静かなる闘鬼
「あー、ご馳走さん。」
牢屋滞在2日目となり、自分の体臭が少し嫌になり始めた
〈お粗末様でした、食後のガムはいかがですか?〉
「おう頼む。」
〈かしこまりました〉
急に左手に光が集まり、その光が晴れるとその手には、アメリカンなタブレット状のミントガムが握られていた
イージスは、武器以外にも軍関係や警察関係の物が出せる
食事が出されないからさっきまでMREを食っていた
「そうやぁ、明日、例の騎士団が、来るのか。」
〈そうですね、噛みながら喋らないで下さい
レイブンを飛ばしますか?〉
「頼む。」
イージスに〔航空支援要請〕を要求し、RQー11レイブン無人偵察機を上空に飛ばしてもらう
この他にも、ポイントを注ぎ込めば〔砲撃要請〕〔物資支援要求〕等があるが
俺はポイントをすべて〔航空支援要求〕に注ぎ込んだため、〔航空支援要求〕しか使えない
「本当だ、案外数多いな。」
イージスの画面に映し出されたレイブンの動画には、ざっと数えただけで50名ぐらいの騎士団が、夜営しているのが写っていた
〈Master〉
「ん?」
〈レイブンを帰還中に、武装した小規模部隊を発見
まもなくこの町に到着します〉
「騎士団の偵察隊ではなく?」
〈夜盗のようです〉
「目的は‥‥‥‥略奪だな。」
〈そう思われっ!大規模魔術発動!目標は〉
イージスの最後の言葉を言う前に、地面が大きく揺れ、天井が崩れてきた
地響きが轟き、ベッドから飛び起き
窓の外を見ると、ちょうど町長の家の辺りから、黒煙があがっていました
「フェイ!」
私は母親の制止を振り切り、窓から飛び出し、屋根から屋根へと飛び移りながら、町長の家へ向かいました
『この町にいる住人に告ぐ! この町の広場に集合しろ! 背いた者は殺す!』
〔拡声魔法〕から夜盗の犯行声明が響きますが無視し、町長の家の前に着きました
「ああ、そんな!」
町長の屋敷は瓦礫の山とかし、自慢にしていた中庭の木は燃えていた
たぶん‥‥‥町長とあの人は‥‥‥
「こんな所にまだいたぞ。」
「本当だな。」
思わず呆然立ち尽くし眺めていると、ハンドアックスを持った夜盗の2人が、広場の方から歩いてきました
「ちょうど良い、こいつを犯そうぜ。」
「まだガキだぜ?」
「このぐらいから犯して、ペットにするんだよ。」
「っ!はあぁあ! 〔風よ、千里を駆ける刃となれ!〕」
「んな!」
自分の体内に存在する魔力を練り上げ、魔法詠唱を行う
「〔風の刃!〕」
無事に魔法詠唱を終え、放出された魔力を媒体に生み出された風の刃は、うなりをあげ、夜盗の1人の腕を千切りました
「うぎゃぁぁぁあ!」
「このガキィ!」
魔法の反動で動けない私に向かい、もう1人の夜盗がもの凄い勢いで、私に向かってきました
「死ね!」
魔法詠唱を唱える前に、大きく振りかぶるアックスを見た時、何故かあの人の事を思い出しました
会いたかったなもう一度
漆黒の綺麗な瞳のあの人に
「よくねーな、お嬢ちゃんを殺そうとするなんて。
いっぺん吹っ飛べ。」
「痛ててて。」
〈Master!大丈夫ですか!?〉
周りの瓦礫に押し潰されそうになっている俺に、イージスの声が頭に響く
「平気だ、何があったんだ?」
〈遠距離魔法による攻撃にあいました
正確性から、事前に座標指定されていたと思われます
屋敷は全壊しています〉
「練習していて助かった。」
そう言いながら体に纏っていた魔力を消散させる
魔力は万物の根元である
この世界のお偉いさんが、こんなことを言い残しているそうだ
魔法を発動するには、随時体内から漏れている魔力を、魔法詠唱中に練り上げ、媒体にし発動する
そんな中、俺は魔力による〔強化〕を行える
練り上げた魔力を体の細胞一つ一つに流し込み、爆発的な身体能力を得て、更には魔力を放出し、魔力の鎧に身に纏う事が出きる
「イージス、状況を。」
〈Yes、my master
敵夜盗は30名ほどの武装集団
少なくとも一撃でこの建物を吹き飛ばす、魔術師が存在します
一般人は広場に集結されています〉
「一般人を一カ所に集めて、家を荒らすのだろう。」
〈そうですね
現にこちらに2名接近‥‥‥‥‥非常事態です〉
「何があった。」
〈屋敷の前で逃げ遅れた一般人一名が発見されました〉
「助けるぞ。」
一度消散させた魔力を纏う
魔力という鉄壁を纏い、
今度は魔力を体内で練り上げ、全身の細胞に流し込み、身体能力を極限まで跳ね上げる
人間は頑張ってでも、2、3割の力しか発揮できないと言う
何故ならば、それ以上だと体が耐えられないからだ
しかし、俺は魔力を流し込む事により、リミッターを解除し、細胞の回復を加速させる事で、驚異的な力を得ることができた
ついでに、魔力を纏う事により、空気摩擦をゼロにする事が出きる
「うらぁ!」
左手を突き出し、瓦礫を吹き飛ばすと、強化された目に
斧を少女に振り下ろそうとしている、夜盗が目に入った
「よくねーな、お嬢ちゃんを殺そうとするなんて。
いっぺん吹っ飛べ。」
驚異的に高まった体で踏み込み懐まで潜り込む
通常ならこんなスピードで動いたら、体はバラバラになり、空気摩擦で燃えているに違いない
「ふん!」
重心を落とし、右膝を抱え込むように曲げ、力を溜め込み、中段前蹴り(通称ヤクザキック)を呼吸と一体にさせて、蹴り込む
「ーーー!」
ゴリュッと足に骨と肉を陥没させるかんしょくがし
夜盗は悲鳴をあげる暇もなく吹き飛び、建物の壁を突き破った
〈行動が早すぎです、レーダーを表示します〉
急に視界の左上に表示されるレーダー
ゲームをプレイしていた時に、PCに表示されていたレーダーと同じ物だった
レーダーを確認すると吹き飛んだ夜盗は、死んだらしく
レーダー上に白の点で表示され
路上に転がっている夜盗は赤の点
隣にいる少女は、緑の点で表示されている
「ん?」
俺を見つめる少女をよく見ると、赤髪犬耳に見覚えがあった
「ああ、君か。」
最初に出会った少女だと思いだし、魔力を消散させて、頭に手を乗せ撫でる
「また会ったな。
もう大丈夫だよ。」
「‥‥‥ぐずっ!
わああぁぁぁぁん!」
犬耳少女は俺に抱きつくと、今までの恐怖を思い出したのか、大声で泣き出した
その間俺は、だだ犬耳少女の頭を撫で続けた
「いでぇぇぇえ!
このクソガキがぁぁぁあ!」
ふわっふわの犬耳を撫でていると、片腕が千切れた、夜盗が耳障りだった
「ちょっと離れていてね。」
抱きついていた犬耳少女を離れさせ
夜盗に近づく
「イージス、戦闘プログラム始動。」
〈Yes、my master〉
さあ、狩の時だ
中段前蹴りは作者の得意技