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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
57/125

【2】



全員が不安を抱えながらも、リンドウ先生は進めていく。

学園祭は学年によって出来る事が増えていく。

1年生は出店出来ない。まずは体験してみましょうという形だ。

2年生からは小規模な展示が可能であり、縁日系や謎解きなどが多い。魔法は大人が使う場合のみ許可される。

3年生からは講堂が使用可能に。ステージを使った劇なども出来るようになる。

4年生からは教室などのレイアウトを変え、大規模な展示が可能。

5年生からは生徒達が魔法を使用したお店が出店可能だ。

6年生からは大人の管理者をつけた上で、簡単な軽食やデザートなどの販売が可能となる。


私達は魔法や魔法道具を使用してもいいし、大規模展示やステージイベントを行ってもいい。飲食に関わらなければ大抵の事は許可される。





「近い内に何を出店するのかアイディア出してもらうから、考えとけなー」

「先生、今年から魔法を使用していいんですよね?」

「それに関しても注意なー。どれをやるにしても、魔力に依存した出し物はやめとけよぉ?魔力が保たなかった場合悲惨な事になるからなー」


確か何年か前、上級生の展示で水の魔法を使い簡易水族館を行ったクラスがあった。浮かせた水の中で魚を泳がせるというものだったが、最後の方には魔力切れで水をキープ出来なくなり、水槽に入れた魚を見るだけの展示となっていた事があった。

水魔法使いは全員魔力切れで倒れ、魔力を渡してサポートした他の魔法使いも満身創痍、なかなか散々な結末だったと覚えている。


「去年のとかも参考にしながら考えてなー、ちゃんと実現性のあるやつにしとけよー。はい次は…」









「学園祭中止の可能性か…」


ホームルームも終わり、私とレオニダスはアインルーガ様とネアシェの側に来ていた。いつの間にか集まるようになったけれど、ネアシェはいいのかしら…?アインルーガ様の派閥に入ったと言われてしまいそう。

……と、思ったのだけれど、最近クラス内でそんなに派閥を感じる事がなくなった気がするのだ。

というのも青チームでロンギヌス様やミレイユ嬢、スレイヴ様やユーグリッド嬢とも話したからギスギスとした空気感がなくなった。…いえ、ユーグリッド嬢や取り巻き令嬢はまだあるかな?

とはいえ朝挨拶をすれば返してくれたし、確実に5年生の始まりよりは仲良くなっている。


「メイルーン?どうかしました?」

「えっ?」


3人の視線がこちらに向いていて、首を傾げる。どうやら思考していて会話に参加していかったようだ。


「ごめんなさい、何かしら?」

「だから学園祭やるとしたら何かいいのあるかって話だよ」

「このクラスには幸い強い魔法使いが多いですし、何か面白い事出来そうですよね」

「そうね…体感系で行くか、劇場系で行くか……」


はっとする。そうだ、去年まではメイルーンは何やるべきだとか声高々に言っていた。反発意見を押し潰し強行した年代もあったため、苦い思い出だ。

ちなみに去年は大規模な庭園を教室内に作り、貴族御用達みたいな茶会を開いたはずだ。なので一般客も貴族しか来ないし、貴族はゆったりとするから回転率も悪いしで最悪だった記憶しかない。

庭園も拘りすぎというか意見変わりすぎでお金に物を言わせて大量に買った癖に中途半端な完成度だったし。前年度一緒のクラスだった人は本当に申し訳ない。


「…色々出来そうだからこそ、迷ってしまいますわよね」

「そうだな。6年生はほぼ飲食出店だろうから、他のクラスのも調べながら被らないように気をつけよう」

「いや、このクラス数じゃ何件か被るだろ」


学年によってだが平均4クラス以上はある。そこで被らないようにするのは至難の技だろう。

定番は外さず、しかし目新しい物…うーん、と悩む。そして一瞬、某大型テーマパークが頭をよぎるが規模が違い過ぎると思い直した。

だが前の黒板型のボードを見て、思いつく。


「…魔法道具に頼ればあるいは…」

「?」









それから数日後。

朝礼でリンドウ先生とレイサ先生が入室した。生徒達はわあっと喜びの声を上げ、レイサ先生は頭を下げる。


「長らく休みを頂いてしまって申し訳ない。皆さんに不要な心配をかけてしまいましたが、今日から少しずつ復帰しますのでよろしくお願いしますね」

「レイサ先生!」

「よかったー!」

「レイサ先生がいないとね!」

「リンドウ先生サボるなー!」

「よかった、先生!」

「おい、誰だどさくさに紛れてサボるなって言った奴ー!?」


リンドウ先生のツッコミに全員が笑いつつ、レイサ先生も少し照れくさそうに笑っていた。


「良かった、無事で…」

「…言ってたよりも早かったな」

「少しずつって言ってましたし、リハビリしながらなのでしょう」


見たところ足取りはしっかりしているが顔色は良い訳でないし、声も前より覇気がない。


「いやー、レイサいないとホームルームがめん…」

「めん?」


にっこりと微笑むレイサ先生にリンドウ先生は面倒だったという言葉を飲み込み、何でもないです…と呟いた。復帰は案外早そうだ。


「明後日のクラスミーティングで学園祭の出し物決めやるから、この書類に案が書いて提出なー。ちなみに1人1案以上だぞー」

「「「えっ!?」」」

「…この反応、もしかして言ってないんですかリンドウ先生?」

「ひえっ、いや…あれー?」


睨みつけるレイサ先生にリンドウ先生は怖がりながらも言ってなかったっけ?と首を傾げる。


「俺、アイディア出してもらうから考えとけなーって言ったよなー?」

「1人1案以上は言ってないですね」


アインルーガ様が冷静に返すとあ…みたいな顔をしていたので、レイサ先生はため息を吐いてリンドウ先生をジト目で見る。


「いや、そのなー?生徒達の多様性を見たいってんで、今年から1人1案提出になったんだよ。まあ、無理しなくていいぞ?誰かの真似して書くのもありだからなー」


悪い悪いと全然謝っている風に見えないリンドウ先生。レイサ先生だけでなくて生徒全員おいおいみたいな空気だ。これはサボるなと言われもするだろう。

ちなみに提出された案は誰のものかわからなくして、案が被っている場合は一括にまとめて多数決で決めるらしい。

これなら普段遠慮している子も案を出せるから、案外良いのかもしれない。


「書類の提出期限は明後日の朝礼までな。直接でもいいし、教師机の上に置いといてもいいぞー」

「この緩いのが心配だったら私に渡して下さっても大丈夫ですからね」


レイサ先生の言葉にみんながはーい、と答えた。リンドウ先生はまあそっちの方が確かに安全だなあ、とか言っていたのでみんなは苦笑いである。

私も笑って見ていたのだが、レオニダスはつまらなさそうに頬杖をついて見ていた。


「レオニダスさん、どうかしましたの?」

「…大会の時の、リンドウ先生の戦い見たか?」

「?ええ、少しだけ…」

「あの人は強い。あの緩いのが馬鹿らしくなるくらいな」


魔物を止め迅速に指示を飛ばしていた姿を思い出す。確かにあの時は緩さのかけらもなかった。リンドウ先生が雷を扱うのは知っていたが、巨大化した魔物を足止め、無力化し天候すら操ってみせた。


「…でも、」

「何だ?」

「緩いリンドウ先生がいないと、面白くないと思いません?

貴族も平民もなく平等に扱って笑わせてくれる、とても良い先生だと思いますわ」

「…まあな」


レオニダスは思わずといったように笑みをこぼした。






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