祖父の願い
〜ユーゴ〜
(必死にしがみ付いて、いきなり跳んだりしたから怖がらせちゃったかな?)
「それじゃ降ろすから、足元に気を付けてね。」
イリアを降ろしていると、遠くから手に武器を持った集団がこちらへ走って来るのが見えた。
「おーい!無事かー?!」
「師匠!ゴブリンに襲われましたがユーゴさんに助けて頂いたので大丈夫でした。」
「貴方がイリアを・・・孫を助けて頂きありがとうございました。お礼もしたいので是非村へいらして下さい。」
「ありがとうございます。丁度イリアとこれからについて話し合おうと思っていたので願ったり叶ったりです。」
皆を代表して挨拶して来た老人はレイゲンといい、イリアの師匠かつ祖父だという。レイゲンさんはレベル41の魔法使いで元A級の冒険者で、イリアが言うにはA級の目安はレベル50位であり、一回り低いレベルでA級になれた師匠は物凄い技量の持ち主らしい。
俺達は村への道中、何あったかをかいつまんで説明しながら向かった。
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村へ着いた俺達はレイゲンさんの家へ招待されお茶をご馳走になった。
「ところでこの辺では見かけ無いふくそうですが、ユーゴ殿はどこからいらしたのですか?」
「実は俺は此処とは違う世界からイリアに呼ばれて今は彼女の召喚獣をやっています。」
「なんと?!違う世界から来たと?!俄かに信じられんが、彼処は古より伝わりし召喚の祠。そんな事もあるやも知れんな。」
「それで師匠。今回の卒業試験なんですが、マンドラゴラの葉は手に入れたもののゴブリンに襲われたり、ユーゴさんに助けられたので不合格、になるのでしょうか?」
「いや、無理に深追いしたのは減点だが、不慮の事故に対して最善を尽くしたのは評価に値する。よって合格だ。」
「ありがとうございます!」
「おめでとう。イリア」
「ユーゴさんも、ありがとうございます。これからは一人前の冒険者として師匠の名に恥じぬよう頑張ります。」
「冒険者になるって事はこれから旅に出たりするの?」
「はい。まずは街へ行ってギルド登録してから本格的に活動しようと思います。そ、それで出来たらユーゴさんも一緒に来て頂けたら嬉しいです///」
「?まあ、俺はイリアの召喚獣だし、これからずっと一緒にいる事になるだろうから喜んでくれるなら俺も嬉しいよ。」
「(ずっと一緒・・・えへへ///)不束者ですが宜しくお願いします。」
「ちょっと待てえええい!!!」
突然レイゲンさんが俺に向かって杖を突き付け怒鳴って来た。
「イリアを助けてくれた事には礼を言う。しかしそれとこれは別問題じゃ!儂の目が黒いうちは孫娘はやれん!どうしてもというなら儂を倒してからにして貰おうか!!」
「え、と、あの?」
「ちょっと師匠!何言ってるんですか!」
「問答無用!決闘じゃ!先に表へ出ておるぞ。怖じ気づくなよ?」
「ユーゴさん、すみません。普段はあんなじゃないのに、決闘なんて無視しちゃっていいので放っときましょう。」
「ははは、孫想いの良いおじいさんじゃない。ああいう人嫌いじゃないし、イリアといる為にも行ってくるよ。」
「気持ちは嬉しいのですけど、いくらユーゴさんが強くても師匠は今普通じゃありませんし、下手したら怪我だけじゃ済まなくなるかも。」
「大丈夫。俺を信じて待ってて。」
(レベル41ならレベル差でゴリ押し出来るし問題ないな。)
俺は余裕の表情でレイゲンさんの前に立った。
「怖じ気づかず良くぞ来た。それだけは褒めてやろう!だがその威勢どこまで持つかな?行け!オクタ・アクア・サーペント!!」
(何かレイゲンさんキャラ変わってるしっ!しかもまるでラスボスみたいな威圧を発してるよ?!)
レイゲンさんの周囲から8本の水柱が立ち、それらは蛇の形を取って俺に襲い掛かってきた!
