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転生者は創造神  作者: 柾木竜昌
第二章 幼年期 ~鬼才の片鱗編~
21/84

成長とステータスボード

ちょっとくどいですかね。

2章のプロット的には、まだかなり序盤の方だったり。

 ゼンは物覚えがいい。

 前世(きおく)持ちであることは、本人も認めている。

 でもステータスは優秀だけど、本当に優秀な部分はステータスでは分からないところにあるんじゃないかしら?


 それにしても少しばかり異常すぎるんじゃないかしら……。

 言葉は喋れても文字は読めない、というのは分からなくもないのだけど。

 前世(きおく)持ちは、聞いたことがない言語にまず混乱することも多いと聞いたことがある。


 しかしゼンは違う、私たちの言っていることをしっかり理解している上で、流暢に喋る。

 字が読めないことについては、元々文字が読めなかっただけ、という解釈も出来なくはないのだけれど。


「ええと、「そういうと彼女は自ら恥部を……」母さんやっぱこの本はやめようよ」

「ごめん、間違えたわ、こっち」

 考え事しながら適当に買って来た本だから中身まで見てなかったわ。

 古書店で買ってきたものだから古くてタイトルは分からなかったの、ごめんなさい。



 ゼンが字を教えて欲しいと言ってきたのが一ヶ月前。

 言葉がスラスラ喋れるようになってたから、文字を知らないというのは盲点だったわね。

 前世(きおく)持ちは前世(きおく)持ちでも、相当記憶があるみたい。

 答えてくれるか分からなかったけれど、どの程度覚えているか聞いてみたの。


「両親の記憶はないけど、どんなことをしてたのかというのは大体覚えてる」


 こっそりスキルを使ったのだけれど、嘘はついてなかったみたい。

 私もそれ以上は聞かなかったわ、ゼンは私を母と呼んでくれるし、ゾークを父と呼ぶ。

 ゼンにとって、私たちは両親だとちゃんと思ってくれているみたい。

 前世(きおく)持ちは両親を両親と見ない人物もいるらしいのだけれど、ゼンは違うわね。


 私にとって、この子は前世が何であろうと、私のゼン。


「これも小説かな?えーっと、神の戦士ガドス?」


 ゼンは新たに渡した本のタイトルに首を捻っている。

 神話とされている御伽噺の本なのだけれど、何かあったのかしら?


「何か思い出したの?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど、ちょっと引っかかったというか。まあ読んでみるよ」

 それが売れ出したのはここ2~3年のことなのだけれど。

 カノー、という先祖返り名は聞いたことがないし、ここ数年で知られた名前でもない。



 一ヶ月前から、私はゼンに付きっ切りで文字を教えた。

 何やら「原形をとどめてないなこりゃ……」と言っていたが、やっぱり知ってる文字が違うみたい。

 もしかして読めるかもと思って、私が読めない古代書を渡してみたのだけれど、それも読めなかった。

 一日中やっていたわけではないのだけど、ゼンは2週間程度である程度読めるようになった。

 私がやっていたのは指差ししながら本を読む、という程度のものだったのだけれど、「だいたい分かってきた」とゼンが言うと、少しずつ自分で読み始めてきた。

ちょっと習得が早すぎない?


 聞けば、ゼンは前世で数十種類の言語を扱えたのだとか、そんなに知ってたのも驚きだけど、そんなに言語があったのも驚きだったわね。

 前世は世界が複雑だったのかしら?


 ゼンは[鑑定]も使えるみたい、させてくれって言われたからやらせてみた。

 詠唱はデタラメだったけど、よくそんなあやふやで使えるものね。

 ゼンの[鑑定]で分かった私のステータスを聞いてみたら、合ってたわ。

 スキル名まで知ってて、精度もバッチリ、私より精度が高いかも?

 だったら魔法はいくつか使えるんじゃないかと思って、いくつかやってみせたのだけど、首を傾げてばかりだった。


 というのも、ゼンは魔法は使ったことがほとんどないらしい。

 魔力が低くて使えなかったというのもあるみたいだけど、魔法を習ったことがほとんどないのだとか。

 その代わり「魔術」というものを学んだらしいけど、魔法とどう違うのかしら?

