転生
〜ユーゴ〜
翌朝、街へ到着した俺達は馬車に乗せてくれた商人達に別れを告げ、早速冒険者ギルドへと向かった。
「冒険者ギルドへようこそ。初めてのお方ですね。こちらへはどのようなご用件でいらしたのでしょうか?」
「は、はい。冒険者の登録と召喚獣の転生をお願いしたいのですが、それにしてもよく初めてだと分かりましたね。」
「仕事柄一度来られた方は全て記憶していますので。ギルド登録に転生ですね、こちらが登録用紙です。必要方には代筆も承っております。」
「ありがとうございます。字は書けるので大丈夫です。」
「それにしても、お若いのに召喚獣に認められるなんて優秀なんですね。」
「いえ、そんな。私なんてただ運が良かっただけです。・・・と、これでいいですか?」
「はい、承りました。ギルドカードの作製には少々時間が掛かりますので、その間に転生の間へご案内しますね。」
俺達はギルドの奥にある一室へ案内されると、そこには紺のローブに身を包んだ老人が机で本を読んでいた。
「こちらが召喚獣関係の担当をしているアートマさんです。では私は手続きを進めて参ります。」
「おや、若い子が来るとは珍しい。私は召喚士のアートマという。今日は召喚獣と契約を試しに来られたのかな?」
「今日は転生をお願いしに。その前に質問なのですが、生きている召喚獣を転生してレベル1にする事は可能でしょうか?」
「それはまあ可能だが、わざわざ弱くするなんて酔狂な事誰もせんよ。」
「それが、私の召喚獣は強すぎて契約したのに召喚出来ないんです。」
「ふむ、珍しい事例で興味深いがそういう事なら納得じゃな。どれ早速転生して進ぜよう。」
アートマさんが何やらイリアに向けて呪文を唱えるとペンダントが光り中にいる俺の前にステータス画面が表示された。
「今君の召喚獣は今までの経験を糧に新たな姿へと変わっている。それまでお茶でも飲んで待っているといい。」
(なるほど、転生での変化の代わりに俺はステータス・ウィンドウで自由に弄れる訳だ。)
まずは職業か、召喚中は少しずつとはいえMPが減っていくから魔法職についた方がいいんだろうけど、今まで前衛メインだったしイリアは魔法使いだから俺が前に出る必要もあるし・・・ここは魔法戦士一択かな。後は転生ボーナスの81ポイントを使って何か使えそうなスキルを取るか。
(そういえばPTメンバー強化用にスキルシェア取ってたしイリアに使えそうなの優先でもいいな。)
スキルシェアとは所有者の持つスキル・特性をPTメンバーに効果を半分にして与えるスキルで、例えば相手が同じスキルを持っていた場合スキルシェアを使えば相手は1.5倍の効果を得る事が出来る。但しシェア出来るのは3つまでとなる。
(よし、消費MP半減と魔力武装化とEXPギフトと鑑定でそれぞれ20ポイントずつ80ポイント使おう。)
消費MP半減は文字通り魔法を半分のMPで発動出来るようにする特性。魔力武装化は身体や装備に魔力を通し強化する他、魔力のみで武器を作製したり出来るスキル。EXPギフトは俺が本来得る経験値を仲間に与えるスキル。鑑定はアイテムやモンスターの詳しい情報を見る事が出来るスキルだ。
残り1ポイントがもったいないので魔法鞄の容量を増やして終了した。
すると光が収まって行き俺のレベルは1になった。
名前:ユーゴ・カミシロ(19)
職業:魔法戦士
レベル1
HP:98
MP:64
ATK:91
DEF:44
INT:43
RES:40
HIT:47
SPD:100
装備:ブラックレザーコート+4、ブラックレザーズボン+4、皮の靴、魔法鞄
特性:経験値+400%、技熟練度+400%、アイテム性能UP、スキルシェア、オートHPヒーリング、オートMPヒーリング、錬金術、ラーニング、消費MP半減
スキル:念話(対象:契約者)、調理マスター、彫金マスター、鍛治マスター、裁縫マスター、革細工マスター、二刀流、無刀流、ウェポンチェンジ、索敵、気配断絶、魔力武装化、EXPギフト.鑑定
魔法:ステータス・ウィンドウ、アイス・ニードル・ジャック
(だいぶ弱くなったな〜。今までアタッカーだったから防御や魔法は低いか。そういえば、ヒールやキュア系無いけどあれは契約前だったからカウントされてないのかな。)
「さて、もう良いだろう。召喚して見るといい。」
