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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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276 橙の神性体と獣王の号令

 ガリュウが泣き止むまで誰も口を開かず、じっと立っている。俺は自らの胸の内を覗き込むように視線を落とした。


 かすかに不死鳥の声が聞こえたような気がした。


(……どうやら、こいつも四天王との対決に闘志を燃やしているようだ)


 その瞬間、体中が熱くなり、魔力とは別の力が全身に漲ってきた。これがおそらく神気なのだろう。人間では得られない神聖な力を感じる。


 目を閉じて、自らの身体中を巡る神気に意識を向ける。魔力とは違い、『邪悪』を討つことに特化した力だ。


 不死鳥から神気の扱い方を教わり、ゆっくりと目を開けると、全員がこちらを見ていた。どうやら俺に神気が宿ったことに気づいたようだ。


 さっきまで泣いていたガリュウでさえ大きく眉を上げ、俺を見ている。ただ、その表情に首を傾げる。


 ――いささか大袈裟なような気がする。


 ふと自らの掌に視線を落とすと、その手は橙色に輝き、わずかに霞み揺れている。まるで陽炎のようだ。


 自らの体の変化に驚き、息を呑む。そのとき、フォルテが口を開いた。


「驚きました、まさかライデンさんの体も『神性体』に変化しつつあります。今のあなたは、星幽体(アストラルボディ)と肉体の中間のような状態です」


 突然、告げられた意味不明な言葉――『神性体』。星幽体は、俺たちより上位の存在である神や天使が持つ体だ。それと肉体の中間と言われても混乱するだけだ。


 眉を曇らせる俺を見て、フォルテは苦笑しながら続ける。


「星幽体は実体を持たないため物理攻撃は通じず、魔力に対しても強い耐性を持っています。ただし、こちらからの物理攻撃も弱くなります。ですが、今のライデンさんは、星幽体の高い防御力を持ちながら、強力な物理攻撃ができるのです」


 そこで言葉を切り、彼女は俺を見つめ、理解できたかと目配せで問う。


「……まあ、だいたい分かった。神気は感じるが、なにか特別な存在になったような感じはしないがな」


 肩をすくめる俺に、フォルテは告げる。


「それは仕方ないですね。ライデンさんはただの人間です。上位の存在の在り方なんて知らないでしょう。それに今は不死鳥とあなたの肉体が束ねられて、一つになっている状態です。精神までは融合していない分、人間の感覚が強いのでしょう」


 今度はフォルテが肩をすくめた。その姿に俺は苦笑いで返す。とりあえず、これからの戦いで不利になることはない。


 ――それだけ分かれば、十分だ。それに、幸いにもガリュウは、橙色に輝く俺に驚き、完全に涙が止まったようだ。


 これで四天王に謁見できる。俺は全員を見渡して告げる。


「どうやらガリュウも眼球の洗浄は済んだようだ。これで視界もはっきりしただろう。四天王の顔を拝みに行くぞ」


 その言葉にガリュウ以外の全員が笑い出した。当の本人も自覚があるのか、不貞腐れた表情こそ浮かべたが、何も言わず、俺を睨むだけだった。


 俺はそんなガリュウの視線を受け流すと、大きく頷く。その瞬間、全員の表情は引き締まり、頷き返す。


 誰からともなく拳を突き出し、軽く合わせると、一斉に背を向け、自分が謁見する王がいる門へと向かっていった。





 隣を歩くライデンを見る。今は陽炎のように輝く『神性体』ではなく、普通の肉体に戻ったようだ。俺の視線に気づいたライデンがこちらを向く。


「どうした、ガリュウ。怖気づいたか?」


 軽口を叩くライデンを睨み、鼻を鳴らす。


「ふん、ぬかせ、ライデン。お前こそ神気を得たばかりだ。しばらく俺の戦いを観戦していろ」


 その言葉に眉を下げ、顎に手を当てるライデン。わずかな沈黙の後、静かに告げた。


「それで、ガリュウ。アークが言っていた本当の力っていうのは分かったか?」

「少しだけだが、バロンと意思を交わした。どうやら、俺にはもう一体、何かが眠っているようだ」


 俺は呟きながら胸に手を当てると、バロンとは別の気配を感じる。だが、それは聖獣のような神聖なものではなく、禍々しい凶暴な存在だ。


 こんなものを解放していいのか、正直迷っている。本当にこれが俺の中に眠る力なのか疑問だ。


 だが、アークは本来の力を覚醒しろと言った。きっとこの存在こそが、覚醒するための鍵だ。


 何があっても仲間を信じる。それはこの試練で得た大切な『答え』だ。それに俺にはライデンがいる。何かあったら助けてくれるはずだ。


 フォルテやサラは一人で四天王に挑もうとしているのだ。俺が迷い、尻込みしているわけにはいかない。軽く頬を叩くと前を見据える。


 隣を歩くライデンの口元が綻ぶ。どうやら俺の覚悟に満足したらしい。


 静かに歩くと、古代文字で『七王』と書かれた巨大な門に着く。振り返り白亜の会堂を見渡すと、全員が謁見する王に繋がる門の前に立っていた。


 俺は深く息を吸い込み、大声で叫んだ。


「全員、死ぬな! これは命令だ、絶対に守れ。もし命令を破ったら、地獄の果てまで追いかけて、死よりも恐ろしい罰を与える。だから――必ず生きて会うぞ!」


 その瞬間、白く輝く大理石の壁や床に俺の言葉が木霊し、自らに返ってきた。それに俺が深く頷くと、全員が続く。


 皆が頼もしく見え、笑みを浮かべるが、すぐに表情を戻して『七王』の門に手をかけ、もう一度叫んだ。


「行くぞ、みんな!」


 刹那、号令は響き渡り、全員同時に門を押し開けた。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

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