 興味本位で聞いてみたけど、何を言っているのか全く分からなかったわね……。

 ただ、ネリーの魔道具(くびわ)については無視出来なかった。


「ネリーの隷属道具(くびわ)は、そのうち俺なら外せると思う」


 外せるなら外してあげたい。

 ゾークもこれを聞いて、「今すぐ外せ!」「いや魔力低いから」「今すぐ修行だ!」「そもそもどうしたら魔力g」「御託はいい、やるぞ!」「待てやクソオヤジ!」とかやり取りしてたわね。

 まあ、ゾークも全く魔法が使えないわけでもないし、と思ったのだけれど、魔法については本当に才能がなさそう。

 ゾークの教え方も悪いのだけどね、「こうだ!」「こうだじゃねえ!何一つ分からねえよ!」「見れば分かるだろ!見て盗め!さあ!」「俺は天才じゃねえよ!」とか、見てて頭が痛くなったわ。


 魔力Fだから当然といえばそうなんだけど、この辺りがゼンの異質なところよね。

 多分前世は高名な学者だったのだろうと思うけど、魔道具について詳しくても、魔法は使えなかった。

 不思議という程ではないにしろ、前世も魔力は低かったのだと言う。

 その割には[鑑定]は使える……どういうことかしら?

 やっぱり何か隠し事があるんでしょうね、前世のことをあまり聞くのは、私も複雑だから深くは聞かないけれど。



 思ったより遥かに短い時間でゼンは文字を習得した。

 文字を教えるついでに私の知ってる歴史とか教えてくれって言われたから教えたけど、初めてのことばかりみたい。

 神様についてなんかも話したのだけれど、ピンと来てないわね。

 アジェーラ神とか誰でも知ってるものだけれど、それも知らないと来れば、もう別の世界から来たようなものかもしれない。

 少なくとも歴史に残っているような時代の先祖返りじゃないわね。


 気が向けば前世の話もしてくれるでしょ。

 ただ、ネリーのことだけは念押ししておく。


「ゼンの前世についてあまり触れるつもりはないけれど、ネリーのことはよろしくね。外せる人物は私たちが探しても見つからなかったのよ」


 ゼンは力強く頷いてくれた。



◆◆◆



「ネリーのことは何とかなると思うんだが、問題はレベルよなあ。魔物を倒すとかで経験値が得られて、パラアップ、完ッ全にRPG思考だけど、多分そうだろうなあ」

「れべる?けいけんち?あーるぴーじー?」


いかん、口に出してしまった。

そんな概念ないもんな。


「ああすまん、独り言だ」

「たまに【念話(テレパシー)】でも漏れてますにゃ、ゼン様はその辺危ないにゃ」

 それはネリーが聞こうとしてるから聞こえるとかそういう類のものだと決め付けた。


「いやそれはお前の第六感みたいなもんが良すぎる件」

「だいろっかん?」

「野生の勘みたいなもんだ」


 部屋に戻った俺、ネリーと戯れなう。


 さて、あと一月ほどで俺も1歳である。

 その時に鑑定官から[鑑定]を受け、ステータスボードを作られることになっている。

 自由人と言えど、子供のステータスボードは国に提出せねばならんようだ。


 騒がれるかどうかは微妙なラインで、「念話者(テレパス)の先祖返り」という見方をされる可能性が高いのだそうだ。

 そうなると価値としてはなかなか判断しにくいところになる。

 これは俺も分かる、念話が使える利点はいくつかあるが、最大の利点である「精霊に意思を伝えることができる」ということについては気づかない可能性が高いのだ。

 あとは【念話】の仕様の問題だが、恐らくこれは伝わっていないだろうと思う。


 ただし、前世(きおく)持ちという点は自ら話す必要はないと母さんは言っていた、同感である。

 持っている知識を伝えるのは、一つの手段ではあるのだが、物事には段階というものがあるのだ。


 文字を習うついでに歴史についても教わったのだが、内容については何とも言えない。

 何しろ知識神(シェラ)の知っている歴史と大幅に食い違うのだ、まあ何千年とかいう単位での話なので、仕方ないとは思うのだが。

