完成
母さんが代官として就任してからおよそ三ヶ月が経過した。
まあ、色々変わったことはある。
まずは冒険者ギルドに出していた依頼についてだ。
予定通り宿舎は建てたが、建てた場所は住んでる屋敷がある村だ。
町との中継地点に建てようとも思ったのだが、「イストランド郡」の広さを考えれば、屋敷のある場所はイストランド郡の中でもややフィナールの町寄りになる。
これより東にも集落はあるが、目がまだ行き届かないこともあり、この村を郡の中心にする意味でもここに作ったわけだ。
作ったのは宿舎というか、「宿屋」だ。
巡回依頼を受けた冒険者用ではあるが、普通に宿としても使える。
規模的にはそれほど大きくはない、部屋数は10ほどだ。
これ以上増やしても人員が足りないこともあるので、妥当なところだろう、元よりよそからの利用はまだ考慮していない。
宿屋の主には仲良くなった村の人にお願いした、信頼できる中年夫婦だ。
雇用したということになっているが、物事が上手く行けばそのまま建物ごと渡してもいいだろう。
さて依頼についてだが、様子見の3人というのは、やはり少なかったようだ。
そらこんだけ広いんだもんな、悪かった。
不満という感じはしなかったので、報酬や魔物素材の買取自体は問題ないようだ。
強いて言えば、「魔物を持ってくるのが大変」というところだろうか。
手段がないこともないのだが、俺がやって欲しいのは街道の巡回である、魔物討伐も結構だがそれにかまけられても困る。
ひとまず最大6名までとし、当面の様子を見ることにした。
「問題はこっちだなあ、ユーリさんの計画はまあ、よく出来てるとは思うけど」
「うーん、私としてもユーリの計画は普通すぎるわね」
俺と母さんはユーリの計画書を確認していた。
書いてある内容はそれほど突飛なものではない。
ただ、現実に即しているかというと、微妙なところだ。
「あたしとしては、現実的にしたつもりなんですけどー?」
むくれるユーリ、そんな歳でもないだろう、女性に年齢の話は禁句だが。
でもまあ、わからんでもない、人口およそ4000人とされていたわけだから、一年で300人、三年で1000人の人口を増加させるという目標の作り方は自然だろう。
しかしだなぁ。
「既に母さんが代官になってから、300人増えてるんだよなあ……」
「ふぇっ!?」
「私のせいじゃないと思うけどね、ゼンのせいでしょ」
「普通そこは「おかげ」とかって言うところじゃない?否定はしないけどさ」
現実と乖離しているのは、フィナール領というか、イストランド郡の人口増加速度という点だ。
俺は腐葉土を広められる限り広めようとしているわけだが、広め始めて作物が出荷されだすと、開拓民が徐々にフィナール領に集まり出していたようだ。
この土地が特別ということはないので、各地で出回ればいいなという程度だったのだが、噂というか、情報の回り方というのはどこかでおかしくなるもので。
新たに他の領からやってきたのだという移民に尋ねてみたところ、「フィナール領は肥沃な土地になったらしい」という内容になっていた。
明らかな間違いというわけではないのだが、腐葉土の存在がどこかに行ってしまっている。
やはりまだまだ実績が足りないか、と肩を落としたものだが、傾向としては落胆するほどでもない。
こうなるとフィナール領全体にすら、まだ腐葉土が広まったとも思えないが、 フィナール領に移民してきた人は領内で「イストランド郡」というワードを耳にする。
結果として、イストランド郡に住む人が増えている、という感じだ。
移民してくるということは、どこからか流出していることになる、そこだけは気にかかるのだが、開拓民というのはそういうものらしい。
国としても、国民として認めてるわけではないので、そもそも人口にすら入れてない場合もあるという、何とまあアバウトなことで。
まあ気にしなくていいなら、別にいいか、見られて困るものはあるが、見られる可能性は極力減らしてるしな。
しかし人が増えることは望ましいが、受け入れる体制は整っていない。
土地は売るほどあるが、開発計画についてはまるで白紙なわけで。
つまるところどういうことか。
「まず開発計画から練り直しね」
「えぇー……」
文官も雇ったんでしょ、仕事してくださいよユーリさん。
ユーリがとぼとぼと執務室から出て行く姿を見送ると、疑問のポーズで母さんが言いだした。
「私は結構ヒマなんだけど、いいのかしら?」
「俺はいいと思うよ、というよりもユーリさんに出来るだけ任せたほうが面倒は少なくなるはず」
「そうなの?」
まあ、人材育成的な意味もあるので、母さんにそれほど力を入れてもらう必要はない。
「母さんが代官として何も出来ない、というのも困るけどね。まあ、俺個人としては、ね」
そうだったわね、と母さん。
つまりはそういうことだ。
「確かにゼンにずっとここに居てもらう、ってわけにはいかない、か」
この地に縛られるのは、俺にとって都合は良くない。
学園に入るかどうかはともかく、二次成長が終わればすぐにでも外へ出るつもりだ。
恐らくはネリーを伴うことになると思うが、まあ状況によりけりだな。
実際のところ、俺個人としては事情があるわけだが、母さんはどうなのだろう?
