入学式
タイトルにはこう書いたんですけども、入園式というのが正しいのかな……?
まあ、どっちでもいいですよね。
ネタバレ:ブロディスはチョイ役。
オレの名前はブロディス・カイ。
太くて長い角がチャームポイントの鬼人族。絶賛嫁さん募集中だ。
凄腕のAクラス冒険者として知られている、かもしれない。
ちっとばかし赤すぎて、見てくれはよくねえかもしれねえが、この色が鬼人族の何よりの証拠だ。
相方の名前はノーマン・ミイ。
こっちも鬼人族で、そそり立つ二本の角がイカすナイスガイだ。だが嫁はいねえ。
俺とは真逆で体中真っ青だ。別に顔色が悪いとかじゃねえぞ。
俺たちは無敵の「赤鬼・青鬼」コンビとして知られている、と思う。
実際Bクラスの依頼で失敗したことはねぇ。Bクラスの依頼はな。
決してSクラスに上がれそうにもねえから、学園卒業を箔にしてのし上がろうとか、学園で嫁を見つけようとか思ったわけじゃねえぞ、勘違いするなよ。
「……10歳は流石にないな」
「ああ」
「狙うなら、ネリーって名前の奴か?16歳なら適齢だろ?」
「だめだ」
相方は最低限のことしか喋らねぇ。
だから俺以外と組むことは稀だ。こいつは他人とのコミュニケーションの取り方が下手すぎる。
その代わり、腕っぷしはいいもん持ってる。
実際俺と同じくらいステータスも高えし、タイマンで俺以外に負けたこたぁねえ。てか俺も10回に1回くらいしか勝てねぇ。
「となると……12歳も、ちょっとアレだな」
「そうだな」
成績順位を見て、女っぽい名前を覚えておけば、いい嫁がゲット出来るかもしれねえ。
どうせ首席と次席は俺たちだろうさ、と思ってたから、予想外ではあるけどな。
名前の一覧を見た感じ、首席のゼン・カノーは分からねえが、次席の三人は女のはずだ。
だが10歳は幼すぎる。つーか10歳で入学ってことは早熟か貴族かどっちかだろう、パスだな。
だったらネリーって女にお近づきに、と思ったがノーマンに即却下されちまった、なんでだ。
あとは八席のバミーラも多分女だと思うが……12歳ってのも、ちょっとな。
「ブロス」
「なんだ?」
ブロスは俺の愛称だ。
本名もイケてるが、愛称も響きがいいだろ?
「ネリーは、Sクラスだ」
いきなり話しかけてきて、何の話か分からない、というのはコイツにはよくあることだ。
だから俺も少し思考を戻すぜ。
次席の16歳の女だよな……つーかなんで次席が3人もいるんだ、順位がカブることは結構あるが、首席次席くらいになるとそうカブるこたぁねえんだが。
ネリー、ネリー、Sクラス……って。
「……おおう、もしかしたらネリーって」
「さっき見た。間違いない」
「あの<無慈悲>のネリーか、そいつぁパスだ。てかどこに居た?俺まだ見たことねぇんだよ」
「あそこ」
ノーマンが小さく親指を向けた先には、長身の猫耳美女と、褐色のセクシー美女と、清楚な正統派美少女と、艶のある人形みたいな女の子?がいた。
最後の奴はちっこくて良く見えなかった。しかし、たまんねーなあの集団。
で、ネリーといえば獣人だったよな。ってことはあの猫耳美女か、お近づきになりてぇなぁ。
けどなぁ……。
「流石に話しかけるのは怖ぇな、やめとくか」
「うむ」
<無慈悲>とか<狂乱>とか<羅刹>とか、物騒な呼び名だけが同業で出回っているのがネリーって冒険者だ。
今初めて見たら、なんかフツーにめっちゃいい女でビビった。
俺もイケてる方だと思うが、アレは高望みが過ぎるってもんだ。
「しゃあねえ、強くていい嫁探しは、手がかりなしからスタートだな」
五席でも十分スゲエって、流石だよな、俺ら。
ここなら強くて可愛い嫁が見つけられるぜ、きっと。
後は俺のコミュニケーション力さえあれば!
