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どうせなら弱者を描きたい

 俺たちは弱いから文民やってんだぜ!

戦闘民族なんかじゃねえ!

ただの凡人凡夫雑魚キャラだ!

護ってもらって始めて俺だ!

 おっす!俺、弱者! よろしくな!

今回のテーマは弱者だ、弱者を描こうっていうテーマだ。

あらゆる人間は知らず知らずに強者の物語を描いてないか?

強者の立場からずけずけと弱者を救済していい気になってないか?

冗談じゃないぜ! 俺は弱いんだ!

そう簡単に強さに懐柔されてたまるかよ!

弱いやつが強いやつの威をかって生きるなんて駄目だぜ!

弱者は弱者たる所以とやらを大事にしなきゃいけないぜ!

 

 まず弱いやつはすぐ逃げます、

俺みたいな奴は物語上、ひえっお助け!とかいって逃げます!

どんな相手にしてもどんな相手をしても逃げます!

これ必定の理な! 安全な所に逃げる?

それさえ分からないのが弱者の特徴だ、

サーチ能力なんて生まれ持ってないから、

ただ運がついてるかついてないかで生存が決まってくる!


 弱者は強者に無いものを持っている、

それは弱さだ! 強者も弱さを持ってるって?

それは弱点ってやつで、真に弱いわけじゃない!

現実、弱点の一個や二個あっても強者はこれを補って余りある、

力があるんだからな!


 お前、強者の論理で話を転がしてないか?

強者が一方的に勝利をおさめてその付属品として、

弱者を救済して良かっためでたしとかやってないか?

冗談きついぜ、弱者は弱いんだ、弱いからこそ、

光って見えるんだ、弱者を強者にしてやるとか、

弱者に施しをしてやったとか強者が自慢してるだけじゃないか、

どこまでいっても弱い奴らは弱いってことで、

弱者の物語にまで踏み込んでないんじゃないか?


 弱者の物語を書かないといけないぜ、

それも強者の施しじゃなくって、

弱者が片寄せあって弱い弱いを慰め合ってる、

そんな光景だ、弱くなきゃやってらんない、

そんな時代だってあるんだ。

 強さばかりに救いを求めるな、

弱さの中に救いを求めろ、

自然と人間は弱いってことがよく分かる。

無理して強者になんかならなくていいんだ、

弱いままの君が素敵なんだから。


 俺は強かった試しが無い、

ずっと弱者だ、鍛えようとして無理したりはした、

だけど気付いた時には弱者だった、

弱い人間だった、弱みは人に見せるな?

それは強者だから言えることだ、

強い人間だから弱みを隠して生きる事ができる。


 本当に弱かったら逃げるし、

腹見せて敵意が無いと示して助かるしかないし、

何発でも相手から殴られないと許して貰えない、

弱さに縛られているから幸せじゃないって?

違うんだな、

弱いことで生きられない社会が、もう強者のものなんだ。


 だから弱者の物語を書こうぜ、

手始めにとある弱者を描いてみよう、

そいつはゴブリンだ、いくぜ!


 ゴブリンは小鬼と呼ばれるほどであり、

騎士に斬られて殺されて、名を上げられるのが普通のこと、

怒っても泣いても人間の騎士に斬られて死んじまうから、

もう、どこにいても居場所なんかねえ、

最後にぶち切れまぎわに、

そこらへんの木の棒拾って振り回してたら、

危険な生き物だと叫ばれて、

人間の村一番の力持ちに農家の武器でぶっ刺されて死んじまった。

 おお、今じゃゴブリンの耳きり落とされて、

ギルドで金と換金と来た、

肉はどうしたって?

そこらの狼の餌になっちまったってさ!

ちゃんちゃん。


 なんてこった!

また一匹のゴブリンが強者の論理で死んじまった、

これは悪い例だ、強者がおれつえーするために、

ゴブリンの貴重な犠牲が払われた!


 当然、このゴブリンの死を見ていた、

仲間のゴブリンは嘆く、もうゴブリンに明日は無いって!

