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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
53/125

【7】




「あら…お邪魔しちゃったかしら」


レオニダスの病室にノックをして入って来た女性。私は見覚えがあった。


「あら、さっきの…」







「母さん!」

「「!!?」」


レオニダスの言葉に私とネアシェが目を見開く。

先ほどヤクト様のお見舞いを断られた時に会った赤髪の女性。


「レオニダスさんの…」

「お母様…?」

「あ、はい。いつもレオがお世話になっています」


ええ!?と2人で声を上げてしまった。

途轍もなく若く、20代前半にすら見える。むしろ姉とでも言われた方が納得してしまう。


「母さん、何で戻って来たんだ?」

「ごめんね…出口にたどり着かなくて」

「はあ?」

「地図がわからなくて、ぐるぐる病院内回ってたのよ」


どうやらレオニダスのお母様は私達の前に面会に来ていたらしいのだが、出口にたどり着かず戻って来てしまったらしい。


「さっきの綺麗な子…レオの知り合いだったのね」

「はじめまして、レオニダスの学友のメイルーン・ウンディーネ・ファクトヒルデです」

「あらまあ、ご丁寧に。学友の方だったのね。レオニダスの母のリアナといいます」

「お知り合いです?」


レオニダスのお母様との出会いを説明すれば、なるほどと言ってネアシェも名乗った。


「レオのお見舞いにこんなに綺麗なお嬢さん方が来てくれるなんて、良かったわねえ」

「アインルーガと一緒に来たんだよ。メイルーンはあいつの婚約者だしな」

「まあ、アインルーガ様もいらっしゃってるのね。そうなの、婚約者…?」


あら?と首を傾げ、数秒後にあら!と再び声を上げた。


「メイルーン様もネアシェ様も、貴族の方なのね。とても可愛らしいものね」


どうやら途轍もなくのんびりとした方のようだ。

レオニダスは諦めたように息を吐き、私達も苦笑するのだった。リアナさんはレオニダスに出口への道を聞いていたが、地図を見て迷う方に口で説明してわかるのだろうか。


「よろしければ、出口まで案内してきましょうか」

「はあ…?」

「あら、いいの?」

「ええ…レオニダスさんのお話、道中良かったら聞かせて下さいな」


にっこりと完璧な令嬢の笑顔を見せれば、レオニダスはおい!と止められた。関係ないわ、私だけ弱みを握られたような状況は絶対に嫌だもの!

……ゲーム知識で弱みは知っているけれど、からかえないような重い事しか知らないのよ!




「私も途中まで一緒に行きますわ。この病棟に知り合いがいまして、挨拶してきます」

「では、行きましょうか」

「ちょっと待て!」

「足はまだ治りきってないのでしょう、無理なさらないで?」

「それじゃあレオ、また来るわね」


リアナさんとネアシェと共に病室を出て出口へと向かう。

VIP専用の出入り口から来たから一般の出入り口は少し不安だったが、地図があれば行けるだろう。

ネアシェとも別れ、出口に向かった。のだが、リアナさんが迷子になった理由が分かった。


「リ、リアナさん!?どちらに行かれるんですか!?」

「え?でもこちらから来たから、このままだと戻っちゃうわよね?」

「今来た道はあちらです!」


典型的な方向オンチ、地図を持ったまま固定して見てしまうタイプの人だ。身体の向きで地図の向きも変わるのに変えないのだから、それは迷う。


「ごめんなさいね、一度覚えると忘れないんだけど初めて来る場所だと…」

「むしろレオニダスさんの病室までたどり着けた事が奇跡ですよ…」

「うふふ、朝病院に来たのだけど、会う時にはお昼になってたわね」

「あ、あはは…」


口説明で帰ってなくてよかった…。


「そうそう、メイルーン様はアインルーガ様の婚約者なのよね?お会い出来なくて残念でしたと伝えて貰えると嬉しいわ」

「はい、わかりましたわ。アインルーガ様とはお知り合い…ですわよね。レオニダスさんと仲良しですもの」

「アインルーガ様は幼い頃、私が働いていたお店に良く来てくれていたの」

「幼い頃…初等部に入る前ですか?」


可愛らしかったのよー、と笑うリアナさんは楽しそうで、いい思い出なのだろう。第一皇太子が初等部に入る前に下町に来ていたというのは個人的には気になるところだが、今は別の話が聞きたい。


「リアナさん、レオニダスさんの幼い頃ってどんな子どもだったんですか?」

「んー、そうねえ…結構甘えたがりだけど、お手伝いを良くしてくれる良い子だったわよ」


甘えたがり…いい情報だわ。


「後は…暇さえあれば魔法の練習をしてたわね」

「今では素晴らしい魔法使いですけれど、そんなに小さな頃から練習していたんですね」

「ええ、幸か不幸か…とても強い魔力を持っていたから制御しなければいけなかったの。家が燃えそうになった事もあったけど、それもいい思い出ね。

今では初等部1の魔法使いなのでしょう?とても誇らしいわ」

「…そうです、ね」


レオニダスの幼少期のエピソードとして、強大な魔力に振り回されたという話がある。強すぎるが故に暴走し、周りの人々を傷つけてしまった…恐らくリアナさんの腕には火傷痕があるはずだ。

レオニダスはボロボロになりながらも制御を学び、魔力を時折発散させる方法をとって普通な生活を送れるようになったという。

…攻略キャラはそこそこ暗い過去があるのだが、レオニダスは結構重い話が多い。リアナさんの語り口的に悪い思い出ではないみたいで、良かった。


「でも最近は学園が楽しいのでしょうね、毎日とても充実しているみたい。でも、反抗期みたいなのよね…」

「あら、そうなんですの?どんな…」


反抗期なんて、良いからかいネタじゃないか。










「遅くなってすまない、戻った」

「おかえり」


病室に戻って来たアインルーガをレオニダスだけが迎える。首を傾げるアインルーガに先程の状況を説明すれば苦笑して椅子へと座る。


「そうか、リアナさんが来ていたんだな。挨拶出来ればよかったんだが」

「母さんも会いたがってたぜ」

「今度またお忍びで遊びに行くよ」


冗談のように言っているが、この男は本当にやるとレオニダスは知っている。そしてお忍びと言っておきながら護衛がついてきてて、見守られている事も知っている。

アインルーガの護衛は少人数ながらも信頼があり戦闘能力が高く、アインルーガの望みを可能な限り手伝ってくれる。


「そうだ、レオニダス」

「何だ?」

「魔法戦、素晴らしかった。父様も絶賛していたぞ」

「!本当か」


アインルーガは頬を緩ませ、親しい者しか分からないような嬉しそうな顔をして頷いた。

魔法戦は、皇帝陛下が見る事もあって魔法競技大会で花形であり活躍した生徒は将来の繁栄が約束されるとも言われる。

最近魔法制御が安定し出した事もあり、考えうる限りレオニダスのベストコンディションだった。だからこそ、一昨年のように無様を晒さないよう、去年のようにがむしゃらに戦うのではなく仲間と共にと戦ったのだが。


「あのままいけば、倒せたのにな」


レオニダスはスレイヴとミレイユの2人には勝てると確信していた。

スレイヴの近接戦闘には手を焼きそうだったがいわゆる貴族槍術なので見栄えなど重視で隙が多い。教える気はさらさらないがもっと修練しなければレオニダスを倒せはしないだろう、とアインルーガは思っていたしレオニダスも同意見だった。

ミレイユの成長具合は驚いたが、戦闘慣れしていないせいで立ち回りがわかりやすく狙い撃ち出来ただろう。






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