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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
20/125

【4】



「ともかく、私が1番懸念しているのは主食の件なのだけれど」


お米やパン、麺など食事の基本となるものの調達手段が見当たらない。パンや麺などは元となる物があれば製粉出来るかもしれないが時間も工程もかかり過ぎる。


「それこそ、宝箱なのでは…?」

「やっぱりそうよね…」


森林内でランダムで現れる宝箱。中身は食材か魔物か、との事だが加工食品や乳製品が出て来る事もあるらしいので、大幅に料理のレパートリーが広がるだろう。


「ではとりあえず、宝箱探しが最重要ですね…」

「他のチームも動き出している、私達も動こう」


アインルーガが立ち上がり、つられて他の3人も立ち上がる。作戦会議は終了、後は動くだけだ。




……先日、距離を置きたいと言ったばかりなのにこんなに近くになるなんて。

始まってから一度も目の合わない彼の背を追いかかる事しか出来なかった。










「…へえ、確かに敷地内から出たら武器が出せるようになった」


時計端末の機能の1つ、武器の収納。会館周辺の敷地内では武器にロックがかかるが、敷地を出た森林では利用出来る。

レオニダスの手には銃が握られていた。


「…!」


ライフルの一種であろうその銃は子供用なのだが、ちゃんと殺傷する能力があるのを知っているため恐れてしまう。ファンタジー世界、武器の制限とかないものね。

レオニダスは銃、アインルーガ様は剣、ネアシェさんは杖。そして私も剣を取り出す。アインルーガ様の普通の剣とは違い、レイピアに属される刀身の細い武器だ。




ちなみにだが、メイルーンはこれを使った事がない。綺麗で見栄えが良い、という理由で選んでいたため、授業などで戦闘を行う際には魔法しか使わなかった。

正直魔法使いタイプが前線武器持ってどうする、と思うのだが言える人間はいなかったのだろう。時間がなさ過ぎてレイピアを装飾でゴテゴテのものからシンプルなものに変える事しか出来なかった。







「私とレオニダスで前線に出よう。2人は後方にいるように」

「えっ?」

「戦闘能力的にはその方が良いだろう、2人をフォローする余裕はない」


確かに、ここの魔物のレベルは平均レベル8。アインルーガ様とレオニダスは基礎レベル9らしい。


「えっ、ネアシェさんは…」

「基礎レベルは4ですね…治癒魔法を得意としてますので、あまり実戦は出来なくて…」

「それでもチームにとっては重要な存在だ。今回の林間学習でレベルも上げていこう」


はい、と答えるネアシェさん。まさか、四大貴族のネアシェさんも、経験値が入る戦闘を経験しているなんて…っ!

あれ?とニヤニヤした笑いを含んだ声がかかる


「あれあれ?四大貴族様のメイルーンお嬢様は、基礎レベルいくつ?平民の俺に教えてほしいなあ?」

「くぅっ…!」


経験値を稼ぐ方法はただ1つ、魔物を倒す事だ。他の皆は昨年度までの林間学習、及び他のイベントで魔物との戦闘を行った事があるのだろう。だが危険を嫌がったメイルーンはその全てを回避していた。

授業での対人戦は行った事があるがほぼ家名を掲げた八百長試合が多く、しかも対人戦では経験値が入らない。





「あまり煽るな、レオニダス。とりあえず、南の方に進んでみよう」

「全く…わかったよ」


アインルーガ様はレオニダスと共に歩き出し、私とネアシェさんもそれに追随すると、彼女がこそっと話しかけて来た。


「あの、殿下とレオニダスさんって、交友があるのでしょうか…?殿下への態度を見ていて、少し無礼ではないかと心配しているのですが…」

「ああ、ええと…」


ネアシェさんの言葉でゲーム本編の設定を思い返し、1人納得する。

確かアインルーガ様がレオニダスの家族を救った…とかだったと思う。ゲーム本編でレオニダスは貴族なため普通に話していたし仲良し…むしろ親友だったが、今は身分の違いがある。






ーーー幼い頃あいつは、俺が住んでいた下町に身分を隠して良く足を運んでいて…一緒に遊んでいたな。

正体が分かった後は、アインルーガを護るために腕を磨いた。将来、あいつの剣となれるように…盾となれるように。貴族になって、それが容易くなったと思ったのに…縛られるばかりで、何も出来ない。

そればかりか、あいつを追い詰めてるだけだ。ーーー




ゲーム本編のレオニダスの言葉。

アインルーガ様はメイルーンのせいで最後には処刑される。……が、レオニダスのトゥルーエンドでのみ生き残る。主人公とレオニダスが共に協力し、アインルーガ様の功績を証明する事で刑を軽くするのだ。

多分、今のレオニダスも同じ…アインルーガ様を護るため、学園にいるのだろう。


「…恐らく問題ありませんわ。それより、私に対する態度の方が無礼と思いません?」

「ふふ…私には、互いに楽しそうに見受けられますが」

「楽しそう…?え、どの辺りが…?」

「えっ全面的に…?」

「いやいや!?ありえないから!」


衝撃的な言葉に思わず言葉使いが現代の私になってしまったのは、しょうがない事だと思う。

だがアインルーガ様の声が聞こえ、前方を見れば魔物。


「フィールド展開!」




アインルーガ様の手によって周囲に円形の戦闘フィールドが展開され、それぞれ武器に魔力を込める。このフィールド展開がないと魔物がどんどん追加されてしまう可能性があるのだ。

私には見慣れたゲームの戦闘画面のようにも映る。


魔物は三体。








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