「父さんはまあ、アレだからここに永住したいってわけじゃないだろうけど。母さんはどう思ってるの?」
「どうって、何が?」
「いや、冒険者稼業を続けたいのかなあ、と」
うーん、と考え込む母さん。
ネリーから、ちょっと聞いたのだ、母さんは定住を望んでいたということを。
父さんは、うん、あんまじっとしているタイプではないし、義手の製作ももうすぐ完了するし、やめる気配は全く感じない。
試作した義手を軽く試して、「よっしゃ依頼受けに行ってくる」とか言い出したので、さすがに止めた。
父さんには父さんなりのモットーがあるのだろう、俺もそこには口を出すつもりはないが、完成品を装着するまでは大人しくして頂きたい。
普通の職人でも作れる義手は広めてもらいたいくらいだが、俺にしか作れない義手を広めるつもりはないのだ。
「まあ、こんなことになっちゃったから、私としてもよく分からないのよね」
「こんなこと、と言うと?」
色々含まれるのだろうけども、聞くのは無粋だったかな?
「そうねえ、産まれた子供が先祖返りだった頃からの話になるんだけど、そこはもういいわ。だけど……」
母さんは義足を揺らしながら語る。
「この足がなくなっちゃって、冒険者は廃業って思ってたわ。けどゼンがこんなもの作ってくれたし、もうじき完成品が出来るって話だし、だったら冒険者を続けるのもいいかなと思ってる」
「だけど代官になったから、稼ぐ必要はないと思うよ?」
「というより、なんで私が代官になっているのか、いまだによくわからないのだけれど」
そこは俺も分からん。
廃鉱を使わせてくれればそれで良かったんだが。
「何ていうか、ゼンが産まれてからの変化に、運命的なものは感じるわね」
「そんなロマンティックなものでもないけどね」
運命的なもの、か。
そういえば俺の称号は、運命超越者、だったっけ。
まあ俺は運命論者ではないから、どうでもいいが。
「いずれにしても、ここにしばらくは居るつもりよ。帰る場所も、あった方がいいしね」
誰にとって帰る場所か、とは聞かない。
俺にだってそれくらいは分かる。
「この先どうなるかは分からないけれど、あなたには、私たちにやってほしいことがあるんでしょう?だったら、私たちもいつでも動けるようにしないとね」
そう言った母さんの表情は、不敵に口元を歪めたものだった。
それはとても愉快そうで、頼もしいものだと思った。
さて、義手と義足である。
【工程短縮】の効果が発動するほど数を作り上げたのだが、そろそろ品質が安定してきたようだ。
本当は母さんから済ませるつもりだったのだが、母さんが「ゾークが拗ねる」というので、同時に完成させることになった。
既に二人はほぼ義手と義足を使いこなしているように思うし、あれで十分なのかもしれない。
これ以上は俺なりの自己満足なのかもしれないが、それはそれだ。
品質が安定するほど作り上げたのには、一応理由がある。
作り直しが効かないからだ。
神具は意思を持つものだ、意思を持ったものを作り直す、ということは出来ない。
すなわち、乾坤一擲の一発作成で義手と義足を作り上げなければならない、ということだ。
失敗したら次のを、というのは神具を量産することになる、一度完成した神具は「壊せない」。
[空間箱]に封印という方法もあるにはあるが、そんなことを考えて作るものではない。
意思を持つものを作り出す、というのは作る側にも責任がある。
だからこそ、最大限まで準備をしてきたのだ。
「ここに誰も入らないようにしてくれるか?俺が出てくるまで。半日くらいはかかると思う」
「元々ゼン様以外は入られませんが、承知しました」
「そうだな、念のためにすぐ食べられるものを用意しといてくれ」
ネリーに一応工房の出入りを見張ってもらう。
神具を作り出すところは見られたくないし、俺の集中力の問題もある。
人の身でどこまで集中し切れるか分からんが、やるとするか。
神具になりうる素材は、試作品には使わなかった、当然のことだが。
近い品質になるようには仕上げてきたが、今回は乾坤一擲だ。
【鉱石変質】を利用して、「ヒヒイロカネ」を地上に顕現させる。
ヒヒイロカネは強度や耐久性にこれといった特徴はない。
しかしながら、扱いはとても難しい、これは「成長する」という特性を持つ金属になるのだ。
だからこそ神鋼の元になり、それが神具になるのだと、かつて生産神は言っていた。
神鋼を作り出し、それを骨部分として加工していく。
言葉にするのは簡単だが、神鋼への合金化は、相当な魔力量を消費する。
そこに更に術式を付与しているのだ、身体にかかる負担は半端ではない。
【一騎当千】を使用し、パラメータを底上げしつつ、疲労を軽減する。
