魔物と家畜
ちょっと時間経過が加速します。
報告回に近いですね。
ギース・フィナールは、自分の領地を離れ、王都カルローゼへ向かっていた。
既にフィナール領の領主については代替わりを行っていたのだが、先日父ダリルがこの世を去り、正式にカルローゼ王国の伯爵位を継ぐことになった。
今回はその正式な爵位の授与式典に出席するために、数人の供を連れて王都へギースが赴くことになっていた。
その道中、馬車に乗ったギースは、弟ナイルと会話していた。
「父上が言われていたことはおよそ正しいものであったな、俺もいくらか、面倒な連中に毒されていたようだ」
「僕としては、兄さんがそうなってくれたのは素直に嬉しいよ」
ナイルは自分が次期領主になることはないと思っていたし、また望んでもいなかった。
兄の気質を考えると不安なところもあったのだが、父の葬儀で久しぶりに話した兄は、幾分考え方が柔軟になったように思えた。
物言いは昔から変わらないが、父の間際の言葉は確かに届いているようだ。
父ダリルは遺言として残したものは多くない、方針は曲げぬようにということを兄に伝え、今まで通りでいいと自身に伝えた。
細かい遺言書については、エドナが後に2人に手渡した。
ギースとナイルは、対照的な兄弟である。
片や傲慢が服を着て歩く、強気な視線をなかなか崩さない、茶髪赤目の兄。
片や謙遜が服を着て歩く、弱気な視線を隠そうともしない、赤髪茶目の弟。
似ているのは背格好だけとよく言われたものだが、性格はともかく、見た目については両親の特徴がはっきり分かれた、というだけの話である。
少なくともエドナは「見た目こそ違いますが、間違いなくご兄弟ですよ」と評している。
見た目も性格も全く異なる2人だが、少なくとも領主としての気質は、確かに持っている。
ナイルはギースほど強くはなれない、それゆえに思いやりを以て領民に接しようとした。
ただ、領主となると、責任感は強くとも判断力に欠けるナイルでは心もとない、思いやりだけでは統治は出来ないのだ。
それ故に、父ダリルは早い段階でギースを次期領主と定め、ナイルにはフィナール領南部にある、ナジュール領にほど近い町を与えた。
町の名前は正式なものではないが、「ニアジュールの町」と呼ばれている。
滅亡したローランド共和国にありながら、辛うじて被害が少なかったこの町は、フィナール領において最初に発展した町だ。完成度でいえば、フィナールの町より高い。
また、隣接するナジュール領は、セス・ナジュール侯爵というカルローゼ王国でもかなりの有力貴族の領地でもある。
セス・ナジュールはダリル・フィナールと旧知の仲であり、年齢も未だ40歳に届かない。
ダリルはセスに、自分やエドナの亡き後、相談相手になってもらうように依頼していた。
元よりセスには中央嫌いの気質があり、辺境を治めることの大変さは良く知っている。
何しろローランド共和国がフィナール領になるまでは、ナジュール領が辺境だったのだから、先祖からそういった部分を引き継いでいるのだ。
だからこそ中央に染まったギースを苦々しく思ったものだが、領主になってから落ち着きを見せていると聞き、一先ずは安心か、とセスは考えている。
「ナイルは、今何か不満に思っていることはないか?」
ギースは久しぶりに会う弟の現状を知りたいと思っていた。
ナイルも名誉男爵が与えられることになっている、そもそも伯爵家である以上、さしたる意味はないが、ナイルの子にも伯爵家を名乗らせることは多少問題があるためだ。
基本的に一代限りの爵位を与え、ナイルは子に爵位を継がせることが出来ない。
ただ、伯爵家であることには変わりないので、そこまでの不都合は無いものと考える。
「不満は無いよ。僕は町の統治で精一杯で、外のことまではどうしても難しいし」
ナイルにはフィナール領から税を取ることは出来ない、権限として持っているのはニアジュールの町中のみだ。
それでも3万人近く住んでいるのだから、税収的には全く問題ない。
ただ、統治が上手く行っているかといえば、やや難しい。
「現状維持」が精一杯といったところだ、執行官の質の問題である。
人格的に問題はないが、「平凡」といった文官揃いで、領主の館に出仕する人間としては、最低限、といったところだ。
もっとも、ギースとしても、執行官については頭が痛いところである。
エドナはいまだ健在だが、出仕してくる回数も減り、ほぼ引退状態だ。
「そういえば兄さん、シャレット代官は、なんだか凄いみたいだね」
さすがに領内の情報くらいは入ってくる。
シャレットが代官として治める「イストランド郡」は人口増加が著しく、土壌改良の甲斐もあり、フィナール領の穀物庫とも呼べる郡になりつつある。
「なんでも、エドナさんの娘さんが切り盛りしてるって聞いたけど」
「それは正しいが、一部は正しくないな」
ギースは、エドナの娘、すなわちユーリのことだが、彼女のことはそれほど高く評価していない。
実際のところ、ユーリが切り盛りしているのは間違いないのだが、彼女はまだ「使われている立場」というのがギースの評価だ。
「じゃあ、やっぱりシャレット代官がすごいのかな?」
少しばかり返答に困ったギースだが、この際、存在を教えておくのもいいだろう。
ただ、情報は少しばかり伏せて告げる。
