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 はじめのテーマにしては微妙かもしれませんが、窯業は古来から続く人間の技術の結晶です。

 今ではプラスチックに代表されるように高分子材料が世の中を席巻していますが、セラミック(焼き物)は今でも重要な役割を担っているのは間違いありません。

 そんなセラミックを造るのに欠かせないのが窯です。


 ピザを焼くあの窯です。

 窯というシステムを使って、工夫次第で調理、醸造、木炭、焼き物、セメント、鉄といった様々な文明の力を享受できます。

 異世界において知識で無双する第一歩は窯だと私は思っています。


 そんな窯ですが、私は大量生産に向く登り窯が良いのかなと思っています。


 大きな焼成室を斜面にいくつも連ねます。

 暖かい空気は上へ移動するので穴で繋がった焼成室は下部から上部まで熱が保持され、それなりの熱効率を発揮します。

 薪を燃料に1300℃程度の高温を炉内に実現できるので、陶磁器、セメント、生石灰、何でも来いといったところです。


 焼き物がない世界への転生を考える人はごくわずかでしょうから、窯のシステムは異世界人にも受け入れやすいのではないでしょうか。



――


 これだけでは科学的考察に乏しいので窯の調節でも書こうかと思ったんですが、よく考えるとなろうでその知識を使う機会はなさそうだなとも思ったり。


 まあせっかく考えたので、一応化学式を使って窯の中の制御について記しておきます。


 窯の中を還元雰囲気にするか酸化雰囲気にするかというのは、焼き物の色付けや製鉄において重要です。


 還元雰囲気というのは一酸化炭素が多めの雰囲気、酸化雰囲気というのは酸素や二酸化炭素が多めの雰囲気です。


 製鉄を例に取ります。

 一酸化炭素が多い雰囲気では還元反応が起こります。製鉄で目的とする主反応です。


3 Fe2O3 + CO → 2 Fe3O4 + CO2

Fe3O4 + CO → 3FeO + CO2

FeO + CO → Fe + CO2


 これに並行して複数の反応が進行します。


 製鉄では木炭を還元剤に使用するので炉内には炭素が存在します。


C + O2 → CO2

2 C + O2 → 2 CO

FeO + C → Fe + CO

C + CO2 → 2 CO


 木炭由来の一酸化炭素で鉄から酸素を引き剥がすわけです。

 また次のように空気中の水も反応に関与します。


C + H2O → CO + H2


 実はこの水というのが厄介です。

 炭素と水の反応、これは反応の際に熱を吸収する吸熱反応です。高温ほど進みやすくなります。

 ちなみにここで生成した水素による酸化鉄の還元も吸熱反応です。これも高温ほど進みやすいです。


3 Fe2O3 + H2 → 2 Fe3O4 + H2O


 一方、以下に示した一酸化炭素と水の反応は発熱反応です。


CO + H2O → CO2 + H2


 高温になればなるほど進みにくくなり、鉄の還元が進行する千何百度の温度域ではこの反応はほとんど進行しません。

 これは各ガスの熱力学的性質で決まるので人間が操作できるものではありません。



 なんだか化学的な説明になってきてしまいました。

 つまりどういうことかというと、湿度が高ければ高いほど、炭素と水や鉄と水素の反応に熱エネルギーを取られてしまうということです。


 職人が今日は湿度が高いから薪の量を増やそう、などと言うのは上述のような反応が関与しているからです。

 注入する熱エネルギーの量を増やしているのです。


 職人が化学的に理解しているかどうかは実際製品の出来には影響しませんが、私個人としては職人の感覚を科学的に説明することに結構興味があります。


 ちょっとした一言で登場人物にこういった科学的事実をわかったようなセリフを言わせたり、著者が記述していたりするのを見ると、個人的には少しひきこまれてしまいます。

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