 世界観自体は同じものだと言える、間違って別の世界の地上に降りたとか、そんな馬鹿な話はさすがになさそうだ。


 母さんの知る歴史は、およそ1000年ほどのようで、あまり細かい話はしてくれなかった。

 そもそも歴史なんぞ国の都合のいいように改竄されてしまうモノであるが、母さんが知ってる内容は、それほど偏ったものではなかったように思う。


 神の話と合致する点は、「大陸の東に人類は逃げ延びた」というところだけだ、そこも「らしい」と伝わっているだけで、曖昧である。

 ついでに知っている神の名前も聞いてみたのだが、聞いたことの無い名前ばかりだった。

 御伽噺として、神話という伝承があり、それに「名前が近い」神はいたのだが。


 しかし神の戦士ガドスとか。

 神の戦士(笑)としか言いようがないわ、確かに強かったけども。


「ゼン様笑いが気持ち悪いにゃ」

「やかましい」

 いや笑いたくもなるだろそりゃ、俺は本物知ってるぜ?


 母さんは御伽噺と言っていたが、神話をモチーフにした小説だったようだ。

 書かれていた主人公は、どう考えても「あの」ガダースだった。

 めっちゃ美化されてたけど、あのドワーフ鍛冶職人の生産神(ガダース)の話だった、めっちゃ美化ってかお前誰?レベルだったけど。

 本の中身は聖剣を自ら打ち、多くのヒロインを従えて邪神を打ち滅ぼす、という内容だった。


 思わず読みふけってしまいました、ニマニマしてしまいました。

 神の戦士ガドスの本は貰ってきた、密かに空間魔術を使って[空間箱(ストレージ)]に保管しておいた。

 他にそれらしき本があると面白いんだがな。



 さて、鑑定官が来るということで、ステータスボードについて対策するか否か、という話だ。

 結局まだ【擬態】については話してないのだが、このままを維持して鑑定を受けることにした。

 というのも、母さんは大変厄介なスキルをお持ちなのだ。



名前 シャレット

種族 人類種エルフ族

職業 賢者(弓師)

称号 Sクラス冒険者

状態 健康

 Lv:42

生命力:173/173(3~7)

魔力量:285/285(4~9)

 筋力:94  (1~3) D

器用さ:164 (2~4) B

素早さ:132 (2~3) C

 魔力:221 (3~5) A

精神力:186 (2~5) B

  運:122 

 魅力:199 (2~4)

経験値:3856/42000

固有能力(ユニークスキル):【半魔眼(ハーフアイズ)

汎用能力(スキル)

戦闘系:【体術4】【弓術5】【隠密3】

魔法系:【水魔法6】【風魔法5】【光魔法4】【治癒魔法5】【神聖魔法5】

    【魔力感知6】【魔力操作6】

職業系:【料理3】【医術4】

採集系:【採集3】【解体4】

その他:【家事3】【礼儀5】【生存術3】【直感3】



 [鑑定]はしたが、同時に【完全解析】を行った結果がコレだ。

 ネリーの時にやらかしたので、過去については触れずに解析した結果だ。

 母さんも俺の前世には触れるつもりがないというのであれば、俺もそうするべきだろう。

 [鑑定]の時にヴァニスがそれっぽく呟いてたので、適当に詠唱とやらをしてみたけども、実際発動したかは微妙なところだ。

 何しろ俺は[鑑定]の内容は知らないワケで。

 [鑑定]をマスターする必要はなかったもんなあ、ヴァニスに詳しく聞いておくべきだった。

 【魔力感知6】が効いてしまう可能性もあったのだが、納得はしてくれたようだ。


 さて、全体的に大変優秀な能力であるようだ、職業欄も「賢者」とある。

 どうも固有職業(ユニークジョブ)であるらしい、パラメータ補正もかなり効いているのだろう。

 このまま知名度が上がれば神候補なのかもしれない、が、今話したいのはそれじゃない。

 【半魔眼(ハーフアイズ)】というスキルの効果が問題なのだ。


名前 半魔眼(ハーフアイズ)

