表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
18/125

【2】






「わあ……」


ぐにゃりと地面が歪む感覚がしてしばらく、光が収まったと思ったら緑の匂いがした。

目を開ければ目の前には木々が生い茂り風にそよいで音を立てている。






私にとって、初めての屋敷と学園以外の場所。気分が高揚するのもしょうがないと思う。






「転送、無事終了です」

「おっけー、気分悪いのいないかー?」

「せんせー!」


先生を呼ぶ声が3つくらい聴こえてきて、その側には座り込んだ生徒達。すぐさま付き添いの先生が近くにあったベンチへと誘導する。

リンドウ先生は全員に声をかけ、会館の前まで移動させる。会館の前に一列にいたのは管理の方々で、管理人や警備、清掃の方などが紹介されていく。その紹介をぼんやり聞いていたのだが、ふと隣を見遣るとレオニダスがいた。会館を見ているようだ。こちらに気付き怪訝そうな顔をした。


「何、何か用?」

「ちゃんと紹介聞いてます?」

「聞いてるよ。会館の方が気になるだけ」

「ああ…」


会館…というよりさながらホテルなのだが、凄く強い魔力で守られているのが分かる。学園や皇城に負けないほど頑丈そうな結界で、多分知らずに触れれば灰になるだろう。


「こんな森深くにあるのに結界張りすぎ」

「貴族が泊まるんですもの、不思議ではないと思いますけれど」

「たかだか二泊三日のために張る枚数じゃない」

「ああ…」


確かに、結界を幾重にも幾重にも重ねている。三日分などではなく、2週間くらいは持ちそうだ。





「はい、注目〜」


紹介が終わりリンドウ先生が林間学習で使うマニュアルを出すように指示する。マニュアルは腕時計状の魔法道具に入力されており、起動すれば空間上に情報を映し出してくれる。この魔法道具はメモ機能や通話機能なども付属されている優れモノであり、特殊なイベントでないと生徒達に与える事はないという。

マニュアルを表示すれば注意事項が書かれていた。






・中央の棟を中央棟または管理棟と呼び、食堂、ミーティング室、会議室などはこの棟に存在する。管理棟入り口には受付があり、人が常時いるので何かあれば受付へ。

ただし最上階の管理人室には近づかない事。


・建物向かって左側の棟を男子棟、右側の棟を女子棟とし、互いの棟に行き来する事は出来ない。何か用事がある際は管理棟で済ませる事。


・外塀から外に出る場合は事前に申請が必要。申請なく出ようとした場合は火傷では済まないので要注意。


・夜10時以降は消灯時間とし、灯りをつけない事。各棟に警備が巡回するため、何かあれば声をかける事。


・朝6時に鐘が鳴る。起床時間であるため寝過ごさないよう注意。









マニュアルをレイサ先生が読み上げ、内容は要約するとそんな感じだった。

……3つ目が不穏なのだけれど。



「他にも細かい事が載ってますから、手が空いた時に読んでおくように!」

「それじゃ、とりあえず一旦各部屋に荷物置いて来い。で、12時までに食堂に集合な」

「部屋割りと会館マップは端末に入ってますから、確認して向かうように。時間があれば色々見て位置を把握して下さい」


現在10時頃。2時間も、と思うが会館が広すぎて移動に時間がかかりそうだ。生徒達はぞろぞろと移動し始める。





「あれっ、メイルーン様?お荷物それだけですか?」

「ええ、必要な物は事前に送っておいたの」


元取り巻きの1人が共に向かいたがったので、部屋まで行く道筋を見ながら一緒に歩く。どうやら近い部屋みたいだ。

と、あら…と令嬢が言葉を漏らしたので見れば、ミレイユがいた。それも1人だ。


「あの子…いつも男子といますものね。男女別ですと、ああなるのも仕方ないですわよね」


これは、チャンスかもしれない。落ち着いて話す良いタイミングになるかも。と思ったら、ミレイユもこちらに気付いたらしくそそくさと退散していった。


「まあ、挨拶もなく…失礼な子ですわ」

「…昨年度までの私達の行動を思えば、当然かもしれませわね」

「そうかも…しれませんね」


おっ、と令嬢を見遣ればどこか申し訳なさそうで、もごもごと口を動かしている。にっこりと笑いかけて歩を進める。


「私、もう陰湿で愚かな事はやめましたの。アインルーガ様ならば、ロンギヌス様を蹴落とす真似をしなくても皇帝陛下になられますわ」

「そ、そうですわ、素晴らしいですメイルーン様!」




取り巻きの悪役令嬢には二種類いる。便乗する者と、虐めを楽しむ者。

便乗する者には自分はもうやる気がないと公言すれば虐めない場合が多い。そして後々追求される事がないように虐めた者に対して謝りを入れたりと予防線を張るのだ。

虐めを楽しむ者は……もう勝手にしてという気持ちが強い。こういった対処を学園が始まった頃からしているのに行う人は学習能力がないと言わざるを得ない。







部屋に到着し見れば、宿泊先と思えないほどに部屋のレベルが違う。

お父様やお母様に身の回り以外の荷物を任せてしまったのは失敗だったかもしれない。



「はわあ…さすがメイルーン様…」

「こらララ!勝手に覗かないの、失礼でしょう!」

「あら、お二人とも。荷解きは終わったの?」


荷物を持っていない状態の2人を部屋に迎える。どうやら同じ階層に部屋があるようだ。


「はい、そんなに荷物多くなかったので…」

「メイルーン様はご到着されたばかりですよね?すみません、ララが見て回りたいって聞かなくて…」

「ふふ、大丈夫よ。荷物を置いて施設を見て回ろうと思ってたから」

「本当ですか!?あ、あの…よろしければ…一緒に見て回りませんか…?」


ララさんが言い出し辛そうに発した言葉に私も嬉しくなる。


「ええ、よければこちらこそお願いしたいわ。ユゥイさんもよろしい?」

「ええ、勿論です」




私と2人は施設を見ながら食堂まで向かおうと、部屋から出て歩き出した。

背後から、こっそり扉を開いて見る影に気付かずに。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