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蒼海の奏者  作者: 鮭いくら
第1章
12/125

【4】



そう、そうだ。何故忘れていたのか。フルネームで覚えていたから、この時代と合致していなかった。




レオニダス・イフリート・アリヴァ。

御察しの通り、火を司るイフリートの名を(いただ)く、四大貴族だ。ーーーゲーム本編では。

今のレオニダスは平民だから、ファミリーネームはない。高価な服も着ていないし、立ち振る舞いも若干粗雑だ。

四大貴族でイフリートを戴くアリヴァ家は、かなり特殊。自らの血筋に執着がなく、才能さえあれば家族や護衛にする完全実力主義。確か…中等部に入学する頃、実力で見込まれて養子になったと設定に書いていたはず。

ゲーム本編では公式に出されている攻略キャラの全トゥルーエンドを見る事で解禁される、超SSレアキャラ…隠しキャラだ。本編で幾度となく主人公と絡むのだが、ルートに入ると面白いほど性格が変わった記憶がある。






「あっはははははは!!」

「「「!!??」」」


思わずレオニダスの方を見て大笑いしてしまった。ゲーム本編でのルートを思い出してしまったのだ。

今のレオニダスとゲームのレオニダスを見比べて、ちょっと似合わないにも程があると笑いを堪えきれなかった。


「メ、メイルーン様…!?」


涙が出そうなほど笑う私を見て周りはザワザワしていた。流石にマズイかなと思った瞬間、肌を熱風が通った。


「!?あっつ…!?」

「へえ」


目の前にレオニダスが立つ。


「人の魔法を見て大笑い出来る四大貴族サマは、果たしてどんな魔法を見せてくれるんだろうね?楽しみだなあ?」


にっこり…と笑うレオニダスの、目は殺気に満ちていた。











「いやぁ、あれはお前がダメだろ」

「…私も、魔法を見て笑ったのではないんですよ?」

「じゃあ何で笑ったんだよ?」

「……」


ゲームで散々見たレオニダスの美麗画像が、全て先程の笑顔に塗り変わってしまった。あの顔はしばらく恐怖画像として頭に残るだろう、夢に出たら泣きそうな気がする。


「はい、水が適性あり。あと無属性も適性ありだな」

「あら…」


ゲームではメイルーンは水属性しか使っていなかった。あと、闇属性。無属性は聞いた事がない。去年検査を受けてないから、2年間で何かあったのか、それとも転生した事で変わったのか。

そんな事どうでも良くなるくらい、背後からの視線が怖くて痛い。


「んじゃ、次は魔力検査だなぁ」

「はい……」


無属性の適性は初めてわかったから、水属性の1番強い魔法を唱えれば良いのだが…多分、先程のレオニダスの魔法を超える事は出来ないだろう。

メイルーンは何よりも努力が嫌いだ。努力は何も持たない者が勝手にやっている事で、自分は全てを持っていると思っていたから、魔法の修練も行なっていない。


「…水よ」


ふわりと周りに水が浮く。野球の球くらいの大きさから、バスケットボール、バランスボール大へと大きさを増していく。


「意がままに舞う雪花よ、散る事願い(あた)わず。

咲け、(ラプ・ア・)氷の花(アブソリュート)


人1人覆えるほど大きくなった水球の中心から氷始める。それは花開くように少しずつ、水を氷に変えていき、いつしか雪結晶に花を散らしたような氷のオブジェとなる。…修練せずにこの強力な魔法を使えるのだから、メイルーンは宝の持ち腐れだったと言っても過言ではないだろう。

見ていたクラスメイトから、次々に驚愕しながらも讃える言葉が飛んでいた。


「凄い!」

「流石はメイルーン様!」

「美しいですわ!」

「氷の花なんて、素敵です!」





そんな声が次々に響いて氷花に全員が夢中な頃、レオニダスが呆れたように息を吐く。


「美しさを優先した魔法なんて、流石は貴族サマ。俺には真似出来ないね」

「そうかしら?魔力制御に関してはあなたに負けていないつもりなのだけど」

「……ふん」


レオニダスは背を向け、この場から去っていった。

そう、氷花は水中で凍らせる所を制御し、花状にするのだ。ただ水を凍らせるのであれば水属性の適性があれば大抵の人は出来る。水を空中に維持したまま氷へと少しずつ変化させる、繊細で緻密な魔力コントロールと集中力があって初めてできる魔法。



良く出来たほうね、と安堵の息を吐いた。








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