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第19話:菫の章《風待月》

『揺らぐもの それは 波? 風? 焔?


そうねぇ 波も 風も 焔も


ゆらゆらと 揺らぐもの かもしれない


しかし それらは 私にとって


キレイだなぁっと思うだけで コワくはない 


清々しいなぁっと思うだけで コワくはない


あったかいなぁっと思うだけで こわくはない



コワいのは あの人の心


そう 心は時と共に 変わるもの 揺らぐもの 褪せるもの 』


******************************************************



春の風が心地よい…だけど、暦の上ではそろそろ初夏の範囲なハズ。

しかし、今はそんなことは抜きにして、ただただ心地よく吹く風に二人で吹かれていたい。。


『ありがとう。。。速人』



いつも優しい彼に、まるで母のような気持ちと今私に出来る精一杯の気持ちを込めて贈った一言。


いつの間にかすっかり夕方になっていて、彼の濃い茶色の髪が柔らかくなびき…たくましい肩からやや下に視線を下ろすと…私の影が寄り添うように映っている。そんな影に少し嫉妬しそうなワタシがここにいる。ヘンだよね、そうヘンなんだけどちょっと頭の片隅で思った。

彼の話を聞いた後は私が質問攻めにあった。もちろん今日は早めに帰って、改めて自分に向き合って考えるつもりだったし…最初の展開からして彼の話がメインで、まさか自分にまで矛先が向かうなんて予想も計算もされてない……第一まだ自分の中で葛藤中なんだもん、話せる状態ではないし…とりあえずその場はなんとかごまかした。。ごまかせた?ハズ・・・

でもやっぱり彼にはどうしても口で負けてしまう。。。っていうより話のもっていき方のテクニックでは勝てないみたい……結局最後は全て話すハメになってしまった。


「自分の中でもう少しまとまったら話すわぁ。それより今日は速人の中にある謎を解かなきゃでしょ!」

「あっ、いや。そうだけど…それはもう大丈夫だよ。さっき全て話したし、なにより菫の笑顔が見られたから、僕はもう大丈夫さ。」


私の笑顔で直るなら、いくらだって笑っていてあげるんだけど・・・恐らく彼の中でも言葉に出して話したことですっきりしたんだと思う。っで、また私にふってきた。


「一人で悩むより、二人で悩んだ方がよりいいアイディアが浮かぶんじゃないかな?少しだけでもいいから、菫の謎解きを僕にも手伝わせてくれないかな?」


私が"イヤ!"なんて言えないのを彼は計算づくなんだと思うくらい。だけど、努めて丁寧に伺うように話しかけてくる。

その言葉を聞くまで私自身、上手くごまかせた!っと思い込んで…鼻歌なんかでそうなくらい、気持ちよく風をうけていた。

だけど、彼には勝てないって思った瞬間ブルーになったわぁ。それに母の話をしなきゃならないかと思うと余計に滅入った。

ゆっくりと深呼吸をして彼の方は向かずに冷たいビル郡を見つめたまま…ゆっくりと話していった。


「うん…。ありがとう。だけど、私自身で答えを出さなきゃいけなくて…答えは分かってて、2つしかないの。そのうちどちらを選ぶかって事で迷っているの。。。」

「その2つのどちらかを選ぶ時に、僕の事が重荷になっているんじゃないか?だから話せないんだね。もし仮にそうだとしたら、一つだけアドバイスしよう。」


そう言うと、彼は私をそっと抱きしめ優しく語りかけるように話してくれた。


「先ず、今の時代はメールや電話がある。しかもケータイなら外出先でも確認出来る。移動手段も新幹線や飛行機だってある。

それから、菫も知ってるハズだが、僕は日本史の研究者として生きてゆきたいと思っている。だから、この周辺に常に生息しているっていう事になる。……分かるねぇ。」


私は彼の腕の中でコクンとうなずいた。まるでそれを確認したかのように、僕はまた話を続けた。


「っということは、話を初めに戻すと…ケータイを持っていたらいつでも僕らはつながれるんだよ。肌の温もりは伝えられなくても……言葉で心の温もりは伝えられるから。……分かるねぇ。」


腕の中でコクンコクンと2回うなずくと、それは不思議とすごく自然に…そのままの状態で静かに話し出している私がいた。


「まだ、しばらく先の話になるんだけど…。父の転勤が決まったの。初めは父だけが向こうに行く予定。後から母と私達姉妹も向かうって。」


彼は無言のまま、相槌を打つかのように私の髪を2回ほど撫でた。


「ちょうど良い機会だから!と母は、語学留学の話を引き合いに出して…事あるごとに『生徒会長なんてやっていたら、語学留学の選抜テストはおろか、編入試験にすら通らないわよ!』っと言われ続けているの。――-――そりゃぁ、私自身、英語で進学する希望だし、留学の話はチャレンジしてみたいわ!だけど……だからといって生徒会長なんて!って全て分かった風に言わないで欲しいのよね!!!」

「なるほどねぇ。じゃあ菫は深呼吸して落ち着いてごらん?……いいかい?」


だんだん自分が白熱していって興奮していくのが分かった。だけど止められなかった。そんな時にちゃんと彼は一声掛けてくれて、彼なりのアドバイスをくれる。これは大抵二人で話している時のパターンとなってきている気がする。やはり今回もそのパターンだわぁっと何気に思っていた。


「先ずは…留学の話だ。菫はチャレンジしたいんだよね。ならば頑張ってみよう。

次に、お母さんの言った言葉は、キミを心配しての言葉だから…生徒会長の話はたまたま同じ時期にあたってしまったからだよ。お母さんを責めてはいけないよ。いいかい?」


確かに彼の言うことも分からなくもないので、一応うなずいてみせた。。。けど、その次に出た言葉はあまりに唐突すぎて・・・直球すぎて・・・



「OK、じゃぁもう一つ先に進むよ。菫は僕の事が好きかい?」






いよいよ、菫の章もあと2話かな?くらいになりました。速人も大きくなり、しっかりしてほしいです……。

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