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第2話:いきなり現代

『 今まで歩いてきた道は


  この時のためにあったのだろうか?


  それとも また別のために頑張ってきたのだろうか?


  僕はこのままの僕でいいのか?


  俗にいう これがターニングポイントってやつなのか?


  

  疑問符ばかりが並ぶ 


  並べようと思えばいくらだって出てくる


  そして これからも 解決することはないだろう


  そして これからも 悩みは増えること間違いナシ  』


******************************************************************


今から思うと我ながらスゴイと思う。

何てったって小学校4.5年生くらいからの夢をずっと追い続けてきて

今まさに現実のものになろうとしているのだから。


初めは単純に父親が教員だったから。

さらに言うならば祖父は教員になりたかった人だからだ。

祖父はどうしてならなかったのか?という・・時代が邪魔をしたのだ。

そう、戦争の真っ只中の青春をおくっていたからだ。


その夢というのは他ならない「日本史の教授になる」という夢へ

また一歩近づこうとしているんだ。

  

今は、初秋。。風は未だ生暖かいが、空は澄みきっている。

若者は真夏のような格好でキャンパスを闊歩している。って僕もまだ若者の部類だが…

先日研究室にて師匠とも呼べるほど師事を仰いでいる先生から呼ばれた。

そして、週に2回ほどだけれど、ピンチヒッターで僕が教鞭をとってくれないだろうか?っというお話だった。

なんでも…旧友から頼まれた別のキャンパスでの講義が入って、スケジュールがパンパンになってしまった。身体が身動きできなくて、友人の頼みともあり断れなくて困っている。。。

っということで、この僕に白羽の矢が!!!

そして、今日お返事をする約束になっているのだった。

  

・・・・コンコン

「松本です。先生はおいででしょうか?」

「おぉ〜松本君だね?こちらへ入りなさい。」

「・・・はい。失礼します。」


教授の部屋には何度も入ったことはあるが、今日は違う。ドキドキが止まらない。面接を受けるよりもドキドキしていると思う。そして、重厚な扉を開けて入ってゆく。


「じゃぁ、もう一度聞くけど・・・請けてくれるかね、先日の話。」

「はい。宜しくお願いします。

 長年の僕の夢がまた一歩近づいた。っという心境ですので、有難くお請け致します。」

「まぁ、来週の火曜からだけれど、頑張ってくれたまえ。

 私個人としても、色々な意味で君には期待をしているのだよ。

 今までの伝統や型にはまったやり方も大事だが

 今の世代の生徒達にあった新しい斬新なアイディアも必要だと考えているのだよ。」


頭の中では大人気ないが…バンザイしてジャンプしている自分がいる。

もちろん顔はクールに真面目に装っている。

斬新なアイディアとは。。やはり、いつも話している自論のことだろう。


「期待に応えられますよう、頑張っていきたいと思います。宜しくお願い致します。」

「いやぁ、こちらこそ頼むよ。」


よっしゃぁ〜!!!間違いじゃないんだ!!

今まで院に残って研究を続けていた甲斐があった。

来週から恩師の助手として表舞台に立てる。

(助手って位置は未だ変わらないけど。。。いつかは必ず!)

僕のデヴュー戦っというか”初陣”だ!!正式に教壇に立てるのだ。


もう一度ここで整理しておこう。子供の頃から家族の影響バシバシで社会科畑に育ってきた。

中でも歴史好きな祖父の影響と希望を一身に受けて

中学受験を乗り越えて私学に進学

小学校から歴史学者・教授になる!と夢を描いてゆるぎない目標に掲げて

どんなに数学に悩まされようと

どんなに英語に悩まされようと

ただただひとつの夢のためにと耐え忍んでっといったら大袈裟かもしれないけれど

自分なりに努力を積み重ねて邁進してきた。

そして、恩師の代理として来週の火曜にたくさんの生徒を前にして教壇に立つ。

夢のような夢ではない話だ。

しかもこんなに早く叶うなんて。。思いもしなかった。


ヤバイ。頭の中真っ白になりかけているぞ?

1時限分の時間配分と資料作りと準備しなければならないな。

そうそう、何を着てゆくかも考えなければ・・・


まず、アイツに報告。っていうか仕事かぁメールにするかぁ。

それから両親に報告と・・・あそこにも寄ってから帰るとするか。

ここのところ忙しくて足運んでなかったからなぁ。


速人は駅へと着いたが、いつもとは反対の南口へと降りて行った。

ゆっくりと商店街を歩き、途中花屋へ立ち寄り・・・

そのまま駅の方へは戻らずに、さらに先をゆっくりとしかししっかりとした足取りで進んでいった。

賑やかな音楽がフェイドアウトしてゆき・・・小さな畑や民家、小学校が見えてきた。

ちょうど小学校の正門と向かい合うようにして

古めかしくも重厚な木の扉と白壁に瓦が続き、速人は立ち止まりきびすを返し軽く一礼した。


頭を上げると立派な門を潜り入っていった。

そこは立派な寺院だった。

本堂はさほど古くはないので途中で立て替えたのだろう。

速人は本堂で手を合わせた後、ゆっくりと墓地の広がる方へ足を運ばせた。

深呼吸をした後に祖父へ報告すると柔らかな表情をし、家路に着いた。



「あっ!メールだ。仕事終わったのか?? はいはい。今見ますよ・・。」

コートをはらりと開いてケータイを取り出した。




                           


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