人間様に手向かったらゴブリンは生きて行けねえ、

明日にはゴブリン狩りが始って、

余計にひもじい思いをしながら生きなきゃならねえ、

一目散に逃げるしかねえ、

獣道を突き進んで、道なき道を彷徨って、

ゴブリン狩りの手から逃れるっきゃねえ、

ゴブリンが居たっていう痕跡さえのこしちゃいけねえ、

ゴブリンは弱者だ、ゴブリン狩りを前にしたら、

どこにいたって悪者扱い、あっという間に打ち首だ!

逃げろや逃げろ、ゴブリン達よ、

お前たちには明日がねえ!


 ゴブリン狩りが始まった世界が垣間見えるよなあ!

ゴブリン死すべし慈悲は無い!

だが弱者たるゴブリンはなんと人の言葉を喋れるんだ、

「おれ、人間、怖い」

「人間、ゴブリン、殺す、怖い」

 恐怖しかねえよ! 人間も冒険者もゴブリン殺すことしか、

考えてねえじゃねえか!

なんで話あわねえんだ?

1部族率いてるゴブリンを前にして、

部族の命運がかかってる今後で、ひたすら逃げるっきゃない、

そんなゴブリンの現状に涙しないのは鬼の形相の人間達だ、

何とか弓矢をかわして、

火の手が上がったのを躱して、

人間どもが足を延ばしてないところまで逃げ延びてきたぜ!


「はああ、怖かったなあゴブン」

「そうだやなあ、ゴビン」


 ゴブンとゴビンは仲良しゴブリンだ、

お互いに助け合って生きてきた、

しばらくは人間の村には近づけねえ、

人間が捨てていったもので生計をやりくりしてたが、

これからは野生が相手だ、

どうやって生き残るっつうんだろう?


「ゴブン、やっぱり長老に頼ろうな?」

「ゴビン、そうだな長老から話を訊こうや!」


 ゴブンとゴビンはゴブリンの長老に話を訊いてもらった、

そうすっと、この集落の近くにある薬草の在処や、

食える木の実の話、色んな動物を狩るための道具、

一式そろえてくれたってばや!


「やったぜゴビン!これからたのしくなるべや!」

「だなだなゴブン!おれたちゃたのしく生きるって!」


 ゴブンと、ゴビンはお互いに狩りで得たものを、

わけあって生活を成り立たせる楽しやゴブリン生活。

山鳥を取って食べるのも自由だし、

山鳥の羽で作った頭飾りはなかなかイイモンだ、

イノシシを落とし穴で狩って、

その毛皮をなめして毛皮を身にまとえば立派な山のゴブリンだ、

都会のゴブリンとはわけが違うぜ!


 ん!!??

 現れたったのは冒険者の一味だ!


「ゴブン、こいつらあ!」

「ゴビン、こ、こいつらは!」


 ゴブリン狩りの一派だ、やべえ!フル装備の冒険者だ!

玄人肌の殺し屋だ!やられちまうぜ!


「ゴブン、逃げろ!!」

「ゴビンー!!」


 あの野郎、ボウガンで矢を放って、ゴビンに致命傷与えやがった、

だがここで切れちゃいけねえ、

今は集落の危機だ! 悟られねえようににげて、

長老に知らせて、仲間たちを助けにゃならねえて!


「ゴビン―!!お前の死は無駄にはしねえ!」

「うわ、ぎゃああああああああああああああ」

「ゴビンー!!!」


 涙腺がやべえ、

まさかゴビンが首はねられて、

両耳切取られるなんて!


「ははは! お前らは犬の餌だぜゴブリンども!」

「そら! イケや俺たちのワンコロー!!!!!」

 バウワウバウワウ! お犬様のお通りだ!


「ちきしょう犬が追ってきやがる!」 


 構えるっきゃねえ!

これでも喰らいなゴブリン玉!

 突然弾けるゴブリン玉!

「キャウワウ!!」

これで犬の鼻も効かなくなるぜ!


「ちっ厄介なもん持ってるゴブリンだな」

「なあに、物持ちってことは、

 奴らの集落まで攻め入ってやれば、

 がっぽりだぜ」

 冒険者たちは合計で六人、

全員、フルアーマーで戦士、

もってる武器はそれぞれ違うが、

言えることはひとつ!

アイツらマジでヤル気だ!



