夜だけの思い
いつの間にか夜になっていた。
窓には星が少し見える。
見えにくいけれど、少し見える。
私の未来は1つも見えないけれど・・・・。
優葉は、牢屋のようなドアの前からずっと動かなかった。
私に、自分の小さいころの話や知ってること
今までのこと、私の過去で自分が知ってること
をたくさん話してくれた。
私は相槌を打つことも
息を普通にすることもできず
聞いているだけだった。
心が癒えることは無かった。
けれど、安心感は少しだけ持つことができた。
神経が狂って
感情が狂って
自分が狂って
でも、安心感が少しでもあれば
どうにか自我は保てた。
いや、もしかしたら・・・・
手放してしまったほうが楽なのかもしれない。
でも、自分が自分でなくなるのが怖かった。
牢屋の様に冷たい部屋の奥
ベットの横の壁にもたれて私は優葉の話を聞いていた。
「美佑様、落ち着かれましたか?」
優葉が急に話しかけてくる。
「・・・あん、し、んできた、ありが、とう」
震えて掠れた声で私は優葉に返事を返した。
「美佑様、私がいつかきっとお助けします」
急に優葉がしっかりした声で言う。
「私は美佑様にたくさんのモノをいただきました」
私は、混乱して何を言っているのかわからなかった。
「私は、美佑様に自分の好きなことをしていただきたいのです」
私を助ける気なのだろうか、優葉は・・・・。
そんなことしたら、死んでしまう。
「美佑様は今何がしたいのですか」
優葉の問いかけに私の頭の中は混乱してぐちゃぐちゃでおかしくなっていた。
「わ、たしは」
私のしたいことなんて望めない。
それでも私の目の中には裕樹が写った。
違う、私は・・・・。
私は自分の苦痛に耐えかねて裕・・・あの人を捨てたんだ。
助けたなんて言い訳だ。
違う、違う、違う・・・・。
『ハァ、っは・・・ック』
聞こえる、やめて。
嫌だ・・・・。
願いなんて望みなんてもうない。
思っちゃいけない。
助けてほしいなんて思っちゃだめだ。
私は、私は・・・・。
「今・・・は、優葉、の話を聞い、てるだけで・・・いい、よ」
そう、これでもう幸せだ。
これ以上望んじゃいけない。
「ゆう、は・・・今何時?」
「・・・・はい、10時37分です」
夜だ。
あの人が好きな夜だ。
ねえ、裕樹・・・夜だけはあなたのことを思ってもいいですか?
「ゆう、は・・・星がきれいだね」
「はい、美佑様」
窓からの星の光に包まれる。
あの短かったけれど、幸せだった日々を思い出す。
でも、もう一度とは思えない。
でも、思い出すだけ。
思い出すだけだから、許して。
私の自由なんてもう要らない。
だから・・・・・。
自分が何を思ってるか
考えてるかわからなくなる前に
決めよう、私はずっとここにいることを。
「優葉、仕事あるでしょ?」
いつしか私はまともにしゃべっていた。
「そうですね、戻らせていただきます」
「おやすみ」
「おやすみなさい、美佑様」
ベットに上がり目を閉じる。
思い出の中に落ちて行くかの様に。




