【6】
帝都の水に不純物が混ざっている事態に対して、掲示もされていたがプリントでも配られた。どうやら毒素というのは伏せられているらしい。
学園の水は大丈夫だという事と、水の使用を控えて給水所の水を使うようにとの話だった。
給水所の1つはこの学園でもあるため、使うようにとも書かれていた。
「今のところ帝都の一部って話だが、いつ広がるとも限らないからなー。生活水はともかく、飲食系は絶対に使わないようにー…とのお達しだ」
「先生、生活水って事はお風呂は?」
「触れるのがマズイのかまでは情報が来てないんだよー。正直、出来るなら避けた方がいいなあ。
ただ給水にも限界があるからなぁ…」
水の魔法使いがフル稼動で真水を生み出してはいるが、この帝都全員の水を全て賄うには明らかに足りない。昨日濾過した感じだと不純物が微量すぎて濾過するのも大変だった。
「……」
「レオニダスさん?どうかしました?」
「…いや、別に…」
レオニダスさんが厳しい表情で考え込んでいて、思わず声をかけるが心ここにあらずといった感じだ。
確かにレオニダスの生家は下町にあるから、被害に遭っているのかもしれない。
そんな事をしていれば朝礼が終わり、休憩時間になっていた。
「おーい、メイルーン」
「はい、なんでしょう?」
ネアシェの所に行こうと思えば、リンドウ先生に呼び止められた。
「今日、放課後空けといてくれー」
「え?は、はい、わかりました…」
「よろしくー」
リンドウ先生はそれだけ告げるとミレイユ嬢にも声をかけていた。
「メイルーン、呼ばれたんですの?」
「ええ…状況的に考えて、この事態と関係ある事だと思うのだけど…」
「ええ、声がけしているのが水の魔法使いだけですね」
リンドウ先生は水の魔法使いの一部に放課後空けておけと伝えて回ってる。用事があると断っている子もいるが、殆どの子は放課後あけるだろう。
「それよりネアシェ、昨日あの後大丈夫でした?」
「ええ、我が家で1番の水魔法使いに別邸に来て頂いて、利用する水は全て濾過して貰いました」
「そうなの、よかった…」
「でもやっぱり一定以上の水適性を持っていないと、不純物自体が検知出来ないみたいで…」
「メイルーン、ネアシェ、少しいいか」
「アインルーガ様」
正直あれ以来、アインルーガ様とは変わらずに過ごしていたはずだ。そもそも5年生の始まりから距離を置いていたのでそんなに不思議には見えないようで良かったと思う。
アインルーガ様は教室の外、人が通りづらい廊下の端まで私達を誘導した。
「どうかしましたか?」
「昨日…と言っていたが、今起きている事態の事、何か知っているのか?」
「それは俺も聞きたいな」
「ロンギヌス様、ミレイユ嬢」
2人が合流し5人になってかなり目立っているが、ここに声をかけられる人はいないだろう。
昨日ネアシェの別邸で起きた事を伝えると、ミレイユ嬢は驚き皇太子2人は考え込んでしまった。
「ミレイユ嬢も放課後呼ばれましたわよね?」
「あ、はい…少し怖かったんですけど、理由が分かって良かったです…」
「まだ確定ではないだろうけど、タイミング的にその可能性が濃厚なのよね」
「ネアシェ、水適性が一定以上ないと不純物を検知出来ないんだな?」
「え?…はい、一応我が家ではそう結論しました」
考え込んでいた2人はだからか、という顔をして、女子陣は首を傾げる。
「いや、起きた事は昨日の内に報告を貰ったんだがな!俺達に出来る事はないと断言されたから何故だろうと思って探っていたんだ」
「お前達が呼ばれたという事は何か関係があるだろうと思っていたが、理由まで分かって良かった」
皇太子2人は学園を休んででも手伝おうとしたらしいが断られたらしい。確かにお二人とも、皇族の特徴である光の適性以外現段階では持っていないはずだ。
「もし、何か他にも分かったら教えて欲しい。何も出来ないかもしれないが、知っているのも知らないのでは全く違うからな」
「わかりましたわ」
「は、はいっ!」
私とミレイユ嬢は頷き、皆も放課後まで普段通りに過ごそうと決めた。
放課後、私やミレイユ嬢を含めた水の魔法使いは大会議室へと集められた。そこにはガルフィースの姿もあり、魔法競技大会で出場したワイス様をはじめとする水魔法使い達もいて、学年に統一感はない。
青チームで一緒だった4年生の2人に手を振れば気付いて振り返してくれた。ガルフィースと仲よさげに話しているし、大会を通して仲良くなったのかも。
「水魔法使いばかりですね…?」
「やっぱり関係あるみたいね」
少し待っていれば、リンドウ先生とレイサ先生が入室した。挨拶と自己紹介もそこそこにプリントが配られる。
この前完全に復帰したレイサ先生が壇上へと上がり説明してくれるようだ。
「みんな知ってると思いますが、今帝都では水質汚染問題が発生しています。
先ほど入った最新の調査報告書がそれです、明日には他の方々にも公表されるでしょう」
今日分かった事実とは、原因は帝都の地下水道に魔物が侵入したらしい。しかも毒素を持った魔物であり、毒素を含んだ魔力が水に溶け込んでしまっているらしい。毒自体ではなく毒素を含んだ魔力なので、濾過装置が正常に作動しなかったらしい。
その魔物の征伐は始まっているが、数が多く解決に時間がかかるとの事であった。生徒達が騒つく。
「これ、魔力って事は生活水に使用するのもヤバくないですか?」
「ああ、だから治癒魔法使いを配備する予定だ」
毒の魔力は、言ってしまえば無属性の攻撃魔法と同じだ。毒自体は治癒魔法で解毒が可能だが、毒の影響で内臓などが壊死でもすれば医者頼みとなるだろう。
「それを回避するためにも皇帝陛下からお達しがありました。皆さんに集まって貰ったのは、その影響です」
「お達し?」
「水の魔法使いに真水の魔法を早急に取得して頂き少しでも濾過出来る人間を増やす、というものです」
「そのために、この毒素を含んだ魔力を覚えて欲しいんだよなあ」
リンドウ先生が手を振ると、各人のテーブルの上に小さな水槽が現れた。
なるほどと思う。真水の魔法自体は水に含まれた不純物を除く魔法だ。だがそれは砂や毒などの物質に分類されるもの、その魔法使いが不純物とみなしたものを除く事が出来る。
水に含まれた毒素の魔力を検知出来なければ、魔法をかけても意味がない。水には魔力が当たり前だが宿っていて、そこに複雑に絡み合っている…ような気がする。
「真水」
私は昨日同じ事をした。水に宿った魔力に干渉し異常と感じる魔力を除去。真水をふよふよと空中に浮かせ、毒素の混じった魔力を含んだ水は水槽に残っている。毒素魔力を圧縮する要領で纏めたので、残った水は毒素が混じっているとすぐにわかる。
「お、メイルーンは流石だな」
「魔力が検知できるようになれば多少の制御で出来ますから…でも、本当に混じってないかはわかりませんわ」
「ん、大丈夫だぞー?」
どうやらちゃんと濾過出来ているようだ。他の方々も魔法をかけて、濾過作業を習得し始めた。