作り上げた後は大変なことになるだろうが、この身をすり減らそうとも作り上げる、もう決めたことだ。
合金化する際に付与する術式は[高強化]や[再生]をはじめとした、最上級レベルの術式。
[高強化]は[強化]の上級術式、もう一つ上があるが、常時発動するのは危険と考えて却下した。
実際のところ、効果がどこまで出るかは分からない、決して悪いようにはならないというのは確信をもって言えることだが。
[融合]や[軽量]はもちろん付与してある、[浄化]といった補助的なものも入れてある。
他にもいくつかの術式を施し、[同化]という術式をトリガーとして付与して完了だ。
一度目の【一騎当千】の効果時間が切れたところで、一度息を吐く。
術式は付与した、足りない魔力の出力は【精霊魔法】で補った。
【魔素吸収】で絶対的な魔力量も確保しておいた。
効果時間が更に延びた【一騎当千】を以てしても、合金化まで済ませるのが精一杯か。
だが休憩する暇はない、神鋼は出来上がったが、これの加工には制限時間がある。
ミニッツ鋼で神具を作る際に、制限時間があることは既に知っている。
二度目の【一騎当千】を使用して、各部位の骨や関節などの「部品」に加工する。
幸いにも【工程短縮】の効果が効いてくれたようだ、ミクロ単位の加工が随分と早く完了していく。
部品はさしたる時間もかからずに、一通り完成した。
だがこのままでは部品に過ぎない、これを組み立て、ブラストタイガーの筋肉を植え付ける。
疲労の軽減を行っているにも関わらず、神経が磨耗していく作業。
筋肉には始めから[融合]と[同化]をかけてあるのだが、それ故に精密さが増す。
ようやく肉付けが完了した時に、二度目の【一騎当千】の効果が切れた。
大量の汗が零れ落ちるのと、肉体が削ぎ落とされるような感覚に苛まれる。
まだ終わりではない、工程はまだ残っている。
三度目の【一騎当千】を発動させても、さして疲労は回復したように思えない。
ここが一つの限界点、ならばその限界を超えてみせる、超えた先に、命があればそれでいい。
断固たる意思で己を鼓舞し、仕上げに入る。
肉付けをした義手と義足に神鋼を薄く塗り上げるように纏わせる。
【工程短縮】が効いてはいるが、疲労感はぬぐえない。
身体に取り込んでいる妖精も告げてくる、「危ない」と。
だが、僅かでも包む誤差があってはならない、二人に残っている肉体との接続部分にズレが生じれば、[同化]が効かない可能性がある。
【限界突破】の発動を願うが、あるいは既に発動しているのかもしれない。
だからこそ、続けられる。
確実に低下している【一騎当千】の効果時間、恐らくは消耗するエネルギーがもう無いのだろう。
だがまだ工程が一つ残っている、試作品ではやっていなかった工程が。
培養液に浸した両親の人工皮膚が視界に入る。
それと同時に己の両手を見つめると、はっきり分かるほどに皺が寄り、まるで何十歳も歳を取った気分になる。
水分代わりに回復薬を僅かに口に含み、最後の工程に入る。
四度目の【一騎当千】はもはや効果など感じなかったが、これが最後だ。
皮膚を義手と義足に合わせて切り取り、貼り付ける。
爪や皺の部分は、二人に残った右腕と左足を参考に模り、本物のそれに極めて近いものにする。
思考能力が残っているのかどうか、よく分からなくなってきた。
意志を失ったら、倒れる、ここまで来たのだから、やってやる。
やがて、「神具」は、完成した。
ネリーの姿を思い浮かべ、【念話】で告げる。
「終わった、限界だ」
自分でも驚くほどか細い声が同時に出て、意識が途切れた。
◆◆◆
ネリーはゼンの【念話】と声を同時に聞いたその瞬間、工房内に駆け込んだ。
ゼンは「半日」と言っていたが、既に日を跨ぎ、更にもう半日が経過しようとしていたのだ。
主の言いつけ通りに工房を見張っていたのだが、何時まで経っても出てこないことから、声をかけようかと思った。
しかしネリーはそうはしなかった、恐らくは神経をすり減らすような作業をしているはずだ、邪魔などしてはならないと。
それ故に、主の「限界」という言葉に、瞬時に体が動いた。
工房に入ったネリーは、ゼンが作り上げたであろう「神具」には一切興味を持たなかった。
視界に映るゼンの姿に、心が砕けそうになったからだ。
あの美しい美男子であるゼンとはかけ離れた、極限まで痩せ細ったその肉体。
まるで碌な食事をしていない、儚い少女のような顔立ち。
それはまるで、死して動かぬ骸のような存在。
「ゼン様ッ!」
ゼンの無事を確認すべく、ネリーは声を上げてゼンを抱き抱える。
なんと、軽い、ことか。
元より決して重くはないゼンだが、まるで生命力というものを感じさせない軽さ。
思い出すのは、自身の魔道具を作ってくれた翌日のこと。