「実務はエドナの娘ユーキリスが文官を使って行っている。だがそのユーリにしても、自分の改革案というものは、ほとんどが他者からもたらされたものだ」
「ということは、ユーキリスさんより、凄い人がいるってこと?」
アレを凄い、で済ませていいものか悩むが、名前は告げておく。
「シャレットの息子に、「ゼン・カノー」という者がいる。イストランド郡の画期的発展案の下地は、ほとんどこの男が作っているものだ。ユーリはそれを形にしているだけだな」
もっとも、普段の実務はユーリが行っているが、と続ける。
「まだ子供だが、発想力は同じ頃のエドナを上回るかもしれん。だが、画期的すぎるのも確かだ。よって、イストランド郡は我らの領内にはあるが、一つの自治領と考えるべきだろう。父上やエドナからも直接関わらないようにと言われている。お前もそうするようにな」
覇気を込めて告げる兄の言葉に、ナイルは頷くことしか出来なかった。
「王都で何か言われるかもしれないが、よく知らないで通せ、いいな」
授与式を終えたギースは疲れきっていた。
貴族連中から散々言われて辟易したというのもあるし、シャレットを代官にしたのを嘲るように告げてきたのだ。
他の貴族と付き合うことは避けられないのだが、出来ればなるべく王都に近づくことは避けようと決めた。
これに染まったがために、道を誤りそうになったのだ、話半分に聞き流すことに専念する。
それを貴族達が不満に思い、なお糾弾しようとしたところで、助け舟が来た。
カルローゼ王国の筆頭文官、アール・ラルが「フィナール伯爵卿にお聞きしたいことがありますので、こちらに」と言葉をかけて来たのだ。
これ幸いとその場を流したギースは、アールに連れられてやや狭い応接室に通された。
普段使うような部屋ではないことに若干不審に思うギース。
アールはギースに着席を促すと、早速用件を伝えてきた。
どうやら助け舟が来たと思ったのは、間違いだったらしい。
「聞きたいことは、ゼン・カノーのことです」
やはりアレとの付き合いは避けられんか、とため息を吐いた。
(アレのおかげでフィナール領が発展していることは俺もエドナも認めているのだがな……)
いまだゼンに対して苦手意識を持ち続けているギースである。
◆◆◆
だいぶ人の行き交いがされるようになってきたようだ、屋敷のある村の風景を眺めながらそう思う。
この村をイストランド郡の中央に設置して、南北に街道を整備した甲斐はあったかもしれない。
そろそろ名前が必要だなぁ、母さんの名前でも付けるか?シャレットの村、うーん、安直すぎるか。
イストカレッジ、これまた安直だが、こんなところでいいか。
人の行き交いが増えただけでなく、実際にイストカレッジの人口は大幅に増加している。
今のところイストカレッジに住居を構えるのは、およそ2500人、村の規模も大幅に広がった。
母さんが代官になって2年、当初200名もいなかった村の人口がいまや10倍以上だ。
隣の集落やらと合併したのもあるが、イストカレッジは母さんが屋敷を構える村だ、安全という点では町の外としてはこれ以上ない場所である。
何しろ父さんと母さんはSSクラス昇進間近の冒険者でもある。
そんな人物が村を守ってくれるのだから、そりゃあイストカレッジの人口は増える一方だ。
また、イストランド郡全体において街道整備を行い、仮住まいの住居を近隣に建てた結果、辺境にいた集落なども街道近くに住まいを移してくれた。
全員というわけではないにしろ、当初の「安全確保」という目的はほぼ果たされそうだ。
巡回の冒険者に加え、持て余し気味の父さんが魔物の駆除を行っていることもあり、フィナール領の中でも「極めて平和」と評されるようになってきたようだ。
概ね満足である、そう、概ね満足なのだが……。
とりあえず視察は完了だ、適当なところで散歩を切り上げて屋敷へと戻る。
帰り際に村のおっちゃんから「採りたてだべや」と果実を1つ渡されたので齧る、うん、なかなかいいじゃない。
「で、3ヵ年計画の最終年に入ってるわけだけど、目標値何回修正したかね?」
「ゼン君が案を小出しにするからいけないんですー!あたしだって頑張ってますー!」
ユーリとの問答も何度目か、と思うが、結構な年棒を払っているのだ、もっと先を読んでもらわねば。
ただ、大目的である「安全確保」は既に達成されたと思う、目標というのは人口増加なわけだが、やはり人口増加速度についてこれてないユーリと文官はてんやわんや、といったところだ。
「戸籍作りも、進んでるんでしょ。実際何人増えたのさ?目標値は今のトコ三年で5000人、だったっけ?」
執務室にいるのは俺とユーリだけだ。
実際のところ目標値は四半期ごとに設定しなおしている、当初の三年で1000人、などというしょっぱい目標は既にどこかへ行ってしまった。
「……前年比で3425人ですー。代官就任からだと、6591人……」
戸籍的にはそんなもんか、実際にはもうちょっといるっぽいけどな。
ユーリが書類を提出しながら報告する、製紙技術は高いんだよなあ。
活版印刷もあるし、大量にってわけじゃないが、製本も出来る。この辺りは残っていてくれてありがたいね。
識字率も思ったよりは悪くない。村の人でも3~4人中1人は読めるのだから、全体的に考えれても最低3~4割くらいはあるだろう。町に住む人たちまで含めれば、もうちょっと高いかな?
