表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者は創造神  作者: 柾木竜昌
第一章 天寿・そして再会~神界編~
3/84

現状確認

4/15 改訂しました。2話と合わせて、少し解釈をわかりやすくしたつもりです。

まあそれでも不明な点だらけなんですけど。

 所変われば、とは言うものの、世界が違うとなると流石にその常識もなかなか上手く受け入れられるはずもなく。地球じゃないなら考えるだけ無駄かもしれん。

 理解が及ぶまで俺もしばらく時間がかかったわけだが、そこまで頭が固いわけでもない。現実は受け入れるものだ。

 落ち着いて一つずつ疑問を解決していこう。まず、ここはアズが言うには、「異世界」であるという。

 そこに「俺の魂」と言ったか。となると、しっくり来る回答としては、


「加納善一は死後、魂をここに連れてこられた。それでいいか?」

「オッケーです!」


 グッとサムズアップのアズを見て多少イラっとしたが、それは置いとこう。ここで突っ込みだしたらキリがない。

 てか何で謝ってきたのかいまだ不明なのだが、それも後回しだ。まず現状確認をしよう。


「じゃあなんだ、俺は今「加納善一」だった魂、ということでいいのか?今の体についてはどうなってんだ?」

「うーん、魂はその通りなんですけど、今の体についてはちょっと説明しづらいです」

「もしかして幽霊みたいなもんだったりするのか?」

「えっと、そういうわけじゃなくて、本来魂というのは転生するものなんです」

「転生ねえ……なんつーかますますそれっぽくなったな」


 さて、ここからアズの説明が始まったわけだが、これがまた要領を得ないもので、しばし悩むことになる。


「えっとですね、魂は転生して行くものでして……」


 という非常に宗教チックな、所謂仏教の輪廻転生みたいな話をしだしたアズの説明を自分なりに要約する。

 しかしどうにも足りないというか、説明不足な感じがしてならん。どうにも理屈に合わない部分があるのだ。


 まず生物は何かしら「魂」というものを持っている。そして生物の死後にも引き継がれ、また新たな生物が生まれた時にそれが宿る、これが「転生」。

 しかしそれとは別に、生物は全く新しい魂を持って生まれることもある、これが「新生」。

 さてこうなると、どう考えても魂の数は生物の数より多くなるわけだが、始原の世界、俺には地球というのがしっくり来るので地球と呼ぶが、地球で溢れた魂の受け皿というものがあるらしい。

 それが「創られた世界」、すなわち異世界であるそうな。まあ、ここまではいい。ここまでは。


「それで、善一さんの魂は特別製なんです」

「特別?」


 アズ曰く、魂というものは特定出来るものではないらしい。というのも個人の魂など、その個人や生物に宿って初めて特定出来るものであるそうな。

 何というか、ものすごくふんわりとした説明で俺も困ったのだが、亡くなった生物の魂は本来一箇所に集められて、そこからまた転生して行くのだという。

 例えるなら、雲と雨の関係みたいなものだろう。

 魂の集合体という雲から、生物が生まれる際に雨として転生する。そして亡くなった魂は水蒸気となり、また雲に戻る。例えとしてはそう間違ってもいないようで、アズも頷いてくれた。 


 さてここで引っかかるのは、どう考えても魂の数が無限に増え続けることだ。

 世界を創ってそこを受け皿にするというのは、溢れた魂対策、ということなんだろう、全ッ然ピンと来ないけど、そういうことにする。

 しかしどこかで魂が失われないと、異世界も無限に創らなくてはならなくなる。その異世界を管理するのが「神」たる存在なのだという。そりゃあ人手不足にもなるだろう。

 更に言えば、創られた世界でも転生が行われるのだという。新生はしないらしいのだが、何か矛盾してないか?と聞くと、「考えたことがありません!」とどうにもならない回答が返ってきた。

 アズはあくまでこの世界の世界神であり、他の世界のことは知らないようだ。そこで一旦魂のことについて考えを区切ることにした。 


「転生とか新生とかそういうのはもういいや、それで?俺が特別ってのはどういうことだ?簡潔に頼む」


 正直アズに難しい説明をさせても仕方ない気がしてきた。

 特別製という点については、今北産業でお願いしたい。


「ぶっちゃけると、善一さんは創造神さまになるお方だったのです!」

「意味不明すぐるでしょう?やっぱお前おかしいんじゃね?」


 簡潔すぎるアズの説明に頭痛を覚える。ぶっちゃけると、ってのは相手にわかりやすく伝える前振りだぞ。それが全く理解出来ん内容だったらどうすんだよ。

 だいたい自称神に「あなたは神になる予定でした!」って言われてどうリアクション取ればいいんだよ。俺は芸人じゃねえんだぞ?

 そもそも創造神って何なんだ?