分類 固有能力(ユニークスキル)

効果 あらゆる隠されたものを見ることができる

   この効果は任意で発動する

   その内容の正確さは熟練度に比例する

   更なる進化が可能


 極めてファジーな効果である。

 もしかしたら【擬態】も見抜かれているかもしれないと思ったが、どうもそういう気配は感じなかった。

 隠し事があるとは知られているものの、それがステータスにあるとは思っていない、ということだろう。


 聞いたことのある【魔眼(アイズ)】とはだいぶ違うスキルだ。

 【魔眼】は至って単純で、「嘘を見抜く」というスキルだそうな、解析したことないから分からんが。

 【半魔眼】も名前が似てるからそうなのかと思ったが、これはそれより面倒だ。


 実のところ、「【魔眼】持ちを出し抜くのは、それほど難しくないのである」というのがアインの研究成果だ。

 要するに【魔眼】持ち相手には、「嘘を付かなければ本心はそうバレることはないのである」、だそうだ。

 単純なYES/NOの質問で対処されると流石に難しいようだが、対等な立場にさえいれば、言葉を選べば何とかなるらしい。

 まあ逆にYES/NOで答えざるをえなければ、そこはひっくり返せないので、やはり強力なスキルではあるのだろう。


 だが考えようによれば【半魔眼】は【魔眼】よりもマズいスキルなのだ。

 発動が任意ということは、アクティブなスキルだ、これがパッシブだったら多分母さんは俺の母さんにはなってなかっただろう。

 非常にファジーなスキルではあるのだが、疑わしい言葉に対してどんな感情があるか、などといった「本心」を探れるスキルではないだろうか。

 これを知った時、どこまで分かるんだこれと冷や汗をかいたものだ。


 一応「事実」だけを話したつもりで、そこに嘘は無い。

 母さんがスキルを使用したかどうかは不明だが、「疑わしいこと」に対して「見る」つもりになれば、ステータスも看破されかねない。

 そもそも[鑑定]は特殊能力(オリジナルスキル)までしか分からないようになっているので、俺がどんなスキルを持っているかまでは、正確には把握出来ないとは思うのだが、パラメータは見るつもりになれば見られると考えるべきだろう。


 知られたら困る、というわけではない。

 母さんの人となりは俺なりに知ったつもりだし、父さんも直情型(バカ)っぽいが、悪い人ではない。

 だが知られることで迷惑をかける可能性が非常に高いのだ。

 せめて俺がもう少し育ち、厄介事を跳ね除ける自力を得てから伝えようと思う。


 しかしこれほど厄介なスキルだと言うのに母さんはフリーな立場なんだよな、スキルについては持ってる本人も不明なものだし、周りが有用性に気づかなかったんだろうか?