「ちきしょー!!!!」


集落まで息も絶え絶えでたどり着いたおれ、ゴブン!

「いったいどうしたんだゴブン!

 ゴビンはどうした!?」



「ゴビンは殺されちまった!

 長老!

 何とか逃げてきたが、

 ここはもうだめだ!

 すぐに冒険者どもが、

 仲間を連れて俺たちを殺すぜ!」


「なな、なんと、この集落には、

 雌ゴブリンに子供たちもいるっていうのにか!

 急いでは逃げられんぞ!」


「くそっこれだから余所ゴブリンの、

 面倒をみるのは止めろって、

 親父に言ったんだ!」

 長老の息子か!

だがそれどころじゃねえ!


「逃げるんだよー!!

 一目散になあー!!」


 そっから先はよく覚えていねえ、

連中、集落に火を放ちやがった!

逃げれねえ雌ゴブリンをリンチして殺して、

耳切取って、ジャラジャラと飾ってやがったそうだ!


 絶対にゆるせねえ!


「こんなこと許されていいわけねえ!

 魔王様に直訴するっきゃねえぜ長老!」


「う、うむ、だが、魔族領が我々を、

 かくまってくれるだろうか?ゴブン!」


「魔族のよしみだろうが!

 頼れるもんは藁をもすがるんだよぉ!!」


 ゴブンはもう復讐がしたくてたまらなかったが、

魔族領でのゴブリンの扱いは酷いもんだった。


「ふん、我らが尖兵をかってでる気も無しに、

 ただ、人間からおびえて逃げてきおったか」


「弱者が! ゴブリン風情が!

 魔王様にお目通りできるとでも思ったか!」


「で、デーモンの旦那!言いっこなしだぜ!

 俺たち、生きるも死ぬもなかったんだから!」


 デーモンの配下デビルたちと、

屈強のオーガが俺たちのいく手を阻んだ!


「ねぎらいの言葉も無しかよ!」

「ご、ゴブン、控えるのじゃ!」

「ちょ、長老~~~!!!」


「ゴブンとか言ったな?

 役に立つというのなら使ってやらんことはないぞ」


「まじかよー!!」


「近く、魔族領と人間領とで戦がある、

 数合わせだ、お前らの集落のものも、

 連れて行ってやろう、報復したいんだろう?」


「やる気あるぜー!

 あいつもこいつも殺してやるぜー!」


「ご、ゴブン、お前、タダで済むと思っているのか?」

 長老たじたじってかー!

だがもう人間なんて絶対に許さねえ!


「殺してやる殺してやる殺してやる!」


 人間領から追い出されたゴブリンの数、3000を数え、

ゴブリン軍団としてあいつら人間を皆殺しにしてやるんだ!


 王国からは一万の人間が軍を率いてきやがった!


「おれはもう弱者じゃねえ戦士だ! ゴブリンの戦士ゴブンだ!」



 ゴブンは自らを強者に仕立て上げたが、

果たして、戦いの行く末はどうなるのだろうか?



 どうあってもゴブリンは弱者なので、

人間の精鋭一万が軍を率いた時、圧倒される役割になります。

人間が使う新兵器の数々、ボウガンから放たれる大量の矢が、

ゴブリン軍団を襲う!

「ぎゃー!!こんなはずでは!」

「ゴブっここまでか」

 ゴブリン軍団の頭目、ゴブリンロードが殺された!

「なんてこった!負けるのか!?

 引き際だこりゃあ!」

 すでに散り散りになったゴブリン軍団はすでに、

どこまでも潰走し、人間の追っても確かに迫ってきていた!


「へっへ、ゴブリンと戦だなんて血が騒ぐやな」

「一人一匹殺せば確実に勝てる戦だ、余裕だぜ!」

「勝利は目前だ!

 このまま追い込んでゴブリンどもを絶滅させてやる!」


 ちっひでえぜ!

魔属領まで追ってきやがる連中は!

デーモンの親方はなにしてやがるって言うんだ!


「ご苦労、ゴブリンども」


 なっ、念話か!? テレパシーかこりゃあ!!

どうしたって言うんだデーモンの親方!