「創造神さまは、「始原の世界」を管理される、最初の神様なんですよ!」


 というアズの説明は、意味不明なものなのだが、要するに創造神ってのは神の中で一番偉いのだという。

 異世界を創っているのはこの創造神たる存在であり、神々の中の神という存在、だそうな。地球を創ったのが創造神で、異世界を創り続けているのはこの創造神であるらしい。

 何故始原の世界に世界神がいないのかというのも、この創造神が存在する世界だから、だそうな。


 俺そんなもんになる予定やったん?クッソ面倒そうなんやけど。

 あと、らしい、とか、そうな、とかばかりなのは勘弁して欲しい。断言しようがないから仕方ないではないか、突拍子もないことばっかで俺だって困ってる。


「創造神さまも魂がある存在なのですが、魂の半分を分けて転生させ続けていたのです」


 ドヤ顔でまたよくわからんことを言い出すし。そこの女の子とあんま変わらんぞお前も。で、何?つまり俺はどっかの誰かさんの魂の半分だってこと?


「何の意味があるんだそれ。そもそも魂って個別に分けたり出来るもんなわけ?」

「出来なくもないらしいですが、意識して出来るのは創造神さまだけだと思います」


 俺様ルールキタコレ!ファンタジーだからって何でもアリと思うなよ!?

 などと思ってはみたが、創造神ってくらいだからそれもアリなのか?


「創造神さまの魂は、集合体に混じらない特別な魂で、始原の世界を転生し続けていたものです。善一さんは、1000万年ほど転生し続けた魂の持ち主だったそうです!」


「全然ピンとこねえ数字だな。人間の寿命は長くなったけど、それでも俺が生きてた頃でいいところ平均70年なわけだが。それとも何?地球で人類が産まれた頃から俺ずっと転生してんの?」


「だいたい合ってます!その魂が転生し続けて、神になる資格を得たのが、善一さんだったんですよ!」


 これでだいたいあってる、って言われても困る。整理しよう。


 まず俺は創造神とやらの魂の半分、この場合半身とでも言うべきだろうか。そこは確定させる。全然実感無いけどもう死んだ身だし、それはいいや。

 そして、俺の魂はずっと転生を続けていた。1000万年って言われてもピンと来ないわけだが、何回だ?100歳とかいう長寿だとしても10万回ってことになるんだが。まあそれもよしとする。

 で、前回転生したのが「加納善一」だった。ここまでは多分合ってる。

 今疑問なのは、その神になる資格、ってやつだな。


「つまりアレか、その神になる資格ってのはわからんが、俺の魂は遡って言えば創造神の半分だった、と。それで「加納善一」という個人は神になる資格を満たしたから、創造神になるところだった、と」


「善一さんは理解が早くて助かります。善一さんは人間だった頃から特殊でしたし、それでこの子も分かったみたいです」


 説明つかないところも多々あるんだけど、アズも女の子も我が意を得たりとばかりに頷いてる。

 人間だった頃から特殊だった、というのは確かに覚えがあるけども、ここに連れて来られた理由にはなってねえな。

 創造神の半身だから特別だったにしろ、ここに連れて来たのはその女の子だという。俺としてはアズに再会出来たのだから感謝したいところだが……。


「その子はなんで俺を連れてきた?そもそもその子が誰なのかすら分からんのだが」


 すると、女の子はアズを指差して、コイツのせい、と視線を振ってくる。

 忌々しげに女の子を見つめるアズであるが、女の子が喋らない以上アズと話すしかないんだよな。


「この子は私の初めての使徒で、この世界の魂の管理をさせてたんです。まだ喋ることは出来ないですし、意思もなかったんですけど……」

「ロボットみたいなもん?それにしちゃあ感情豊かな気がするけど」


 この子は明らかに自我があるし、あんまりな例えだとは思ったが、アズは割と素直に頷く。


「それほど外れた答えでもないですね。ただ、今ちょっとこの子の存在は私にも説明しにくくて……」


 また口ごもってしまうアズだが、それは今答えてもらう必要はない。


「まあ、そこは説明出来なくてもいいや。で、俺の体についてはどうなってんの?」


 感覚としてはおかしなところはないが、見た目がどうなっているのかはよくわからない。少なくとも四肢はあると感じるし、体に不調も感じない。

 むしろ死ぬ直前の頃を考えれば、抜群に心地がいい、とまではいかない。やっぱり何となく勝手が違うんだよな。自分の思い通りに動くことは確かなんだけど。

 手足をちょこちょこ動かしていると、アズが答えにくそうに言い出した。


「今の善一さんの見た目を言えば、私と出会った頃と同じくらいです。あの時は30歳くらいでしたっけ?で、今の体は、そのですね、これはアクイリックの世界がそうなってるから、という話なんですけど……」


 今の俺は、加納善一という元人間であって、個体の体は持っていないのだそうだ。じゃあ今の姿は何なの?って話になるのだが、それは答えがあった。

 なんでもこちらでは精霊体というものがあるらしく、今の俺はそれに近いそうだ。幽霊みたいなもんか?と聞けば、ちょっと違うらしい。

 アズも精霊体ではあるが、こちらは「神族」という種族であるとのこと。


 精霊体というのはかなり特殊な存在であり、本来は今の俺のようなはっきりとした姿で固定出来るのは相当限られるという。

 なんでそうなったのかという回答もあやふやなものだったが、特別製の俺の魂がアクイリックの世界に適合した結果、だそうな。

 まあなんだ、要するに俺は精霊体っていう生き物で、アズは神ってことでいいのか?


