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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
42/125

【10】



あの後。

最初調子の悪そうだったユーグリッド嬢は鬼気迫る顔で次々と正解し、産地当て対決は青チームの勝利となった。


私が叫んだ後、目が合ったような気がしたのだけど、戻ってきたユーグリッド嬢に聞けば「気のせいですわ。自意識過剰じゃなくて?」と返ってきたので事実はどうあれもう諦めることにした。

体調を考慮して医務室に行こうと他の令嬢が促したが、体が軽くなったから大丈夫と歓声エリアに居座り続けた。









そして、まもなく魔法戦が始まる。

空気がピリつき、ざわつきながらもどこか冷たく糸を張っているようだ。


「! ネアシェ、あそこ!」

「…ついに、始まるんですね」


競技場のメインモニターの下にある、ガラス張りの特殊な部屋のような部分。そこへ軍人と、数名が入って来た。

ロンギヌス様は観戦エリアにいない。彼は。




『ここでご登場頂きます。

我らが太陽!







皇帝陛下です!!』



全員が立ち上がって大きな歓声が上がり、拍手と共に皇帝陛下を賞賛する言葉が続いた。

手を上げ笑みを浮かべて頷きながら私達を見渡す陛下の隣には、アインルーガ様とロンギヌス様の姿がある。2人共微笑み、同じく賞賛に応えている。

皇帝陛下の前にマイクが浮くと、周囲は静まりかえった。



『まずは、今日はこのような良き日に恵まれた事を祖先ソルアルファに、そして聖女オルガンテに感謝しよう。


毎年学園の魔法戦は見ているが…若き才能と努力、研鑽の成果を感じるたびに、将来我が帝国を支える人材が増えるであろうと確信している。








若き力を、存分に発揮してくれ』


マイクが離れ、人々は拍手と賞賛を送る。

皇帝陛下と殿下達は椅子へと腰掛け、私達も席へと座った。


「皇帝陛下、久しぶりに拝見しましたわ。最近あまり具合がよろしくないと聞き及んでいましたから」

「最近公の場であまり姿をお見かけしませんでしたしね、今のところ具合悪そうには見えませんが……」

『それでは、魔法戦の競技説明です!』


メインモニターへと説明が表示され、視線を向ける。



『各チーム、代表選手を選抜して戦い、最後の勝者を目指す!シンプルですが実力が全てです!


代表選手の人数は、年代とあわせて選択する形で3パターンございます!

6年生4人とするパターン。

6年生1人、5年生2人、4年生2人の計5人とするパターン。

各学年より1人ずつ選出し計6人とするパターン。

各チーム、戦略やバランスを見て決めている事でしょう!』


私達の青チームは二つ目のパターンだ。

魔法戦リーダーを6年生のヤクト様、5年生からミレイユ嬢とスレイヴ様、4年生から水の魔法使い2人。

完全にレオニダス対策と分かるメンバーだ。



『戦闘には擬似体力(ダミーライフ)を使います!

擬似体力がゼロになるとその選手は脱落!

勝敗は簡単、最後に立っていたチームが勝者であり、最後の1人が倒れた順番に順位が決まります!


脱落した選手は戦闘中の選手への妨害や手助けは禁止です、チームごと失格となります!

それでは待ちに待った、各チーム入場です!』



ガコン、と競技場の壁の一部が開く。





『まずは現在四位!黄チーム!

6年生4人のチーム!

魔法戦リーダーはワイス・バーミリオが勤めます!

水のエキスパートと名高いワイス選手ですが、やはり彼への対策でしょうか!近接戦闘が有名な面々に見えます!』


メインモニターに黄チームのメンバーが映し出される。男性が4人、属性は違うが武道に長けた方々だったと記憶している。

ワイス卿はファクトヒルデ家の領地の一部を治めるバーミリオ伯爵家の子息であり、その水属性魔法の強さは初等部内でも有名だ。




『そして、現在三位!緑チーム!

こちらも6年生4人のチームであり、魔法戦リーダーはダルシアンです!

リーダーでダルシアン選手のみ平民という形ですが、その実力は本物!』


ダルシアンさんは地属性を扱う魔法使いで有名であり、彼が魔力測定でグラウンドを割ったという逸話はあまりに有名だ。

平民でありながら貴族も一目置く、頼れる兄貴分といった形か。






『そして終盤で勢いに乗り現在二位!青チーム!

4年生から6年生までとなる5人体制で、魔法戦リーダーはヤクト・シルフ・テラウィリスが勤めます!

ヤクト選手は数々の功績を持ち今後を期待されている選手です!水属性3人という構成ですが名のある選手は少ないか?ダークホースに期待です!』


メインモニターへと微笑んだヤクト様が映ると、チーム問わず令嬢達から歓声が上がりヤクト様が軽く手を振ればキャアキャアと甲高い悲鳴が響いた。




「……私の初攻略キャラの顔がこんなにカッコいい……」

「? メイルーン?」

「何でもありませんわ」


全員が運動着から防御能力のある戦闘装備へと格好が変わっている。ファンタジー漫画に出てくる軽装にも感じる戦闘用の装備だが、術式構築の速度上昇や魔法攻撃力の上昇など様々な効果がある。

闘技場で貸し出しも行なっているが、貴族などは大抵自前の物だ。

青チームのリボンがアクセサリーや衣服についていて、それが各チームの目印でもある。ミレイユ嬢はリボンを髪に編み込んでいるようだが…ブルブルと震えているのが見えた。


「ミレイユ嬢、緊張しすぎです!代表なのですから、胸を張りなさい!」


競技場の方に言えば歓声の中でも聞こえたらしく、ミレイユ嬢はこちらを慌てて見上げて頷いた。

登場してからずっと地面に向いていた視線が他のチームを見据えるようになったので上等だろう。

スレイヴ様も声をかけているので、緊張で動けなくなる事はなさそうだ。







『そして、現在一位!赤チーム!!

4年生から6年生の5人体制!魔法戦リーダーはティナシア・マルローエ!

リーダーの中では唯一の紅一点であり、初等部で最高の無属性魔法使いと言われています!』


メインモニターに美しい女性が映し出される。細身ながら自身に満ちた表情をしており、男子達の野太い歓声に応えている。




『そして、もちろんこの男がいないと始まらない!





初等部最強と名高い火属性魔法使い!

レオニダスだ!!』



男女入り混じり、大きな歓声が上がる。

女子からも人気があり、男子や平民からは憧れとなっているらしい。

メインモニターに戦闘装備に身を包んだレオニダスが映し出される。赤いリボンで髪をくくり、戦闘装備も赤系統の色で纏められていた。




『一昨年以外は全て勝利チームに所属し、去年は御礼参りのように全チームを燃やした天才児!!

各チームから対策を練られている今年は、どのような戦い方を見せてくれるのか!?』





各チームが競技エリアのスタートポジションに着くと、観戦エリアと競技エリアの間に壁のような物が張られる。

戦闘が始まるため魔法の被害が出ないように競技エリアを防護壁が覆うのだ。防護壁はしばらくの後に空気に溶け込むようにして目に見えなくなる。





『それでは、審判のレイサ先生!

よろしくお願いします!』

『はい』


レイサ先生が競技エリアの中央へと現れ、マイクと杖を持っている。



『それでは、最終対決。魔法戦を始めます。

全チーム、用意……』




杖を掲げ、先端で地面を叩くと、スタートポジションを覆っていた防護壁が消える。





『試合、開始!!』


全員が一斉に駆け出し、歓声が上がった。




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