あの時、大量の栄養を必要としていた。
半日という作業時間で、あれだけの栄養を欲したのだ、1日半という時間とその消耗具合は、あの時とは比較にならない。
ネリーはゼンの肉体を両手で支え、包み込むように抱き上げると、屋敷にいるシャレットの元へと急ぐ。
このまま休ませるだけでは、衰弱死という結果に繋がりかねない、故にシャレットに協力を依頼する。
「シャレット様、失礼します!」
執務室に入ったネリーは、シャレットとユーリの存在を確認した。
両者ともに何事かとこちらを向いたが、シャレットはゼンの状態をいち早く察知した。
「ネリー!ゼンは生きてるんでしょうね!?」
「まだ大丈夫です!ですが、危険です!」
ユーリは状況についていけない、ネリーが抱える少女がゼンだということにすら気付けない。
シャレットはネリーの元に駆け寄り、ゼンに治癒魔法を詠唱しかけて、止まる。
[大治癒]を使うとして、どこにかければいいのか。
外傷というより、作業し続けて傷ついた両手、そして肉体全てにおける、完全な衰弱状態、治癒魔法で治療出来る範囲で治療しても、先が無い。
「水分です!まずは水を飲ませないといけません!ゼン様には飲む力が残っていないんです!」
ネリーはゼンに回復薬をねじ込もうとしたのだが、飲もうとする意志すら感じさせない。
口移しも試みたのだが、逆に溺死させかねないとしたネリーは、水魔法なら何か手段があるのではないかと判断した。
水分を摂らせる方法は、ある。
攻撃魔法として、水魔法に、そういうものがある。
それは自身が使える中では最高難易度と言ってもいい、[水素混入]という、相手の内部に水を詰め、内から相手を破裂させるという、危険な水魔法が。
「ユーリ、出てって。私もギリギリだから。ネリーは何とか、ゼンを固定して。私も最小限まで威力を調節するわ。そして回復薬をありったけゼンの肉体にかけて、少しでも生存率を上げるために」
いまだについていけないユーリだが、異様な雰囲気は流石に感じ取り、執務室から逃げるように飛び出していった。
シャレットは詠唱を開始する、最小限の威力のイメージ、そう、身体に水分を行き渡らせる「だけ」という程度の、最小限のものに、魔力の出力を下げる。
下げすぎれば、今度は魔法が成功しない。
本当にギリギリの、極限まで制御した魔法は、普段より長い詠唱を伴って、発動する。
ごく僅かに膨れるゼンの肉体を見て、成功した、ように見えた。
ネリーはありったけの回復薬をゼンに振り掛け、更に人工呼吸を試みる。
今度は水分が「入りすぎた」のだ、呼吸困難に陥っているのが分かった。
「ゼン様!戻ってきてください!」
心臓は停止していないが、気道確保に精一杯だ。
シャレットは続けて治癒魔法の詠唱を始めている、今度は[大治癒]だ。
そして、僅かに、ゼンの肉体に反応が出だした。
ピクリと僅かな反応、だが続けて、ゼンは目を僅かに開いた。
「あ…ぅ……」
「ゼン、喋らないで!呼吸を整えて!」
「ゼン様!今すぐ粥をお持ちします!シャレット様はゼン様を部屋に!ベッドで休ませてください!」
ゼンに思考能力はまだ戻っていない。
だが、生きるという強靭な意志を取り戻し、何とか意識を保つことだけは成功した。
「すま、ん……」
肉体全体がボロボロだ、思考は出来ていないが、瀕死だ、と自覚は出来た。
事実、ゼンが失ったものは、生命力そのもの。
医術が発達していないため輸血や点滴という手段も取れない。
それから一時間後、僅かずつ粥や白湯を摂ることが出来るようになったゼンは、ネリーの介護を受けながら、本当に最低限度の栄養を摂ると、再度眠りに落ちた。
「ゼンの状態は?」
シャレットがネリーに問いかける。
ネリーは難しい表情で答える。
「小康状態、と言ったところです。一度に栄養を確保するのは不可能です、まともに動けるのは最低2週間後、肉体的に元通りまで回復するにはもっと時間がかかるでしょう。治療所から医術に長けた人を呼ぶべきです」
「手配するわ。それにしても、何をしたらこうなるのかしら……」
ネリーはその答えを知っているが、答えなかった。
それを告げるのは、主の不利に働くと本能が拒否したのだ。
次にゼンが目を覚ました時、その「答え」を両親に渡すのだろうが、自分から告げることではない。
(ゼン様は、どこまでも人のために、命を削るのですね……)
時として行き過ぎるゼンのことは、自分が見ておかねばなるまい。
それでもゼンがやめることはないだろう。
戦うことにおいては全く心配していないが、それ以外で命を削るような真似は極力避けて欲しいものだ、とネリーは嘆息した。
◆◆◆
「君の体はどうなっているのやら。僕が来た時には回復には1ヶ月はかかると思ったんだけど」