「人間もろともはかなく散るがいい、

 エクスプロージョン!」


 そのとき大規模詠唱の魔方陣が展開され、

人間の軍とゴブリンの軍もろとも、

大爆発が襲い、ゴブンもろとも吹き飛ばした!


「ゲブッ」


 ゴブンは気を失った。




 みんな、みんな死んじまった。

悪いなゴビンおれももうだめみたいだ。


「ネクロマンシーは使えそうか?」

「はデーモン様、

 ここいら一体の人間の死体、

 そしてゴブリンどもを、

 一括してゾンビに仕立てましょうぞ」


「むっ?」


 デーモンは死体の下から這い出す、

一匹のゴブリンを目にした。


「なんという強運か、

 小僧」


 ゴブンは、耳が聞こえない、

何をしゃべってる?


「その命、わがために使わせてもらうぞ」


 ゴブンは保護された、

魔属領の中で、

特殊な液体のこめられたカプセルに、

放り込まれて蘇生措置がとられた。



「貴様に面白いものをくれてやろう」


 それは、復讐者のヨロイ、

幾万もの死体を数える場所から、

あふれ出す怨霊を一身に集めてできた、

今回の戦利品といっても過言でない、

悪魔の一品である。


「それをきれば貴様、

 名はゴブンとかいったな?

 無敵の力が手に入る、

 あの勇者さえも凌ぐな!」


 瀕死のゴブンは、

それを受け入れるしかなかった、

すでに四肢はズタボロで、

再生の望みが薄かったからである。


 かくして弱者から強者へ、

そして瀕死の重傷から、

復讐者のヨロイをまとうことから、

究極の戦士へと生まれ変わったゴブンは、

人間に復讐を誓う。



「あいつだろうと、

 どいつだろうと、

 かまわねえ、

 皆殺しにしてやるよ」


「よし行けゴブンよ!

 死霊軍団とともに、

 人類を根絶やしにしてやれ」


 デーモンの親方は、

自らが作り出した、大量の、

アンデッドたちを操って、

復讐の戦士ゴブンの後に続けさせた。


 ここよりゴブンによる、

反撃ののろしがたった!


 ゴブンはまず、

人類が拠点とする都市、

ランチャイコイテンを滅ぼすために、

一万数千体のアンデッドとともになだれ込んだ!


「うわー! こいつらどこから、

 沸いて出てきやがったんだー!」


「殺されるー!」


 ランチャイコイテン都市の城壁にある、

門をアンデッドと復讐の戦士ゴブンが、

一気に打ち破ると、

そこからなだれ込んで、

都市の住民を惨殺し始めた!


「アンデッドの進入を許したか!

 だがわれらは屈強なる天下の衛兵、

 絶対に魔族に屈することはないのだ!」


 一際立派なよろいを身にまとった兵士たちが、

都市ランチャイコイテンの防衛機能を、

とりもどすために、アンデッドとの、

戦いに加わりだし、その数8000を数えたが、

同時にアンデッド狩りの秘策である、

僧兵たちもまた、加わり、10000の数となり、

数の段階ではアンデッドと拮抗していた、

しかし!


「僧侶の神聖魔法が通じないこいつは一体?!」


 ヨロイを着こなしていたアンデッドに混ざって、

復讐の戦士ゴブンが現れたところ、

生きて帰れた敵兵はいない、

復讐のヨロイの魔力はすさまじいもので、

五体満足に動かせなかったゴブンも、

急激に力を増して、敵を一振りで十体も薙ぐ勢いで、

ひたすらに人間側の兵士たちは殺されていった。


「騎士様の到着はまだか!?ええい」


 都市の中で入り口と出口をアンデッドに押さえられた、

状態で都市の住民は10万を数えていた、

それを丸ごと、殺しつくす勢いで、

ゴブンはヨロイの中から殺戮衝動が満たされる一瞬一瞬に、

「ははは!人間ども、死に腐れ!」

心を満たされ、人間は半減し、さらに半減し、

やがて数千人にまでその数を減らしたとき、


「やめろー!わが領土で不当な真似を働く、

 おろかな魔族どもよー!」

 騎士の軍勢、一万がやっと到着した、

精鋭ぞろいの精鋭の軍、

かつてゴブリン軍団を追い詰めた顔ぶれも、

ちらほら見受けられるが、

その大半はデーモン様のエクスプロージョンで、

吹き飛び、いまやアンデッドとなり、

敵対しあっていた。


「くっ! わが騎士団のヨロイを身にまとって、

 アンデッドにしたのか!おのれ、魔族め!