「てなわけでだ、俺の魔力を上げるにはどうしたらいいかって話だ」

「ゼン様は魔力Fにゃ?ゼン様だからそれにゃりにはにゃるだろうと思うにゃよ」

 繋がってない話を繋げてくれるネリーたん萌え。

 暴走しなけりゃ賢いんだよ、ネリーは。


「ネリーは自分のステータスがいつ変わったかとか分かるか?」

「んー、気づいたら変わってるにゃ」

「やっぱ成長するのか」


「当たり前にゃ、ゼン様もきっと4~5年もすれば変わってるにゃ」

「そんなに待つつもりも無いんだがなあ」


 そもそも待っていればパラメータが上がる、というものでもないだろう。

 いや年齢加算とかそういうのも有りそうではあるが。

 実際のところ、ネリーの隷属道具(くびわ)を外すためにどのくらい魔力が必要なのか、ということも解析した。

 結論としては、120程度あれば外せそうである、もはや自称術式解析者なのだよ俺は、自称だけど。


 で、実際魔力が上がるかどうか、というと、パラメータのカッコ書き部分の数だけレベルが上がれば上昇する、という読みは外していないと思う、思いたい。

 【完全解析】を自分にかけられるようになるには、もうちょっと育たないと外に出してくれないっぽいので、それまでは我慢だ。


 神界に居た時に確認した数値が引き継がれていれば、俺の1レベル上昇は、ネリーの5倍以上の成長と考えていい。

 ネリーのレベルを考えれば、俺が早々にレベル6くらいになるのは、そんなに難しくはないはずだ、多分。

 完全にゲーム脳になってるが、そんなに単純な話になっているかは不明なのだが。


 あるいは、解除術式を無理矢理行使する、という手段もあるっちゃあ、ある。

 【限界突破(リミットブレイク)】が発動してくれればイケそうでもあるのだが、今所持しているかはまだ不明なのだ。

 恐らく所持しているとは思うのだが、そもそも【限界突破】は頼っていいスキルではない気がするのだ。


 意図的に限界を超えることは難しいのではないだろうか。

 生死レベルで発動するか否か、くらいに捉えておくのが良さそうである、失敗したらまずネリーは無事じゃ済まないだろうし。


「その隷属道具は外れても、別にどっか行くってわけでもないんだろう?」

「ネリーはマスターの意思のままにゃ。ゼン様の面倒を見るのはネリーにゃのにゃ!」

 背伸びしてる気もするが。

 うん、なんというか、「姉」って感じだな、ネリー姉ちゃん、なんて死んでも呼ばないが。




 私の名前はゼン・カノー、知らないうちに1歳の誕生日が過ぎたようであります。


 と、気づいたのは、何気にステータスを確認した時のことだ。

 年齢が「2歳」と表記されてることに気づいたのだ。

 数え年だったか……1歳という表記には気づかなかったわ、ステータスってもんをロクに見てないってことだな。


 そう考えると、ネリーってすっごい早熟だったりするのかね、3歳から訓練してたって言うけど。

 獣人って言うくらいだから、元々それなりに完成されて産まれてきたりするのかなあ、今度聞いてみよう。


 まあ、俺もあんま人の言えんのだけどな。

 見える範囲で体を眺めてみても、幼稚園に行ってるくらいは育ってるし。

 成長痛らしきものは感じないが、発育がいいってレベルじゃない、人間の感覚はやっぱアテにならねえなぁ。

 誰も指摘はしてこないから、これが普通なのか、あるいは俺が特殊なのか。

 ネリーも大人びてきているという感じはあんまししないし、この勢いがずっと続く、ということにはならない気がする。

 成長が早いのは俺としては喜ばしいのだけども。


 そしてなおかつ、ステータスの変化にも気づいた、こんな感じだ。


ゼン・カノー 2歳 運命破壊者(ディスティニーブレイカー) 

 筋力:C→B (E→D)

器用さ:C   (E)

素早さ:D   (E)

 魔力:F→E (F→E)

精神力:S   (D→C)


 スキルは変化なし。

 っていうか体感出来る感じはまったくしない。

 擬態の数値まで上昇してるのは都合がいいのか悪いのか。


 ともあれ、(18)といった数値が作用したのは間違いあるまい。

 年を取ったら上昇した、というよりレベルが1上がったと見ていいんじゃないかな。

 ……ふむ、丁度今日は家族が揃っていることだし、伝えに行くとしよう。


「父さん、母さん、ネリー、俺ステータス変わったわ、2歳になった」


 そう告げると、両親は「マジか!?」って反応をしてきた。

 ただ父さんと母さんではだいぶ違う感じだ、父さんは何か嬉しそうだし、母さんは愕然としている。

 ネリーは「あっ……」って顔してる。

 何かまずいことなのか?


