イリアの生い立ちその一
イリアが12歳の割に口調が大人びているのは、両親や兄の真似をしているのと家にいることが多く本を沢山読んでいるからです。
私の名前はイリア・アメジスト今日で15歳の成人を迎える魔法使い見習いです。
まずは自己紹介を兼ねて冒険者になるまでの話を語ろうと思います。
私の家族はいわゆる冒険者一家と言うもので、両親と年の離れた兄の4人で暮らしており両親はA級、兄は18歳と言う若さでB級に登りつめた自慢の家族です。しかし私はと言うと幼少の頃より常人より突出した魔力を持っていたせいで、身体が魔力に耐え切れずしょっちゅう体調を崩し一年の半分をベッドで過ごしていました。
そんな中私が12歳の夏、A級ダンジョンに潜っていたはずの兄のパーティーメンバーが私の家を訪ねて来ました。両親も丁度狩りに出掛けており、私は漠然とした不安を抱えながらも彼を家に招き入れると彼は小声で「すまない」といい涙を堪えながら小さな小包を差し出してきました。
「これはダンジョンの宝箱から出たものでとても強い魔力があって君の魔力を安定させてくれる。お兄さんからのプレゼントだよ。」
「あ、ありがとうございます・・・。あの・・・それで兄は?予定より大分早いですけど何かあったんですか?」
「・・・落ち着いて聞いて欲しい。お兄さんは・・・私たちを逃がす為に一人モンスターの群れを相手に囮を引き受けダンジョンの奥深くへ・・・私たちの力が足りないばかりに!!すまない・・赦してくれとは言わない私は君に恨まれても仕方ない事をしてしまった。僧侶であり皆を支えるべき私が怖じ気づき彼を一人で行かせてしまった。本当にすまない!!」
目の前で涙を流しいきなり土下座をする彼を前に私は、哀しむ事も怒る事も出来ず、ただ兄からの今は形見となってしまった小包を握りしめ茫然となった。まるで心が凍りついてしまった様で、もう彼が何を言っているか分からなくなっていました。
しかし、懺悔を続ける彼を前に兄なら皆が助かるなら迷わずその身を犠牲にするだろうな。と思い、こんな時兄ならどうするだろうなと考えながら言葉を発しました。
「私はあなたを赦します。それでも自分が赦せないならこれからその手で沢山の人を助けてあげてください。私からは以上です。」
「・・・君はとても優しくてとても強いね。お兄さんそっくりだ。」
それからの事はよく覚えていません。帰ってきた両親が詳しい話を聞いている間、やっと心が追いついてきたのか涙が次から次に溢れベッドで泣き崩れました。
すみません、まだ物語は暫く始まりません。ですのでイリアが15歳になるまでを0章と言う事にして進めていこうと思います。