クソ熱い中でフルプレートアーマーの功罪含みで、ゴブリンと斬りあっても多勢に無勢でよぉ
だれが弱者でだれが強者なのか?
一瞬で決まる、流転する。
全身が熱い! ダメだ! 鎧を着込んだところに染み込んできた酸が、
確実にオレの皮膚を服と一体化させて、溶かし込んでやがる!
むず痒さと痛みが全身に走る! かろうじてスライムどもは始末できたが、
このあと、またスライムの群れが現れるかもしれねえ!
それどころじゃねえ! 全身が熱い! 焼ける!
地べたで転がり回りてえ! 水、水だ! 川に飛び込みてえ!
なんでフルアーマーで来ちまった!?
どうしてフルプレートアーマー装備してゴブリン狩りとしゃれ込んだ?!
なんでこんな時にスライムの群れに取り囲まれた!?
全て、が台無しだ! 高かった鎧も今じゃ重てえ拘束具だ! 拷問器具だ!
クソっ全てがついてねえ! ここじゃ脱げやしねえ!
このまま酸の熱さに耐えながら、街まで走り抜けるしかねえ、
視界はかろうじて、あのスライムから回避出来て眼はやられてねえ!
焦ることはねえ! 断じて焦ることじゃねええ!
俺はまだ生き残れる! どんな不運も幸運に変えてやれる!
人間様なんだ! 神様仏様女神様に祝福されてる唯一無二の種族だ!
下等生物ごときに敗れるはずはねえんだ!
「人間だと?!」
がっは! ご、ゴブリン!?
「人間だ! フルプレートアーマー! ゴブリンスレイヤーだ!」
「ゴブリンスレイヤー!? 殺せ! はやく殺さないと!」
「ゴブリンスレイヤーは殺せ! ゴブリンの神に捧げてくれる!」
くっそ! やるっきゃねえ!
ゴブリンの数は三体か! 群れになる前に息の根止めてやる!
喰らえ!
「ちっ、こいつ鋭いぞ! だが! あの鎧の色を見ろ!」
「スライムか!? スライムにやられたみたいだな!?」
「こいつは、長くは持たない! 持久戦に持ち込んで殺そう!」
ばれた!? ああくそ、熱い、熱いぜえ!?
だが、舐めた口ききやがる、ゴブリンの分際で!
俺のキレたキレッキレの本気ってやつを食らってみな!
フルプレートアーマーの戦士は一気にゴブリンとの間合いを詰めて、
振り抜きざまの長剣で、ゴブリン一匹切り裂いてみせた!
「仲間をやりやがったー!! ゆるせねえー!!」
「ま、待つんだ! そいつのペースに持ってかれるな!」
襲いかかったゴブリンは一突きにして、
そのまま体当たりしてやった!
ずるりと奴の体が落ちる時に、
同じような音立てておれの溶けた皮膚が剥がれた!
「いてええええ!!!」
「くっ! 仲間はいずれ追いつく!
生きてこの森を出れると思うな!
ゴブリンスレイヤー!」
くそがっ! クソがっ! ゴブリンが!
仲間だと!? クソ! そうだよ!
ゴブリンが群れてるってなことでギルドの依頼入ったんだったな!
畜生! 畜生どもが! やりやがるってのか!?
ゴブリンの声!?
違う! 奴らの飼ってる番犬どもの声だ!
「バウワウ!ガウ!ガウ!」
「みつけたぞ! ゴブリンスレイヤーだ!」
「殺せ! 殺せ!」
ああ、何だよ!? これは!!
ショートボウってやつか!
短い棒がバラバラとこっちに向かって飛んできやがる!
手甲と鎧で回避するの手一杯だが、
あいにく、矢じりがついてないみたいだな、
これはついてる、いや!?
「やった! やっぱ鉄の矢じりに限るぜ! あんちゃん!」
「ゴヒー! まだまだ鉄の矢はあるぜ!
近距離は犬に任せて、中距離から、
矢の雨浴びせてやれ!」
うおおおお!!
畜生! 右肩に矢を受けちまった!
いてえ! 酸が染み込んだ所がより一層ズキズキしやがる!
これ以上矢を受け続けるわけにはいかねえ!
「バウワウ!!」
犬、クソ、邪魔なんだよ!
死ねっ死ねっ死ねっ!
左腕に噛みついたそいつをおもいっくそ、
右の剣で切り裂いてやった!
「ギャイン!」
「あ、人間のクソが! 俺のワンコロを!」
そういや左手の盾は、
スライムの野郎どものところで、
捨ててきちまった!
ちくしょう! 盾があったら、
あの鉄の矢も防げるもんを!
がっ!?
「ちっ! 脳天貫けると思ったが、
想像以上に丈夫な兜だな!」
何しやがる!
気ぃ失いかけただろうが!
首根っこに響くぜ!
もうキレた! 死ね! 死ね! ゴブリン!
「向かってくるぞ!
網だ! 網を掛けろ!」
んだと!?
「掛かりやがった! 間抜けめ!」
畜生!? コイツは!?
フルプレートがグルグル巻きにされて、
短剣持ったゴブリンが辺りから集まってきては、
網を四方八方に引っ張って、俺の自由を奪う!
唯一の希望! 右手の剣で、この網を裂いて!
「させるか! くらえ」
棍棒の一撃は右手甲の上からも強く響いて、
そして足をつまずかせて、
フルプレートアーマーの俺は地面に転がった。
「殺せー! ゴブリンスレイヤーに死を!」
「ぐおおおー! こんな、こんなところで!?」
ゴブリンの群れは、
次々に武器を持ちより、
あるものは石おので何度も強打し!
あるものは短剣で鎧の隙間を滅多刺しに!
あるものは棍棒で頭部を叩きつづけ、
あるものは網を引っ張って、戦士を転ばせ、
連続的な猛攻は留まることを知れず、
酸で焼かれた肌があらわになってもまだ、
長槍を突き立てて、
戦士の死体を天高く掲げて、
それが死んだことを確認してなお、
大騒ぎである!
「ゴブリンスレイヤー死んだ!」
「ゴブリンスレイヤー死んだ!」
「やったぞ! 宿敵を狩ってやった!」
俺には墓は無い、
名も無い冒険者だったからな、
弱者は鎧しか残らない死に方だったさ。
戦い敗れて、敗者は弱者だ、
人間とて例外ではない。




