【3】
「やっぱり問題は乗り物の方ね…」
「耐過重は…」
「映像は上手くいきそう?」
「やっぱり緊急時は資料をスライド式にするか…」
「こちらの魔法道具の設定なのですが…」
「ああそれは、弾を出ないようにして…標的との間で接続して、反応できるように」
学園祭まで、後数日と迫る中。授業は全て準備に回す事が出来るようになり、学園中は出店準備に追われていた。
そして私達のクラスも同じくである。
「メイルーン様、標的を作成しているチームが見当たらなくて…」
「確か、図書館に行って資料を探しているはずですわ」
「ありがとうございます!」
何故か、私を主導として。
「えー、多数決の結果。
モンスターコースター(仮)が1番…というかほとんど得票してるなー」
「…え」
クラス中から拍手が起きる中、思わず気の抜けた声を出してしまった。
「は、もしかして発案者お前かよ?」
「え、いえ…」
「んじゃ、発案者のメイルーン。詳しい説明してくれるか?」
「匿名投票にしたならそこも匿名にして下さい!?」
「だぁってこれ、俺理解出来ないー」
さすがですと賞賛する声、まさかと驚愕する声。私の案は採用されないだろうと結構適当に案を提出したのだが通ってしまった。やはり某大型テーマパークの威力は物凄いという事なの…!?
「ええと、モンスターコースター(仮)は、体感型アトラクションですわ。
風の魔石を使って振動する機械に乗り、教室をダンジョンに見立てて、チームを組んで役割分担をして貰い、魔物を討伐しながらゴールを目指す…という、言うのは簡単ですが中々自作するには難しいゲームです」
「…んん??」
みんなも首を傾げる。
「…まず、教室中に映写機などを利用してダンジョンを映し出します。
そして4人程度を想定してますがチームを組み、乗り物に乗って頂きダンジョンを進んでいるかのように映像を動かしていくのです」
「なるほどなー、その場から動いてないけど動いてるように見えるって事か」
そう、もうどこかで聞いた事がある施設になってしまうが。
ダンジョンを進んでいくと当然魔物が現れるので、魔物を倒しながら進む。そして最奥にある宝箱を開けてクリアだ。
チーム内でリーダー(操舵役)1人、アタッカー(攻撃役)2人、ヒーラー(回復役)1人を決め、クリアに必要な難関は魔物だけでなく乗り物の耐久力回復やリーダーの判断も必要にする。
分かれ道や罠なども設置し魔物以外にもクリアを困難にする障害を設置する。
「魔物を討伐しきれず進んでしまうと乗り物がダメージを受けてしまう、など。乗り物に体力と魔力を設定しておくのです」
「へえ、面白そうだな」
皆さんは聞いている分には楽しそうだと頷いている。
「ただ、その…障害も多く」
「障害?」
「まず、乗り物を自作する必要がありますから相当大掛かりな作業が必要となりますし。そして標的となる魔物と、それを討伐する方法はこれから考えて行かなければいけませんし…」
「んーまあ、どうにかなりそうだけどな?みんなどうする?」
正直初等部5年生でやるアトラクションじゃない気もする。誰か反対して別の物にしてくれた方が正直助かる。
「いいのではないか?」
「!ロンギヌス様!」
「ああ、別に異論はない」
「アインルーガ様!?」
皇太子2人の了承を得てしまった!?これはもう、
「賛成ですわ!」
「楽しそうだな!」
「さすがメイルーン様です!」
そうなりますわよね!!
乗り物は準備期間前からコツコツと作り上げていたので、もう基礎は出来ている。
魔物はぬいぐるみ調のファンシーな物のみを選び、小さな子に恐怖を与えないようにして、武器も銃のみ。銃も装飾が多いファンシーな物で、外観は銃というよりおもちゃの様相だ。
「メイルーン様、乗り物を魔法道具に接続終わりました。問題なく動いてます」
「わかりました、見に行きますわ」
絨毯の形をした魔法道具に、乗り物が固定されている。この魔法道具は移動や飛行などが可能なのだが長時間の使用は出来ない。振動や衝撃などを与えるだけなので魔力消費は少なく、1ゲーム毎に休ませれば問題ないだろう。
絨毯を端末で動かすと、乗り物が傾いたり停止したりと、確かに問題なさそうだ。
「基礎だけで衝撃の耐久度を調べて下さいな。それがクリアしたら装飾に入りましょう」
「わかりました」
その隣で映像担当が相談している。
映像の照射が可能な幕を教室に貼ろうとしていて試行錯誤しているようだ。こちらは問題なさそう。
教室に数名が戻って来た。
「ネアシェ、おかえりなさい。
銃の担当者が探してましたわ」
「ただいま戻りました。あら、本当?」
ネアシェは標的であるぬいぐるみ作成の担当に入っていて、手には本が数冊抱えられていた。その後ろには同じく本を持った数名がいて、アインルーガ様もいた。
皇太子2人は色んなチームを手助けし繋ぎをつける、連絡役のような役割を振ったのだが正確だったようだ。どこにでも顔が効くし、ある程度自由に動ける。
「それは魔物の図鑑ですの?」
「ええ、数種類いて特徴があった方が張り合いがあるかなと思いまして」
ぬいぐるみ調のデフォルメデザインなら、怖がる子も少ないだろうと標的担当は試行錯誤しているようだ。
標的に関しては特殊な魔力が込められた石…魔石を使い、銃から発射される魔力を感知して撃たれたかどうかを判定する。一応1種は完成しているので、後は種類を増やすだけらしい。
「あ、ネアシェ様!」
「ララさん?あ、標的の事に関してかしら」
ララさんとユゥイさんは銃の担当だ。
銃のおもちゃのような魔法道具は空気中の魔力を吸収して圧縮、射出してくれる。その射出された魔力は空気中の魔力へと還る…という循環が出来る。現代でいう空気砲と言えばいいのだろうか。
そしてここまで資材と魔法道具など色々利用しているが、前年度までの卒業生などが残していった物をリサイクルしているのもある。魔石は流石に調達したが大量に買った訳ではない。
乗り物と映像担当は大掛かりなものが多いので男子が主導で、銃や標的担当は女子が主導しているような状態だ。
けれど協力して進める事も多いから男女入り混じるし、クラス内は今までにない活気に満ちていた。
失礼な事だが、正直ロンギヌス派閥の方々が私の指示を聞いてくれるのは意外だった。
時々反発するけれど理由あっての事であったし、その程度で怒るほど私の精神年齢は低くない。まあたったの6歳分だけれど。