 魔族めー!!」


 騎士の軍勢はこれから起こる恐怖にまだ、

気づいていなかった。

 高い士気と練度でアンデッドを圧倒するが、

そこはゾンビの軍団、数で勝ろうとし始めた。


「ネクロマンシー」


 都市の住民10万がすべて死に絶えたとき、

詠唱により、10万の住民が反転、

一気にアンデッドとなり、

騎士軍団の行く手を阻む!


「くっこんなことが!」


「覚えているか!?

 オレの名はゴブン!

 ゴブリンのゴブン!

 騎士どもめ!

 ゴブリン狩りの敵討ちだ!

 死んでもらおう!」


「このヨロイの、

 ゴブリンだったのか!

 なんという悪のオーラだ!」


 ゴブンは復讐のヨロイを身にまとって、

騎士軍団を袈裟切りにして次々と殺し、

数千を数える死体を自らの手で作り出した。


「まだだ!まだ!足りねえ!

 殺したりねえ!物たりねえ!」


 ゴブンに弱者だったころの面影は、

ただゴブリンであるということのみであり、

いまは復讐者のヨロイをまとっていることで、

五体を自由に使って、人殺しにいそしむことが、

可能となっていた、

ゴブンの勢いづいた攻めに、

ついに騎士軍団はアンデッドの群れに取り囲まれ、

孤立して、やがて壊滅した。


 その死んだ騎士軍団でさえ、

「ネクロマンシー」

 デーモンは死体を操り、仲間に加える。


 人類と魔族、戦いの始まりであるが、

これを終結に導くものも登場する。


 ゴブンは先駆けて、剣を手に、

復讐者のヨロイの力を受けて、

無限ともつかない怨嗟の渦を、

その体に取り込んで強者と成り果てていた。


「もう、どいつにも負けねえ!」


 人間の王都ベラッペンストロブへと、

アンデッド12万を超える軍隊が、

なだれ込もうとしていた。

 ゴブンもまたその波の頂点で進み、

王都から応戦のための30万の正規軍が、

はせ参じたとき、

歴史に残る一大決戦の火蓋が切って落とされた。


 王都に向かう街道沿いに30万の軍が、

待ち受けており、アンデッド12万の軍を、

打ち倒さんと、僧兵が大規模詠唱を始めたが、

「アンチマジック」

デーモンがこれを遮断し、戦いの幕が開いた!


 人間軍30万が一斉に矢や投擲物を、

アンデッドに向かい放つが、

アンデッドは不死の肉体を持つ!

矢ごときで倒されることはない!


 ついに正面衝突し、

30万が12万とぶつかり合い、

圧倒的な数の差から、人間軍が攻勢を、

強めていたが!


「エクスプロージョン!」


 デーモンの強大な爆発呪文が、

一気に2万の軍勢を吹き飛ばし、

活路を切り開いた!


 そこに切り込めと走り出した、

ゴブンは既に1000の敵を切り結び殺し、

御大将の御旗を見つけて、

敵の名のある将を狩りながら、

御大将に刃を向ける!


「くっ」

「「「「「将軍!」」」」」


 と、そのとき、一人の人間が、

すばやくゴブンの突き進むを、

はじき返して、両者間合いを取る。


「だれだ!邪魔するのは!」


「勇者スロイツだ!

 そちらは名のある敵の将と、

 見受けられる!

 名をなんと言う?」


「おれはゴブン!

 ゴブリンの戦士だ!」


「ゴブリンの?戦士!?」


 勇者スロイツは驚愕した、

本来なら冒険序盤で苦戦するだけの、

ゴブリンが、主戦場においてここまでの、

働きをしたのか?


「スロイツ!その敵からは負のオーラが!」

「僧侶メッセ!どうやらそうらしいな!」


 ゴブンには戦場に漂う10万を超える怨霊が、

付きまとい、その力をブーストさせている。

 果てしないパワーを前にして、

勇者スロイツは切り結ぶことが出来るのか?