「ゼン!今から魔もn「ごめんなさいゼン!忘れてたわ!誕生日おめでとう!」お、おぅ」

「申し訳ございませんゼン様!このような大事な日に……」


「いや、俺も気付いたら2歳だったから、今日がそうなのかよく知らんのだけども」


 うん、まあ、何かしら誕生日的なものをする予定だったのかもしれない。

 ただ俺も1年が何日かなどとは知らなかったし、元々誕生日がいつだったのかも知らないのだ。

 カレンダーみたいなものも見たことがないし、今日が何月何日か、みたいなものがあるのかすら分からん。


「本当に悪かったわ、不甲斐ない母親でごめんなさい……」

「いや、母さんあんま気にしないで。俺は前世(きおく)持ちだし、誕生日がどうとかって祝われたことは無いし」


 ほんの少しだけ嘘を交えて、落ち込んでしまった母さんを慰める。

 なんでもエルフというのは誕生日、しかも産まれて1年目、いわゆる2歳の誕生日は盛大に祝うのだそうだ。

 母さんが何か呟くと、更に落ち込んでしまった。


「3日前だったわ、私も家に居た日なのに……気付いてあげられなくてごめんなさいね」

「まあ俺も気付かなかったし、そもそも俺の種族が何なのかも疑わしいし、何も気にしてないよ」


 知らなかったのだが、実は「生活魔法」というものがあって、今日が何月何日か、というものが確認出来るそうだ。

 実際ちょこっと試してみたら、俺も使えた、まあ何月何日なんてものでは無かったが、なるほど、カレンダーである。

 時間も分かる時計みたいなものもある、便利だな生活魔法。

 ただ使わないと日時が分からんってのはどうなんだ?ある種の弊害な気がする。


「私も気がつけませんでした、毎日一緒にいて気付かないとは従者失格です……」

 猫かぶりモードのネリーもしゅんとしている。

 従者としては正しいかもしれないが、素を知っているのでやりにくいことこの上ない。


「まあ、いつも一緒だから、余計気がつかないだろうさ」

 近すぎる距離は、得てしてそういうものである。


「まあ、今から祝えばいいだけだな、よっしゃ今から狩り行くぞ狩り」

「それはいいかもしれん、父さんにしてはいい案だ」

 何故祝うから狩りになるか、大変疑問なのだが、外に出られるというのは魅力的だ。

 だがこれには母さんが反対した。


「まだ外出もしてないのに無謀でしょ、だいたいゼンに武器も用意s「買ってあるぞ、槍と弓」なんでアンタそこだけ準備がいいの!?」


「いやもうそれが誕生日のお祝いでいいんじゃない?」

 外には出たいが、心情は母さんの味方だ。

 槍と弓、とても2歳児に与えるプレゼントとは思わんが、この父親(バカ)ならまあそういう選択もあるだろう。

 むしろ、その、とても嬉しかったりするのだ、誕生日のためにというワケではないだろうが、父親から贈り物を貰えるのは喜ばしい。


「ありがとう父さん、俺のために武器を用意してくれたのは、すごく嬉しい」

 感謝を込めて父さんに告げた。


「おう、さっさと使えるようになれよ!今のお前にはちっとデカいかもしれんが、まあすぐだろ」

 父さんは豪快に笑ってみせた。


 これで終わればイイハナシダナー、だったのだが。

「じゃあ行くk「待ちなさい!」なんだよぉ、実戦に勝る経験n「使えるようになれって言ったでしょ!?」ったくいいじゃねえかよお……」

「あなたはいつも一直線すぎるのよ!」

 若干涙を浮かべた母さんが父さんの説得を始めた。

 うむ、これはもう関わるまい。


「私はそれもアリかなってちょっと思ったんですけど……」

 なおネリーは父さんに消極的賛成だったようだ。


 結局あーだこーだになりつつ、「ひと狩り行こうぜ!」という父さんの意見は却下となった。

 ちなみにステータスが変わったと告げたはずなのに、この日は伝わっていなかったようだ、そのことを少しばかり後悔することになる。


 その翌日、母さんとネリーから、二つの髪留めを貰った。

 どちらも形は同じだが、大小のサイズがあり、一つは水色の石、一つは赤色の石が埋め込まれた、美しい装飾がなされた髪留めだ。

 見てみると、「ゼン」と俺の名が刻み込まれている。のだが……


 あの、ぼく、男なんですけど。


 と思ったのだが、この世界ではそれほど珍しいものではないらしく、男でも長い髪には付けるそうな。

 確かに髪は伸びたなとは思ったが、こうなると「切ってくれ」とは言いにくい。

 二人に髪を結ってもらい、全て後ろに流すことになった。


 余談ではあるが、この日以降俺は髪型を変えたことはない。




 それからほどなくしたある日のこと、鑑定官が二人我が家にやってきた。

 留守にしがちな両親も、この日ばかりは立ち会うことになっていた。

 二人とも壮年といったところで、男女の組み合わせだった。

 人間ならば40歳くらいだろうか?

