【14】
「2日目、終了ー。
まあ残念だったな、おつかれさん」
タイムアップで全員が会館前の広場に転送され、魔導書を得たチームはいないと発表され討伐数がそのまま点数に反映されると教えられた。
順位が発表された訳ではないのだが、恐らく私達のチームは良い方だろう。途中の事件がなければ恐らくトップだったのではないだろうか。
「林間学習のメインイベントは終了だ。
ちなみに魔導書は…」
リンドウ先生が手を翳せば、魔導書は空中に出現した。
紫と白の装飾がされた大きめの本であり、見る角度によって本の生地の色が違うのに気がつく。
「この通りちゃんとあった。惜しかったのはアインルーガ達のチームだなー、もうちょっと早ければなー」
「はい…?」
「どういう事ですか!」
先生の言葉に噛み付いたのはロンギヌス様。だが意にも介さず先生は続ける。
「お前ら、数チームに協力して貰ってたろ。ちょっと地図に細工してあってな?捜索範囲が全域埋まったらこの会館に魔導書が出現したんだよなー」
「なっ!?」
「もうちょっと早く他のチームに声かけて全員で協力すれば、ゲット出来そうだっんだがなー」
「どういう事ですか!そもそも最初から現れていないなんて…!」
「資料見ろー、最初は出現してないって書いてないだろ」
ぐっ!とロンギヌスが悔しそうに睨みつける。リンドウ先生は緩い雰囲気を消し、真剣に全員に話しかける。
「今年は全員協力前提の課題にしたのは、それが1番足りてないと思ったからだ。
他のチームとの戦闘不可、も最初は書いてなかったんだがな?武力で従わせた奴らが昨日数人いたから追加させてもらった」
ロンギヌス派閥の取り巻きがチームにいたため、脅されて食材の献上を余儀なくされたと不満を零していたチームがいたのは、昨日の談話室で聞いて知っている。ユゥイさんのチームもその1つだったという。
ちらほらとバツが悪いように俯く彼らがそうなのだろう。
「この学年は全体的に学力や戦力が強い反面、チーム戦や協力という事に不向きすぎる。
今年は覚悟しとけ」
リンドウ先生が指を鳴らすと魔導書は消え、先生方は解散!と言って会館へと戻っていった。
残された生徒達は気まずそうな者、なっとする者、憤る者。様々な者がいたがロンギヌス様は分かりやすかった。
アインルーガ様を睨みつけるその目は、今にも射殺さんとしていた。
「…アインルーガ達、流石に疲れましたわ。夕食はすぐのようですし、一度解散致しませんか?」
「そうだな…レオニダス、ネアシェも助かった。一度部屋に戻ろう」
「ああ」
「はい」
私達が動き出し、その後に続くように他のチームも戻り始めた。
「メイルーン様、ネアシェ様、お疲れ様でした!」
「流石はお二方ですね!」
「あら、こちらこそ共有させて貰って助かったわ、ありがとう」
「むしろ成果を得られなくてごめんなさい」
「いいえ、とんでもございません!」
「わたくし達こそもっと探せていれば…」
協力してくれたチームメンバーと話しながら会館内に向かう。中に入る際に後ろを見れば、ロンギヌス様が他の貴族達に詰め寄っているのが見えた。
少し心配だが、ああいう場合は声をかけないほうが懸命だと身を持って知っている。
その日の夕食時。外の方が若干騒がしくななり、少し覗いた生徒が「学園の先生達だ」と呟いた。
私達やララさん達のチームは心当たりがあり、顔を見合わせる。十中八九湖の件だろう。
「リンドウ先生や他の先生方も夕食の場に来ませんし…結構大ごとになってますね?」
「ええ…」
先生方は管理棟の上の階に上がっていったようだ。そこには管理人室しかない。
どこか胸騒ぎを覚え、食事は中々進まなかった。
食事をした後、会館入口の受付へと向かう。
「こんばんは」
「おや、こんばんは」
受付の窓口には初老の男性がいた。普段この受付にいる方で、穏やかにこちらを見守っている印象が強い。
「今日、湿布薬を取りに来た子はいますか?」
「いいや、まだいないねえ」
昨日の夜、こちらで湿布薬を貰ったのだ。どこか怪我したのかと聞いてくれたが自分でない、と言えば何か察したのか湿布薬を手渡してくれた。
というか湿布薬を取りに来てないなら、ミレイユさんの怪我はどうなっているだろうと考える。
「今日も持っていくかい?」
「…後で、また来ます。もしそれより前に別の子が来たら渡してあげて下さい」
「うん、分かったよ。そういえば…君のチームメイトが先程外に出て行ったが、大丈夫かな?」
「?」
「声かけたのだけど、聞こえてなかったようだから」
チームメイト…?
会館の裏手には広場があり、月が隠れている影響もあり薄暗い。
大きな木の近くにベンチが置いてあり、そこにはレオニダスが座っていた。
彼の漆黒の髪は夜闇に紛れていると赤みを帯びて見えるのだなあ、とわかる。
紅い瞳だけが暗闇に煌めいてあるだけだと恐怖するかもしれないが、髪のおかげで何となく輪郭が分かる。
珍しく、接近しても気配で察せられず足音が聞こえてこちらに気付いたようだった。
「お前…」
「結構前に出て行ったのに戻ってこないと受付の方が心配してましたよ」
レオニダスが驚いたようにこちらを見て、ゆるりと目を逸らした。いつも活発に動いている印象の彼からは想像し難い、弱々しい動作だった。