「かかってこい! ゴブン!」


「うおおおおおおおおおおお!」


 ゴブンはすばやく剣を振り払うと、

スロイツがいた場所に烈風が吹き荒れ、

数多くいた大将の親衛隊がぶっ飛んだ、

だが、スロイツはゴブンの背後に、

回り込むと剣で、一撃を加えた!


「そんなものか?そんなものなのか!

 勇者あああああああああああああ!」


「な、馬鹿な!」


 ゴブンのヨロイには傷ひとつつかない、

強大なる負のオーラが正義の剣を寄せ付けないのだ!


「死ね!死ね!死ね!」

 ゴブンは剣を振りまくり、勇者スロイツを、

力任せに追い立てると、周りが混戦状態に、

なりつつあるのもお構いなしに、

これに確かな連続した斬撃を加え続けた、


「くっ!剣の腕は素人同然だが!

 この力の根源は一体!?」


「勇者、しばらく耐えていて!

 今、鑑定してみせる!」


 魔法使いルビルが魔法を詠唱すると、

ゴブンのヨロイが鑑定されて、

それが魔具として鍛え上げられてるものだと、

そして強大な呪いがかけられてると判明した。


「ルビルー! もう限界だー!」


 ゴブンの攻めは強くなる一方であり、

勇者スロイツとはいえど、ただでは勝てない状況、

圧倒的な力を前に構える剣には傷がつき、

一歩一歩確実に追い詰められていた!


「僧侶メッセ! やるわよ! 全浄化!」

「はい魔法使いルビル! 全浄化!」


 二人の詠唱が重なる時、

ゴブンに対して解呪の魔方陣が掛かり、

確実にゴブンのヨロイにかかったのろいが、

ひとつひとつ弾けて外れ始めた、

 ゴブンのヨロイをつなぐ鎖という鎖が、

バチバチと外れ始めたのだ!


「な、なんだと!?」

「ネタが明かされればなんということもない!

 食らえゴブン!」


 勇者の剣がひらめくと、

ゴブンの復讐者のヨロイに一撃を加えて、

遠く戦場の外にまで弾き飛ばした!!!!


「が、がああああ!!!???

 馬鹿なー!!!!!!!!!」


 ゴブンは砕け散るヨロイとともに、

戦場から強制退場させられた。



 その後の戦いの模様は以下であったか?

王国軍の御大将は首が無事なまま、

アンデッドの軍に対して、

有効な神聖武器や神聖魔法が、

詠唱されると、

先ほどまで優勢だった、

アンデッドは勢いを完全にそがれ、

次々と倒れいく中で、

勇者スロイツがデーモンとの一騎打ちに望む!


「はああああ!!!」


勇者の一撃に、デーモンは深手を負って、

退却を余儀なくされた、

かくして、王国軍とアンデッド軍の戦いには、

王国軍に軍配が上がり、

みなは勝利をたたえあった!




 ゴブンはどうであったか?

「こんなことが! こんなことが!」

 復讐者のヨロイを失った今、

四肢が自由に使えぬゴブンは、

地面を這うこともままならず、

撤退する、アンデッドの一群に、

棺おけへと押し込められて、

骨の軍馬に引かれて、

帰り道をがたごとと音立てながら、

全身の痛みに耐えていた。

「あの時、勇者を狩れていたなら!

 クソッ、おれはこんなことにならずに!

 すまん、ゴビン!

 お前らの仇は取れそうにもない!」


 帰還したゴブンを待っていたのは、

ゴブリンの長老であった。


「よくやったぞゴブン、

 デーモン様もお前の戦場での働きを、

 たたえて、われら一族を、

 魔族領に置くこと許してくださった」


「だが!

 数千のゴブリンの犠牲の上で、

 成り立ったこと!

 オレは、この戦を終わらせられなかった!」


長老は悔し泣きするゴブンを見て、

「なんでも一匹で出来るもんじゃないんだよ、

 お前がゴビンたちのために戦っていたのは、

 みんなよく知ってることだ、

 だから、今は休むんだ、戦いはじき決着となる」


 長老の励ましを受けて、

ゴブンは気を失うように深い眠りに着いた。



 三ヵ月後、魔族領と人間領は休戦協定を結んだ、


「馬鹿な!

