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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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270 獣耳と朝食と、束の間の安息

 夜の見張りを続ける中、アークとスカイは『真の一体化』について、ひと通り話し終えると、それ以降話すことなく、口を閉ざした。


 やがてランタンの炎が小さくなる。魔石が切れかかっているようだ。俺は鞄から小さな魔石を取り出し、ランタンにくべた。


 再び炎は強くなり、辺りを照らす。懐から時計を出して確認した。もうすぐ夜明けのようだ。俺は立ち上がると、六王の間を見渡す。


 豪奢だった部屋は激しい戦いで、今は雑然としている。天井のシャンデリアも壊れ、明かりを灯すことはない。


 不死鳥がいたときは、その身を包む炎に照らされ、部屋は明るかったが、今はライデンの中で眠っている。


 もうしばらくしたら、全員を起こそうと思い、アークたちに声をかけようとしたとき、テントから出てくるライデンの姿が目に映った。


「ライデン、大丈夫なのか? もう起きて平気か?」


 俺が心配そうに尋ねると、ライデンは苦笑いを浮かべた。


「――あぁ、大丈夫だ。というより、不死鳥のおかげで活力が漲っているよ」


 そう告げて親指を立て、自分の胸を軽く叩いた。その姿には嘘はなく、やせ我慢をしている様子もなかった。


 たしかに死すら超越し、何度でも蘇ることができる不死鳥――その無限の生命力を共有しているのだ。瀕死の重傷でも一晩寝れば回復するのかもしれない。


 いよいよライデンも、人外の領域に近づいてきたかもしれない。探索が終わったら、ぜひ手合わせしたい。


 自然と口角が上がった。その様子を見て、ライデンは嫌な顔をして、手をひらひらと振った。


「ガリュウ、俺はこの探索を終えたら、しばらく休暇を申請するつもりだ。これだけ働いたんだ、しっかりと休ませてもらう。お前にも協力してもらうからな。ガロン陛下の口添えを頼むぞ。あと、絶対にお前とは手合わせしない!」


 すべてを見透かされていた。どうして分かったのかと首を傾げると、スカイが笑いを堪えながら教えてくれた。


「ぷっ、ガリュウ。そんな虎のような獰猛な表情をしたら、誰でも分かるぞ。頭の獣耳はピンと立っているし、瞳孔は細くなっている。戦いたくて、うずうずしているのがバレバレだ」


 その言葉に、とっさに俺は自分の頭の獣耳を押さえると、スカイは我慢できず、大声で笑い出した。


 六王の間に響き渡る笑い声に、テントからフォルテたちが顔を出した。そして、何ごとが起きたのかと――目を見開き、こちらを見ていた。





 獣耳を押さえて顔を赤くするガリュウを見て肩をすくめ、いまだに笑い続けるスカイの頭を軽く小突く。


「いい加減にしろ、お前たち。それよりこれからのことを話す――と思ったが、腹が減ったな。まずは朝飯にしよう。悪いが、アーク、頼めるか」


 お腹が鳴りそうになり、思わず押さえてアークを見やる。すると、サラとフォルテがテントから出てきて、すっと手を上げた。


「アークも疲れていると思います。ここは私たちが作ります」

「そうね、昨日はアッくんが作ったんだから、今日は私たちかしら?」


 二人が自信満々に言い放つ。だが、嫌な予感しかしない。ちらりとアークを見ると、彼は首を小さく振り、眉を曇らせる。


 ――まぁ、王女と聖女。家事が苦手でも納得できる。そもそもする必要がない。


 アークと同じ屋敷に住んでいると聞いたが、使用人や料理人がいて、自分ですることは何もないはずだ――というより、させてもらえないだろう。


 気持ちは嬉しいが、かなり空腹だ。できれば、美味しいものを食べて、万全の態勢を整えたい。


 今日はいよいよレオン陛下たちも踏み込めなかった領域に挑むことになる。


 それに俺の中の不死鳥が教えてくれたことが事実なら、今日でこの遺跡探索――獣王の試練を終わらせることができるかもしれない。


 残りは四体の魔物の王。この遺跡の真の支配者――四天王が、この先にいるはずだ……。


 せっかくの心遣いだが、ここはアークに作ってもらう。そう思い、なんと断ろうかと困惑の表情を浮かべたとき、スカイの声が届く。


「フォルテ、サラ。どうせなら、アークに教えてもらったらどうだ? 婚約者同士、将来の旦那様に料理を教えてもらう――素敵だと思わないか?」


 その言葉に二人は勢いよく振り向き、目を見開く。その迫力にスカイは少し後ろに下がってしまう。


 だが、妙案だ。俺はニヤリと笑い、フォルテたちに声をかける。


「そうだな、たしかにいい案だ。俺もマリアと婚約してすぐのころ、一緒に料理をしたが、あれで仲はより深まったと思う」


 そこで言葉を切り、ちらりと二人を見やる。その表情は恍惚としていた。どうやらアークと料理をする様子を想像しているようだ。


 ほくそ笑む。はっきり言ってマリアと一緒に料理なんてしたことはないし、そんなことで絆が強くなるとは思っていない。


 だが、なんとしてもアークに朝食を作ってもらいたい俺は、平然と嘘をついた。そんな俺とスカイを見たアークが口を開きかける。


 それを遮るようにガリュウが声を上げた。


「たしかに親父もお袋とたまに料理をするな。なんでも互いに味見をして意見を交わすことで、お互いの好みが分かり合えていいそうだ。何がいいのか――俺には分からんが」


 その言葉にすぐに反応したのは、やはりフォルテとサラだった。猛烈な勢いでアークのもとに駆け寄った。


「アーク、私に料理を教えてください。あなたの好きな味が知りたいです」

「わ、私にも教えて、アッくん。愛する人の料理を覚えたいの!」


 顔を近づけ、真剣な表情で訴える二人。その姿に俺はニヤリと口角を上げる。ふと隣を見ると、スカイとガリュウも意地の悪い笑みを浮かべていた。


 これでアークが料理を作ることが確定した。そう思った瞬間、気が緩んだ俺は、盛大にお腹を鳴らし、スカイとガリュウから笑われた。


 再び笑い声が響く六王の間。半日前に繰り広げられた死闘が嘘のように、穏やかな空気に満ちていた。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

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