「特別製なんでしょうねえ。いやはやシャーリーさんには感謝してますよ?」
俺は治療所から所長自らやって来てくれたシャーリーに本当に感謝をしている。
極限を通り越して【一騎当千】を使い、40時間は全力で作業し続けた肉体は、治癒魔法でどうにかなるものではなかったようだ。
傷を癒やすという意味では[再生]を使っても、治療は難しいものだった。
幸いだったのは、少なくとも内臓系にはダメージはほとんどなかったこと、だ。
【完全解析】で自分の状態が確認出来ないほど衰弱していたようだが、シャーリーが栄養補給のために必要な食事などをネリーに伝えてくれたようだ。
「完全に元通り、ってわけじゃなさそうですけど、もう大丈夫です」
さすがにこの規格外の身体をもってしても、食いまくれば大丈夫、というラインは通り越したようだが、ネリーの看病もあって、そのレベルには持ち直したと思う。
シャーリーも一応納得はしているようだ。
「それでは僕は今日まで、ということにするよ。よければまた治療所に手伝いに来てくれると嬉しいな」
「俺も色々あるんで、時間が出来れば、ということで」
神鋼を使った神具作製というのは、今回が初めてだったわけだが、やはりせめて義足だけから始めるべきだった、と反省する。
加工出来るステータスは持っていても、それに肉体が耐え得るかどうかはまた別だった。
【一騎当千】を使い続けたのは、パラメータの底上げするためでもあったのだが、第一は疲労軽減のためだ。
精神体としてミニッツ鋼で神具を作った時は、精神的に疲労することはあっても、消耗することは無かったのだが。
神鋼を扱うには、単純に筋力S器用さSという数字では足りない、生産神にして神界で腕を磨き続けて、ようやく扱うことが出来たもの。
この結果からすると、やはり神鋼を扱うには、人の身では少し手に余るのだろう。
【一騎当千】なしでも加工は可能だったと思うが、ステータスは不足しないにしろ、加工に時間がかかりすぎると判断した。
肉体が扱える範囲で調整したつもりだったが、許容量を超えたか、あるいは作業時間が長すぎたか。
いずれにせよ今の成長段階では、神鋼を扱った複雑な神具を作るのは危険なのだろう。
これ以上神具を増やすつもりも無いが、神鋼は封印する以外あるまい。
そう結論付けると、やや重い足を工房に向ける。
神具は完成させたはずだが、しっかりと完成品を確認したわけではない、早めに確認せねば。
完成させた義手と義足は、【完全解析】した結果、きっちり神具として仕上がっていたようだ。
名称が「???」になっていたが、「神具の一種」とあるので、間違いは無い。
効果についても想定通りだ、どこまで反映されるかは使い手の問題なので、ここで評価することではない。
品質・強度、いずれも「極」という神具独特の表記だ、神界でもホウセンの戟くらいしかこの評価は見たことが無い。
会心の仕上がり、と言っていいだろう、乾坤一擲の神具作製に成功したのだと確信した。
まあ、将来的には全く関係のないことなんだけど。
早速取り付けを行うべく、工房内を整理してネリーを呼ぶと、父さんと母さんに来てもらうように伝える。
「ゼン、もう大丈夫なの?」
やってきた母さんは開口一番俺の体を心配してくれた。
「無理をするつもりではいたけども、思ったより消耗した。心配させて悪かったね」
ネリーに口酸っぱく言われた、「無茶しすぎにゃにゃ!」と、うん、今回は確かに無茶だったかもしれん。
もっとも、完成品を見て仕上がりを確認したら、どうでもよくなってきたのだが。
「まぁ俺らのモンを作ってくれるのはありがてぇがよ、お前がどうかなっちまったら意味ねえぜ?」
「正直すまんかった。反省はしている」
父さんも心配してくれていたようだ、申し訳ない。
後悔は全くしてないけど。
「色々心配させてごめん。今後はこういうことが無いように約束する、俺も懲りたところあるし」
「ゼン様のなされることですから、私から言えることはないのですけど、ご自愛下さいね」
ネリーまで追従してきたが控えめだ、お説教はさんざんした後だしな。
「さて、お披露目と行きたいのだけど、二人ともほとんど自分の感覚で動かせてるんだよね?魔力の方はどう?」
二人とも【完全解析】では魔力量は減ってない以上、問題ないと思うが、一応確認だ。
「最小限を込めてるだけだから、一日中流してても、減った気はしないわね」
「ちっと面倒だが、俺としちゃあすげえ強くなった感じがするぜ?ほとんど自分の腕と変わんねえよ」
さしあたり試作品はOK、と。
問題なし、と判断した俺は、二人の前に「左腕」と「右足」を置く。
もうこれは義手と義足というカテゴリではないだろう。