「思うに」
「なんだ?」
ノーマンの奴が思わせぶりに何か言おうとしてる。
だいたい「思うに」って言ったあとは、コイツにしてはよく喋るんだよ。
「俺もお前も、女との付き合い方は、うまくない。見た目もそんなに変わらない。嫁、見つかるか?」
馬鹿野郎、見つかる、じゃなくて見つけるんだよ!
◆◆◆
「学園都市の代表であり、学園長でもあるアドルフという。まずはこの場にいる600人に、無事入学出来たことをお祝い申し上げる」
俺の目の前で中身がかなり残念そうな学園長、アドルフが祝辞を述べている最中である。
場所は体育館っぽいところで、やたらでかい建物だった。中に入ってみても、600人という人数が居て余裕ありまくり。
普段は何の用途に使っているんだろうか。フルコートでサッカー3試合くらいやれそうな感じだが。
「本来ならば、我が学園の歴史や理念など、この場をお借りしてお話するのだが、どうにも不評でね。長い話は生徒に嫌われるようだ」
やれやれといったジェスチャーを付けて語るその仕草に、多少の笑いが周囲から漏れる。
こうして見る分には、フツーに有能そうなんだけどな。見た目の威厳はあるし。
「特に今期の生徒は、非常に優秀であると聞いているからね。互いに研鑽し合って、いい刺激になることを期待しているよ」
明らかに俺の方を見て語るアドルフ。
ええ、まぁ、なんつーか、すんごい近いんですよ。
目の前って言ったでしょ?この人、壇上とかじゃなくて、普通に俺が座ってる席の前で話してるのよ。
俺の席は、たった1人で最前列。新手のいじめか何か?
後ろにネリーたち3人の席があって、その後列に6人並んで、その後ろにズラリと今期の生徒が並んでいる。
何なのこの席、羞恥プレイか何か?俺は断じてノーマルだと言っている!
「なお、成績順位のことだが、皆が気になっているであろう次席については、我々では順位を付けられないほどだった、と申し上げておくよ。政治的意図は全くなかったことを誓おう」
政治的意図。
つまりはカルローゼ王国とアルバリシア帝国の王族だからとか、そういう理由で同じ次席に付けたわけじゃないというアピールだろう。
あの順位表に家名の記載は無かったが、見る人が見れば誰のことか察しは付くだろうしな。
「それでは今期の首席にご登場願おうかな。では、ゼン・カノー君。一言頂けるかね?」
ああやっぱりやんのか……。
まあ、しゃーない。適当にお茶を濁すとしよう。
席を立ってアドルフの目の前に立つと、アドルフが二歩ほど隣に動いた。
視線で「聞いてないぞ」と訴えてみたが、口元を歪めてやがる。
でもすっごい冷や汗をかいているようにも見える。やっぱり忘れてたんだな、コレ。
アドルフと立ち位置を変えるように、今期入学者と向かい合うようにして立つ。
緊張はないが、何かやりにくいような……ああ、そうか、マイクがねえんだ。
こんだけ広い建物の中で、地声で後ろにも聞こえるように、って結構大変だな。
なるべく声を張り、姿勢を正し、始める。
「学園長よりご紹介預かりました、ゼン・カノーと申します。見た目はコレですが、れっきとしたエルフ男子でございます」
ざわり、という雰囲気……っていうか、嘘だろって声がちらちら聞こえる。
今まさに成長中ではあるものの、流石に一期目ほどの成長度合いではない。それでも二年ほどで小学生から高校生並になるのだから、俺の感覚より3倍は早いはずだ。
「この場をお借りして皆様にご挨拶するほど大層な者ではございませんが、名前からお察し頂けるかと思いますが、私には前世がございます。その記憶を元に、私が学園生活をどのように過ごす予定か、という話でも一つさせていただこうかと思います」
