる。


ツムギは雪に足をとられないよう注意しつつ、【季節の塔】の観音扉まで近づいていった。


「では、私は・・・・・・」


朝食の載った配膳台をそこに置き、城へ引き揚(あ)げようとする。しかし【冬の女王】が、


『待ちなさい』


と、ツムギを呼び止めた。


『ちょっと』


と、居丈高(いたけだか)な口調で。【季節の塔】の観音扉(かんのんとびら)まで来るようにと、そんな感じに言われて、ツムギはやはり恐々(こわごわ)しつつ、その扉まで近づいていった。


『面(おもて)を』


面を、上げるようにと。そう言われて、ツムギは、自分の顔と目線を、その扉の真正面に向ける。


『・・・・・・ふーん』


しばらく、【冬の女王】はそんなことを呟き。『なるほどねえ~』とか、『まあ、そうよね・・・・・・』とか、ひとりごちるような感じに。


呼びつけられたツムギは落ち着かない面持(おもも)ちでその場に立ちつつ、【冬の女王】の命令を待った。


『給仕の責任者に、伝えなさい』


「は、はい!」


一体何を言われるのだろうと、ツムギ。背筋を正し、


『明日から、私の給仕は一切あなたが担当すべし。と』


その姿勢から、思わず真顔で「は?」と間抜けな声を漏らしてしまうくらいの、衝撃的な命令を受けた。


「は・・・・・・」


この後(のち)、のこと。王族の面前(めんぜん)(お姿は見えないものの)にも関わらず「はああああぁぁぁぁぁっ!?」と失礼にも大声を上げたツムギが、【冬の女王】より『うるさい!』と言われ、気がつくと地に積もった雪の中に顔から突(つ)っ伏(ぷ)すように吹っ飛ばされていたのは、もう間もなくの話になる。

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