呼び声に応えるもの
主人公初登場ということで、やっと沢山つけたタグという名の大風呂敷を畳む事が出来る。書いてる途中、異世界の常識ばかり詰め込んでたから主人公どんなやつだったっけ?ってちょっとど忘れしてキャラクター紹介見ながら書いたなんて…うん、ソンナコトハナカッタヨ?
~神代優護~
俺、神代優護は読書とゲームが好きなどこにでもいる普通の大学2年生だ。好きなジャンルはファンタジー物で、特に異世界サバイバルものや不遇キャラの大活躍ものなんて大好物だ。
そんな俺が3年近く嵌まっているゲームが『界渡りの幻想』《ワールドトラベル・ファンタジー》と言って本来はシミュレーションRPGというもので、シナリオクリアまでは登場キャラの暴走っぷり以外普通のSRPGとそこまで変わらないのだけれど、クリア後レベルを上げて最強のキャラを作ろうとすると途端にその様相は変わってくる。何故ならこのゲーム、レベルは9999、与えるダメージは億を超え、キャラクターメイキングは数百以上というやりたい放題な超やり込みゲームになるからだ。その為ユーザーからは、「シナリオクリアまでがチュートリアル」なんて呼ばれたりしている。
俺はこれに嵌まってしまった。もうずっぽりと。休みの日は専らレベル上げ、スキル上げ、アイテムコンプと遊び続け9999になったら能力を引き継ぎレベル1に転生してからまたレベル上げと延々繰り返していた。
そんな感じで大学が春休みに入ってからも毎日遊んでいたんだけど、ある日いつものようにレベルを上げながら、夕飯何作ろうかなーとか、もうすぐラノベの新刊出るから買いに行こうとか考えていたら、何かがぶつかるような音がして、何だろう?と思い耳を澄ましてみたら、どこからか女の子の声が、
「たす・・・け・・て、・・・」
って聞こえたと思ったら、いきなり部屋中が光出したんで咄嗟に目を瞑った。そして再び開けてみたらそこは見たことのない薄暗い部屋で足元には矢が刺さり血塗れで倒れている女の子がいた。
「わっ?!」と驚き飛び退くと後ろから、
「ようこそ、ローレンスへ。私は召喚魔法を司る神ディナ、貴方のお名前は?」
振り向くとそこには黄金色に輝く光を身に纏いながら微笑むブロンドの髪を足元まで垂らした見た目20歳位の綺麗な女性がいた。
「え、えっと。俺の名前は神代優護です。それで今召喚魔法とか神とか、それから目の前の子は大丈夫なのかとか何がどうなっているのか、訳が分からないんで説明お願いしてもいいですか?」
我ながらこんな状況でよくまともに受け答え出来たなと思う。
「それではまず緊急を要するものから一つずつ答えと解決策を提示しましょう。まずそこで倒れている子ですがこのままでは助からないでしょう。」
「そんなっ?!助ける方法はないんですか?神様ならなんとか出来ますよね?」
「いいえ、今ここには私の力はほとんど残っておらず、話をするのが精一杯なんです。でも、貴方にならその子を救う事が出来ます。時間がありません。私の指示通りに動いてください。」
「わ、わかった。まずは何をすればいい?!」
「その子は失血毒に侵されています。毒を取り除かなければ止血すら出来ません。まずは傷口に手を当て血の廻りに触れ、そこから毒を外へ出すイメージを固め、キュア・ポイズンと唱えてください。」
「唱えるってそんな魔法みたいなこと俺には無理だよ。俺はただの人間なんだ。」
「いいから唱えなさい。その子を救うにはそれしか方法がないのですよ。」
(うっ・・・確かにこんな何もないとこじゃ応急処置すら出来そうにないけど・・・仕方ない自称とはいえ神様の言う事なんだ。信じる者は救われる、だ。)
まずはイメージ、腹部の傷口に触れて、そこから動脈、静脈、心臓、肺、臓器全てが正常に廻るイメージをし異物を押し流し触れた所から流れ出るようにイメージする。生物の授業で見た動脈と静脈の分布図を思い出しながら何とかイメージが固まった所で、
「キュア・ポイズン!!」と叫んだ。
すると傷口から少し水っぽい血が流れてきた。
「成功です。次は背と足に刺さった矢を抜き、同じように血が巡るよう傷口を包み込むように癒すイメージをしてヒール・リカバリーと唱えてください。」
俺は矢を抜こうとして太腿から飛び出ている鏃をみて「これはやばい」と感じた。なぜなら鏃には返しが付いており、更に悪い事に鏃が少し力を入れると抜けてしまいそうな位緩かったからだ。太腿の方は貫通しているから鏃を外して引き抜けばいいが、肩の方は鏃の部分が体内に入り込んで無理に引き抜けば体の中にそのまま残ってしまうだろう事が容易に想像出来た。
(とにかく、まずは出来る所からやっていこう)
まずは脇腹から、傷口が見えるように服を軽く捲り手を当て「ヒール・リカバリー」次に太腿の矢から鏃を外し、矢を抜き取ってから中が見えない様にそっとスカートを捲り「ヒール・リカバリー」今は医療行為中、相手は小さい女の子邪な考えが入る余地はなく紳士的に対応出来たと自分で自分を褒めてやりたい。
要領を掴み少し余裕が出てきたが問題はここからだ。まずは矢が飛び出ている辺りの服を破き傷が見えるようにする。それから柄の部分を左手で掴み鏃が抜けない様に加減しつつ引っ張り右手を傷口に突っ込み傷口を押し広げながら鏃を取り出す。生暖かい感触と広げた途端噴き出す血を浴び嘔吐いたが我慢し、すぐさま「ヒール・リカバリー」何とか無事に終わった・・・
「お疲れ様。失血が多くて気を失っているけど、無事成功よ。」
(女神様を信じて良かった。何で俺が魔法を使えるとか疑問は沢山あるが取り敢えず、しばらくは一人の命を救ったという充実感に浸ってよう。)
主人公の適応力高過ぎないか、とかそんな知識どこで手に入れたっていうのは小説や学校の授業、サバイバルして生き抜く為にとよく近くの海や山でサバイバルの真似事をしていたという人に知られると地味に恥ずかしい経験の賜物です。