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社会問題エッセイ

死刑がほぼ確実の京アニ事件青葉被告は治療の必要があったのか? 被害者救済について

作者: 中将

筆者:

 本エッセイを選んでいただいて誠に光栄です。


 最近は時間があまりないので2倍速で見たり、まとめ動画を見るにとどまっていますが、学生時代はアニメ大好きで見まくっていましたね(笑)。

 フィギュアとかを集める趣味はありませんが間違いなく“オタク”という分類にされる人間だと思います(笑)。


 今回はそんな僕が36人が死亡した2019年の京都アニメーション放火殺人事件の判決などについて語りたいと思います。


 この事件は青葉被告の“被害妄想による逆恨み“から起きてしまった凄惨な事件でした。

 それとともに日本の文化の一翼を担うアニメ会社が大きな損害を受け、社員が亡くなったことは、「国家レベルの損失」と言ってもいい大事件だったと僕は認識しております。



◇青葉被告が治療を受ける意義について



質問者:

 今回のことで遺族の方の証言を聞いても本当に胸が痛みます……。


 しかし、こんな事件だとまず死刑は間違いないのに大火傷を負った青葉被告を治療する意味ってあるんでしょうか?



筆者:

 誰が見ても死刑になりそうな案件で日本最高レベルの治療を受けることの意義についてですが、賛否はあるかもしれませんが僕は「ある」と思っています。


 まず、死刑囚として死刑または投獄中に死ぬのと、被告や被疑者として死ぬのとでは社会的な意味、法的意味では全く異なるからです。

 大罪を犯した人が普通の人と同じカテゴリの「死」とはしてはいけないと思います。


 今回の裁判でも焦点になっていますが、妄想による事件との動機形成には寄与したものの心神耗弱、心神喪失と言った意思決定能力の欠如までは認められなかったことです。


 妄想ばかりしている人が暴走しても死刑にならなかったら「あんまりの社会」ですから、

 そうならなくてよかったという意味でもこの裁判は意義があります。



質問者:

 おっしゃる通り、「まず死刑だろう」というのと「死刑が裁判で確定」というのとでは雲泥の差がありますからね。



筆者:

 その通りです。同じ「死ぬ」にしても大罪人は社会的制裁を受けるべきなのです。

 それが次の凶悪犯罪抑止に繋がると僕は思っています。

(現在、近代国家ではほとんどすべての国で”推定無罪の原則”がとられています)


 また、今回の青葉被告は死刑を免れようと控訴したためにとても反省しているようには見えないのですが、被告が事件と向き合い反省する可能性があります。


※青葉被告に反省の色が無いために高裁はすぐさま棄却し、死刑が早期に確定して欲しいものです。


 もちろん、被告が全く裁判で話してくれないこともありますし、

 公判で嘘ばかりを吐く可能性はあるのですが、

 生き残っている被害者や遺族の方が少しでも“納得”する可能性があります。


 そういった機会を完全に奪ってしまうのは制度的には良くないから治療をするべきだと考えますね。



質問者:

 本当なら被害者側から加害者に対して制裁をしたいところでしょうけど、

 今の世の中のシステムでは許されませんものね。



筆者:

 本当なら死刑執行のスイッチを押したい人だっているでしょうけど、

 法治国家の住人である以上そこは残念ながら許されないんですね。


 当然ながら、このような残虐な妄想癖を持つ凶悪犯がまだのうのうと国費でもって生きているということ自体には虫唾が走ります。


 それでも、犯罪を犯した直後に死ぬのと裁判で死刑を求刑されることの差はありますし、意義があると僕は思っています。



質問者:

 なるほど、単純に「死」という問題だけでなく、色々問題が絡み合っているということなんですね……。


 こういった事件について被害者救済や遺族救済制度というのはあるのでしょうか?



