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カレンデュラ・カプリチオ  作者: 琳谷 陸
2.脱出ゲームin異世界
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41.そこから何があったのか

41.そこから何があったのか




 繭から突き出た腕。そこから何があったのか。

 簡単に言うなら、阿鼻叫喚(あびきょうかん)この一言に尽きる。

(…………もう、とりあえず、何も今は考えたくない)

 マリの目が遠くなり、記憶の整理として思い出す光景はこうだ。

 まず、繭から突き出た腕の主はガラルドで、肉色ヘドロに捕まって繭にされ、研究室の動力源(コア)に魔力を供給させられていたらしい。

 次に、それまで隠れつつその身のこなしをもって肉色ヘドロからも猿もどきからも逃げ続けていたらしきミウが開いた扉から駆け込んできて、ガラルドとミウの魔力に円柱上部にあった顔飾りが開眼(しかも白目なしの黒一色)、石膏みたいな見かけのくせに目も開くし口も開く。挙げ句どうも超音波のようなものを出したようで、マリやラッセルはわからなかったが、ミウは耳を押さえていた。

 その超音波が命令を出したのか、外を徘徊していた肉色ヘドロと猿もどきが大集結。

 魔力を使うラッセル達が肉色ヘドロと猿もどきを抑えている間に、マリが死ぬ気で走って円柱にたどり着き、ミウがすかさず円柱に大穴を空け、最後は近くにあったペーパーウェイトをマリが渾身(こんしん)の力で動力源の宝石に投げてぶち当て、同時に顔飾りは音を立てて砕け散り沈黙した。顔飾りの沈黙と共に肉色ヘドロも猿もどきもグズグズに溶けて消えた事で事件は終わった……が、本当の戦いはある意味そこからだったのだ。

(……患者大量生産されてたもんね)

 部屋にひしめき合っていた繭はガラルドが出てきた事でお察しだが、全部研究員が閉じ込められていたので破って救出。

 最初に通ってきた生活棟まで運んで全員寝台にぶち込み、回復させる為にラッセルとその助手のマリが奔走(ほんそう)する事になるのは避けられなかった。

(ミウもガラルドさんもだけど)

 勿論、ミウとガラルドも例外なく看護の手伝いで限界ギリギリまで動き回っていた事は言うまでもなく。本当に動けるものはデスマーチもかくやの軽い地獄を見た。

 だから。

「今回の責任をどう取ってくれるのか聞かせて貰おうか」

「いっやー。悪りぃ悪りぃ。まさか、んな事になってるとか思わなかったからさ。ごめんな?」

「ふざけるな」

 騎士団にあるシェルディナードの執務室、そこで部屋の主たるシェルディナードを凍らせんとするかのような視線と声音を向けるラッセルは、当然と言えば当然なのだ。

 マリは帰って早々に新しくルシアに作ってもらったレースのブレスレットを着けて、ラッセルとシェルディナードが話し合う執務机の前、応接用の一対ある長いソファに腰掛けてその様子を見ていた。

 側には仕事中なので立っている騎士団制服を纏ったミウとガラルドが、疲れを滲ませたジト目をシェルディナードに送っている。

「……もう、あの方が関わった事には近付きたくないです」

「すまない……。だが、私も父とは言え関わりたくないな」

 シェルディナードとガラルドの父親である人物が関わると大抵ろくな事ではないらしく、予想通りと言えば予想通りだった様だが、確かにマリもいつもこれだと色々無理そうと思った。むしろただの人間であるマリが耐えられたのが奇跡なのかも知れない。




「まったく……とんだ目に合った」

「マリ様とラスティシセル坊っちゃまが無事で何よりでした」

 騎士団にある客人用の宿泊室に戻り、深々と溜め息をついてソファに腰掛けたラッセルは、そう言って天を仰いだ。マリもまたラッセルの向かいにあるソファに腰を下ろす。

 ユリアが地獄から生還した二人を労うようにお茶を淹れ、それぞれの前にカップを置く。

「あ。すみません。ありがとうございます、ユリアさん」

「マリ様、そろそろラスティシセル坊っちゃまと同じようにユリアと呼んで下さっても良いのですよ?」

(いや、それおかしいですよね?)

 あくまで帰るまで面倒を見てもらう代わりに侍女としている事になっているのだし。

 そう思うものの、口に出す前にユリアに笑顔を向けられるとそうも言えず、結果マリは曖昧な笑みを口許に浮かべるしかない。笑顔の圧が凄い。

「しばらくはお二人ともゆっくりお休み下さいませ。シェルディナード様もそうおっしゃっていたのでございましょう?」

「ああ。……まあ、何事もなければの話だがな」

(こう言うのって、フラグって言うんじゃなかったっけ?)

 妹が良くフラグが立ったとか立てたとか、アニメやゲームの話で言っていた記憶が蘇る。

(でも、まあ、しばらくは本当にお休みだし)

 騎士団自体も、街のお祭りを催す準備でこれから慌ただしく忙しくなると言っていた。その間、特に緊急でなければラッセル達は休息で休みの予定だ。

 そこまで考えた時、客室のドアをノックする音が響いた。

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