「おりゃぁぁあ!」
俺はバックステップで距離を取り、目の前を通過した水蛇の胴をブン殴った。
「バシャアア!!」
しかし手応えは無く、飛び散った水は他の蛇に吸収され元通りになった。
「儂の最強のアクア・サーペントに物理攻撃は一切効かん!このまま蛇に呑まれて溺れながら己の無力さを悔やむがいい!」
(溺れるのは勘弁したいな。多分レベル関係無く死ぬし・・・レイゲンさん必死だな。さすがに12歳位の子供相手に手を出すはずないじゃないか。)
(それよりまずはこの蛇達からだな。ここは魔法で攻めるか。炎で蒸発は周りに被害出るし氷がいいかな。後は、また呼び出されたら面倒だし何か戦意を削ぐような付加をつけるか。)
「何をブツブツ言っている。命乞いなら聞かんぞ!」
(よし・・・イメージ完了!後はイメージに合った名前を付けてと。)
「いえ、勝つ為の方法を考えていました。」
「何をしようと無駄じゃ!アクア・サーペント!全方位から囲め!」
「行け!アイス・ニードル・ジャック!」
俺の突き出した指先から無数の氷の針が飛び出し、水蛇に突き刺さった。すると、針が刺さった部分から徐々に凍り始め数秒後には8体の氷像が出来上がった。
「そんな?!」
「まだ終わりじゃない!」
蛇の中を巡っているレイゲンさんの魔力を無理矢理上書きし、コントロールを奪う。そして、8体の氷の蛇は元の主人へとその牙を剥いた。
「俺の勝ちって事でいいですか?」
「あ、ああ。儂の完敗だ。」
戦闘が終了するとイリアが駆け込んで来た。
「師匠に勝つ何てユーゴさん凄過ぎます!もしかしてレベル60以上の凄腕魔術師なんですか?」
「儂の魔力を全て使ったアクア・サーペント達を無理矢理奪うとは・・失礼じゃがレベルを教えて頂けますか?」
「えと、まず俺は魔術師じゃなくて、レベル8192の拳闘士なんだ。」
「「レベルはっせんひゃくきゅうじゅうに〜〜?!!」」
「そんなレベル見た事も聞いた事もない。一体どうやって?」
「それはゲー
答えようとした瞬間、俺の身体は消え気が付くと広い空間の中にいた。
『ここはどこだ?』
「ユーゴさん?!いきなり消えたと思ったらペンダントからユーゴさんの声が」
「何、儂には何も聞こえんが?」
『もしかしてさっきの戦闘でMP切れて待機状態になったのか?』
「ユーゴさん無事で良かった〜。」
(外の様子が気になるけど見れないのかな。)
すると視界が変わりレイゲンさんの顔が見えてきた。
(なるほど、意識する事でペンダントの中と外どちらでも見れる訳か。妙に視点が低いのはペンダントから見ているせいか。)
『レイゲンさんには俺の声聞こえて無いのか?』
「聞こえないみたい。契約者だけに聞こえるのかも。」
「あー、すまんが事情を説明してくれんか?話についていけん。」
『イリア、通訳頼む。』
俺達は召喚獣の契約について細かい所まで説明した。
「ふむ、なるほどのう。すると一つ問題があるな。」
「師匠、問題って?」
「いや、ユーゴ殿のレベルが途方もなく高いから再召喚は出来ないという事じゃよ。」
『「あ!!」』
『イリア、因みにレベルと最大MPっていくつ?』
「すみません。レベル6でMPは100もありません。」
(この世界じゃMP8000越えなんてほぼ無理っぽいし、もしかして詰んだ?)
『すると一生この中で過ごす事になるのか・・・』
「そんなの嫌です!師匠、何か方法は無いんですか?!」
「そうさな、ギルドでは死んでしまった召喚獣を能力をある程度引き継いでレベル1に転生させる部署がある。しかし、まだ生きている召喚獣にまで出来るかはまでは分からん。が他に方法は思い付かん。」
「それなら早くギルドへ行かないと!」
「まあ、待て待て。今から出掛けても日が暮れてしまう。今日は休んで明日の定期便の馬車に乗せて貰うのが良かろう。」
「はい・・・分かりました。明日の為にも今日は休んでおきます。」
「それとユーゴ殿に話しておきたい事があるからペンダントを貸りても良いか?何、こちらが勝手に話しかけるだけだから儂の声が聴こえれば問題ない。」
「ユーゴさん渡してもいいかな?」
『ああ、大丈夫。また明日会おう、お休みイリア。』
「お休みなさい。ユーゴさん、また明日。」
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〜レイゲン〜
「さて、行ったか。」
イリアが部屋へ入るのを確認した後儂はペンダントに向かって語りだした。
「まずは試す様な事をして済まんかった。あの子はもう大人になったというのにそそっかしい所があって心配だったがユーゴ殿が一緒なら安心して任せられる。勝手なお願いだがイリアの事どうか宜しくお願いします。」
当然ながら返事はないが、物言わぬペンダントは「まかせろ」と言っているような気がした。
(イリアもユーゴ殿もお互いを想いあっていた様に見受けられたし、ユーゴ殿の人となりもイリアの兄にそっくりで信用出来そうじゃ。なによりイリアが惚れた男じゃし、もし二人が結ばれる事になったら、祝福するのもやぶさかではないの。)
そんなレイゲンの独白に気づく事もなく、ユーゴは誰にも聞こえない声を発した。
『イリアってあの体格で大人だったのか?!』
5時間かけて書いた文章が一瞬で消え、意気消沈になりながらなんとか投稿出来ました。