あくまで先祖返りとは言わないが、認識するのは聞く側の問題だからどうでもいい。
とりあえず「記憶持ち」であることはアピールしとく。説得力が変わってくるはずだからね。
目上の人も多いことだし、あんまり上から目線も良くないんだけど、受ける印象が違うだろう。
「私は所属クラスがございません。皆様にもそのような方が多少はいらっしゃるかと思いますが、目的もなく入学される方はごく少数であると認識しております」
この学園都市シェラハーに入学するためには、経済的にかなり高いハードルがある。
それを越えてまで入学するのだから、義務教育のような感覚で入学してくるのはごく一部だろう。
まあその一部がフランっぽいけど。リリーナはちょっと違う気がする。
「では私の目的とは何かと言いますと、三つ、ございます。一つはこの学園で、様々な事柄に触れ、その知識や経験を糧にすることです」
いうて学校だからね、当然の話ではある。
「二つ目は、この学園を発祥地として、私の持つ記憶から知識や技術を提供したいと思っております。そうすることで、世界は便利になり、学園は評判になることでしょう。無論私にも、名声という得るものが出てくるものと考えております」
隣でアドルフの拳が握られたのがチラっと見えた。コイツ、ガッツポしそうになりやがったな。顔も口元がヒクついてんぞ。
俺が何故名声を得ると言ったのか。要は対価の問題だ。
無償で提供しても惜しくはない程度に済ませるつもりだが、俺に何の得があるのか、という疑問は必ず出てくる。
だから先に公言しておく。「名声を得る」と。
人の欲は色々ある。「有名になりたい」という分かりやすい理由を告げておくことに、意味はある。
それも何のために?と聞かれたら曖昧に笑って済ませる。真の理由は勿論別だからね。
「特にこの二つ目を成すために、多くの単位に参加しようと思っております。色々と変わったことをするやもしれませんが、皆様どうかご理解の程よろしくお願いします」
ここで一礼して、周囲の反応を確かめる。
前の三人はフライングで拍手しそうな勢いだが、その後ろの生徒たちの反応は様々だ。
納得してる人、首を傾げる人、胡散臭い目をしてる人。まぁ3割くらいはとりあえず頷いてる感じか、十分だな。
「ではこれを持ちまして……失礼、目的は三つと言っておきながら、二つしかお話しておりませんね。では、最後に申し上げます」
一つ息を吐いて、なるべく自然な感じで――微笑む。
「俺、あんまり友達いないんで、仲良くしてくれる人を募集しまーす!以上ッ!」
◆◆
入学式は終わった。
「ないにゃ」
「なかったね」
「ないのだ」
三人のそれぞれの感想である。
何に対して「ない」のか、まあ、うん、察しは付くんだが。
「何がないのん?」
「あまりにもあざといにゃ……初見だけにゃ」
「ごめんゼン様ちょっと引いたかも」
「不気味だったのだ。出来れば今後はやらないでほしいのだ」
「君たち酷くない?盛り上がったやろ!」
そう、俺の挨拶の感想である。
ネリーに至っては「寒気がしたにゃ」という追い打ちまで入った。
いや実際盛り上がったって!拍手喝采やったやないか!
「ちょっと、生理的に受け付けないっていうか……」
「気持ち悪いのだ」
リリーナもフランも大概ひでぇ。俺は今の自分の容姿を活かしたつもりなんだってば。
「前にも言ったにゃ。ゼン様のああいう作り笑顔と態度、全然似合わないにゃ」
「恰好だけっていうか、ポーズ?あからさまだよね。中身とギャップがありすぎて、知ってる側からするとありえないっていうか」
前?いつの話だ?