「はい。それでは・・・コール・サモン!」
俺は外へ引っ張られる感覚と共にイリアの前に姿を現した。
「やあ、イリア。」
「ユーゴさん。また会えて嬉しいです。」
「これは驚いた!人型の召喚獣といったら最上位に近い存在。一体嬢ちゃんは何者なんだい?」
「ちょっと前に見習いを卒業した只の新人冒険者です。」
「まあ色々あって契約する事になったけど詳しい話は(面倒だし)パスで」
「何か複雑な事情があるのですな。分かりました。深くは聞きません。それでは転生の代金なのですが大銀貨1枚になっております。」
「えっと、すみません。今手持ちにそんなお金は無いのですが今ある分全額だしますし、残りも必ず払いますのでどうか待って頂けませんか?」
「ああ、大丈夫。ギルドにはお金を預けておける金庫があって、ギルドカードに金額を記入すればトイチ(10日に1割の金利)で大銀貨1枚までなら貸し出す事も出来るから登録したらクエストをこなしていけばすぐ返済出来るじゃろう。」
トイチなんて高すぎるとも思ったが、いつ死んでもおかしくない世界ではこれでも良心的な方なのだろう。
「ものは相談なんだけどこれ売ってそこから代金支払うのでもいいかな?」
そういって金のインゴットを取り出す。
「こっこれは?!まさか金インゴットか?ちょっと待っておれ今鑑定士を呼んでくる!」
アートマさんは慌てふためき慌ただしく部屋を出て行った。
「ユ、ユーゴさん。これ一体どうしたんですか?!」
「俺の持ち物。取り敢えずこれだけあれば暫くは路銀も足りるでしょ。」
「はぁ〜、ユーゴさんといると驚く事ばかりで感覚が変になっちゃいそうです。」
暫くして鑑定した結果純度の極めて高い金という事で500万ギル、金貨5枚分になった。
ギルというのがこの世界での単位で初代国王にして英雄のギルバートから取られたらしく貨幣には彼の横顔が描かれている。
しかし一度に換金出来るほどギルドも余裕は無いらしく代金と路銀用に20万ギルだけ受け取り残りはギルド預かりとしてギルドカードに預金が記入される事になった。
その後、まずは泊まる所を決めようとなりギルドを後にして街中を散策する事にした。
「それじゃ今の俺じゃ一時間半位しかいられないからお金は預けるよ。必要なものは遠慮しないで買っていいからね。」
「分かりました。預かったお金は大事に使わせて頂きます。」
「そんなに気にしないでこれは二人のもの何だから。ところでギルドカードにはなんて書いてあるの?」
恐縮して縮こまったり、急に顔を赤くしたりと忙しいイリアの気を逸らす為別の話題をふった。
ギルドカードには
名前:イリア・アメジスト
ランク:F
職業:召喚士
レベル6
HP:56
MP:125
預金:4,800,000
とだけ書かれていた。
ステータス・ウィンドウが優秀過ぎるだけで普通はこれ位しか情報は出ないみたいだ。
「あ、顔が近くに・・・」
「ああ、ごめん離れるよ。」
「(別に嫌じゃ無かったんだけどな・・・)」
「ん、何か言った?」
「い、いえ別に何も!気にしないで下さい!」
さっきより顔が赤くなってるけど熱があるわけじゃなさそうだけど心配だな。
「そういえば金インゴットって金貨30枚分位作れそうな量あるけど偽造とかで価値が暴落したりしないの?」
「えと、それはですね。貨幣を鋳造するには王国謹製の固定化魔法をかける必要があるからですね。例え偽造しようとしても確認の際にファイアの魔法で溶けたり、その後アイスの魔法で砕けたりするのですぐばれます。また貨幣偽造は極刑になるのでまずあり得ません。」
「固定化すると金属疲労も起こさずにずっと使えるわけか。そしたら金とかあまり需要ないんじゃないの?」
「確か錬金術で使われたり特殊能力を持った装備に使われるので売れ行きは良かったと思います。」
(錬金術に鍛治ね・・・今度試しに何か作ってみるか。)
そんな事を話しながら道を歩いていると向かい側にいた冒険者とおぼしき一団から一人こちらへ走ってきた。
「もしかしてお前イリアか?!」
「えっと、すみません。どちら様でしたでしょうか?」
(何か生意気そうな奴だな。イリアの事知ってるみたいだけどイリアは知らないみたいで少し怯えてるし用心しておくか。)
未だに名前が決まりません。引き続き募集しておりますのでよろしくお願いします。