◇日本の被害者救済制度の実態



筆者:

 今回の京アニ事件に関してはどのような救済がされるのか調べてもよく分からなかったのですが、

 これまでの傾向を見ているとそんなに十分と言えるものではありません。


 国が2004年に定めた「犯罪被害者等基本法」では、"再び平穏な生活が送れるまで必要な支援を途切れなく受けられるようにする"としています。

 しかし、その理念は現実とはかけ離れています。


 給付金は、被害者の年齢や収入などに応じて算出されるのですが、 

 クローズアップ現代で取り上げられた被害者遺族のIさんのご家庭では、

 2人が亡くなった凄惨な事件でしたが、犠牲者家族の1人はコロナ禍で仕事(自営業)が休業となり、事件当時の収入はゼロだったのです。


 もう一人の犠牲者は高校生だったので収入がなく、支払われたのは2人合わせておよそ680万円と最低額に近いものでした。(1人あたり320万円から3000万円と幅がある)



質問者:

 えっ……2人も亡くなったのにたった680万円なんですか?



筆者:

 国はこの制度の給付金を「見舞い金的」なものとしており、犯罪被害について賠償責任を負うのは「加害者」だとしているようなんです。


 このために被害者や遺族支援に特化した条例が国の政策に上積みする形の見舞金などで支える市区町村が存在します。

 しかしそういった自治体も、2021年現在で3割弱と少ないのが現状です。


 個々の自治体の財政状態にもよりますから一概にこれは自治体の責任とは言えないと思います。

 通貨発行権がある国の制度が不十分なのが問題なのです。



◇加害者の賠償能力は皆無と言っていいため政府の補償制度が必須



質問者:

 そうなると、加害者が賠償金を支払えているかどうかが大事になると思うのですが、

 どうなっているんですか?



筆者:

 日本弁護士連合会の調査では 、殺人事件の被害者側が受け取った賠償金は裁判などで認められた額のうち、13.3%にとどまっているようです。 


 これは私見ですが殺人を犯すような精神になった人間はそもそも貯金なんて持っていない可能性が高いとも言えると思います。


 亡くなった方は帰ってこない上にお金の保障もないという地獄のような状況です。



質問者:

 お金で全て解決できるわけじゃないですけど、

 遺族の方は喪失感で心が折れていそうですし、裁判に出たりしていますから、

 仕事でお金を稼ぐどころじゃないですからね……。


 海外ではどういった保障があるんでしょうか?



筆者:

 ノルウェーやスウェーデンの場合は、加害者が損害賠償を支払わない場合、

国が加害者に代わって損害賠償を立て替え、その後に加害者から回収も行う制度があるようです。


 現状では、遺族を支援したい人達のお金で何とか被害者は頑張っているというのが現状です。


 京アニ事件においては、事件発生から約4か月後の2019年11月12日、

 京アニや京都府が設置した口座などに寄せられ、府に集約された義援金約32億6385万円が36人の遺族や負傷した被害者に全額を1回で配分されています。


 世間の注目度が高かった事件だったこともあり殺人事件の中ではまだ救われた方なのです。

(もちろん事件が無かった方が良かったことは間違いないのですが、“殺人事件同士で比較した場合”ではマシな方という意味です)



質問者:

 なるほど、世の中には注目されていない悲惨な事件もたくさんありますものね……。



筆者:

 僕は実を言いますと凄惨な事件が起きたり、裁判で審理されるという記事が出るたびにこの被害者救済問題のことが頭によぎるのですが、


 2004年に定めた「犯罪被害者等基本法」が無かった時代に比べると“まだマシ”という程度で、まだまだ不十分と言わざるを得ないと思います。


 未成年の少年が事件を起こすと被害者の名前が出て犯人の名前が出なかったりなど、

 どうにも加害者に対する権利ばかり保障されている気がするんですよね。


 それを保障するなとは必ずしも言いませんし、加害者も「社会の犠牲者」という側面がある者もいると思います。


 ただ、被害者や遺族の方が絶対に深い傷を負っているのですから、最低でもお金の面で犯罪被害者等基本法のお見舞金を増やすか、賠償額の補償や取り立て方法についてもっと考えるべきです。

 勿論心のケアの面でも被害者救済にももっとスポットライトが当たって欲しいなと思います。

 そうでなくては犠牲者が浮かばれませんし、被害者や遺族の方もあまりにも無念でしょう。


 ということでここまでご覧いただきありがとうございました。

 このように社会問題や、政治経済、マスコミの問題などを個人的な視点で解説していきますのでどうぞご覧ください。

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