「忘れたにゃ?あの時もネリーは気持ち悪いって言ったにゃ。川に初めて行った時のことにゃ」
「……ああ、あの地主のおっちゃんの時か」
「言っちゃ悪いかもしれにゃいけど、あの頃からゼン様の見た目、まだあんまり変わってないにゃ」
……そんなにダメか?俺の爽やか系スタイル。いや、流石に鏡の前で試したりはしてないけど。
第一印象は大事なんだよ。すぐ払拭されることも多いけど。
そうだな、例えば。
「ところでだな。あそこにすごくこっちを見てる子がいるんだが、誰か知り合いか?」
あからさまな話題転換ではあるが事実だ。ネリーの目が三角形になっているが、気にしたら負けだ。
入学式を終えて、今はルームメイトとの顔合わせの時間、ということになっている。
つっても俺は首席として「特別寮」に入ることになっており、ルームメイトはいない。
校舎前の広場の木板に部屋割りが張ってあり、予想通り、この三人は同じ部屋だった。
となると、あの壁際から見てる子が、順位八席のところに名前があった「バミーラ」という子だろうか。
パッと見た感じ、性別がどちらとも取れそうな感じがするというか、なんというか。
名前を聞いてもちょっとどちらか俺には判断が付かなかったのだが、まあ女の子なんだろう。可愛いっちゃ可愛いし。
ただ12歳という年齢にしては、ちょっと小さいような……いや、リリーナとフランがおかしいんだけど。そういう種族なのかな?
「妾が聞いてみるのだ。そこな少女、何か用なのかー?」
どうやら誰も覚えがないらしく、フランがその子に近づいて行くと……。
「ちょ、ちょっと、待ってください……」
……同じ距離を同じ速度で後ずさりしていった。
すげえなあの子。何がすごいって、半身だけ出した体と顔の範囲が後ろに下がってもまるで変わらない。
つまり、フランが近づいてる角度と、全く同じ方向に下がってるってこと。何気に難易度高いぞ。
しかも隠れたりとかはしないのな。何故下がるし。
「遠いと話が出来ないのだ。バミーラという者ではないのか?」
「は、はいぃぃ、ぼくがバミーラです、ですからちょっと待ってくださいぃぃぃっ!?」
あ、フランが近づくのを早めたら仰向けにコケた。
ありゃ痛いぞ、後頭部直撃だ。ゴンって鳴ったかもしれない。
「私も行ってくるね。多分大したことはないと思うけど」
「まあ、ただの自爆で転んだだけだからな。ネリーも行ってこい、俺は先に特別寮を見て来るわ」
「分かったにゃ」
もう仕事気分は完全に抜けたのか、ネリーの口調がほぼ砕け切った気がする。
その方が俺も気楽でいいってこともあるけども、ちょっと責任を感じていたというか、小さい頃から抑制しすぎだったと思うんだよ。
16歳という年齢は、人格形成の修正を始めるにはかなり微妙な年齢だと思っているし、実際学園の場でも素で居られる時間は多くは取れないかもしれない。
けど、本来の明るさを押し殺してまで、「正しい従者」である必要はないし、「俺の部下」であって欲しくはない。
殺しやら諜報やらの仕事やらせといて何言ってんだって話だけど、完璧な人格なんてものは有り得ない。
未来のことも考えると、適度にガス抜きは必要なのだ。特にネリーは、本当に色々頼りにしなきゃいけないし。
「……さて、行くかね」
はてさて、通学とか何年振りなのかねえ。
神界の期間が曖昧なもんだから、加納善一が最後の大学院を卒業してから何年経ったかとか既に分からんわ。
しかしあの子、あれで八席ってのは、ちょっとおかしい気がするな……。
機会があったら【完全解析】をかけておくか、気のせいかもわからんけど。
◆◆◆
とても柔らかく、大きなものに包まれている、という感覚で目を覚ましました。
何かとても理不尽な気がするのは気のせいなのかな?とてもひどい現実格差を感じました。
目の前にはとてもよく育った二つの山と、比べてちょっと控え目だけど全然ある二つの山。目の上には顔すら見えない絶望的な装甲。
ああ、男の人ってきっとこういうのが好きなんだろうなあ……。
って、そうじゃなくて!
「だめだよー。一気に起き上がっちゃ」
慌てて立ち上がろうとしたら、頭に手を置かれて、動けなくなってしまいました。
え、えっと。な、なんで?そんなに強く抑えられてる感じはしないのに!
「起きたか?後ろ向きに走るのは危ないのだ」
現実を直視したくない装甲の間から、とても奇麗な人が覗き込むようにこちらを見ています。
先ほどこちらに向かってこられた方です。
信じられませんが、これで16歳なのでしょうか。ぼくと4つしか違わないのに……。
いや、ぼくにはまだ成長期が残ってる。鬼人族の血が濃いからまだ小さいだけに違いない!
