恐怖心
「っ・・・」
目が覚めると朝になっていた。
窓から差し込む朝日がやけにまぶしく感じられた。
『死ぬまで長いな』なんてことを考えそうになる。
やっぱり狂ってる。
「美佑様、おはようございます、朝食をお持ちしました」
優葉の笑顔と朝食が見える。
「ありがとう、昨日はごめんね・・・優葉」
「そんなことないです、私は美佑様のお傍にいられてうれしかったです」
『キィィ』
牢のドアが開く。
「ここに置いておきますね」
「ありがとう」
私が今、優葉と話しているのも仮面なのだろうか。
どうかしてる事なんてもうすでにわかっているのだが、そんなことを考えてしまう。
自虐思考になりそうになる。
『キキィ』
牢のドアが閉まる。
「ここにいたほうがいいですか?」
優葉の優しい声が聞こえる。
「・・・大丈夫、仕事に戻っていいよ」
「では、そうさせていただきます」
「うん、ありがとう」
「また来てもいいですか?」
「来ていいよ、優葉」
「はい、美佑様」
耳に優葉の声が届くたび私は少し安心することができた。
優葉がくれる優しさが戸惑いながらも私の心に響く。
でも、人と関わることがすっかり怖くなってしまった私はやっぱり優葉にも少し恐怖心を持っている。
すごく・・・失礼なことだ。
私は・・・・どうしたら、あのころに戻れるのだろう。
誘拐さえされなければ、私は・・・幸せだったのかな。
今更過去の事なんで悔やんでも何も変わらないのだろう。
でも、考えてしまうのだ。
遠ざかって行く優葉の足音と雰囲気を感じながら私はゆっくりと食事に手をつけた。
あの日から初めて食べる食事だった。
私は、食べることすらできなかった。
今は少し回復したけれど、心の奥に残るのはあの人のぬくもりだった。
食事を食べ終えた私は、部屋に備えつけてあるシャワールームでシャワーを浴びた。
薄いピンク色の着物を着て私はベットに座っていた。
足の鎖のせいか、あまり動かせないようにした手錠のせいか食事をするのでも一苦労だったけれど。
優葉が食器を取りに来たときはそんなこと忘れられるくらい安心できた。
「美佑様!」
急に優葉の焦っている様な声が聞こえた。
「お父様が・・・」
鬼!あの、鬼はまた私を!
でも、逆らえない。
「呼んでおられます」
「・・・そう、どこにいるの?」
「廊下で待っておられます」
「え?」
「壁とつながっている足枷と手錠を外して廊下に出て来いということです」
どういうこと?
私がつけている足枷は長い長い鎖につながっていた。
手錠は緩められているし手首のにはめている物ではないけれど動かしにくいようになっていた。
その、2つを取るというのはどういう・・・。
私はまったく状況が理解できなかった。
「優葉、ドアを開けろ」
「は、はい」
わからない、どういうこと?
殺されるの?
わからない、理解できない。
私の能力だけを取る薬でもあるのだろうか。
それともただ邪魔なだけ・・・なのだろうか。
私は・・・。
体が恐怖の渦に飲まれていくようだった。
牢に入ってくる鬼と優葉のことが今の私にはとても恐ろしく見えた。