 人間の野郎どもと休戦なんかだと!

 そんなこと許されるわけがない」


 ゴブンは自分では動けない身の上でベッドで嘆くが、

単独勇者のパーティーが魔族領は魔王城まで、

その歩みを進めて、魔王と直接会談をして、

手にした休戦協定である、これは魔王の命と同じくだ。


「今回の戦は、

 デーモン様を始めとした魔族諸侯が、

 手柄を求めてはじめたことだ、

 魔王様の伺い知らぬところで、

 戦いが始まったとあっては、

 その処分や落としどころが、

 休戦協定だけというのは、

 実に愉快なものではないかね?」


 長老はゴブンを諭すが、

怒りがそれで晴れるわけもない、


「オレは!もっと!人間を!殺したい!」


 ゴブンはベッドから力を発して転がり落ちると、

周りのゴブリンたちから心配されて、

また、ベッドの上に戻され寝かしつけられた。


 戦い続けたゴブンも、

今では仲間たちの介助なしでは生きられない身の上である。

ゴブンの中でくすぶり続ける炎は、

常に、ゴブンを悩ませ続け、

ただの弱者であったゴブリンには、

分不相応の夢をいくつもみるのであった。


「勇者スロイツ、オレはあ!」


 夢に出てくるのは勇者と戦う、

自分の姿である。


 かくしてゴブンの物語は、

百年の平和とともに終わりを告げる。

魔王は気の長い一族だったのだ、

ゴブンは一生をゴブリンに与えられた、

領土の中ですごし、

決して癒えることのない戦場の傷を、

抱えて、眠りにつくのだった。







 弱者を描いたつもりが、

ゴブン、誇りのようなものを持って、

強い怒りで裏返ってしまった。


 本当に今回の戦で弱者だったのは、

ひとつの都市が完全に壊滅したそこの住民。

 その都市にいる住民が丸ごと、

アンデッドになってしまったというところ、

だから弱者に目線を合わせるとすると、

戦いや怒りに関係のない、

人間側のやられるままだった都市の人たちを、

描いたほうが、弱者といったら弱者だったはず。


 結局、戦場の出来事で結ばれているのも、

強者しか加われない、その厳しい決め事の中に、

埋没していってしまったようで、

唯一言えるのは、ゴブンが自らの決定というより、

常に利用される側であって、

末端の一兵士としてしか機能できなかったところか、

彼は、弱い弱い存在だったが、

お話の中で力を出さなければならなかった。


 とにかく弱者を描きたいが、

弱くても強くされてしまったり、

どうしても利用されてしまううちに、

弱者から逸脱して主人公格になる。

 主人公格になると活躍するために、

圧倒的な力を振るうようになり、

今まで弱かったことが嘘のようになり、

物語の中での活躍のために、

身を粉にしてしまうようになる。


 それでは弱者のまま生きなければならない、

ものの状況をうまく描けないじゃないか、

決して強くなることがない生命というものが、

一定あって、人間の中でも弱いことが、

一番落ち着く人たちが一定いる。


 強くなれたなら、今よりもマシな生活を、

しているだろうけれど、

 現実は強くなれない人の性を抱えている。


 僕は弱くありたい、

甘えなのかもしれないが、

弱さに浸っているときが一番、

人間らしくいられるからだ。


 強さは超常のものとして現れる。

許されたものではない、

見当違いの強さは異物や異質感を伴う、

だから人間が持つものに強さは含まない、

弱さの中で生きていたい。

 自分が弱いということを認めてもらいたい、

でなきゃ、いきづらくて仕様がない、

虚勢を張っても強くなれないのだから、

僕はもっと弱くていいのだ。

いいはずだ。


 弱さを描けないのは悔しさがある、

自分が弱いものに属することは、

知っているというのに、

本当に弱いものを前には、

自分の語る弱さは霞んでしまう。


 もっと弱く世界がかすかなものならば。

 人間の弱さを知ったところで、

それを悪用して強いものが、

収穫することは目に見えていて。

 どこかむなしいものでもある。

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