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その朝のこと
曇り空の朝に、一人の少年が歩いている。
少年は虚ろな目をして、上を向いて歩いている。
少年は改札の下をくぐり、ホームに立つ。
少年は下を見る。下は線路だ。ずっと続く線路だ。
「どこに行けるかな」
電車が近づく。
少年はホームを蹴る。
地面が近くなる。
少年は、もう一度上を見る。
空は真っ白だった。
それを最後に、少年の視界は真っ暗になった。
一人の少女が歩いている。
少女は虚ろな目をして、下を向いて歩いている。
少女はICを当てて改札をくぐり、ホームに立つ。
少女は下を見る。下は地面だ。固くて狭い点字ブロックだ。
「どうせどこにも行けやしない」
電車が近づく。
少女はイヤホンを差す。
雑踏が遠くなる。
少女は、もう一度下を見る。
地面は灰色だった。
その直後、ドンッと大きな音がした。