第8話:ロミオ&ジュリエット
今朝はヤケに下から冷えるなぁっと思ったら…雪が降っていた。
まぁ仕方ない2月だし、雪も降るわなぁ。
何気に学校が遅くスタートするかな?なんて期待をしたが、水分の多いこんな雪では地下鉄だって止まりはしない。
気を取り直して支度を始めた。
学校へ向かう道も、もう慣れたもので、寝ぼけていたって間違いなくたどり着ける自信はある。
しかし、今日はすんなり行かなかった…っというより行けなかった。僕の通う学校は台地の上にある…要するに長い坂を登らないと着かない。
しかも、今日はべちゃ雪が降ってて足元が滑りやすくなっている。
特に女子はキャアキャア喚きながら滑りながら固まって道を塞いでいた。
そんな光景を横目に僕は、うつむき加減に…両手はコートに入れて…ゆっくりと歩き進んでいた。
っとその時!目の前からの叫び声に眼を見開いた。
「きゃぁ〜!!」
「えっ!?」―ドサッ!ガシッ!―
反射的に僕は両手を出して受け止めていた。
そう、僕は両手にしっかりとキミを抱えてしゃがみ込んでいた。
あの時は…ただ単に叫び声に驚いたわけでない。。。
僕はキミの声に驚いて…とっさに両手を出して助けていた。
顔を赤らめ、肩をすくめて謝るキミ。
「あっ!すみません。」
「いっいえ大丈夫…ケガはない?」
僕の腕の中から見上げるキミを見て、口をついて出た言葉とは全く関係ない事を考えていた。
"なんてキレイな瞳をしているんだろう"
数秒の間になんて事考えてるんだ!?って自分自身にツッコミ入れてたり…頭の中はぐるぐる色んな風に展開されていた。
そして、二人して足元をとられながら、ゆっくり立ち上がった。
「はい。おかげで大丈夫…だと思います。」
「それは良かった。でも、今日はこれからも気をつけてね。」
「はい!ありがとうござ…あっ!」
お辞儀をしながらバランスを崩してよろけてしまい、僕は直ぐに両手で両肩をガシッとつかんだ。
そこで一言付け加えた。
「エスコートしますよ(笑)」
キミは下を見たまま…耳まで赤くなって、ただ黙って右手を差しだした。
そして、僕も黙って左手でしっかり握りしめた。
しばらくは沈黙のまま歩き続けたが、しゃがんだ時に濡れた制服が張り付く様に冷たくて…たぶんキミも同じだろうと思ったので、思い切って聞いてみた。
「制服…濡れちゃって冷えるんじゃない?大丈夫?」
「はい…ちょっと。でも大丈夫です。」
「じゃあちょっと止まって。…はい!これで少しはしのげるから。」
っとコートを脱いでかけてあげた。もちろん、これでしのげるとは思っていない。しかも、相手がキミでなければここまでしない。
そう、初めから手なんか出さなかったかもしれない。
いや…仮に出していても、"ケガはない?"なんて聞いてない。
全てにおいてキミじゃなきゃ。。。僕はこんなに優しくない。そういうところは"父親そっくりだわぁ"っと母さんに最近よく言われるから。
数日後…久しぶりに部室に顔をだした。
来月の予餞会の為の打ち合わせをするらしい。
いつもは後輩に任せてしまうのだが、今回ばかりはそうも言ってられない。
「仕方ないなぁ。たまには指揮とってやるかな。。なんせチーム組むのがアノ生徒会だからなぁ。」
などと言って予餞会メンバーに自分から名乗りでた。これも全てキミとの接点が欲しくて…というのは言うまでもない。
そして、勿論その事を知っているヤツは誰もいない。
しかし、さらに数日後の生徒会・放送部合同の打ち合わせで僕は驚くこととなる。
打ち合わせが行なわれる会議室に入ると、数人から鋭い視線を痛いほど感じた。
元々生徒会とは仲も悪いし…とりわけ僕は理詰めで攻めるので、いつだって目のカタキにさせて慣れている。が、今日は違うのが直ぐに分かった。
打ち合わせは、気持ち悪いほど…意外にも予定通りに進んだ。
先生方も、みんなも、安心した面持ちで帰り支度をしてバラけていった。
例の生徒会長と僕が残った。最後の戸締まり責任者としてだが…向こうサンは違う用件らしい。
誰も居なくなると、いきなり捲したてる様に話してきた。
「放送部のクセに…っというより、放送部だから口が巧いのか?
お前、何が狙いなんだ!
何の理由で塚本さんに近づいたんだ!?」
「は?何の話です?
僕が何かしましたか?
しかも、塚本さんとは誰です?」
「とぼけるな!!見てたヤツがいるんだからな!
お前と塚本さんが一緒に登校してくるのを!」
生徒会メンバーの誰かが、先日の登校ツーショットを目撃していたらしい。
会長は顔をだんだん赤くさせながら怒り出したので、僕は少し挑発してしまった。
「あぁ。別に何も狙いなんてないですよ。
理由もないですしねぇ。
ただ、強いて言うなら"僕は彼女が好き"っていうことですかね。
それとも…生徒会長に断ってからでないと交際って出来ない規則なんですか?」
「なんだって!?」
「他に話がないなら…僕、帰っていいですか?じゃぁ、お先に失礼します。」
廊下に出ると、あの時と同じように、耳まで真っ赤になってうつ向くキミが立っていた。
完全に聞かれたな…と思い話しかけてみた。
「一緒に帰らないか?
聞こえてたと思うけど、キミにはきちんと話したいから。。。」
「………」
キミは黙ったままゆっくりうなずいた。
それから、あの時の坂道を二人並んで、ゆっくり下って…駅まで来てしまった。
まさか今日こんなカタチで告白するとは思っていなかったから、シュチュエーションを考えてなかった。
歩きながら頭の中は、この後の展開を考えてフル回転だった。
たぶん、大した事ない自己紹介的な事を話していたはずだが、ハッキリ覚えてないくらいだ。
駅周辺にある神社の境内にきた…
「今日はいきなり驚かせてすまなかった。
だけど、僕は初めて会った時からずっと気になってて…ずっと好きだった。
そう、キミが部室に訪ねて来たあの時からずっと。」
「えっ…あっ、はい。
私…えっと…私もで…う〜んえっと…」
キミは慌てて、上手く言葉を見つけられない様子だった。
そんな姿が可愛くて、とても愛しくて…壊さないようにそっと優しく抱き寄せていた。
「キミの口から、キミの名前を聞きたいんだが…教えてくれるかなぁ?」
「はい。つ…塚本…菫です。」
「キレイな名前だ。。すみれさん。」
ゆっくりと離れて向きなおり話を続けた。
「キミのいる生徒会では、僕は目の上のコブな扱いなはずだ。
困った事があったら話して欲しい。必ず策を考えて解決してあげるから、安心してくれ。」
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