その男は・・・・・・
私を離れさせたあの人は、ゆっくりと私が魔法を放った夜盗に向かっていきます
「イージス、戦闘プログラム始動。」
あの人がそう呟いた途端に、あの人が白い光に包まれた
白い光に包まれたまま移動するあの人に目を奪われる
「装着完了。」
白い光が晴れると、あの人の服装が変わっていた
今までの白の上下から、黒の上下に
サンダルは、黒のブーツに替わっていた
黒のベストには複数のポーチが着いている
そして手には、灰色の今までに見たことのない、謎の物を握っていた
「いてぇぇ!
絶対犯して!殺した後も犯して」
「その前にお前が死ぬんだよ。」
あの人は、灰色の謎の物を、倒れている夜盗に突きつける
すると灰色の物から、短く火が噴き、破裂音と共に夜盗の頭が弾け飛んだ
硝煙と血の臭いを嗅ぎながら、俺はSIG226をヒップホルスターに戻す
これは、俺の持つもう一つの能力〔武装装着〕
ゲームプレイ中に購入した装備を実現化する能力だ
このSIG226は、俺がプレイした時に購入した、拳銃の一つだ
ショート・リコイルを搭載し、水や泥に浸けても作動する、高い耐久性を持って、9mパラベラム弾を15発装填できる
「さてと。」
〈残弾カウンターを表示します〉
視界の右下に表示された、14/30の数字
14は装填済みの弾の数
30は左後ろの腰に着いている、マグポーチの弾を表している
〈夜盗が広場に集結しています〉
イカンな、点呼されたら、今殺した奴らの事がバレるな
「あの!」
広場に行こうと思うと、後ろから犬耳少女が呼び止めた
これから、この犬耳少女には、見せたくない事が起きる
しかし、ここに放置するのもあれだ
「‥‥‥‥俺の後ろに隠れて付いて来な。」
「はい!」
もしもとなったら、目隠ししようと思い、ついて来いと伝えると、抱きつく様にしがみつく犬耳少女
歩きづらい
「クンクン‥‥‥‥‥いい匂い。」
「何してるんだ!?君は!?」
ちょうど背中辺りに顔を埋める犬耳少女
風呂に入ってないから体臭キツいんだけどな
「私はフェイです!
匂いを嗅いでました!」
「正直だなおい!?」
にんにくしか食っていないのに、いい匂いなのか?
「あなたのお名前は?」
「俺?義鬼って言うんだ。」
「ヨシキ?珍しい名前ですね。」
やはり、この世界には日本系の国はないのか
「あの‥‥‥ヨシキさんが使ったあれって。」
「‥‥‥‥‥知らない方が良いよ。」
「‥‥‥‥ごめんなさい。」
へたりと、フェイの犬耳が伏せる
何コレ可愛い
〈広場まで200m〉
頭の中に響くイージスの声で気を引き締める
それと心なしか、イージスの声が冷たく聞こえた
「P90武装。」
右手に光が集まり、現れたのは、ベルギーにある、FNハースタル社と言う銃器メーカーのサブマシンガン
5.7×28mmという特殊弾を使い、有効射程200m、最大射程1800m、200m先のレベルⅢAボディーアーマー(44マグナムを止められる)を貫通する弾を50発装填できる
「良いか?そろそろ危ない事になるぜ?」
「はい!ヨシキさんがいれば、何でも大丈夫な気がします!」
なんか‥‥‥恥ずかしいな
それぞれの予備マグの位置を確認しする
ふと目に入る手に握られている暴力の化身
そう言えばさっき人を殺したな
今まで生きる為に生き物を殺めたが、人は初めてだ
‥‥‥何ともない
生きる価値もない奴を殺しただけ
そいつ等なんかに慈悲なんてない
「さあ、行くか。」
この場にいる悪を滅する為に、右手のP90をしっかりと握り、魔力を丹田で練る
その魔力を少しずつ細胞に流し、放出した魔力を纏う
「貴様何者だ!」
広場の方から、敵魔法使いらしき男が、むさ苦しい20名ほどの男を引き連れてきた
〈伏兵見あたらず、武装はシミター、ショートソード、ハンドアックス〉
「引き続き監視を続行。」
「ヨシキさん?」
イージスと話す俺に、不思議そうに見つめるフェイ
イージスの声は聞こえないんだったな
「何でもないよ。
今から目を瞑っていな。」
「テメー聞いているのか!」
シミター片手に近づいてくる1人の夜盗
だいたい距離は、90mか
左手でチャージングハンドルを引き、初弾を薬室に送り込む
今度は右の中指でトリガーの下にある、セイフティーを解除
フルオートに合わせ、左足を一歩前に出し、重心を前足に預ける
そのままP90を構え、交戦距離100mに想定されている、オプティカルサイトの赤い点を、ぼんやりと見える夜盗の姿に合わせる
そして‥‥‥‥引き金を引き絞るようにし、一瞬だけ浅く引く
短い発射音と、肩に感じる反動
ドットサイトに合わせていた夜盗から、赤い煙があがったのを、ディスプレイ越しに確認できた
「っ!?て、敵だ!殺せ!」
「「「うおぉぉおぉお!」」」
突然血飛沫をあげ倒れる仲間と、鋭い火薬の音に驚くたじろいた夜盗だったが
魔法使いの指示と、仲間を殺された敵討ちの為、怒濤の勢いで攻めてきた
当の魔法使いは、後ろに下がった
あいつがリーダー格か
そう思いながら、走ってくる夜盗の先頭めがけて、引き金を深く引き、5.7m弾のシャワーを浴びせる
鉄の胸当てを着ける者を撃ち抜き
鉄仮面を被る者の額を撃ち抜く
900発/分間で発射される5.7m弾という現代兵器は、中るものすべてに破壊をもたらした
カチッ
5.7m弾の連射音が止み、聞こえたカチッという音
弾切れ
しかし、銃口を下げると、50mもしない所に広がっていたのは、血の海に沈む夜盗の集団
ある者は、体に無数の風穴が開き
ある者は、鼻から上が吹き飛び、ピンク色の液体が吹きこぼれている
ある者は、運悪く急所に中らず叫び、もがき苦しんでいる
「凄い‥‥‥」
空マガジンを抜き取り、新しいマガジンを差し込み、ボルトを引いた所で、後ろから聞こえる呟きに、戦慄する
「見るなと言ったはずだ。」
「あっ‥‥‥音に驚いちゃってつい目を‥‥‥‥‥ごめんなさい。」
「気持ち悪くないか?」
「大丈夫です。
それに今年から養成学校に行くので、このくらい慣れないと。」
この世界の住人は、心が強いんだな
地球だったら、どうなるやら
「よそ見とは余裕だな!」
有効射程外だった敵魔法使いが、仲間を犠牲にしてまで練り上げた魔力で詠唱を行っていた
「ヨシキさん!」
「〔燃えさかる業火よ!あの者を焼き尽くせ!〕」
「心配するな。」
「〔クロスファイヤー!〕」