って、そうじゃなくて!
「だから起き上がるならそっと立つにゃ。念のためにリリーナが治癒魔法はかけたにゃ、痛いところはないにゃ?」
「あ、はい」
今度はとても大きい方の人に抑えられました。
もう置いてるだけ、ってくらい力も入ってないのに……どういうこと?
そのまま軽く片手で上半身を抱きかかえられました。立たせてくれるみたいです。
「大丈夫?」
「えっと、はい……って!あの!すみません!」
「だから激しく動くなと言っているのだ」
慌ててお辞儀しようとしたら、とてつもなく高い防御力を誇る装甲の人に額を抑えられました。
びくともしないぃぃ……。
なにこれ、次席の人たちってこんなに凄いの?っていうか……。
「えっと、あの、すみません。その、ネリーさん、ですか?」
「妾か?妾はフランなのだ。そういえば名を聞きながらこちらは名乗ってなかったのだ。失礼したのだ」
えええっ!?
じ、10歳だよね!?10歳でそれ!?
ありえないありえない。見上げる形で……というか、膝枕されてた姿勢から見上げて顔が見えないサイズって……。
「ネリー姉さまはこっち。私がリリーナだよ」
「私がネリーにゃ。ところで、バミーラ、でいいかにゃ?」
「あ、はい、あの、すみません。ぼくはバミーラ=クライズと申します!クライズ王国から来ました!」
あ、思わずフルネーム言っちゃった!
なんかすごそうな人たちで緊張しっぱなしだよぅ。
首席の人とも仲良さそうだったし、どういう関係なのかな、とか、いじめられたりしないよね、とか、色々考えちゃって。
ただでさえ知らない人に声をかけるのって苦手なのに……。
っていうか、どう見てもこの中で一番年下なのって、ぼくだよね……。
恥ずかしくなって下を向けば、そこには靴どころかくるぶしまで見える、完全な絶壁……。
それを見てもっと悲しくなって、思わず両手で顔を覆ってしまいました。
「クライズ姓……となると、王族ということなのか?」
「多分。となると、私たちも自己紹介やり直した方がいいね」
ぼくが王族?
確かにクライズ姓は許されてるけど、庶子のぼくがクライズ姓を名乗れるのは、別の理由がある。
だからぼくは王族じゃなくて、限りなく平民に近い貴族、くらいの立場なんだけど。
「あ、あのっ……」
言いかけたところで、三人の中では一番幼く見えるリリーナさんって人から、自己紹介を始めてしまった。
「改めまして、私はカルローゼ王国第三姫、リリーナ・シュア=カルローゼと申します」
「アルバリシア帝国第二席、フラン・ニス=アルバリシアなのだ!」
「ネリー=チシャにゃ。王族ってわけじゃにゃいけど、カルローゼ王国名誉大公、兼アルバリシア帝国征西帝の、ゼン・カノー=レリック様の筆頭家臣にゃ。征西将ネリー=チシャというのが正しいのかにゃ?」
「今度ネリー姉さまにも何か名誉爵位を与えてくれるようにお願いしよっか?アルバリシア帝国からだけだと、自己紹介しにくそう」
「ネリー姉はゼン以上に官位や爵位に興味がなさそうなのだ」
思わず膝から崩れ落ちるぼく。
それを聞いてぼくにどうしろというのですか……カルローゼ王国とアルバリシア帝国の姫様二人に、意味不明なほど偉そうな人の筆頭家臣って……しかも征西将って正式な役職持ちって。
……これも呪いだとしたら、ぼくはどれほど呪われているのでしょうか……。
ゼンのスキル紹介コーナー
【記憶】
パッシブ/アクティブスキル
所持者はこのスキルを所持した時点より、一度見たものを忘れることがなくなる。
スキルを使用することにより、自身の記憶を呼び起こすことが可能になる。
使用時の効果は所持者の魔力と精神力に依存し、運によって増減する。




