戦い
「黒蝶、舞え」
無数の黒い色の蝶が祐樹に向かって襲い掛かる。
黒く染まった空気と血の匂いが恐ろしかった。
「チッ」
祐樹は背中の黒い羽根で蝶を追い払った。
背中の羽が蝶を祓うと蝶は消えていった。
技の見せ合いのような戦い方だった。
けれど、真剣そのものだ。
「さすが吸血鬼、黒蝶はあまり役に立たないのか・・・」
「ほーよくお分かりで!」
無数の青い鳥が追い祓った蝶を放った鬼に向かっていく。
「君は甘いね」
「は?俺のどこが甘いんだよ!」
祐樹の後ろに大きな竜が現れる。
それと共に祐樹の腕と顔に鱗が現れた。
訳がわからなかった。
殴り合いではないこの戦いは理解しがたかった。
「黒魔、飲み干せ」
「聖縁、喰らいつけ」
目の前で繰り広げられる戦いは夕焼け色に染まる空の下、隙を開けることなく続けられる。
余裕を見せる鬼と余裕をなくし焦っている裕樹。
「そろそろ、来たらどうだい?」
「は?なんで俺がお前のために動かなきゃ行けねーんだよ」
戦いの幕開けからは少し時が過ぎ、祐樹は体力を消耗しているようだった。
来いというのは自分の力で殴りかかって来いということだろう。
早く、早く夜が来てほしいと願うのに空はまだ夕焼け色に染まっている。
私のせいなのかもしれない。
私がいなければ・・・・。
そんなことを考えてしまいそうになりながらも何もできない私はその場に立っているだけだった。
『キィンッ』
ぶつかり合うのは刀と刀、黒と赤・・・。
鬼が赤の剣を握り裕樹が黒の剣を握っている。
刃が勢いよくぶつかる音を聞くと頭が痛かった。
「君、結構強いね!」
鬼は少ししか体力を消耗していないのか一向に動きが鈍らない。
こんなんじゃ、祐樹が不利だ。
「おっさん、お前もな!」
強気な祐樹だけれど、もう戦い始めて8分が過ぎた。
もし、普通の人なら8分なんてって思うだろう。
だけれど、夜にならないと祐樹の体力は少ない。
それでもいろんな能力を使っているのだ。
たとえ1分でも一つの能力と多数の能力の使う体力の差は、大きい。
「っく」
痛みと苦しみに耐えようとする声が聞こえる。
・・・聞きたくなんてないのに。
「黒蝶、黒鎖・・・動きを止めろ」
「・・・青竜、成安の盾」
祐樹の前に現れた壁はゆっくりと穴が開きそこに鎖が入っていく。
壁はきれいな色をしていて輝いている。
裕樹を守るように半円形になっている。
鬼の放った鎖はその壁にギシリギシリと
音を立てるかのように少しずつヒビを入れながら中に入っていく。
「聖縁、暗縁の楽園!」
「っそんなもの!大蛇、紅蓮の鱗」
目の前にはいろんな色とかものとかがあって、いて・・・。
私はそれを見ている。
大きな蛇の鱗が祐樹の出した男の人を包んでいく。
紅色の光は鱗の形をしている。
包み込まれる男の人は深緑の髪で深緑のなにかで覆われてる。
ぶつかり合う技と技、ぶつかり合う裕樹と鬼・・・。
剣と剣がぶつかり合う中・・・裕樹は血を吐き出す。
見ていられなかった・・・。
絶えられなかった。
でも・・・・私はどうしたらいいの?
夕焼け色の空の下、ぶつかりあうのは2人の思い。
私が唖然としている中、裕樹と裕樹の技は鬼の魂に飲み込まれていく。
私はもう、何が何だかわからなくて・・・その場にしゃがみ込むしかなかった。




