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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
43/125

【11】




試合開始と共に、一斉に魔法が放たれる。

それはもちろん、レオニダスに対しての水属性魔法だ。

ミレイユ嬢も微力ながら魔法を放っている。



『やはり他のチーム、赤チームを狙い撃ちだあ!』


「想定内です、2人共!」

「「大地よ、壁をここに(ダイナスト・ウォール)!」」


土の壁が現れ、水は赤チームに届く前に阻まれた。

ティナシア様の合図で魔法を使用した地属性魔法使いらしい赤チームの2人は、息の合った魔法の発動をしていた。若干雰囲気が似ているから、姉弟なのかもしれない。




「清々しいほど3対1ですわね…」

「先程アナウンスの方も言ってましたけど、去年完全試合に近い事をしてしまいましたから…それだけは避けたいのでは?」


去年何もできず倒れた人は、今年も選抜された中でいる。その影響もあって最初から狙われやすいのだろう。



『赤チームの地属性姉弟、マイン・ラントとシルベスト・ラントだ!

息の合った地属性魔法で水を完全にシャットアウト!さあこの隙に、』


「荒れ狂う風、雨の如く降り注げ!秋雨荒風(ウィンド・セビル)!!」

「きゃああっ!?」

「ぐうっ!」


ヤクト様の放った風の槍が雨が降るように赤チームに降り注ぐ。水で視界が塞がっており、見えなかったラント姉弟は土壁を貫通した魔法をまともに食らっていた。

土壁が貫通したところから決壊し、水が押し寄せる。

だが、観戦エリアから…詠唱も術式も完了した彼が見えていた。






煉獄住まう(イフ・イルフ)火人の鉄槌(・イフリーテ)!!」




レオニダスの頭上に、多くの火玉が現れる。それ大小様々な火玉は他のチームへと降り注ぎ、水の魔法は火の熱量で水蒸気となっていた。



守護の水壁(アクアヴェイル)!」


青チームは4年生の1人が水の防護壁を張るが火玉は水を蒸発させ、多少小さくはなったが全員に降り注ぐ。

直撃したかに見えたが、スレイヴ様はミレイユ嬢を、ヤクト様は4年生2人を抱えて離脱していた。しかしそこにも降り注ぐ火玉。発動されてしまうと一方的だ。

ガギンッと鈍い音がして見れば、赤チームのリーダーと緑チームのリーダーが刃を交えている。 大規模な魔法に紛れて距離を詰めたようだ。



「ティナシア様は、無属性を使いこなす魔法使いなのよね?」

「ええ、私達の参考にもなるわ」


メインモニターや所々にあるサブモニターは別の場所での戦いも映していた。どうやら全チーム、赤チームを倒すことに集中している。

赤チームにはレオニダスがいるので当たり前なのだが、リーダーのティナシア様も相当な手練れであるからだろう。






点と点(ショートワープ)

「ぬうっ!」


ティナシア様が一瞬で背後へと周り、緑チームのリーダー、ダルシアンさんが慌てて対処する。


『無属性の空間魔法を、戦闘中に即時発動出来るのは初等部でティナシア選手だけだと言われています!その実力はレイサ先生も認めるところ!

ダルシアン選手、凌げるか!?』



ティナシア様の武器である短剣がダルシアンさんへと振り下ろされるが、緑チームの仲間が魔法で彼女を吹き飛ばす。

ティナシア様はしっかりと防御した上で空中で体制を立て直して着地した。どんな体幹してるんだ。

ティナシア様あああ!!と叫ぶ声は野太いだけでなく黄色いのが混じっていて、たしかにこれを見せられたら女性もファンになると思う。屈強な男に華麗に立ち向かう女性は、強く美しい。






「悪いね」

「っ!? ヤクト卿…!」


着地したティナシア様の足から血が流れた。ヤクト様が撃った弾が彼女のふくらはぎを掠めたようだ。

ヤクト様の手には大型の銃、狙撃銃が握られていた。


「レオニダス君だけでも鬼なのに、君にフォローされると金棒を持ってしまうからね」

「ふっ…リーダーが2人揃って、熱烈なおもてなしだこと!点と点(ショートワープ)!」

「ああ、申し訳ないがおもてなしとやらに時間はかけられん!」


ダルシアンさんが斧を振り下ろし緑チームの2人もティナシア様へと魔法を放つ。ティナシア様は小回りで逃げようとするがヤクト様が逃げ道を狙撃で塞いでいた。




「完全にティナシア様を倒しに行ってますわ!」

「レオニダスさんも…複数人で、囲まれてます!」



レオニダスの周囲は水蒸気による霧で相当見にくいが、水の魔法使い数人が抑え込もうとしているようだ。

だが彼は不敵に笑っていた。




地から這い出る呪詛(ノートン・グランデ)!」

「きゃあ!」

「なにっ!?」

『おっとレオニダス選手!地属性の魔法を無詠唱で発動させた!なんと地属性も戦闘可能レベルまで上げて来たのかあ!?』



「水の魔法使いには、下級の地属性魔法でも相当効きますわ!」

「凄いですね、レオニダスさん!」

「え、ええ、そうね……」


魔法は、自分の適性以外の魔法を発動する事は不可能に近い。

いくら複数の適性属性を持っていても、最高適性の属性魔法に比べると戦闘中に無詠唱で発動出来るレベルにするには天性の才能と時間、相当の修練が物を言うだろう。

レオニダスはそれをこの場で見せて来たのだ、博打好きというか強心臓というか。


「っ、くぅ…!」

「ミレイユ嬢!」


レオニダスの放った地属性にミレイユや青チームの2人も巻き込まれていた。だが、レオニダスへと迫る影。

スレイヴ様の槍がレオニダスを捉えた。




「っ!?」

「はああぁっ!!」


レオニダスは銃で槍の切っ先を逸らすが、衝撃に体制を崩す。


「地砕撃!」

「ちっ」


大地が隆起し、レオニダスは巻き込まれるが風の魔法がスレイヴ様を襲う。赤チームの風魔法使いで、レオニダスのサポートに回っているようだ。

スレイヴ様は槍で防御し、そのリーチを使って赤チームの2人へと迫る。




「流るる熱波、」

水よ、励起し弾け(シャール・アクエリア)!」

「!!」


魔法を唱えようとしたレオニダスに水泡が当たり弾ける。衝撃波が彼の腕を弾き詠唱を止めさせた。


「へえ…!」

「ミレイユ、頼む!」

「が、頑張る!」


ミレイユは小さな杖を翳し、レオニダスへと向けていた。魔法を止めたのは彼女だ。





「よしっ」


修練の結果が見えた気がして、思わず小さくガッツポーズをしてしまう。

幼馴染だからかミレイユ嬢とスレイヴ様のコンビネーションが思ったより良く、魔法の妨げにならないよう立ち回っている。




人と人との真剣勝負。血が流れ、倒すために武器を持つ。

歓声が大きくなり、戦闘の熱量がこちらにまで伝わってくる。これが魔法戦、プライドをかけた本気の戦い。


応援する私の中で、どこか冷めた目で見ている私もいる。

人が傷つく競技をなぜ応援しているのかと、16歳の私は確かに自分自身を非難していた。






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