さて、ユーリら文官が苦労しているというのは承知している。
だがそれでも、見通しがヌルいというか、ちょっと見積もりが悪すぎるだろう。
「実際のところさ、俺もどれくらい移民者がいるのかってのは分からなかったわけだけど、どんな感じで情報が流れているかくらいは調べたと思うんだけど?」
「ううー……それは認めますけどー」
「逆に言えば、俺も改良した土壌についてはよその土地と比較したわけじゃなかったんだけどさ。フィナール領は元々ローランド共和国なわけで、散り散りになった人たちが肥沃になったと聞けば、戻ってきても不思議じゃないっしょ」
「でもー、それだけでこんなに集まるなんてー」
「俺がなんで街道整備を真っ先にしたかって、単純に安全確保ってわけじゃないよ?そういう人が集まってくるから、先にそこだけを整備しといたってのも理由」
「ゼン君がー、魔物を家畜にしたりとかするからー」
「それは実験だったんだがなぁ。俺としてもちょっと意外な結末だったことは認めよう」
魔物の家畜化。
出来るかどうかをやってみようと、俺は魔素の濃いところを探して、生まれたてのビーフ系やホース系、ついでにシープ系などが現れるのを待った。
元々家畜用に牛や馬を買い集めたのだが、高いということと、数が少ないこともあり、イストランド郡に集められたのは20頭程度だったのだ。
やはり数が足りないので、D級程度の魔物なら、何とかならないだろうかと思い、元々家畜用として飼われる存在に近い魔物を試験的に利用してみることにした。
魔物は自然発生するものだが、法則は掴んでいる。すなわち魔素濃度が高い場所ほど、魔物が出現しやすいということ。
魔素濃度とは調べられるものではないのだが、人里を離れるほど濃くなることは間違いない。
というわけで、人里離れた林の中で2段階の結界を張り、【魔素吸収】で意図的に魔素がある場所とない場所を作り出してみた。
実験的な意味合いもあったのだが、やはり魔素のある場所でしか魔物は生まれなかった。
そして生まれた魔物のうち、家畜として必要ないものはその場で屠り、死体を放置してまた魔素養分にする。
で、フェーブルビーフやローホースといった、ほとんど牛や馬と変わらないというか、ちょっと大きいかも、という魔物が生まれたら、徹底的に教育てやった。
[浄化]をかけながら教育して治癒魔術で癒やす、という繰り返しをしてたら、1時間ほどで抵抗しなくなった。生まれたてなら本能といえどこんなもんか。
そんな感じで、フェーブルビーフやローホース、スモールシープといった辺りを確保、それぞれ20体ほどだ。
召喚魔術の術式を使用し、人を襲わないように言い聞かせたそれらは、家畜とほとんど変わりは無い。
まあこっちで言う使い魔みたいなものになったのだが、連れて戻った時には村が大混乱に陥るところだった。
慌てて【威圧】をかけて動きを止め、[沈静]を振りまいて落ち着かせる。という力業もいいところのコンボを決めて、村からやや離れた場所に設置した牧場へと連れて行った。
あらかじめ家畜用の飼育係として、3名の牧童を他の牧場から引き抜いておいた。その道10年は越すベテランばかりである。
魔物を連れてきたことにより流石に慌てた様子だったが、特に危害を与えることもないと説明すると、逆に興味が沸いたようだ。
「ありえねえけどこういうこともあるって言われてたしなぁ」というのが総意のようだ。うん、そのつもりで引き抜いたわけだし。
ここからが本当の実験、とでも言うべきか、魔物と動物の配合は可能なのか、ということを調べてみたかったのだ。
そもそも魔物は生き物ではない、というのが知識神の見解だったが、魔物肉を食したり、魔物の解体をしたりしていると、普通の生物とは言い難いものの、少なくとも生殖機能は「ある」と俺は結論付けた。
つまるところ、魔物は特殊な産まれ方をして、人類の敵であることは確かだが、「生物」には違いないように思える。
何と言うか、この世界のルールということなのだろうけども、魂を持っていないにしろ、それを生き物ではないと断じるのもどうなのだろう?
