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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
17/125

【1】第三幕:林間学習始まりました。




汗ばむ陽気となる日が増えて来た頃、林間学習は開催された。

やはり下調べした通り、エルスヴァティの森にある学館が宿泊先だった。魔法の修練や宿泊部屋や食事当番の取り決め、レクリエーションの企画など。そこそこに問題も発生したが、何とか実行出来るレベルでまとめる事が出来た。

それもこれも、平民ながら頼り甲斐のある学年委員長のおかげだろう。





朝、グラウンドに向かうと生徒の大半が集まっていた。


「メイルーン様、おはようございます!」

「おはようございます」

「あら、おはよう。ララさん、ユゥイさん」


何の因果か、ララさんとユゥイさんと普通に話せるくらいまでに仲良くなった。そして距離を置いていた令嬢達とも挨拶をする。シドレ家の仲裁が効いたのか、最近は大人しい。





しばらく談笑していれば、先生方がグラウンドへと現れた。

引率の代表である我らが担任のリンドウ先生、そして副担任のレイサ先生だ。


「お、揃ってるなぁ。そしたら早速だが、移動魔法陣の形成を始めるぞー」


複数人で行う大規模な移動魔法。これを利用しエルスヴァティの森の学館まで移動する。

先生方だけでも発動可能なのだが、無属性の適性がある者は希望すればお手伝い出来るのだ。

無属性は多種多様であり一番汎用性が高いのだが、適性を持った人が少ない上にレベルが上がり辛い。故に師事する所も少なく、間近で魔法を見るのは貴重な機会でもある。


「まずは速さより、丁寧に魔法陣を描く事に集中して下さい。型取りはしてあるから、なぞってみましょうか」

「はい、分かりました」


グラウンドに描かれた魔法陣に魔力を込めてなぞる。なぞるだけなのだがこれがまた難易度が高く、思うように魔力が込められない。

無属性を持つレイサ先生のやり方を見ながら行うが、先生が一本書き終わる時に私はまだ半分くらいだった。


「うーん…?遅過ぎかしら?」

「いえいえ、筋がいいですよ?なぞる事すら出来ない子もいますから。メイルーンさんは魔力制御が得意ですから、飲み込みも早いと思いますよ」

「そうですか?」


未だに無属性レベル1なので心配なのだが、先生の言っている事を信じよう。少し視線をずらせばネアシェさんがいた。彼女も無属性適性を持っていたらしい。偶然目が合い手を軽く振ってくれたので、こちらも小さく振り返す。


「はい、集中!」

「ええ、わかりました」「は、はい」




結局九割はレイサ先生が描きあげ、一割は私を含めた4人の生徒達で描きあげたのだった。先生が息も絶え絶えな生徒1人1人に声をかけている。


「ネアシェさん、発動までが長いですね。発動してからの制御は安定してますから、その時間を縮めていきましょう」

「は、はいぃ…」

「メイルーンさん、発動、制御共に安定してますが流れに任せ過ぎです。留める、という事を鍛えていきましょう」

「わ、わかりました…」


副担任のレイサ先生は緩い担任のリンドウ先生と違い凄く真面目で厳しい。息が整っていない生徒達に次々とアドバイスをしているが、まともに聞けているのはいないだろう。





「大丈夫?」

「ええ、だい…」


見れば、小馬鹿にしたような笑みを浮かべるレオニダス。疲れ切ってる女の子を見て楽しいのかしら?


「魔力制御に自信あるんでしょ?もうちょっと頑張れば?」

「適性を複数持ってるあなたならとっくに分かってると思っていたのだけれど、属性によって制御の感覚が違うのよ?忘れてしまったのかしら?」

「ああごめん、その感覚味わった事ないから」

「あら、そういえばそんなに制御せずに放つだけが得意だったわね?お気楽そうで羨ましいわ」


うふふ、あはは、と冷えた笑みを浮かべ睨み合う。クラスメイト達はまたかという風に呆れて見ていた。





「魔法陣は完成したから、全員陣の内側に入れー」


リンドウ先生の声がけに生徒達は陣の内側に入り、先生方も入ってレイサ先生と数名の教師達が魔力を練り上げ始める。


「先に行っとくと、移動魔法で時々気分悪くなる奴いるからなー。到着して具合が悪い、もしくは具合が悪そうな奴が近くにいたら報告することー」


全員が揃って返事をし、リンドウ先生がレイサ先生に合図をする。






「では行きますよ」





魔法陣が輝き出し一面を光が覆う。

光が消えた時には、グラウンドには見送りに来た者達だけが残されていたのだった。







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