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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
62/125

【7】




『ただいまの時間を持ちまして、学園祭を終了致します。

皆様、ご来場誠にありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい。

続けて、全生徒に連絡です。教室へと戻って下さい。繰り返します…』




「「「お疲れ様でした!!」」」

「っ、はああ〜〜っ!!」


最後のお客様を送り出し、教室内へと戻って全員で終了を喜び合った。私も安堵に息を漏らす。


「終わったー!!」

「いや、これ最優秀賞頂きでしょ!?」

「人が途切れませんでしたね!」

「はいはい喜ぶのは後!みんな戻って来るまでに少しずつでも片付け始めるよー!」

「はーい!」


最優秀賞は来場者からの投票を元にこの後ある後夜祭で発表される。

片付けは主に明日行うのだが、明日は休み扱いなので休みたければ今日パパッとやってしまうのが早い。

幸い私達のクラスは幕さえ外して机を片付け乗り物やぬいぐるみなどを端に寄せれば明日は全員休みに出来るだろう。


「メイルーン様は休んでいて下さい!」

「え?」

「今日までずっと頑張ってくださっていたんです、今日くらいは…」


ミレイユ嬢の言葉に、ユゥイさんが同意する。周りの人達も同意見みたいだ。


「ふふ…ありがとう。でも、ちょっと休んだら手伝うわ。最後だからこそ私も一緒にやらせて」


これまで指示を出してばかりだったから、皆と肩を並べて一緒に片付けぐらいはしたい。

はい!とミレイユ嬢とユゥイさんが頷いた。







「すまない、戻った」

「遅くなったな」

「アインルーガ様、ロンギヌス様」


皇太子お2人が共に教室に入って来た。共に、という事に驚くが皇帝陛下も仰っていたように落ち着いている影響だろうか。


「お帰りなさいませ、皇帝陛下はお帰りになられたのですか?」

「ああ、皆帰った」

「やはり片付けは粗方終わっているか」


クラスメイトはほぼ揃っていて、幕は外し終わり机などを元の位置に戻している。

乗り物から魔法道具を外し、女性陣はぬいぐるみから魔石を取り出したりしている。


「あ、ネアシェ。ぬいぐるみは今日持ち帰ります?」

「ええ、出来るだけね」


魔石を取り出せば、ただのぬいぐるみとなる。それらは全てネアシェが引き取り、児童養護施設などに配られ子ども達のおもちゃとなる予定だ。

銃は希望があったので帝国内の施設へと寄贈される。

乗り物や幕、運営で使った備品は学園へと寄贈し、来年以降の学園祭などで他の生徒達も使えるようになる。

魔法道具と魔石は学園へと返却される事となった。

つまりそれらが終わるのを見届けるのが責任者の役目なわけで、まだまだ気は抜けないが今日くらいはゆっくりしたい。




「おー、全員揃ってんな?」

「リンドウ先生、レイサ先生」


お2人が入って来て、私達も手を止めて見る。


「この後の後夜祭は放送があるらしいから、それまで休憩な。あ、後夜祭では立食もあるから、腹は減らしておいた方がいいぞー」


そのタイミングで誰かのお腹の音が響き、思わず全員笑ってしまった。

学園祭が無事終わった充足感と達成感、そして友人達と笑い合えるこの空間に、身分や上下など関係ないように見えた。そしてこれが学生としての正しい在り方な気もするのだ。


「…開会宣言の時に学園長も言っていましたが、一時はこの学園祭の開催も危ぶまれました。ですが、皆さんが頑張って準備する姿に我々も絶対に開催せねばと努力する事を決めました。

今年は、生徒の皆さんが開催させてくれたと言っても過言ではありません。よく頑張りましたね」

「まだ心配な事や、気がかりな事もあるだろー。なるべく努力するつもりだけど、学園の主役はお前ら学生だからなぁ。これからも頼むぞー?」


レイサ先生とリンドウ先生の言葉に、生徒達は頷く。





先日、魔法競技大会の魔物は火トカゲ系統魔物のゼッセンジャーの進化亜種だとされ、認定されれば新種として図鑑に載るだろう。その魔物の詳細が明るみに出た事で、学園への風当たりが軟化したのは事実だ。