俺が考えたのは、生殖器があるということは、似たような動物となら子供も成せるのではないか?ということだ。
そんな推測を持って実験してみたのだが、結果は半分成功、といったところだった。
まず魔物同士の配合、これは不可能だった。
雄雌の違いはあってもそれ同士で子を成せることはないらしい。まあこれは出来たとしたら、今頃魔物が大繁殖しているだろう、人類はとっくに滅んでいるに違いない。
そもそも魔物は性交に興味を持たないということもあり、やや強引な検証になったのだが、子を成すことはなかった。
では魔物と動物同士であればどうか。
結果は、「条件付で可能」というものだった。
雇った牧童達と一緒に色々試した結果に出た結論なのだが、「雄が動物・雌が魔物」という条件であれば、子は成せる、というのが出た結果だ。
何故逆が成り立たないかというと、これは少し俺も不明なところになるのだが、そもそも魔物の雄には「子種」が無いのではなかろうかというのがとりあえずの結論だ。
普通なら魔物にとって動物は食い殺す対象でしかないのだが、教育の賜物か、「興味なし」というところまでは来ていたので、共存することは問題はない。
外観的には問題だろうが。
意外だったのは、動物は魔物をあまり恐れない、というか普通に同種として見ている節があったことだ。
流石に【念話】と【完全翻訳】をもってしても、動物とはっきり言葉をかわすことまでは出来ないから、そう見える、というだけなのだが、牧童も同感のようだ。
というわけで、動物側の雄に頑張ってもらうことにしてみたところ、魔物の雌個体が次々に子を成した。
妊娠期間が普通のそれより極めて短く、生まれた子も相当未熟で手がかかる感じだが、生命力はかなり強い。
産まれ方も牧童が知るそれとは大きく異なるようだが、少なくとも産まれた子は「魔物ではない」と牧童も見たらしい。
俺としても【完全解析】では魔物にはなっていないし、コアもない。種族は「牛?」とかいう疑問系だったが。
少しばかり闘争心という点で、家畜としての運用は難しそうだったのだが、牧童は「何とかする」そうだ。
ただ人手が足りなくなるのは目に見えていたので、月金貨1.3枚で牧童見習いを募集した。3年後には月金貨2枚、悪い条件ではないだろう。
結果として20人ほど集まったので、雇った牧童3人を責任者として、牧場の運営に当たらせることにした。
ベテラン牧童3人の給料は月金貨3枚+ボーナス付きだ、引き抜き時の条件は月金貨2.5枚だったが、手がかかる分多めに積んでおいた。
やる気満々なので何とかなるだろう。
規模が大きくなれば昇給も考えておく、あるいは別の場所に牧場を作ることになるかもしれないし。
といった感じで牧場運営は成り立ちそうな感じなのだが、動物の雌は普通に家畜の番として有用なのだが、魔物の雄については配合には使えないということになった。
ならば屠って食料にするか、というもったいないことはしない。一応、[使役]出来ていることだし、普通に家畜として使ってみることにした。
イストカレッジの住民であれば、俺が多少突飛なことを言い出しても、大抵受け入れてくれるもので。
「ゼンちゃんが使えるっちゅーなら、使うてみるべえ」
と、俺が最初に村で会ったおっちゃん他数名が引き受けてくれた、あのおっちゃん人がいいなあ。
教育をして、術式を施したフェーブルビーフやローホースは、実に大人しいもので、人の言うことをよく聞く。
また普通の牛や馬よりパワフルであるため、むしろ使い勝手はいいだろう。
食費という点では「肉食系」であるため、普通の家畜よりかかるのだが、そこは代官側でとりあえず負担しておく。
魔物肉は[空間箱]に捨てるほど入れてあるのだから、【魔素吸収】で魔素を取り除いておけば、魔物が進化する可能性も低いはずだ。
魔物の進化条件とは、長く生きて魔素を吸収するか、あるいは共食いのような感じで魔素を体内に取り込むなど、とにかく体内にどれだけ魔素を増やすか、という点にある。制御出来なくなるほど進化すれば、屠るだけだ、とあっさり決め込む。
念のためにネリーに着いていた「隷属道具]を少々いじって取り付けてある、余程のことが無い限り、家畜化した魔物が人を襲うことはないだろう。
問題だらけの「服従の首輪」だったのだが、意外な形で役に立ったなぁ。
「イストカレッジ民の耕作地が広がったしなぁ。そら村人も人を雇わないと今度は作物の管理が間に合わんよな」
「農地増えすぎですー、てかイストカレッジって何ですかー?」
「いや、ここら一帯の村にもそもそも名前が必要かなと思って、勝手に俺がさっき付けたんだけど」
安直ですー、とユーリ、んなもん俺もわかっとるわ。
イストランド郡内でも、俺がもっとも「実験地」として活用しているのはこの村だ。
格差的に大丈夫かなぁなどと思ったりしたものだが、少し離れたところでは、「何やらワケ分からんことをしている場所」という認識らしい。
最近では「代官は魔物が住む村に住んでいるらしい」とか言われるのだとか。
もっともその代官は、魔物狩りのスペシャリストである冒険者であり、Sクラス最強の一人として名高い母さんなわけで、「危険な場所」とは捉えられてはいない。
「牧場運営についても軌道に乗れそうな感じだし、あとは家畜をどう分配するかってことになるけど、基本的にはイストカレッジを中心に広めて行こうかね。繁殖にはまだまだ時間がかかりそうだし、合いの子がどう育つかはまだ不明だし」
「そうですねー。いきなり魔物やその子供を渡してもー、実際使ってみるというのは、ちょっとー」
魔物を捕まえてくるにしろ、それなりに時間はかかる。
成熟した魔物はやはり本能が勝るのか、制御が可能になるまで時間がかかりすぎるし、そもそもタフビーフなんて家畜として使う人間はそういないだろう。
いや、イストカレッジ民なら、あのおっちゃん辺りなら使ってくれそうではあるが、デカすぎるから開拓はともかく、耕作となるとちょっとどうだろう。
「これについては、問い合わせが来ても、実験中ってことにしといてね」
「わかりましたー」
「んじゃ、改めて目標を設定するように。見積もりがヌルいと予算が合わないからね」
受け入れに特に制限はかけていないが、アパートみたいな簡易住居を用意している。
前年の税収は見込みの倍だ、その分インフラ面に予算をつけているのだが、受け入れ速度に対して十分な予算を振れていない感じだ。
