02
今、俺の目の前に地獄の門が口を開いている。ポッカリと空いた黒い空間は禍々しい雰囲気を醸し出している。
「ねぇ、顔色悪いわよ?具合でも悪いのかしら」
俺の顔色を心配するティルカ姫。今の俺の顔色はさぞや青かろう。自覚している。
「姫様、気にしなくていいんですよ。アレはいつもの事ですから」
「いつもの事?」
ハルの言葉にティルカ姫は俺に視線を向ける。ちなみにその温度は限りなく低い。俺泣きそう。
そう、俺にとって洞窟の入口は地獄の門に等しい。あの逃げ場が少ない場所にモンスターがうようよしていると考えるだけで鳥肌が立つのだ。
「うっせー。何が楽しくてわざわざ洞窟までモンスター退治に行かなくっちゃいけないんデスカー!マジイミフだ」
「落ち着け」
涙目で喚く俺にハルは短く言い捨て俺の鳩尾に手刀を入れる。グサッと刺さる手に俺は涙を流した。ついでに蹲り悶える。マジ痛いハルの鬼畜め。
「さ、サクッと行きますか」
俺の襟首を引っ掴み、ハルは何事もなかったかのように進み始める。
「えッ?! なんなのそのノリは?え?」
俺とハルのバイオレンスなやりとりにティルカ姫は困惑しオロオロとした。そのせいでツッコミきれていない。フッ……まだまだ青いな。
心の中でカッコつけた所で目の前にポッカリと口を開けた黒い空間は変わらない。
ところでハルさん、そろそろ引きずって行くのやめてもらえないですかね。そこそこのスピードで石とか岩とかの上を引きずられるのは痛いんだけど。マジで。
俺はハルの手刀のダメージで悶えながら洞窟の中に引きずられて行く。
ハルさんとのバイオレンスなやりとり(笑)
※ハルさんは手加減(多少は)していますが、実際にやるのはやめましょう(笑)