「これが完成品。見た目どんな感じ?触ってもいいよ」
二人は何ともいえない表情で互いに目を合わせてから、そっと触れる。
母さんはしげしげと眺め、父さんも自分の右腕と比べるように観察する。
「なんつーかよ、こりゃ本当に魔道具なのか?人間の腕にしか見えねぇんだが」
「そうねぇ、私も足にしか見えないわね。これなら今までのは確かに試作品なのでしょうね」
ただネリーは、何か感じとったらしい、警戒、とまでは行かないようだが。
「魔力とか、そういうのじゃなくて、何といえばいいのか分からないんですが、その、魔道具というより、まるで生きてるような……」
「ネリーは本当に鋭いな」
だいたい合ってる、その通りだ。
さすがに神具と教えるのは具合が良くないので、適当に名前をつける。
「これは意思を持つ魔道具だ、魔道具生命体とでも言おうかね」
神具が持つものが、「意思」なのか「意志」なのかというのは、俺にもよく分からんところだ。
何か喋ったりするわけではないし、明確な意思というのも持っているわけではない。
ただ、神具自身が所有者を選ぶわけだから、そこに何かしらの思いを持っていることは確かだろう。
神具の作り手、今回の場合は俺だが、作り手は明確に所有者を決めたうえでしか神具は作れない。
所有者のためだけに作る、言ってみれば「唯一道具」、それが神鋼製神具だ。
俺がミニッツ鋼で作ったものは、いいところ「特殊道具」ってとこだろうな、性能が違いすぎるし。
作っている最中に所有者が誰になるか、ということを伝えながら作るわけだが、そのまま所有者設定がなされるわけではない。
神具自身が使われている間に正式な所有者と認めていくのだ。
これが武器であったり、ただの道具であれば、馴染むのにそれなりに時間がかかるのだが、今回は「身体の一部」だ。
それほど時間もかからず、所有者認定がなされるだろう、[同化]や[融合]もあることだしな。
「とりあえず最初の感覚としては、多分そんなに今までと変わらんと思う。ただ、そのうち本当に自分の手足になる。まあそれまでちょっと振り回されるかもしれんから、しばらく慣らしが必要だけどね」
三人とも困惑顔だ、まあピンと来るものではないだろうな。
「まるで自分の手足、ってのは見れば分かるけれど、そういうことがありえるの?」
「ありえる、かどうかは、俺も正直よくわからん。けどまあ、少なくとも見た目は普通の手足に見えるだろうし、慣らせば自分の身体と同じように扱えるようになる」
元々[融合]をかけた状態で義手と義足を使ってたんだから、それは間違いない。
「冒険者に戻れるってんなら、俺はそれで構わねえがな。ぶっちゃけ今の方が腕無くす前より強くなってる気がするぜ、ちっとバランス悪ぃがよ」
「んー、その辺りも改善されるはず。この腕と足には[同化]っていう魔術を仕込んであってね。今までと違って、取り外しが出来なくなるというか、本当に身体の一部になる。しばらくは色々大変かもしれん」
「魔力が込めてあるの?これに?」
母さんを以てしても、魔力が感じられないのだろう。
[同化]をトリガーにしてあるから、まあそうだろうな。
「ネリーの魔道具の時もそうだったでしょ?似たような感じになるけど、あんまし慌てないでね」
[契約]のトリガーは血だが、[同化]のトリガーは魔力の伝達だけでいい。
俺はまず母さんの義足を取り外すと、寸分狂わず右足を取り付けられたことを確認して、革のベルトで固定する。
薬品は必要ない、接着するのではなく、同化させるのだから。
「母さん、今までと同じように、右足に神経を集中して、ゆっくり魔力を流して。イメージは血を通わせるように、ほんの少しずつ」
母さんは目を瞑ると、集中して魔力を流し始めた。
ピクリ、と右足が動く、[融合]は成された、あとは[同化]だが……。
「あ、ああ、あああッ……!」
「母さん、落ち着いて。大丈夫、その右足は母さんのものだから」
母さんが軽く痙攣しだした、治癒魔術で[沈静]をかけて少しでも落ち着かせる。
「……なんだ、それ?」
「ちょっと、苦しい、です」
恐らく膨大すぎる魔力を感じとったのだろう、二人も軽い恐慌状態にかかっている感じだ。
神具自体に周囲に威圧をかける効果はないのだが、人の身にあらざる力だ、察知してしまえばそうなるのも無理はない。
[沈静]の範囲を広げて、父さんとネリーもカバーしておく。
「母さん、それは自分の右足だ。いいかい?自分の右足なんだ、そう感じるんだ」
「うっ……あっ、ふっ……」
神鋼独特の神聖的な力が溢れ出した、[同化]のトリガーが起動したらしい。
母さんの苦悶の表情が徐々に和らいでいく。
父さんとネリーは声一つ上げない、迸る魔力からまた違った力を感じたはずだ。
