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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
60/125

【5】




「皆様、おはようございます。

本日は天候にも恵まれ一時は開催も危ぶまれた学園祭ですが、こうして無事開催出来て嬉しく思います。

全ての生徒、ご来場の方々の良い思い出となるよう楽しみましょう。




それでは、これより学園祭を開催致します!」


生徒達の歓声と共に、学園の門が開かれた。







「4名様、ご案内です!」

「はーい、最後尾はこちらですよ!」

「魔物の動きがやっぱりぎこちない…接続の問題?」

「いえ多分、この動作が…」




「っ、ふう。とりあえず無事運営は出来てるみたい」


学園祭が開始してしばらく。

我がクラスの体感型アトラクション【モンスターシューター】は、かなり盛況であった。

列はかなり伸びていて、短くなったと思ったらまた増えるといった形でお客様が途切れる事がない。


「ええ、最初は操作に慣れた方々で固めて正解でしたね」

「ネアシェ、お疲れ様。標的の問題はどう?」

「どうやら魔石と端末の接続が上手くいってなかったみたいです。でももう大丈夫ですよ」

「良かった……」


幕の裏側からはゲーム音と人々の楽しそうな声が響いている。

教室内は今、遮音性の高い幕で三分割されている。2つ分はゲームを二機分用意したのでゲームプレイ用、そして残る1つは映像や機械のモニタリング、魔物の操作などを行うスタッフ室だ。

今居るのはスタッフ室で、ゲームプレイの様子見をしながら全体管理をしている。




モンスターシューターは、乗り物に乗って幕に映し出された映像によってまるで動いているように体験する事を可能とした。

魔石を仕込んだぬいぐるみを何パターンか動きを設定して動かし、空気砲のような銃で倒していく。

進んでいくと分岐する道があったりボスがいたりと、障害を乗り越えてゴールまでたどり着くのが目標だ。

そして乗り物には体力、魔力があり体力は魔物の攻撃や障害の影響で減るとゲームオーバー。魔力は強力な攻撃や回復で減っていき、なくなると使えなくなる。

全体的にファンシーで可愛らしいが、映像は本格的でリアルを追求したので出来はいい筈だ。


ちなみモンスターコースターからモンスターシューターになったのは、シューティング要素が主立っているからという、とても簡易な理由だ。






「とりあえず、初動を乗り切ったのは大きいわね。色々と問題が起きるのが最初だから…気を抜かないよう、頑張っていきましょう」

「そうね、頑張りましょう」

「はい!」


運営に携わっていない人や担当の時間外の人は他の出店を見に行ったり休憩しに行ったり、様々だ。

飲食店は6年生が出しているが、デザート系や飲み物系の出店が多い気がする。まあ食堂も運営しているし、外には街の商人を招いて出店をしているので、軽食などはあまり売れないのだ。


「これなら展示部門の最優秀賞も狙えますね!」

「どうかしら…」


最優秀賞は高等部、中等部、初等部で各部門から選出され、表彰されるのだ。正直だから何があるという事はないのだけど、頑張った証にはなる。

一般の来場者からの投票になるので、名が売れるというのはあるかも。


「よう、戻ったぜ」

「レオニダスさん」


レオニダスがスタッフ室に入って来た。担当の時間だったろうか?