繰越金もあるし、余剰金も使えるので、足りなくなるということはないが、決算的には確実におかしなことになるだろう。
「あのー、そろそろ、人件費も……」
「そのくらい勝手にやってくれりゃあいいものを。好きなように、つっても難しいか。んじゃとりあえず金貨500枚分追加ね。あとユーリさんの使途不問金も金貨300枚を増額する」
「あいかわらず豪快ですねー」
ちなみに予算をどこにどう振るかというのは、本当に大まかな、円グラフ的にざっくりと割合だけは決めている。
昨年の税収はだいたい金貨7000枚。うち3000枚はインフラ面に注入済みで、ユーリ含む人権費は600枚ほど。まだ予算に余裕はある、というか見積もりがヌルかったので、母さんの懐行きになっていた金は全て余剰金にしてある。
俺の見積もりとしては、年間予算金貨7000枚はかなり際どいところだ。最終的に母さんの懐にはほとんど入るまい。
人件費と維持費さえ確保しておけば、インフラ整備は遅らせてもいいかな。
◆◆
「とまあそんな感じで、どうも母さんの手元には金が残りそうな感じがないね」
「代官になって左団扇とはいかないものね、と言いたいのだけれど、だいたいゼンのせいじゃないかしら?」
「お優しいゼン様ですからね」
母さんとネリーと一緒に、談話室でトークタイム。
そういえばネリーが「始まった」のだとか、何がとは聞かない、聞きたくない。
むしろ遅いのではとか言いそうになったが、言わない。
「ネリーも随分大きくなったわね。確か15年くらいで完成すると聞いてるけれど」
「そうですね、もう少し背も伸びそうです。ゼン様に満足頂けr「ストップ、俺まだ5歳」私はいつでも構いませんよ?」
ネリーが先走ったことを言い出しそうになったので止める。
実際のところ、うん、まあ、少女というラインはちょっと超え始めているかな、とは思う。
身長も伸びた、今のところ150cm中ごろといったところか、既に出るところは出てるし、しなやかな体つきは、相当魅力的になってきた。
15年というと、あと3~4年は成長するのだろうか、ネリーは今11歳だ。
となると、成長が止まるのは15歳くらいか。
いつも見てる感じだと、160cmを越えるのは確実だろう、母さんよりは背が高くなりそうだ。
しかしなんだな、人間で言えば既に高校生くらいの感じなんだが、更に成長するのか……。
などと思っていると、ロクでもないことを言い出す母さん。
「ゼンくらいだと、1人2人じゃ足りないでしょうね」
「お前は何を言っているんだ?」
思わず突っ込みを入れてしまったが、「何言ってるの?」って顔された、母さんどういう意味さ?
「そうですね、そもそも私は従者ですし。せめて4~5名は囲って頂くことになるかと。出来れば2桁は欲しいところです」
「お前も何を言っているんだ?」
ネリーさんもおかしいよ、と思ったが「えっ?」って顔された、ネリー、お前もか。
「馬鹿には私1人で十分だけど、ゼンは当然妾くらいは持つでしょ?」
「いやいや、なんでいきなりそういう話になるのかkwsk」
「でもゼンって、結構女の子よく見てるわよね?1人で我慢出来るわけないじゃない。そんな一途な性格してないみたいだし、正妻には理解ある子を選びなさいよ?」
「いやいやいや、そんなんないから。正妻とか他の嫁持つ前提じゃねえか。てか母親がそれってどうなん」
母親だから言ってるのよ、と母さん。
何か認識がおかしいよ?
「ゼン様ほどの方ならば、子は多く成すべきです。強い雄はその義務がありますよ?」
「俺はどっかの王様かよ!」
「そのうち、似たようなものになられると思っております。何も問題ないでしょう?」
「俺はいったい何様なんだよ、「z」ゼン様ってのは無しな」
「……先に言われたにゃぁ」
耳をしんなりさせるネリー。
しかし……うーん、まあ、いいか、いや、よくねえけど。
とりあえずこの話の流れはマズいので、方向転換する。
「そういやネリーは洗礼を受けないのか?」
そう、ネリーは10歳の洗礼を受けていない。
職業にどれほど効果があるのか分からないが、貰っておくにこしたことはないような気がするが。
そう尋ねると人差し指を口元に当てて考えるネリーだが、首を振る。
「正直に言って、私が何かしらの「王」として洗礼を受ける可能性も少なくありませんし。学園に入る前で構いません。ゼン様も入学なさる予定ですよね?」
「まあ、そのつもりだな。学園で何か実績を残すのが技術を伝達させるのは一番早そうだし、あそこにいる間は国からちょっかいかけられることも少なそうだ」
学園都市シェラハー。
大陸中の有望な人材が集まる、総合教育都市。
入学に年齢制限はなく、10歳から入れる、というだけ。
入学金と学費は結構な金額がかかるものの、優秀な職業を持つ者ほど優遇され、「者」クラスならば学費免除すら有り得る。
ネリーが入るであろう戦闘クラスだけでなく、農業・商業・職人系クラスや、国家を担うようなエリートクラスまで、様々なクラスがあると聞いている。
同時に一種の研究都市でもあり、新たな技術が広まるのはシェラハーから、とも言われている。最先端技術が集まる都市、ということだ。
こんな都市があるにも関わらず技術の発展がイマイチなのは、学園都市としての歴史がさほどではないからなのだろう。
母さんから聞いた話では、「30年くらい」ということなので、そんなもんだろうな。
まだ母さんが代官になってから僅か2年ではあるものの、新技術を伝えるならシェラハーで研究した方がいいように思う。
もっとも俺なりに既に研究はしているので、現実としてはお披露目の場、という感じになりそうではあるが。
ネリーが危惧する「何かしらの「王」になる」というのは、確かに少々目立つことではある。
俺の推測では「王」になる可能性はまだ低いはずなのだが、洗礼を受けると目立つことは間違いではないだろう。
何しろ母さんの「ダブル」だった時も、国王から通達が来たって話だしなぁ……。
「仮にネリーが「格闘王」として洗礼されても、そこまでステータスに影響が出るとは思えないしね」
というのは母さんだ。やはりそこまで補正は強くないのかね。
【完全解析】でいずれ補正値が分かるようになるかと思ったが、そこはなかなか分からないんだよなあ。
既に【完全解析】で分からないことは相当少ないんだけど、まだ進化し続けてるっぽいし、もう一段階進化したら分かんないことなんてないんじゃないかな?
