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第20話:菫の章《露隠月》

『いつも あなたは 駆け足で


いつも 私は 背中を見ているだけで


なのに あなたは 気付かない…


それとも あなたは 気付かないフリをしているだけ?


たまには 私も 追い抜かして


あなたに 私の背中を 見つめさせたい


叶わぬ願いとは しりつつも…


今日も 必死に 策を練る ワタシ… 』


*****************************************************************************


「OK、じゃぁもう一つ先に進むよ。菫は僕の事が好きかい?」


いきなりでびっくりした。

なんでそうくる?次って?!もう一つ先って…話題全く違いませんか?って言いたいけど上手く言葉にならないし、頭ん中真っ白で目はパチパチ…口は小さくパクパクさせちゃって完全に動揺しまくり!!

自分じゃ見えてはいないけど、絶対に完全に顔が真っ赤になっちゃってたよぉ。

そんな私を見つめながら、彼は悪びれもなく微笑みを返しながら一応謝りつつ言葉を続けた。

じっくり考えてみれば、確実に彼の話術にハマっていた様にも思えるけれど、その時は全然そんなこと考える余裕もなかった。


「ごめんごめん。だけど、これも菫の謎解きの大切なキーポイントなんだよ。」

「そっ、そうなの?……すっ好きだけどぉ、、、だい・き・よぉ。。。」


さすがに勢いよく答え始めたけど恥ずかしくなってきちゃって、肝心なところの言葉が小さくなってっちゃった。

だって!だってまさかこんな展開になるなんて思ってもみないもの。。。やっぱり完全にはめられたわぁ。その証拠に次に話題に上ってきたのは生徒会と放送部の話で、彼の構想をいよいよ実現化させるためのアクションを起こす計画の話になっていったの。


「はい。よく出来ました(^-^) では、次は…来週からミッションを開始しよう!

まずは生徒総会で、一気に知らしめるカタチで【生徒会&放送部】を統合させる。」


突然私に好きかどうか聞いておいて、フツーの話題だったかのように生徒会と放送部の話や生徒総会の話へいってしまって…「はぁ??」って腑に落ちない人はいないはずだわぁ。

さすがの私だってこの話のもっていき方には矛盾を感じたから、思いっきり話の途中で切り出してしまった。にもかかわらず彼の答えもサラリとしていて、なかなか一筋縄ではいかない上にまた彼の思う方向へと進んでいっちゃった。


「ちょっ、ちょっと待って!?それとさっきのキーポイントは何の関係があるの!!!」

「あるんだなぁ。僕たちの知恵と勇気と愛が、この学校の歴史を変えるパワーになるんだよ(^_-)-☆」

「そんなぁ〜!それだけじゃ足りないよぉ〜!みんなの愛でしょ?」

「うっうん、まぁそうなるかな?……っで、生徒総会で承認されたら、組織内の部門を整理したり色々動かなきゃならない。そして、その動きがまとまる頃に菫の選抜テストがあるはずだよね。そっちの方は頑張るんだよ!確固たる結果を出して、お母さんに実証するためにもね。。。とこの辺まで謎解きをしたら、自分で難問も解けてきそうだろ?」


私の中でなんとか彼の思う展開を逸らさせたくて、必至に切り返していってるつもりだった。このまま私だけにドキドキさせておいて、彼はそのままなんてイヤだったし、本当の彼の気持ちを言葉で聞きたかった。

そうそう、彼の気持ちは元生徒会長と話している時とその帰り道に神社の境内で聞いたけど、普段では全くなんともなく・・・大事にされているのは分かっていても、最近は特に実感としてはイマイチな時もないとは言えなかった。

それに心の中のワタシが『今訊かないでいつ訊くの?!』そんな風に言っている気がした。そう思ったら言葉はどんどん口をついて出てくるし、勢いにのって感情が止まらなくなって溢れ出していった。