もういいだろう、と俺はベルトを外していく。
繋ぎ目に見える部分は、無い。
解析すると、右足部分はまだ「神具」であるようだが、「上質な神鋼製のシャレットの右足」になっている。
まだ所有者認定はされていないが、認定された時には、既に「神具」ではなくなっているだろう。
[同化]とは本当にそのままの意味で、同体化する、という術式だ。
[融合]と似たようなものなのだが、術式そのものは難しくない、互いにそう思えばそうなる、というだけだ。
当然拒絶反応なども起こりえるため、危険な術式ではあるのだが、母さんのために作った神具がそうなることはない。
あとは母さん側の問題なのだが、今まで[融合]で制御を行ってきたのだから、その可能性はかなり下げられたはずだ。
ともあれ母さんの様子も落ち着いてきた、成功ということで問題なし、だ。
戸惑っている母さんはこの際置いといて、やや尻込みする父さんにも同じ事をする。
「おおおおぉっ!」
「暴れたらアカン、力任せはアカン!」
「いゃ、んな、おお!?おおおおおおっ!」
「ダメだって!あ、いや、そうでもないか?一応[同化]まで来てるっぽいし」
「うおぉぉぉぉっ!」
何ともまあやかましい取付になったが、「どうだぁっ!」とか言ってるし、「上質な神鋼製のゾークの左腕」になってるから、まあいいだろう。
ただ父さんはやっぱ馴染むまで時間かかりそうかなあ。
「これですぐに元通り、ってわけにはいかないけど、違和感が消えたら今まで通りにしていいよ。母さんはなるべく歩いたり走ったりして。父さんは……まあ、いつも通りでいいや。とにかく二人とも、できるだけ体を動かしてね」
確かめるように落ち着いて右足を動かす母さんと、「っしゃあぁ!」などと左腕を振り回す父さん。
今はまだそこに集中してるから分かんないかな?
ネリーはちょっと心配そうだ。
「私も魔道具をいただいたので、ゼン様の作ったものですから、危険なものではないと思うのですが……」
あー、まあ、危険じゃないかって言われると、悩ましいとこではあるんだよな。
「えーっと、とりあえず二人とも、しばらくは右足と左腕で他人に触れるのは禁止。特に父さんは大事な槍は持たないように」
「なんでだよぉ!」
「柄をまず握りつぶすから。鉄製でもまず間違いなくそうなるから」
そう言うと、渋々と言った感じで肯定する父さん。
左腕に宿る力は何となく察しているだろう、利き腕の右手並みに使えるようにとは言わないが、木製のコップを砕かずに掴む、くらいのことから始めた方がいい。
まあ、リハビリというより、力の制御の問題だな。
そうこうしていれば、「神具」が身体の全てと同化して、バランスも合うようになるだろう。
少なくとも一ヶ月は訓練期間にあてるように伝えて、その場は解散した。
一つ肩の荷が下りたように感じる。
「お疲れ様でした、ということで、よろしいでしょうか?」
その場に残ったネリーが尋ねてきた。
「まあ、そうだな。このために作ったようなもんだし」
「ですが、ゼン様のお体も元通り、とは行きませんね」
そう言うネリーは少し悲しげだ。
確かに俺の肉体はまだ回復しきってない、というよりも筋肉を一部消失した感じだ。
損傷ということではない、例えるなら、点滴だけで過ごしてきた病人のそれだ。
自分ではまだ確認はしていないが、相当見た目も変わっているのだろう、実際力が入る感じがまったくしないのだ。
ただ、これについてはさほど気にすることもないと思っている。
「ちょっと華奢になったけど、また鍛えなおせば問題ないだろう。最近鍛錬もやってなかったし、丁度いいよ」
最近多忙すぎて、肉体を鍛える、ということについては全然やれてない。
成長期のように急激な変化は望みにくいかもしれないが、これもまたいい機会と捉えることにする。
母さんの代官業務については、基本的にユーリに任せる。
廃鉱についても腹案も用意しているが、もう少し人が集まってからでもいい。
周囲は騒がしいままだが、急ぐ必要は無い、半年くらいはもう一度肉体を作り直す期間にあてても問題ないだろう。
「ネリー、とりあえず、だ」
「はい、何でしょう?」
先ほどから我慢していたが、そろそろのっぴきならなくなってきた。
「めっちゃ腹減った、いつもの3倍頼むわ」
そう言うと、輝くような笑顔でネリーは屋敷へと戻っていった。
健やかな肉体作りは、まず栄養、っと。
◆◆◆
「まあ、なんだな、今までの「試作品」ってのもわけわからんほど凄かったけどよ、こいつぁ、何て言えばいいんだろうな」
ゾークの言う通りだと思う。
私の右足にしても、ゼンの言う「試作品」でほとんど不自由なく過ごせてたのだけど。
完成品は桁が違う、1桁では済まない、2桁でも足りるのかしら?