いずれにせよあと5年先の話だ、それより俺が5歳になったということは、ギルドへの加入可能になる時期でもある。
「母さん、俺とネリーなんだけど、とりあえず冒険者ギルドに加入しようと思うんだよね」
「まだ5歳と11歳、それでも物凄く今更に感じるのは気のせいかしら?」
既に母さんの中では俺達は冒険者カテゴリらしい。
分からんでもないけどな、特にネリー。
あ、俺はもう転生した時から人類というカテゴリを自分を外してますんで、はい。
「言われてみれば、まだ冒険者ですらないのは分かってはいるんだけどね。確かに国境を頻繁に越えるつもりなら、それなりに肩書きはあった方がいいけど、<災害級>とか出た時には召集がかかるわよ?」
代官の息子、となると既にそれなりの肩書きではあるのだが、効く範囲は若干狭そうだ。
ギルドにも色々種類があるが、冒険者ギルドはその中でも責任はかなりゆるい、個人稼業という点ではここが一番だろう。
「すぐに母さん達みたいにSクラスとかになるつもりはないよ。実績も必要だろうし、下積みも大事でしょ?」
「あなたに下積みねぇ。全然ピンと来ないのだけれど」
「強ければいいってもんでもないでしょ?」
確かにねぇ、と言いながらも納得はしてないような母さん。
反対なのか?と思うと、そうでもないらしい。
「もちろん反対はしないわよ?私もそうだし、ゾークも喜ぶと思うわ。親子揃って同じ仕事っていいじゃない。けどゼンはそれでいいの?」
ああ、なるほど。
俺の「使命」とやらはいいのかって話か、まあこれも手段の一つなわけで。
「俺もそれなりに有名になっておいたほうが、後々都合がいいってことだよ。本格的に名を売るのは、学園を出た後くらいかなと思ってる」
おおまかな計画は決めているものの、五里霧中とでも言うか、先行きはわからん。
母さんが代官になったことはイレギュラーだったけど、都合のいいこともあったし。
これから先も、ステータスの「運∞」とやらの作用かどうか分からんが、何がしか色々起きるだろう。
イレギュラーってのは避けられないからイレギュラーなわけで、これをいい方向に持っていけるかどうかは、自分次第だ。
大目的を外すつもりはないが、課程については苦労するにしろ、楽しめた方が得というものだ。
結果として「世界の滅び」を避けられれば、それでいいんだろ?
◆◆
さて、冒険者ギルドへの登録を行うわけだが、[人物鑑定]によるステータスボードの更新も同時に行われることになる。
俺はネリーを部屋に呼び、どのくらいのステータスに【擬態】しておくか確認することにした。
「別にネリーはどうでもいいにゃ」
ネリーはあっさり俺に丸投げしてきたが、流石に両親がほぼ「S」だからとはいえ、俺達も、ってわけにはいかないだろう。
だからといって偽りすぎてもやりにくいのは確かだ。
普段俺が【擬態】している数値は、筋力・器用さ・素早さ・魔力・精神力の順にBCCDA、という数値だ。
ネリーにかけている【擬態】も似たようなもので、BCBECということにしてある。
成長値への【擬態】もかけてあるし、恐らくはバレないだろう。
この数値にしても、子供が持つステータスではないだろうが、俺は先祖返りということになっているし、究極の全適正というのは国に伝わっているはずだ。
実は【変化之理】でネリーもそうなっているのだが、これだけは何としても隠さねばならない。
あるいは【擬態】しそこなう可能性もあるので、[人物鑑定]を受けるまでの間、成長値を元に戻しておくことにする。
【擬態】は完璧なものではない、[人物鑑定]に見破られることはないと思うのだが、あくまで念のためだ。
さて、ここらで俺とネリーが今どんなステータスになっているか、というと、こんな感じだ。
名前 ゼン・カノー/(加納善一?)
年齢 5歳/?
種族 人類種エルフ族 (クォーターエルフ)/半精霊種半?(元人間)
職業 なし(インフィニティ)/?
称号 謎の研究者/運命超越者/?
状態 健康/擬態/肉体と魂の不適合中・42%/リンク:ラピュータ/眷属:ネリー
Lv:30
生命力:2843/2843 (166)
魔力量:1036813/1036813 (172)
筋力:2231 (60) (B)
器用さ:2484 (62) (B)
素早さ:1734 (60) (B)
魔力:1342 (60) (C)
精神力:3455 (62) (A)
運:∞ (∞)
魅力:2456 (60)
経験値:?/?