その調査を進めたのは帝国研究所と学園が共同で行ったとしたからであり、学園としては行事に対する対応を強化している事を知らしめるのを狙ったのだろう。




放送開始の音が流れて、全員が黙る。


『皆さん、お待たせしました。18時30分より後夜祭を開催致します。

各クラスごとに纏まってグラウンドまで移動して下さい。

尚そのまま帰宅となりますので荷物などは…』








「まあ、凄いですね」


グラウンドの中央には、巨大な資材で組まれたキャンプファイヤーがある。その周りの広い範囲に食事が置かれているが、まずは乾杯用にドリンクを受け取るみたいだ。

正直こんな規模の後夜祭は初めてなのでテンションは上がってしまう。


「メイルーン、飲み物を貰って来たわ」

「ありがとうネアシェ」


ソフトドリンクの入ったグラスを受け取り、クラスの集合場所に移動する。ベンチやテーブルも用意してあり、ここでも休めそうだ。


「メイルーン様、お近くよろしいですか?」

「ユゥイさん、ララさん。ええ、どうぞ」


やった、と言って2人は正面に座る。

しばらくするとキャンプファイヤーの前に簡易ステージが現れ、学園長が立った。




『皆さん、飲み物は持ちましたか?それではこれより、後夜祭を始めます』

『まずは各部門の最優秀賞を表彰します。呼ばれたクラスの代表者1人はステージ前に来て下さい。

まず、初等部展示部門ーーー』


司会役の人が、私達のクラスを読み上げワッと歓声が上がる。


「メイルーン!」

「メイルーン様!」

「…はい、有り難く行ってきますわ」


クラスメイトに促され、皇太子お2人も頷いてくれたので私がステージへと向かう。学園長がにこりと微笑み、賞状を読み上げる。


『貴クラスは初等部展示部門において多くの来場者を楽しませた事により、ここに最優秀賞と表彰します。これからもより一層、素晴らしいクラスとなるよう願います。

おめでとう』

「ありがとうございます」


賞状を受け取り、小さな盾のような物も頂く。軽いしそんなに上等なものではないが、これは頑張った証だ。大切に受け取って皆の所に戻って賞状と盾を見せれば大いに盛り上がった。


「最優秀賞かあ…」

「やりましたね、メイルーン様!」

「ええ…ありがとう、みんな」


そしてこの賞状と盾は、二分していたクラスが1つの目標に向かって頑張った努力の証だと思うのだ。これを見れば、仲間と協力する事の大切さに何度でも気付ける気がするのだ。









「アインルーガ様」

「メイルーンか、お疲れ様」

「もったいないお言葉です」


表彰も終わり、乾杯が宣言されて自由行動となった。帰る人も数名いたがほとんどは食事を楽しんでいる。

帰る時間が遅くなる事から、迎えに来れる場合は迎えに来てもらい、迎えに来れない場合は先生方が家まで送る事になっている。

私はガルフィースと共に迎えが来て帰る予定だ。


「皇妃様がお元気そうで良かったですわ」

「最近は体調も良く、出歩けるまで回復したみたいだ」

「やはり…皇后様は相変わらずですの?」

「ああ…これから、もっと癇癪が起きるかもな」

「それは…」


今日の影響だろうか。


「いや、ロンギヌスが俺と協力した事が気にくわないらしくてな、メイルーンのせいではない」

「ですが、それも間接的に私のせいですわ」


アインルーガ様とロンギヌス様を同じ担当にし、立ち回りしやすいからと連絡役にしてしまった私の思慮の浅さが露呈してしまった。


「本当に申し訳ありません、アインルーガ様」

「………」














「お前は、何者だ?」

「ーーー……え」


「お前はメイルーンではない」

「…いえ、私は…」

「メイルーンの姿を偽った何者か、ではないな。メイルーンの気配のままだ」


確信している。

そう断言出来るほどに言い切っていて、私の否定など意味を持っていない。


「5年生最初からの性格の変化、林間学習での状況判断と魔法競技大会での他者への気遣い。

そして学園祭での指揮能力と先見の目。どれもメイルーンが持っていなかったものだ。

元々能力を持っていて、性格が改まって発露されたと楽観するほど付き合いが短い訳ではないのでな。あの性格も、一朝一夕に変わるとは到底信じられない。




ーーーもう一度聞く…お前は、何者だ?」




口が渇いて、言葉が出ない。


「…………」

「言う気はない、か?

…安心しろ、今のお前はメイルーンよりは良き人間なのだろう。前に戻れとは言うはずがない」

「え…」

「結局、若干遅いか早いかの違いだろう」


アインルーガ様を見れば、こちらを責めたり敵視している様子はない。ただ、静かに確認しているようだった。









「メイルーン。



年明け…6年生になる前には」





「父様に頼み、お前との婚約を解消して貰う」



「母様も私も、もう人に甘えず進むべきだ」



「だから、ありがとう」







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