「うん。だけど、肝心の答えが出せないよぉ。速人の心が見えないもん!!私のストーリーばかりを組み立ててくれても、速人と別々の土地でいなきゃならない悲しみの問題は解決できないよ!」


やっぱり彼の中の展開のパターンには私が・・・っというより、ワタシという感情がどんどん口をついて表現化されてゆく様子は計算されていなかったはずで、戸惑いを隠せないようだった。またもや他の人には絶対に見せない彼の困った表情を見られて内心ラッキー!!って思ったワタシがいた。それと同時にどんな返事が返ってくるのか?不安がないわけではなかった。今日ここへ連れてこられた事を考えたら、決して良くない返事とは思えないけれど・・・恋をすると自信を失くしてワガママになる。だから、相手が気になって仕方がないのかもしれない。


初めのうちは見ていられるだけで嬉しかった。話が出来る範囲にいられる現実が嬉しくなって・・・度重なる偶然にときめいたりした。やがて彼の気持ちを知り、となりに居られる事が現実のものとなった。するとそんな現実に慣れてしまい、甘えが出てきて・・・ふいに寂しくなって不安になる。

だから、不安を蹴散らして、必至に負けまいとして彼の目をじっとみつめてしまう私。


「OK.後者に対しての解決策は初めにヒントを言ったろ?いつでもつながれる。大丈夫、大丈夫さ。長い人生そういう時間も、神様が与えてくれた大切なプレゼントと思えば乗り越えられると思うよ。第一、今の菫は若い。人生の中で一番キレイな時期なんだ。だから、もっと羽ばたいて世界を見ておいで。。下手をすると僕は化石となって、キミに探してもらえなくなってしまうかもしれないよ。」

「そんなことないよ!!もし化石になっても、絶対に掘って掘って掘り返して速人を見つけてみせるわ!!」

「分かった。分かったよ、ありがとう。ぜひそうしておくれ。それから、さっきの前者の質問だけど・・・僕の中では、去年の冬に初めて菫が部室に来た時から、何一つ変わっていないよ。大好きだし・・大切だし・・愛しいと思っている。だから心配しないで、向いたい将来みらいへ行きたい道へ真っ直ぐ進みなさい。僕が出せる力を出し切ってでもバックアップはするからね。」

期待通りといえば期待通りかもしれないけれど、なんとか口を開かせたって感じかな?

ワタシとしては心の中の何かをすぅ〜とさせてもらったし、充分大切な言葉をもらったので、これから色々な壁に立ち止まる事があっても頑張れる!大丈夫!って思った。


   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜       



そして、この学校の歴史を変える奇跡を起こして・・・暦の上では冬に入った露隠月つゆごもりづき、夢の扉を開く鍵を手に入れた。

それは彼の存在と言葉のパワーのおかげかもしれないって今でも思ってる。


しばらくして、新しい年を迎えてすぐに、私は日本を離れた。。。

旅立つ時に初めて彼から手紙を渡された。後にも先にも彼が私にくれた手紙はコレ1通。

しかも!珍しく彼が真っ赤になって、ぎこちない素振りで…今でもその時の事はハッキリ覚えているし、これからも忘れない。その手紙も宝物の一つとして大切にしまってある。



『キミと初めて会った季節がまたやって来る。だけど、それを待たずにキミは扉を開ける。いとも容易く…身軽に…そう、野原へ散歩にでも行くように。。いつも帰り際、胸の辺りで小さく左手をふる…あの仕草、もうしばらくお預けってことかぁ。

寂しいのはキミばかりじゃないんだよ。口に出したら自分自身がどうなるか怖かった。キミを困らせてしまうし、壊してしまうかもしれないから。。。これで良かったんだ。


やはりちょっと意地悪な神様からの贈り物なのかもしれないね。有り難く頂いて、神様を見返してやろうじゃないか。

意地悪な神様と僕達とどちらが我慢強いか。


キミがこれを読んでいるということは、気持ちを揺るがす何かが起こったか…日本が恋しくなったっていう事だね。

いつでも連絡してくれていいよ。。僕はいつでも傍にいるから。  速人 』



そうそう、この手紙を手渡す時に彼は『つらくなったり、困った事が起こったり、悩んだりしたら開けるように。』っと話してくれたわぁ。だけど私は、行きの飛行機の中でドキドキしながら開いてしまった。まぁこれから始まる1年間の事を考えたら不安だってあるし、彼の意図する状況とは全く違うとは言い切れない心境だったから、まぁ善しとしましょう。

