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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
41/125

【9】




「お帰りなさい、ネアシェ!」

「ただいま戻りました。手伝いありがとう、メイルーン」

「いいえ、とんでもないわ!」


調合対決が終わり、競技メンバーが観戦エリアへと戻って来ると、ネアシェを青チームの面々は騒がしく迎えた。

他の頑張った方々も労わりつつ、やはり勝ったのはネアシェのおかげだ。





「何を作ったんですか?小さくて良く見えなかったのですが…」

「ああ、使うと睡眠導入効果が発揮されるヘアセットコームよ」

「たしかに、日用品ですね…!」


ヘアセットコームとは、(くし)だ。

髪を梳かすと睡眠導入効果が発揮されるものらしく、確かに課題通りのものだ。


「でもメイルーンがいなかったら間に合わなかったわ。あの液体、完全冷凍するまで時間がかかるとそれに伴って冷凍保存しなきゃいけない時間も延びてしまうの。解凍も中々してくれないし」

「だから瞬間冷凍、瞬間解凍だったのね」

「ええ。調合はともかく、ヘアセットコームを作るのが大変だったわ。木を魔法で削って作ったのだもの」

「調合はともかく、なのか…?」


ロンギヌス様は口元が引きつっていた。確かにそう軽く薬品類を作れては困るだろう、色々と。


「とにかく!これで流れは出来た、次の競技も点数を取りに行くぞ!

任せたぞ、ユーグリッド!」

「はい、殿下」


ユーグリッド嬢や取り巻きの令嬢達はこの後の魚類の産地当て競技に参加する。

ぞろぞろと競技エリアへと向かう途中、こちらを見る。


「勝たせて頂きますわ。あなた方だけにいい格好はさせません」

「ええ、応援しています」

「まあ、恥をかかないよう頑張ってくださいな」

「本当に口の減らない方」


ユーグリッド嬢はフンと鼻を鳴らし観戦エリアから出て行った。

令嬢達も挨拶し後に続く。


「素直になれない方なのですね」

「今のを聞いてどこからその感想が…?」

「私達に負けないよう頑張りますって言ってませんでした?」

「ネアシェ、翻訳し過ぎですわ…」


私達も応援するために席に戻った。














競技エリアに向かうユーグリッドの足は重かった。


ーーーネアシェ様にあんなに活躍されては、こちらの派閥の面目丸つぶれですわ。絶対に勝たないと………。


ロンギヌス派閥が足を引っ張っているように見えてしまう事を危惧していた。もちろん、ヤクトが平民などを競技メンバーに組み込んだ事で、その者達がいたから負けたと逃げ道を作る事は出来る。

だが帝国貴族である以上、勝利は絶対なのだ。

ユーグリッドは現在、ロンギヌス派閥の看板を背負ったつもりで競技に臨もうとしていた。魔法戦に参加するミレイユも、信用はしていないからだ。


ズシリと、一段と体が重くなった気がした。



















「…ユーグリッド嬢?」

「どうかしましたか?」


競技エリアへと出て来たユーグリッド嬢に、一瞬違和感を感じたのだ。

ーーーなにか、黒いもやみたいなのが見えたような…?


「眠いのか?」

「そんなはずございません」


ロンギヌス様の冗談なのか本気なのかわからない言葉はスルーしつつ、目を擦ってみたが黒いもやは見えないし、見間違いだったのだろう。


「おっと、魔法戦参加者はそろそろ準備しないとね」


ヤクト様が立ち上がり、スレイヴ様も頷いて立ち上がる。そう、この競技の後はいよいよ最終対決、魔法戦なのだ。

あまり盛り上がる事のない産地当て対決を前にすることで、次の魔法戦へ体力や気力を回復させる目的がある。


「…ミレイユ嬢、どうしましたの?」


ミレイユ嬢が辺りを見回したり自身の装備などをめくって何かを探している。ちょっと、お転婆ですわよ。




「あの、水属性を強める装備として御守りを持ってたんですけど…見当たらなくて」

「御守り?」

「はい…青い生地に黒めの装飾なんですが…」

「見当たらんな…」


辺りを見渡すがそれらしき物もない。探知魔法を発動させるが、付近にはないようだ。


「しょうがないですわね…私のを持っていきなさい」

「え、えぇっ!?」


装備の一つであるネックレスを渡す。これは結構気に入っているもので、今日もアクセサリーとしてつけてるのだが、水属性強化の効果がある。


「ほら、早く行きなさい」

「え、え、あ、っあとでちゃんと綺麗に磨いて返します!!」

「わかりましたわ、ほら早く」


背を押して魔法戦のメンバーへと合流させる。なんども頭を下げられたが、早くと促せば観戦エリアから出ていった。


「全く、もう…騒がしいのだから」

「…メイルーン」

「何、ネアシェ?」

「ユーグリッド嬢の様子が…」



















『どうした?青チームは回答に手間取っているようだ!』


ーーー味が、しない。


口に運んだ魚の、産地を答える簡単な競技。魚の名前は分かるから、あとは味の濃さや締まり具合で分かる。分かる、はずなのに。


ーーーラインセルン公爵令嬢として、その程度出来なければ!





「ユーグリッド嬢!!」

「っ!」


「何してるんですの!?私達だけにいい格好させる気です!?」


観戦エリアから響く、腹立たしい声。

絶対に負けたくない、全てにおいて越えるべき相手。

5年生になってからこちらを敵視する様子もなく、まるで子供に対するかのような扱い。

今回の大会も忌々しいミレイユ嬢に修練する延長で、他のチームメンバー…ましてやロンギヌス様とも有効的に話している場面を見かけるようになった、あの女。


ーーー絶対に、負けるわけにはいかないのよ!!



「うるさいですわよ!!

正解はアリヴァ領、フィーセルン湿地帯に生息するリペナですわ!」

『解答出揃った!正解はーーー

フィーセルン湿地帯産!ユーグリッド嬢、正解だ!!青チームに得点!』




わあっ!と歓声が上がった。






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