表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
56/125

【1】第六幕:学園祭は一大イベントです。




「中止…ですか!?」


1人が立ち上がり叫んだ。

生徒達はザワザワと話し合い、教室内は騒然としていた。











夏期休暇明け。

久しぶりの学園…といっても場所ではなく、クラスメイトに会うのが久しぶりだ。


「結構日に焼けた人増えたわね……」


男女共に少しだが日焼けしている人がいる。平民の子が多いが、貴族は日焼け対策をきちんとしているからだろう。

私もナタリーに日焼け止めを塗ってもらっていて、日傘を持たされていた。メイルーンは全体的に色素が薄いから日焼けすると痛くなるのよね。

教室に入れば、バラバラと座っていた皆が挨拶してくれる。


「おはよう、皆さん」

「おはようございます」

「おはよう、メイルーン」


アインルーガ様とネアシェが席の近くで話していたので加われば、すぐに始業時間が迫ってきていた。


「っ、はあ!間に合った!」

「レオニダス、おはよう」


その少し前に駆け足でレオニダスが教室に滑り込んで来た。ぜえはあとかなり息を切らしているから、どうやらだいぶ走ったらしい。

アインルーガ様や友人に挨拶をして隣の席へと座る。


「何でそんなに遅れたんですの?」

「学園に行く前に学園長の所に行って来ててな…あの人話長いんだよ」

「学園長のところ?」

「ちょっと提出書類が遅れてな」


見た所普通に走れているようだし、顔色は悪くなくむしろ良いぐらいだ。

レオニダスが無事退院したと聞いていたが、本当に大丈夫そうだ。




「ほら、お前らー朝礼始めるぞー」


リンドウ先生が教室へと入って来て、生徒達がバタバタと着席する。教室に来たのはリンドウ先生だけだ。

日直の号令で立ち上がって挨拶をし、着席する。まずは出席なー、とリンドウ先生が名前を読み上げていくが、何人か飛ばしている人がいるのに気付き、席を見ればそこに人はいなかった。


「ん、全員いるなー。

……で、気付いてると思うが俺は何人か読み上げてない」


そしてそのその何名かは、夏期休暇前にも休んでいた子だ。


「そいつらは、全員特例休学となる」

「特例休学…」

「まあ、扱いは休学と変わらん。結局後々響いてくるしなー、すこーし情状酌量の余地ありってだけだ」


全員休学する理由を察していて、少し騒つくがすぐに静かになる。

小さな子どもには、あの魔物は衝撃が大き過ぎた。更に前例がない事態であり、学園が詳細不明で調査中と言ってしまえばまた起きるとも限らない。起こるか分からないなら大切な家族は側にいて欲しいと思うのは当たり前なのかもしれない。

このクラスだけではない。学年ごとに数人から数十人、魔法競技大会後に精神的な事情や家族からの反対を受けて休んでいる子はいた。その中で今、登校している子もいる。

この学園は義務教育ではないのだ。単位の概念があり、足りなければ留年する可能性すらある。

もし学年で人数が一定以上少なくなった際は、来年度受験を得て補填する場合もある。


「まあ全員察してると思うし、今ここにいる連中の中にも迷ってる奴がいるかもしれん。いない奴をどうこう言っても始まらんから、気にするなとは言わないけど気にし過ぎるなよー」


恐らく、猶予があるなら数ヶ月くらいだろうか。それ以上は情状酌量の余地ありで追試などを行っても、単位は取り戻せないだろう。




「んで、副担任のレイサだが…一応リハビリ中でな。まあ来月までには復帰できるだろー」


アインルーガ様が病院でレイサ先生はまだ面会謝絶中だと聞いて行かなかったが、良くなっているようで安心した。

そしてレイサ先生の異常の原因はあの魔物だという。魔物に魔力を奪われ、正常に魔力が扱えなかったらしい。その辺りも詳細不明と言われている魔物の所以ともなっている。


「あの時必死で覚えてないんだが、そんなにヤバそうだったのか?退院してないのレイサ先生だけだろ」

「競技場で見た時は、動けなさそうだったけれど…」

「普通の怪我じゃなくて魔力ダメージだからか」

「そうだと思うわ」


この世界には普通の怪我ではなく、魔力ダメージというものがある。魔力…すなわち精神的なダメージという事だ。

ーーーあれ…でも、魔力ダメージって、あの属性が主に関わってくるはずなんだけど。

レオニダスとヒソヒソと話していると、これからホームルーム初めていくぞー、とリンドウ先生が進め出したので話を中断した。リンドウ先生がボードに映し出したのは、これからの予定だった。


「えーと、レイサいないから面倒だな…」


確かにホームルームなどはレイサ先生が進行していた。その方が引き締まるからなのだが…と生徒達は苦笑する。


「そうだな、今回は2ヶ月後の学園祭の話がメインだ。後は…6年生が修学旅行でしばらくいない期間があるから、その辺りの代理の担当決め。

学園祭の後には選挙もあるから、その辺りの説明だな」


少し騒つく。学園祭を喜ぶ者、選挙を危惧する者がヒソヒソと話し込んでいた。

学園祭はともかく、選挙かあ。この学年は相当苦労するだろう。皇太子を2人を生徒会長にしようとして動き始めるのが目に見える。

ちなみに今の生徒会長は魔法競技大会で赤チームのリーダーだったティナシア様だ。他にもヤクト様などが他薦されたのだが、本人が辞退していた。






「はいはい、静かにー」


リンドウ先生がボードを切り替え学園祭の詳細が映った。しかし、リンドウ先生は生徒達に厳しそうな顔で向き直る。


「で、言っといてなんだがー……。

学園祭は、中止になる可能性がある」


そして、冒頭に戻る。

私も驚いてしまって固まる。


「中止の可能性がある、な?中止が決まった訳じゃないぞー」


リンドウ先生はそう言うが、その可能性が出て来た時点で相当珍しいのだ。自主性を重んじる校風から、行事には力を入れているオルガンテ学園が。

しかも学園祭といえば家族はもちろん外部から人を招き毎年盛況となる、一大イベントだ。


「まあ知っての通り、魔法競技大会で色々あったからな。この状況で外部から人を入れて本当に安全に運営出来るのかって声が父兄から上がった」


夏期休暇中にも一悶着あったらしく、それで学園上層部は現在精査中、という事らしい。

詳細不明の魔物などがはっきり判明すればその辺りも変わってくるだろう、とリンドウ先生は言う。


「可能性の1つとしてあり得るって事だけ覚えておけー。

心配しなくても、少なくても学園長は開催するつもりらしいからな」


その判断が経営者として正しいのかは正直わからない。

だが6年生は初等部最後の学園祭であり、中等部へと続くだけとはいえ余りにかわいそうだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