いや、違うわね、「次元」が違うわ。
「間違いなく、ゼンの言うとおり、右足と左腕なんでしょうけど」
「コイツを使いこなすってのは、確かにゼンの言うとおり、ちっと訓練しねえとダメだな」
今まで試作品では、どこかやはり別のもの、という気はしてた。
今回の「完成品」は、自分の思った通りに動かせる、魔力を通したのも最初だけ。
ただし、違和感という意味では試作品より相当あるわね、何というか、右足だけじゃなくて。
「思い通りに動かせることは確かなのだけどね」
「まあ、そうだな。違和感はあるが、間違いなく俺の腕だし、手も自由に動くんだが、こいつはなぁ。体全体がなんか、こう、力が溢れるっつーか」
「そうね、加減がちょっとね」
今までは最小限の魔力を通して使っていたわけだけど、もうその必要はない。
ただ、ちょっと、使いにくいというか、力の制御が難しいわね。
ゼンのことだから、[強化]をかけているのは間違いないけれど、少しかかりすぎてないかしら?
そうね、ちょっと、ステータスを見てみましょうか。
私は右足を失ってから、久しく見ていない自分のステータスを確認する。
そして、絶句した。
シャレット 31歳
職業:[賢者][魔法者][弓師]
状態:健康 強化[永続]
筋力:A
器用さ:S
素早さ:S
魔力:S
精神力:S
スキル:【半魔眼】【自動治癒】
「ゾーク、ちょっと、自分のステータス、確認しなさい」
「あん?……ってなんじゃこりぁっ!」
ゾークもそう、ってことは、私の頭がおかしくなった、というわけではないようね、いや、えっと、本当にどういうことなのか、よく、わからないのだけど。
「ちょっと、ゾーク、[鑑定]してもいいかしら?」
「俺も、何がなんだかわからねぇ……お前からも確認してくれや」
ゾークに断って、[鑑定]の詠唱を行おうとして、気付く。
いつも通りの詠唱をしようとして、短縮出来ることに。
「魔の化身シェラハーの名に置いて告げる、理に沿い、この世の標をここに紡ぐ、我に彼の者の資質を示せ、[鑑定]」
これでも長い、と思えるほど自身の魔力が高まっていることに気付く。
もしかして、シェラハーの名を借りる必要すらない?
そして脳内に現れるのは、ゾークのステータス。
ゾーク 31歳
職業:[槍王][弓者]
状態:健康 強化[永続]
筋力:S
器用さ:S
素早さ:S
魔力:A
精神力:S
スキル:【自動治癒】
一体何が起きているというの?
ゾークも「ダブル」になってるし、私は「トリプル」。
いえ、そういう次元の問題じゃないわね、何、これ?
「見たか?」
「見えたわ、私も似たようなもんよ」
私とゾークは途方に暮れた。
いかに[強化]といえど、これほど強力な[強化]は有り得ない。
[永続]というのは、どう考えても、ゼンの作った腕と足のことよね。
増えている職業については、説明はつく、一応、だけれど。
優れたステータスの持ち主は、後天的に「ダブル」や「トリプル」になることは、あるらしい。
ただ私の「ダブル」にしても持ち主はごく僅か、「トリプル」に至っては見たこともないわよ、いや、私が今、そうなっているのだけれど。
そして増えている固有能力。
「ゼンの、仕業でしょうね」
「まあ、間違い、ねえだろうな」
職業については、ステータスボードに示されるのは主職業だけだから、気にすることもないのだけれど……。
【自動治癒】の効果は知ってるわ、とても優れた獣人族なんかが持ってることがあるらしい。
なんでも、傷が勝手に塞がるのだとか、それが私たちに?何かの冗談かと思うけど、現実なのよね。
「……私たちにも、【擬態】をかけてもらった方がいいかもしれないわね?」
「【自動治癒】は隠しようがねえだろう……しかしまあ、これだけステータスが上がっちゃあ、そりゃ制御が出来るワケねぇぜ」
「そうよね……違和感が足だけじゃないのは、こういうこと、か」
「俺もどうにもおかしいとは思ったんだがよぉ……」
馴染ませる必要があるのは、足と腕だけじゃない、ってことね。
私は頭を抱えているのだけど、ゾークは一周回って何やら嬉しそう。
「間違いなく俺ら最強だな、まあ、本当に最強なのは、ゼンだろうがよ」
「……まあ、確かに、そうね」
そんな単純な考えでいいものかと悩む。
けれど、確かに力があるにこしたことはない、か。
「SSクラス冒険者にでもなりましょうか?」
「おう、ってかこんなステータスだ、なれねえワケねえだろう」
「確かに、そうね。ま、制御から始めるとしましょう」
ユーリには悪いけど、しばらく私たちも訓練漬けになりそうね。
ちょっと時間が経過する予定、第二章はもう少し続きます。
次は4/4の12:00