だって、先にも話した通りに彼から手紙をもらったのなんて初めての事だったし…他に留学する9人とは顔見知りやフツーにクラスメイトってだけで、特別仲がいい子なんていなかったから、ワイワイ話しながら・・・なんていうのはなかった。

みんなそれぞれの想いで留学する決心をし、ワクワク・ドキドキ・ハラハラ・・・色んな感情が入り乱れて同級生とおしゃべりしながら向かう余裕なんて誰一人持っていなかったと思うの。っていうか少なくとも私はそうだった。


その後帰国するまでの1年間、手紙がボロボロになるほど何度も何度も見返して、大切な大切なお守りとしていつも持ち歩いていたの。

もちろん、カルチャーショックをうけて殆ど眠れずに泣き腫らした目で朝を迎えた事もあったわぁ。

また、クラスメイトやホームスティ先の家族と上手く意思疎通や会話が出来なくて自信を失くしてブルーになったりもした。本当に様々な体験や経験をしたわぁ。そんな中でもやっぱり手紙と風待月の夕暮れ時にもらった言葉が確実に私の支えになっていた。。。

それから何故かお互いに連絡は一切しなかったの。彼からもメールは来なかったし、私からもメールも手紙も書かなかったし。だけど不思議と怖くもなかったし不安にもならなかった。

留学中の滞在に関しての不安や悩みはあっても、彼に対して1年間離ればなれで寂しいとか彼女が出来ちゃうんじゃないかな?とかは皆無と言っていいほど思わなかった気がする。


何故そんなに心配にならなかったか?って言ったらそれは全て恵のおかげ。

恵は高校3年のクラスが彼と同じ私立文系クラスだったのと、二人の奇跡の証【生徒運営議会】で顔を合わせていたってこと。

そして、メールや手紙のやり取りを彼女とは1年間していたから。普段はメールで・・・私の誕生日には行事の時の写真を同封してくれた手紙も送ってくれた。

今はどんな行事で動いているとか・・・クラスでの雰囲気はどうとか・・・また以前の無口でポーカーフェイスの【氷の速人】に戻ったってささやかれているって事とか、リアルタイムで情報をくれてた。高校へ入学した当時に遠くから彼を見つめている時期を思い出すようで、懐かしさと新鮮さが可笑しなほど交じり合っていた。


私もコチラで出来るだけ吸収して帰国しようって必至になっていたし、恵も受験勉強で毎日ギチギチに過ごしていたみたいだから、きっと彼も同じように受験勉強に追われていたに違いない。私も恵も、メールでやり取りすることでストレス解消?!発散?!でき、いい気分転換になっていたのかもしれないって今は感じる。


ただ、私が帰国してから大学が始まるまでの春休み期間中は、ほとんど一緒に過ごしてた。

それも卒業旅行に行く!とかじゃなくて・・・久しぶりにたくさん映画を観たり、遊園地に行ったり、キレイな梅を見に行ったり、カラオケに行ったり、1年間離ればなれだった時間を埋めるかのように、フツーに一緒にいられる喜びを感じていたのかもしれない。



まぁたぶんそれは、意地悪な神様が負けた代わりに、1年間頑張った二人にご褒美をくれた時間なのかもしれないねぇって話していたの。






今回は菫ちゃんの気持ちを思いっきりたくさん書きたくて・・・どんどん書きたい言葉が出てきて大変でした。

だけど、気持ちが想いが溢れすぎても・・・?っと考えて、厳選して削除していって20話目のお話として出せるカタチになったと思います。


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