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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
26/125

【10】






【林間学習2日目の内容、エルスヴァティに眠る魔導書を探せ。

目標:エルスヴァティの森に隠された魔導書を探し出し、手に入れる事




・範囲はエルスヴァティの森、立ち入り禁止区域以外の全域とする。

・1日目と違う魔物が追加で出現する。

・森林の破壊行為、及び他のチームとの戦闘不可。

・昼食は各々で調達する事。昨日の宝箱も復活し、食堂で軽食は用意してある。

・魔導書の効果を得られるのは最初に触れた1人だけ。1チームではない。

・タイムリミットは17時。

・誰かが目標達成した段階で終了。達成者のチームにのみ点数が入る。

・17時になると強制的に会館へとワープし、目標達成者はいない事とする。その場合、各チーム毎に魔物の討伐数にて点数を決め、魔導書は誰の手にも渡らない。




管理棟には教師2人以上、治癒魔法使い2人以上が常時いる。

緊急時などは通信も利用するように。】





「森林全域で本探し、ですか…」

「ある程度当たりをつけないと無理ね、これは」

「確か湖…あったよな、大きめの。あそこもか?」

「全域、だから対象だろう」



発見までの難易度が高すぎる。

少しでも判断を誤れば、ただ無駄な時間を過ごすだけだろう。森林の全域を捜索するなら1週間くらい必要な広さだ。

しかも本を捜索しながらとなると、尚更時間がかかる。






「他チームとの戦闘不可…」

「これ、無茶では…?」


1つの魔導書を求めて何十ものチームが動く。実際、会おうものならライバルを減らそうと戦闘になりそうだ。



「戦闘以外だと逃亡ですかね?拘束…は戦闘行為に当たるのかしら」

「…そんな事をしていたら時間がなくなる」



アインルーガ様は何か引っかかってるのか、難しい顔をしている。レオニダス、ネアシェも違和感を感じているようだが思いつけないみたいだ。

ゲーム本編で初等部5年生の林間学習の内容なんて出て来る筈もないので、私も思い出せる事がない。




「……というか、魔導書の発見が困難なら…1番最後に書かれた魔物討伐数を稼いだ方が良い気がします」

「同感だ」


これだけ無茶な条件なのだから、魔導書を得る事は諦め、誰も手に入れられなかった場合の高得点を狙う。意外にもレオニダスが同意してくれた。彼はなぜか先程から不機嫌全開だが。



「これ誰も目標達成させる気ないだろ。無理に森林の中歩き回って体力消耗させるより、そっちの方が現実的だ」

「そうですね…私も、それでよろしいかと」

「元々、魔導書にあまり興味ありませんし…アインルーガ様も、それでよろしいかしら?」

「…ああ」



そうと決まれば行動あるのみ、とその前に食堂へと声をかける。

軽食はもう用意出来ているらしく、小さいクーラーボックスのような物に入れて渡してくれた。軽量化と冷却効果のある魔法道具で、軽食と飲み物が4人分色々入っているのに全然軽い。ペットボトル一本分くらいだろうか。

準備している間にレオニダスにどうしたのか聞いてみたが、なんでもねぇ、と冷たく返されただけだった。











剣に力を(シャープネス)!」

「はあっ!」


ネアシェの魔法で強化した攻撃が魔物の体を貫けば、血を流した後に霧散する。

ーーーこれでこの戦闘最後の魔物だったらしく、戦闘フィールドは解かれた。ピコン、と通知音が鳴りステータスを見る。


「これで基礎レベル6、ですわね」

「ふふ、いつの間にか追いつかれてしまいました」


昨日の戦闘と合わせて2日間で相当上がった。4人で戦闘しているため、順当と言えば順当。ネアシェは支援などで貢献度を上げているため経験値の配分が少ないが、もう少しでレベルアップという所だ。


基礎レベルは6から少し上がりにくくなる。原理は分かっていないのだが、レベルアップに必要な経験値がいきなり上がるからだ。ゲームでもそうだった。

なので同じ戦闘をこなしたアインルーガ様とレオニダスは先程やっと基礎レベル10になった所。魔物側のレベルが低い場合配分された経験値からある程度マイナスされてしまうからなのだが、この辺りの魔物は平均レベル8のためこれ以上は難しそうだ。




「今ので…討伐数14、だな」

「ほら、さっさと次行こうぜ」



レオニダスは先へと歩き出す。始まった時から急いでいる様子で、落ち着く暇もない。

不機嫌なまま進もうとするレオニダスに声をかける。



「ちょっと、レオニダスさん。ペースがあまりに早すぎです」

「何だよ、ご令嬢。お前に合わせて欲しいのか?」

「令嬢じゃなくても疲れてしまいます。私ではなく、チームのペースを整えましょう」

「討伐数で負けたらどうするんだよ」

「このチームの戦闘能力は高いです」

「そんな事は分かってる!」

「ですが、まだ力を使い果たす訳にはいきません。スタミナは無尽蔵ではないのです」



言い合いは加熱し、レオニダスと睨み合う。いつもの嫌味などでなく本気の喧嘩だが、このまま進まれては最後の方に絶対持たない。



「2人とも、やめろ」

「…もう、お昼も近いですし…食事にしませんか?ほら、もうすぐで湖ですし」

「…分かった」

「ええ、そうしましょう」



アインルーガ様が止めて落ち着かせ、ネアシェが穏やかに休むよう誘導する。

2人のおかげでレオニダスは一旦頭から血が引いたようで、私も安堵に息を吐く。



「ありがとう、ネアシェ」

「いいえ…このまま行くと、最初にスタミナ切れするのは私でしょう?だから休みたかったのです」



ネアシェはにっこりと笑い、さあ行きましょうと言って歩き始める。隣になったアインルーガ様に声を恐る恐る声をかける。


「…レオニダスさんが朝から不機嫌な理由、わかりますか?」

「あいつは、ロンギヌスが嫌いだからな…」



だからか、と朝を思い出す。

ロンギヌス様にアインルーガ様が罵られた時、メイルーンが舌戦をしている時。レオニダスは俯き何も言わずにいた。机に置かれた拳は血が滲むほど握りしめていたけれど。




「なぜ、は言わなくても何となくわかりますけれど…」

「想像している事で正解だと思うぞ」



さあ行こう、と進んだアインルーガ様の後を追った。




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