スキル
超越能力:【?】
唯一能力:【限界突破】【理外進化】【変化之理】【?】【?】
特殊能力:【完全翻訳】【無限成長】【完全解析】【改良模倣】【次元干渉】
【一騎当千】【魔素吸収】【天上書庫】【万物造成】
【鉱石変質】【五穀豊穣】【精霊体化】【大魔鬼化】
固有能力:【成長促進】【念話】【精霊魔法】【成長指導】【擬態】【威圧】【工程短縮】
汎用能力
戦闘系:【体術9】【剣術6】【銃術9】【弓術10】【暗器7】【長刀術10】【短剣術7】【槌術8】【刀術8】【投擲術7】【戟術5】【矛術5】【槍術7】【格闘術4】
魔法系:【魔力感知8】【魔力操作9】【魔力解析8】【術式理解10】【火法術9】【水法術8】【風法術8】【土法術7】【雷法術8】【天法術9】【冥法術9】【治癒魔術7】【召喚魔術10】【神聖魔術7】【空間魔術10】
職業系:【鍛冶9】【木工7】【建築6】【裁縫7】【医術6】【調合10】【錬金術10】【革加工7】【彫金6】【料理9】【魔道具作成8】【魔術科学4】【養畜3】【統治3】【統率3】
採集系:【農業9】【土木6】【林業6】【採集6】【採掘7】【砕岩7】【調査8】【解体5】
その他:【家事7】【礼儀4】【交渉5】【算術9】【生存術4】【計測7】【観察眼6】【直感5】【分析7】
名前 ネリー
年齢 11歳
種族 獣人種猫人族
職業 なし(クアドラプル)
称号 ゼン・カノーの従者
状態 健康 擬態中 眷属 (主:ゼン・カノー)
Lv:38
生命力:1046/1046 (25)
魔力量:404/404 (15)
筋力:1031 (20) (A)
器用さ:994 (20) (B)
素早さ:845 (20) (B)
魔力:352 (15) (D)
精神力:650 (20) (B)
運:150
魅力:554 (20)
経験値:5564/36000
汎用能力
戦闘系:【体術8】【格闘術6】【弓術6】【隠密6】【暗器6】【短剣術5】【投擲術5】
魔法系:【魔力操作6】【魔力感知3】【風魔法3】
職業系:【裁縫6】【料理6】【木工4】【建築3】
採集系:【林業4】【採集5】【採掘5】【土木4】
その他:【家事7】【礼儀5】【交渉4】【算術4】【生存術7】【直感9】【観察眼5】【気配察知5】
まあ、色々言いたいことはあると思うんだが、こうなってしまったのだから仕方ない。
いや仕方なくない部分は多大にある、【変化之理】を使ってるわけだから。
ちなみにSクラス最強と呼ばれている両親が、これだ。
名前 ゾーク
年齢 33歳
種族 人類種人間族
職業 槍王 (弓者)
称号 最強のSクラス冒険者
状態 健康 強化
Lv:53
生命力:501/501 (4~8)
魔力量:201/201 (1~2)
筋力:428 (3~6) S
器用さ:405 (2~5) S
素早さ:354 (2~4) S
魔力:248 (1~2) A
精神力:344 (2~3) S
運:81
魅力:251 (2~4)
経験値:55/54000
固有能力:【自動治癒】
汎用能力
戦闘系:【体術8】【槍術8】【剣術6】【弓術6】【格闘術5】【矛術4】【棒術5】【斧術3】
魔法系:【魔力感知4】【魔力操作6】
職業系:【鍛冶3】【木工3】
採集系:【土木3】【採集4】【採掘3】【解体7】
その他:【生存術5】【観察眼6】【直感6】
名前 シャレット
年齢 33歳
種族 人類種エルフ族
職業 賢王 (魔法者)(弓者)
称号 イストランド郡代官
状態 健康 強化
Lv:49
生命力:385/385 (3~7)
魔力量:534/534 (4~9)
筋力:265 (1~3) S
器用さ:332 (2~4) S
素早さ:298 (2~3) S
魔力:441 (3~5) S
精神力:406 (2~5) S
運:143
魅力:289 (2~4)
経験値:13856/48000
固有能力:【半魔眼】【自動治癒】
汎用能力
戦闘系:【体術6】【弓術6】【隠密4】【杖術4】【短剣術4】
魔法系:【水魔法7】【風魔法7】【光魔法5】【治癒魔法6】【神聖魔法5】【魔力感知7】【魔力操作7】
職業系:【料理3】【医術5】【統治4】【統率4】
採集系:【採集3】【解体4】【農業4】
その他:【家事4】【礼儀5】【生存術4】【直感5】
最後に一般人代表ユーリだ。
ただ、一般人といっても、各地を放浪していたせいか、実はそこそこ強いのだ、一般人としては。
名前 ユーリ・ランド
年齢 33歳
種族 人類種人間族
職業 為政師
称号 イストランド郡執行官代表
状態 健康
LV:16
生命量:78/78 (2~5)
魔力量:47/47 (1~4)
筋力:92 (2~4) D
器用さ:81 (2~3) D
素早さ:77 (1~3) E
魔力:72 (1~3) E
精神力:122 (2~5) C
運:53
魅力:88 (1~4)
経験値:303/4600
汎用能力
戦闘系:【体術4】【斧術4】
魔法系:【土魔法3】【魔力操作3】
職業系:【統治5】【統率4】
採集系:【農業5】【林業4】【土木5】
その他:【家事3】【礼儀5】【交渉5】【算術5】【分析4】