「そうなるとだ。俺は今精霊体として転生した状態なのかね?」

「いえ、今の善一さんは……そうですね、善一さん(仮)という擬似神、とでも言いましょうか」


 なんだその(仮)は。

 あれか、悲劇の聖女(笑)のやり返しのつもりなのか。


「結構真面目に言ってるんですー!というのも、ここは神界と呼ばれる場所で、神族以外は上位の精霊体でなければ存在出来ない場所なんです。今の善一さんは魂を精霊体に変えただけでして、今は転生待ち、という状態ですね」

「ここがそのアクイリックという世界というのは聞いた、神界ってのはなんぞ?」

「えっと、アクイリックにある次元の一つでして……」


 ここで「上級神」という意味がだいたい把握出来た。そもそも上級神というのはイコールでその世界の神、すなわち世界神であるようだ。

 で、その下にその世界を象徴する「中級神」という存在がいて、更に下に「下級神」たるものがいる、らしいのだが、下級神はアズもよく知らないらしい。

 ここに住んでいるのは神々、すなわち「神族」という種族と精霊体。それ以外では存在が許されない、という場所なのだとか。


 うん、全然分からん。


「えーっと、仮の姿を得られるくらいには俺が特別だった、ということでいいか?」


 アズが頷いたので、それで終わらせる。とてもじゃないが全てをこの場で整理することは不可能だ。

 なんでそうなったのかはよく分からんが、とにかく俺は何とも中途半端な状態であるようだ。生き物ですらないとは。

 つまり魂だけここにあって、動かすのに都合良い肉体を、精霊体という形で持った、転生待ちの魂、ということになるのだろうか?


「私が世界神の世界ですから、創造神さまの半神である善一さんがここで神になることは出来ませんので……」


 いや、別にここで神になりたいとか、そういう願望はないし。てか神になりたいなんて全く思わないし。

 

「じゃあこの世界で俺は転生する、ということは確定事項になるのか?」

「魂自体はアクイリックに根付きました。いつでも転生することはできますね」


 ただ、出来ればしばらく滞在して欲しい、と付け加えてきた。

 そもそも転生するにはどうしたらいいか知らないし、俺に選択肢なんてあってないようなもんだし。

 折角会えたアズともっと話もしたいしな。


「とりあえず、だ。色々アズも話して疲れただろうし、俺も整理するべきことが多そうだから、今日はこれまでにしよう」


 少しほっとしたのか、気が抜けたアズをしっかり抱き寄せる。

 目を白黒されているアズに、本日最後にこれだけは聞かなければなるまい。


「アズ、こうして触れるってことは、だ」

「は、はい」


 耳元で囁く。


「やれることは、やれるのかな?」


 アズの使徒(仮)が空気を読んでどこかへ逃げ出していった。

 うむ、よくわかっている。

 アズの顔は……うん、言いたいことが分かったのか、顔が真っ赤になってきた。


「あの、あ、あの、えっと……こ、子供は出来ないと、思い、ます、けど」


 そいつは残念、やっぱ借り物の精霊体じゃ無理だよな。

 でもアレの反応は上々だ、確認はしてないが、間違いなく「使える」。


「あ、あ、あの、その、そういう欲は、精霊体では、ほとんど…」

「俺はある」


 そう断言すると、アズの体に腕を回し、お姫様抱っこでアズを抱える。


「さて、俺はどこでもいいが、アズはどうしたい?」


 何なら今からここで、というのもいいぞ。

 歳を取るにつれて大分大人しくなったもんだが、結構あれだぞ、キテるぞ。


「そ、その、そ、それでは、わた、私の「ルーム」の、ゲ、ゲートを開きますので」


 すると目の前に唐突にドアが現れる。

 俺は迷い無くそのドアを開けると、どっかの王妃の部屋かよ、という場所に出た。

 その割には、可愛らしい調度品が多かったりするという、何ともミスマッチさを感じたが、まあこの際いいか。

 ベッドメイキングが微妙になってねえな。アズもその辺り女の子なんだからしっかりしなさい。


「あ、あ、明かりは……そ、それに体を、清めたり、とか」

「いいからいいから、さ、楽にして」


 加減が効くかどうかは……分からんけど、一応精神年齢は高いはずだし、何とかなるだろう。



 えっと、マジ泣きされてしまいました。すまんアズ。色々我慢出来んかったわ。

 いやあ若くなったなぁ……心身ともに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