表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚殺し  作者: 星来香文子
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/23

庄太郎(七)


 近頃、奇妙に感じることがある。

 翠の様子がおかしい。

 どこか、違和感がある。


 一瞬、両目の下に黒子のようなものが見えたような気がしたあの日から、何かがおかしい。


「兄さま、どうかしました?」

「いや、何でもない……それより、今日の晩飯は決まったのか?」

「うーん、それが、まだ決めかねていて……」


 翠は自分の顎に右人差し指を押し当て、少し左側に頭を傾けながら、少し考えて言った。


「やっぱり、兄さまが好きなものにしましょう。私、決められないわ」


 その瞬間、あの女の姿が重なって見えた。


「……」

「兄さま? 聞いてます?」


 そんなはずがない。

 そんなわけがない。

 あの女は死んだ。

 あの女の頭と骨と尾鰭は、あの日、あの時、俺がこの手で葬った。


 違う。

 違うはずなのに、そうとしか思えなかった。


 目の前にいるのは、翠だ。

 あの日、芳姫様に献上したせいで、左手の小指がないあの女と違って、翠の左手には、ちゃんと五本の指がある。

 人魚の肉は、不老長寿の妙薬で……



 ――薬は取りすぎると毒になってしまうものなのですよ。



 今さら、どうしてそんな言葉を思い出したのだろう。

 翠は、人魚の肉を食べたじゃないか。

 それも、指一本じゃない。

 体のほとんどを……


「……うっ」


 あの惨状を思い出したら、吐き気がした。

 俺の妹が、翠が、そんなことをするはずがないと、俺はあの時、絶対に認めないと、そんなことはあり得ないと、必死に否定して、全部飲み込んだはずなのに……


「兄さま? 大丈夫ですか?」


 俺を心配している、この女は、誰だ。

 翠の顔をしている。

 翠の声をしている。

 それなのに、どうして、


「澪……?」



 そう思わずにはいられないんだ。



(人魚殺し 了)






最後までお読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