表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

やはり、転校生はいい匂いがした。

本日2話目です。

よろしくお願いします。

「じゃあ、吉原の席はー山崎の隣な。」


……!!?

山崎って……山崎ってこのクラスには1人しかいない。

俺だ。

寄りにもよって俺の隣とは。

別に俺の隣に来られるとテンパるとか、ブサイクな顔でくしゃみしたらどうしようとか、腹の音が鳴ったら恥ずかしいとか、絶対いい匂いするだろうやべぇ。

とかそういうことを考えてる訳では無い。

絶対にない。

……嘘。本当はちょっとある。

しかし、俺が危惧しているのはもっと別のことだ。

結論から言うと転校生、もとい吉原志都はとびっきりの美少女だ。

どれくらいのレベルの美少女なのかを分かりやすく説明してみると、原宿辺りを歩いていたら1時間で両手に芸能事務所の名刺が大量に集まるレベルだ。

百戦錬磨のナンパ男だって、高嶺の花だと遠慮するレベルだ。

まあ、俺スカウトなんてされた事ないけど。

原宿に行ったことすらないけど。

アキバかブクロオンリーだけど。

ナンパする度胸なんて微塵も持ち合わせていないけれど。

この際そんなことはどうだっていい。

この転校生、吉原志都の性格は皆目見当もつかないが、顔がすこぶる良いから俺のように嫌われることはないと思う。

少し話が変わるが好きなタイプを聞かれて「人間大切なのは顔じゃなくて性格だと思うんです。だから優しい人……かな? (笑)」なーんて抜かしやがるテレビの中の女優、俳優、アイドルその他もろもろに俺は言いたい。

偽善者、と。

これは俺の自論であるため聞き流してもらって構わないのだが、恋愛とは一種の取り引きであると思うのだ。

例えばA子さんとBくんが付き合っていたと仮説しよう。

A子さんはBくんのことが大好きでお弁当を作って渡したり、Bくんの部屋の掃除をしたりした。

とにかく尽くしに尽くしたわけだ。

だが、Bくんにその愛は届かず挙句にはA子さんがBくんの為を思って行った数々の行動をBくんは重いと言って浮気してしまう。

そしてA子さんは自身の女友達に向かってこう零す。

「私はあんなにBくんのためにいろいろしてあげたのに……。浮気なんて……。裏切られた。」

そのまま泣き崩れファミレスでスイーツをやけ食いするのだろう。

ここで考えて貰いたいところはBくんの最低さではない。

いや、もちろんBくんは最低最悪であるのだが今はそこを突っ込むつもりは無い。

注目すべきはA子さんの考え方だ。

自分がBくんに尽くした分その愛が自分に返ってくると思っている。

愛した分だけ愛されると思っている。

A子さんには可哀想だが、俺に言わせるとそれはとんだ勘違いだ。

あげたぶん見返りがあるなんて都合の良い話があってたまるものか。

もしそんな都合の良い話があるとするならば、俺が小学校3年から6年まで熱い想いを寄せていたツインテールの桜ちゃんは俺にキモいなんて言わなかったはずだ。

……論点がズレた。修正しよう。

つまり、感情はいつだって一方通行ということだ。

自分が抱いている思いと全く同じ思いを相手が抱いている方が珍しい。

世のカップルが引き起こす痴話喧嘩もだいたいは互いの気持ちのスレ違いとやらが原因らしいではないか。

この長ったらしい自論を通して俺が伝えたかったことはとても単純だ。

ー感情は常に一方通行である。

これを転校生、吉原に当て()めて更に考えてみる。

吉原が俺の隣の席になると吉原の気持ちはどうであれ、クラスメイトは吉原に同情を抱く。

嫌われ者の隣になるなんて可哀想だ、と。

ここで重要なのはそんな俺を庇う奴はこのクラスには1人もいないということ。

そして気付く。

俺がクラスで嫌われておりボッチで友達がいない根暗陰キャであることに。

例え、吉原がどんなに素晴らしい聖女のような人間だったとしても嫌われ者の俺には必要以上に絡まないだろう。

クラスでハブられたくないだろうから。

絡んだ方がいい人アピール出来るからキャラ付にはうってつけじゃないのかと思った人間は甘い。

いい人であれば、そりゃ分かりやすく無視したり虐めてきたりはしないだろう。

だけどやはり自己保身はする。

自分はそちら側には行きたくないから。

嫌われたくないから。

悪者になりたくはないから。

つまり結論として吉原が俺の隣の席に来ることによって甚大な被害を被るのは俺だ。

吉原に同情の気持ちが向けられる程気持ち悪いという感情を、嫌悪と憎悪を更に向けられることになるということだ。

何としてでも転校生が俺の隣に来ることを阻止せねばならない。

たいへん不本意ではあるが担任にでも頼んでみようか。

目が悪いとか何とか理由をつければいけるのではないか。

よし、そうしよう。

俺が決意を固めた瞬間、甘く、それでいてしつこくない花のような匂いが鼻を(かす)めた。


「吉原志都です。改めましてよろしくお願いします。お隣さん。お名前を伺っても?」


……やべぇ。めちゃくちゃいい匂いするし、めっちゃくしゃみ出そうだし、朝食を食べるのを忘れたから腹が鳴りそうだ。

書くことがないため、(わたくし)の黒歴史ノートに記されていた1文を戒めの意味も込めてここに書きます。


「明日、クラスにアサシンがやって来る。何としてでも阻止せねばならない。この力を解放してでも……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