「一応他のクラスとかの偵察に行ってきた。やっぱり気合入ってんな」

「あら、本当?」

「まずはここ…」


レオニダスの情報をパンフレットを見ながら纏めていく。私や運営のまとめ役として動いている面々が机に集まる。


「このクラスは大規模庭園って感じだな。かなり本格的だったぜ」

「6年生か…強敵だね」

「あと同じ体感型だと、このクラスのお化け屋敷だな。かなり長い列が出来ていた」

「…あら」


お化け屋敷を出店しているクラスはガルフィースの所属するクラスだ。詳しい事は話してくれなかったので知らない。

ただ友人と共にキッチンで血糊を作っている場面は見た。シェフといかに手ごろでリアルな血糊を作るかで盛り上がっていた。


「?…おい、顔色悪いぞ?」

「いえ、何でもありませんわ」


弟が怖いと思ったのはあの時が始めてである。




「………」

「………」

「なあ、運営や魔法道具の動作は問題ないんだよな?」

「え?そうね、大丈夫だと…」

「では、少し食事に行きません?」

「えっ」


ネアシェに手をがっちり握られ、引っ張られていく。


「ちょ、ネアシェ!?」

「分かりました、何かあれば通信用の鳥を飛ばしますね」

「お願いしますわ」


魔法道具の1つである通信用の鳥は、魔力を登録しておけばその人の元に手紙を持ってきてくれる優れ物だ。

それがあるから緊急時は大丈夫なのだが、退室してしまって良いのだろうか。ちらっとクラスメイトを見るとニコニコ笑って手を振っていた。行ってこいという事だろう。


「…じゃあ、担当交代くらいの時間で戻って来ますわ。後はお願いします」

「無理しなくて良いですからね、いっぱい遊んで来て下さい」

「行ってこい。ネアシェ、頼むな」

「任されましたわ」


ネアシェと共にスタッフ室を出ると廊下にはたくさんの来場者や生徒達で混雑していた。


「ネアシェ、レオニダスさんに何を頼まれたんです?」

「メイルーンと一緒に食べて遊んで来る事よ」

「えっ?」

「みんなメイルーンが今日までどれだけ頑張ったか知ってるわ。だから当日くらいは楽しんで欲しいの。

アインルーガ様とレオニダスさんから頼まれちゃったから、私に付き合って下さいね」

「みんなが…」


むしろ指示だけ出すだけで作業をしていないから申し訳なさがあったのだけど。でもみんな送り出してくれたのは、元々そういった話が通っているからだろう。


「…ふふ、じゃあ楽しんで来てしまおうかしら」

「ええ、行きましょう!」


はぐれないようにとネアシェと手を繋ぎ、人混みの中を歩き出した。始めての魔法世界の学園祭、正直凄く楽しみにしていたのだ。









「まあああてぇぇぇぇ!!!!」

「「きゃあああああ!!」」


ガルフィースのクラスのお化け屋敷。最後の最後で脅かし要素が待っていて、ダッシュで出口から出る。

お化けが出口でピタリと止まり、ありがとうございました…と呟き戻って行った。


「はあっ、はあっ!」

「もう、だめ…」


ネアシェと共に椅子にへたり込み、終わった恐怖に安堵する。

お化け屋敷のクオリティ、4年生なのに明らかに高すぎる!自作だからボロボロさ加減がまた絶妙で、魔法道具で火の玉や腕を動かして脅かして来た。


「あ、いた…」

「きゃあぁあ!?」


血だらけの白いローブを纏い、これまた血だらけの妙にリアルなドクロ仮面をつけた人が目の前に来て思わず叫んでしまう。


「ちょ、姉様!私ですよ!」

「な、な、なんだガルフィースじゃない!脅かさないでよ!」


思わず素に戻ってしまうほど心に余裕がない。ガルフィースは入って来た人が私だと気付き、許可を得て来たらしい。


「凄いリアルね、ガルフィース様。お化け屋敷自体も凄く怖かったわ」

「ありがとうございますネアシェ様、来て下さって嬉しいです。姉様もありがとう」

「怖すぎて後悔するくらいよ…それで来てくれて嬉しいけど、挨拶だけ?」

「いえ、今日お父様とお母様は昼過ぎくらいに見に来て下さるそうです。なので食堂のテラススペースでお茶しませんか?」

「わかったわ。もし会えたら伝えておくわ」

「はい、担当などは大丈夫ですか?」

「ええ、何も起きなければ大丈夫そう」


両親は来賓としても呼ばれているらしく、もう学園にいるのだが午前中は対応に追われるらしい。2人とも私達の学生生活が見れると今日を楽しみにしていた。

息も整い心臓も落ち着いて来たので、ガルフィースに別れを告げて他も回る事にした。






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