表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

275/307

268 見張りの夜と『真の一体化』

 スカイと二人でテントを張り終え、皆のもとに向かうと、ガリュウがライデンさんをしっかり休ませるために、残りのメンバーで交代の見張りをしようと提案してきた。


 すぐに全員賛成したが、五人ということで三班に分けることができず、二人と三人――二班で見張りをすることになった。


 誰が一緒になるのか――悩ましいところだ。


 できればスカイと同じ班になり、見張りをしながら、俺が培った冒険者としての知識や技術を教えたい。


 十王の遺跡も、残りの魔物の王は四体のみ。探索に費やせる時間はわずかだ。それまでにスカイには、すべてを伝えなければならない。


 誰もが口を閉じ、沈黙が場を満たす中、俺は勇気を出してスカイと一緒になりたい――そう告げようとしたとき、サラが口を開いた。


「なら、私とフォルテは、アッくんと同じ班でいいわね。だって婚約者だし、探索中とはいえ、他の男性と一夜をともにすることはできないわ。それに私とフォルテだけなんて心配でしょ、アッくん?」


 ――全然、心配ではなかった。


 魔界の王と神界の天使長――規格外の力を持つ彼女たちに勝てる者など、この世にほとんどいない。


 現に一王と二王は、一人で討伐してみせた。思い返せば、そんなに心配する必要はなかった――


 俺がミリーと魔界でリヴィアエルたちと戦っている間、フォルテたちも上位の悪魔であるリリスたちと戦い、退けている。


 わずかな時間で二人が急激に成長していることを、今さらながら実感する。俺は今の素直な気持ちを二人に告げた。


「いや、フォルテとサラなら、俺がいなくても大丈夫だ。女性同士で話し合いたいこともあると思うし、俺はスカイとガリュウの班に入るよ」


 その言葉に、俺以外の全員が息を呑む。横になって休んでいたライデンさんですら、わずかに上体を起こし、こちらを見ていた。


 なぜか緊迫した空気が流れる。首を傾げて周囲を見渡すと、スカイ、ガリュウ、ライデンさんが、順に視線を逸らした。


 何か間違ったことを言ったのかもしれない。少し不安になり、サラとフォルテを見ると、前世の般若のような表情を浮かべ、睨んでいた。


 結局、スカイやガリュウに彼女たちと同じ班になるように命令され、三人で見張りをすることになった。





 私とサラはアークを挟んで腰を落とし、ランタンを見つめる。遺跡の外は完全に日が落ち、真っ暗だろう。


 太陽が届かない遺跡の中に三日もいると、時間の感覚がおかしくなる。鞄から時計を取り出すと、日を跨ごうとしていた。


 静寂に包まれる六王の間。ランタンの炎が揺れ、影が踊る。じっと見つめていると、アークが声をかける。


「ひとつ、二人に聞きたいことがあるんだけどいいかな?」


 アークに視線を向けると、彼の美しい横顔の向こうにサラの紺碧の瞳がちらりと見え、思わず舌打ちしそうになる。サラも同じく、眉を上げて睨んでいた。


「アーク、何を知りたいのですか?」


 サラが口を開く前に私が答えると、アークは星空のように煌めく瞳を私に向けた。その向こうに、悔しがるサラの顔が見えた。


 ――ざあまみろ。


 心の中でサタナルとハイタッチを交わし、アークの顔をじっと見つめると、彼は眉を下げながら尋ねた。


「スカイが言っていた『真の一体化』とは、何か教えてほしい。二人はそれを目指しているんだよね?」


 その言葉に表情を曇らせる。まさかアークが『真の一体化』を知らないとは思わなかった。


 だが、冷静に思い出すと、たしかにルキフェルがミゲイルに討たれたときには、まだなかった技術だ。彼が心配するのも頷ける。


 私が答えようとしたとき、サラの声が届く。


「そっか、アッくんは知らないんだよね。ルキフェお兄様(・・・・・・・)がいないときに生まれた技術だから、仕方ないか」


 その瞬間、アークはサラのほうを向いた。白銀の髪がふわりと舞い、鼻先を掠めて、彼の匂いを運んだ。


 それだけで頬が染まる。だが、勝ち誇ったサラの顔が目に映り、怒りが込み上げてくる。私は深呼吸をして、彼の匂いを思いきり吸い込み、心を落ち着かせた。


 冷静になり、サラの言葉を思い出す。サラはルキフェルを「お兄様」と言った。やはりかなりミゲイルとの真の一体化が進んでいる。


 さすがサラだ。聖女としての力で、魂を一つに紡ぐことに成功したようだ。私がアークの匂いを堪能しながら感心していると、サラは言葉を続ける。


「『真の一体化』とは、その名の通り、完全にひとつとなることよ。魂も肉体もすべてが重なり、紡がれて新たな存在になるの」


 アークは目を大きく見開いた。その表情には、未知の技術に対する驚きと、サラが別の存在になることへの不安が滲み出ていた。


 そのことを察した私は、言葉を引き継ぐ。


「安心してください。誰もいなくなることはありません。ただひとつになるだけです」


 そこで言葉を切り、アークを見据える。


 万が一失敗すれば、どちらかの存在に影響が出る――そのことは今は伝えず、笑顔を浮かべて成功例だけを伝える。


「……それにアーク――あなたこそが、初めて『真の一体化』を果たした存在なんですよ」


 安心させようと穏やかに告げる。だが、アークはさきほど以上に大きく目を見開き、動揺で星空の瞳が曇った。


 そのとき、ランタンの炎が大きく揺れ、一瞬だけ私たち三人の影をひとつに重ねた。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

ブクマor★で応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