とりあえず、【擬態】する数値は俺がBBBCA、ネリーはABBDBということにした。なんかどっかの野球ゲームを思い出すが、よしとしよう。
何から説明したものか、俺としても悩ましいのだが、どうも【成長促進】の効果が増幅しているようだ。
若干レベル上昇と成長値が比例しなくなってきた、別に【変化之理】は俺には使っていない、使ってもいいが。
スキルレベルが上昇したのは、元々あった汎用能力がほとんどなのだが、【魔術科学】というのは神界でも持っていなかった。
いつ取得したかは、恐らく両親の神具を作っていた時だと思う、普段から自分に【完全解析】なんてかけないしなあ。
既に一部のパラメータが魔術神を上回ってしまった件と、遂に【完全解析】が俺の経験値欄で完全に仕事をしなくなった件については、知らん。
魔力量?もう表示する理由すらねえよ。
ただし、肉体的限界をどうも既に超えてしまったようだ。
精神力については確かめようがないのだが、全力で体を動かそうとすると、体が悲鳴を上げるというか、【一騎当千】を使った酷使後と同じように激痛が走るのだ。
【一騎当千】使用中ならさして問題はないのだが、エネルギーの消耗が大変なことになる。
貰ったスキルの中で、一番使い勝手がいいスキルだったのだが、一番リスクがあるスキルでもあるのが【一騎当千】だ。
もっとも、既に神族級といっていいパラメータだ、これ以上上げる理由は今のところ無い。勝手に上がっちゃうものは仕方ないけど。
肉体的な鍛錬を続けていくが、しばらくは大きな成長は見込めない身体でもあるし、少し気を使う必要がありそうだ。
他に少し気になる項目が出てきた、称号の「謎の研究者」ではない、「肉体と魂の不適合中 42%」という項目だ。
今までパーセンテージが出てくることは無かったのだが、42%というのはどうなのだろう。
他人でこういう項目は見たことがないので、独自のものなのだろうが、はてさてどういう影響があるのやら。
あるいは、と考えるのは、肉体と魂がリンクしていないがために、パラメータを十全に発揮出来ないという可能性だ。
ステータスなんてものがあるなら、肉体的限界値も教えてもらいたいところである、頼むよ【完全解析】さん。
さて、ネリーのことなのだが。
新しい汎用能力やちょっとした魔法くらいなら使えるようになった。
なったのだが、まあ、そこじゃない。
ぶっちゃけもう父さんでは勝ち目がないくらい強い、技量はともかく絶対的なパワーが違いすぎるのだ。
父さんや母さんも人外の強さなのだが、ネリーも既に人類種ではないだろう、元々獣人種だが。
このパラメータを苦にしている様子は全くない、肉体的に十全に力を発揮出来るようだ。
【体術8】という身体の動かし方によるものもあるだろうが、少なくとも筋肉痛などになったことは一度もないのだそうだ。
単純に獣人のポテンシャルが高いだけかもしれないが。
なお、魔力も人外級まで上がったものの、魔法はやはり苦手らしく、上手く扱えないようだ。
母さんから魔法をちょこっと教えてもらったが、「面倒だにゃ」ということで放棄気味だ、ただし【風魔法3】のスキルレベルが一番高いくせに、使いたがるのは【火魔法2】だったりする。
汎用能力は【格闘術】以外はどうやら【成長指導】が効くようで、俺の知る限りは武器の扱いなども教えている。
そもそも無手は俺も神界であまり習わなかったし、こればっかりはネリー自身に頑張ってもらうしかあるまい。
我が両親も、神具を取り込み、日々の訓練によるレベルアップも成した。
母さんはめでたくオール「S」突入だ、父さんも近いんじゃないかな?まあ父さんもネリーと同じで魔法のセンスがなさげだが。
なんで両親に【変化之理】を使わなかったかというと、元々完成度が高く、レベルアップもそこまで重ねられるものではないと判断したためだ。
神具を身体に取り込んで、【自動治癒】という固有能力まで所持している以上、今更使う必要もあるまい。【変化之理】はまだ秘密だし、知られたくないし。
ちなみにスキルになったのは[再生]の術式が上手くかかりすぎたのだろう。強力な[治癒促進]がスキルとして効果に出てきたらしい。
一撃死でもしない限り、まあ死ぬことはないな、うん。
ちなみにユーリなのだが、これでも会った時よりかなり成長している、汎用能力レベル的な意味で。
普段はユーリを褒めることは滅多にないが、エドナには及ばずとも、文官としてはかなり優秀になりつつある、はずだ。
元々「為政士」なんてレアな職業だったわけだし、土台的にバランス良く知識を持っていた、ということだ。
あとは応用の問題なので、実務を積むだけだったということだ、無意味に無茶振りを続けているわけではない、スパルタになっているのは確かだけども。
ちょこっと過去を見せてもらったのだが、別にエドナに劣っていたというわけでは無いと思うよ、俺は。
とまあ、軽く紹介したところで、明日は冒険者登録のため、フィナールの町に向かう予定だ。
ついでに何かしらの依頼でも受けてみるかねぇ。
ざっくりステータスを載せてますが、たいした意味はありません、ネリーの魔改造がえらいことになっている、というだけです。
次は4/8 12:00です




