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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
46/125

【?】幕間




「それでは、始めましょうか」

「はい」





オルガンテ学園、総合会議室。

そこに、学園長、そして学園上層部が勢揃いしていた。






「まず、今回魔法競技大会で起きた事件ですが。

帝国競技場(ソル・コロッサス)は半壊、半年は使用出来ないそうです。

そして重症は7名、軽傷は判明しているだけで100名以上。これから更に増えます」


壁へ設置されたモニターには、煙を出して壊れている闘技場が映し出され、更に怪我人などがいる病院の写真などもスライドショーのように提示されていった。

前に立ち状況説明をしている副学園長が手元にあった資料をめくる。




「この状況に至った経緯ですが……あの魔物は、闘技場の試合のために地下に囚われていたトカゲ型の魔物、ゼッセンジャーだと報告されています」


ザワッと一瞬にして動揺が走る。


「皆様ご存知の通り、ゼッセンジャーは…レベル16に相当する、気性は荒いですが小型の魔物です。

ですが闘技場の管理者、及び討伐したリンドウ先生によれば間違いないと」


全員の目がリンドウに向けられ、リンドウは立ちがる。


「ええ、間違いないかと。

ゼッセンジャー特有の火属性をほぼ無効化する火壁の拒絶(フレイムヘルト)、そして強靭な噛み砕く力に突進する特徴もありました」

「闘技場管理人によれば、ゼッセンジャーが入っていた檻が中から破られたように壊れていたそうです。まるで檻の中で巨大化でもして、弾け飛んだかのように」

「監視カメラは?」

「ありましたがメモリごと燃えたそうです」


映像が切り替わり、ゼッセンジャーの情報が書かれた資料を映し出す。

小型の、それこそ闘技場で暴れた魔物よりふた回り以上小さい魔物である。それに胴体はどちらかというと細身な方であり、強靭な牙とはアンバランスにも見えるほどだ。


「ゼッセンジャーが、何らかの理由で巨大化…凶暴化した、と?」

「ええ。そして地下から地上へと出ようとしたのか、闘技場に大穴を開けて競技エリアへと出現しました」

「そこなんですが…防護壁は地下にも張っていたのですよね?」

「ええ、防護壁は競技エリアの地下まであります。が…魔物の保管エリアごと、覆っていたようです」


競技場の断面図のようなものが映し出される。




「闘技場の防護壁は、地面を起点として上下に発生していました。縦に長い、楕円の形です」


断面図に上と下に伸びた楕円形が現れる。直径は競技エリアの横幅、高さはドーム天井の少し下から地下の最下層までを覆っている。


「魔物の移動中、何か起きても大丈夫なように、との運用だったそうなのですが、裏目に出ました」

「そして防護壁が解除出来ず、か」

「術式を発動した本人が止められなかったんだろ?そんな事あり得るのか?」

「しかし、あそこは特殊だからな…」

「ええ、皆様ご存知の通り…防護壁は、古代に闘技場の建物自体に刻まれた大規模術式です。魔法使いが魔力を流す事で発動し、魔力を流す事を止めれば術式も停止する……はずだったのですが」

「あの時は、術式が止まらなかった。別の魔力が、術式に注がれていたんだ」


リンドウが言葉を繋ぎ、闘技場にいた教師数人も頷く。


「そして、その魔力は…巨大化したゼッセンジャーが術式に注いでいたと思われます」

「魔法使い数人分の魔力を、魔物一体で…」

「まあ、その防護壁も自ら壊したんだけどな」


観戦エリアに突進し、強靭な牙で防護壁を噛み砕いた。お陰で術式は強制的に止まり、防護壁の外にいた者も手出し出来るようになった。


「その魔物に破壊出来たのならば、教師陣でも破壊出来たのでは?」

「魔物の魔力で作動していた、とお伝えしましたよね。防護壁は作動させている対象からの攻撃を受けると破壊出来ます」

「なるほどな」





「これまでが状況報告です。

そして続いて被害の詳細ですが…」


資料をめくり、映像が切り替わる。




「重症7名

6年、ヤクト・シルフ・テラウィリス。

6年、ダルシアン。

5年、レオニダス。

5年、スレイヴ・リットマン。

競技エリアにいたため巻き込まれたようですが、いずれも命に別状はありません。

1年、サザンリカ。

4年、ラス・ノーマン。

避難する際に負傷、こちらも命に別状はありません。

そして……」

「レイサ、だね」


ずっと黙って聞いていた学園長が口を開く。机に肘をつき、前を見据える目は真っ直ぐだが無表情で、全員が畏怖するほど感情というものが見えなかった。


「ええ、レイサ教師は……現在も意識不明、重症です」

「怪我ではないんだよね?」

「ええ…何と言いますか、信じがたい事なのですが…」


副学園長は初めて口ごもる。






「…魔力回路がズタズタになっており、この先魔法を使えるかすらわかりません」

「「「!?」」」


教師の中で動揺が広がり、ザワザワと話し声が飛び交う。副学園長も気持ちが分かるだけに続きを切り出せなかった。






トン、トン、


学園長が机を指先で叩いた。

たったそれだけで、会議室内は静まり返る。


「続きを」

「は、はい。現在は集中治療を行なっています。復職はまだ先になるでしょう」

「その…原因は判明しているのですか?」

「いえ、何も…」


静まりかえった会議室に重い空気が流れる。同じ学園教師が原因不明で魔法を使えなくなるかもしれない。

それは魔法使いとして職を持つ者にとっては死活問題だった。




「…そしてこれからは、この後の対処になります。

まず闘技場の修繕ですが、闘技場側にも非があるとの事で協力しての進行となります」

「あれ、俺が貫いちゃったドーム天井とかも許された感じですか」

「やむを得ない状況であった、と説明しました」


リンドウがとどめを刺すために放った雷の魔法はドーム天井すら貫き、魔物を黒こげにした。正直個人で借金になるのではと思っていたリンドウは人知れず安堵したのだった。


「そしてゼッセンジャーに関してですが…これは皇帝陛下直属の調査機関が捜査する形となります。国民全体に影響のある事ですので、皇帝陛下が主導するべきだと」

「まあ、予測通りですね。陛下も巻き込まれていますから」

「はい。ですので我々が行うべきなのは生徒はもちろん、教師も含めた学園関係者へのフォローです」

「…うん、そうだね。




保護者への説明文書は今日中に作ろう。それから説明会の準備もしておいて、多分必要になるから。

それからカウンセラーや庭師、その辺りの手配も増やしておいて」

「カウンセラーはともかく、庭師…ですか?」

「うん、美しいものを見たら心も晴れるかもしれないだろう?

何か他に質問は?」


教師達は何も答えず、学園長は頷く。


「それでは、解散。

各自、子どもたちの様子を見てフォローをよろしくね」

「「「了解です」」」













会議の終わった部屋には、学園長と副学園長、そしてリンドウがいた。


魂の守護者(ソウルプロテクト)


学園長の魔法がリンドウを包み、学園長はため息を吐く。


「全く、しつこいねえ。これは私では無理そうだ」

「ええ、学園長で無理なら、皇帝陛下しかないですね」

「レイサ教師だけでなく、あなたもですか」


リンドウは袖を捲り、腕を露出させる。

しかしその腕には黒い刺青にも似た線が入っており、見ただけで痛々しく感じる。


「多分、相手した魔物になんか仕込んであったんですよ。倒した後から調子おかしいんで」

「涼しい顔して何言うんですか…」

「まあ、昔これの対抗に得意な奴がいたんで、それでまだマシなのかも」

「ああ…彼女ですか」

「ええ。なので俺はともかく、レイサは多分、前の林間学校で()()()()()ます。

早急に皇帝陛下に対処して頂いた方がいいかと。








魂を蝕み、喰らう……闇属性魔法をね」




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