 

 ちょろっと【完全解析】をかけてみたら、職業は両方とも「鑑定師」となっていた、ちなみに人間族のようだ。

 鑑定専門の職業(ジョブ)とかあったりするのだろうか?

 【解析】を得てから、目利きについてはだいぶ自信がなくなってきたのだが、「鑑定官」という仕事なのだから、目利きスキルとかあるのかもしれないな。


「これよりゾーク様とシャレット様の鑑定式を行うことを宣言します」

 鑑定式ねえ……形だけといえばそうなんだけど、思いっきり【擬態】してるわけなんだが。

 まずは女性からのようだ。

 何やら詠唱が長い、てか詠唱だけで3分くらいかかったぞ、そんなに複雑なイメージで使わなきゃならん魔法なのか。


「ゾーク様とシャレット様の子であることをここに宣言します」

 やっとのこさ魔法を使った片割れの女性が鑑定結果を述べる。

 二人ともそれは間違いないだろうとピクリともしない。

 どんな魔法かよく分からなかったのだが、DNA判定みたいなもんだったんだろうか。

 更に女性は続ける。


「ゾーク様とシャレット様の子は、「クォーターエルフ」となります、以降エルフ族として種族が表示されます」


 母さんがこれに少しばかり反応した。

「エルフ、ですか?」

「はい、遺伝鑑定の結果、エルフの血が最も濃いと判断されました。ただし、成長期は3期あるかと思われます」


 そんなことまで分かるのか。

 まあ余計なことは言わずに黙っておく。


 母さんは何やら思考中だ、確か母さんの話では「エルフは早く成長して、遅く衰える」とか何とか。

 人間族よりも長寿であるらしいが、純粋なエルフでも100歳越えれば相当長いらしい。

 ちなみに人間族はおよそ60歳と言われているようだ、医療技術次第だが、そんなもんだろうな。


 母さんとネリーは何やら考えているが、父さんは直接聞くことにしたようだ。

「成長期が3期か、人間族で例えてくれっかな」

 うん、いい質問だ。俺もそれ知りたいわ。

 女性はしばし黙考すると、答えを口にする。


「お子様は、生後3年程度で10歳ほどの見た目になられます。その後しばらく続き、生後10年程度から再度成長し、2年ほどで15歳程度になられるでしょう。更に生後15年ほどから成長して、大人になっていくものかと思われます。以降はエルフとほぼ同様に、かなりの長期間若い肉体をお持ちになられるかと存じます」


「3歳になれば戦える体になるっつっこったな!」

「そういう単純なものじゃないでしょ!確かにエルフに近いみたいだけど……また変わった成長をするのねえ」

「そうですね、獣人にも色々な成長をする一族がいますけど、ゼン様は初めて聞く成長をされるのですね」


 周りはそれなりに納得しているようだが、俺はイマイチ納得いかんのだが。

 なんぞその変則成長。

 つまり俺は来年には小学生レベルをちょっと越えて、そのまま7年過ごすのか?

 んで更にそこから2年で高校生レベルになって、そこから3年後に最終成長を始める、ってこと?

 そんなややこしい成長に何故なったし。

 両親ともどもハーフだから、俺は最低でもクォーターってことになるし、成長の違う4種族とのクォーターならやむを得ない……のか?

 生命の神秘ってことで、ここはひとつ。


 しかし遺伝鑑定か、機会があれば覚えてみたい魔法だが、相当ややこしい魔法イメージっぽいから流石に無理かな。

 むしろ魔術神(ヴァニス)にこういう魔法があると教えて術式を組んでもらうべきか?


 などと考えていると次は男性の番らしい。

 手に板みたいなもんを持っているところを見ると、こっちが本命(ステータスボード)っぽいな。

 これまた詠唱が長い、1分は過ぎた。

 母さんの方が短い……って別に俺母さんの[鑑定]結果は知らないんだよな。

 やっと終わって、板に俺の情報が表記された。


「ゾーク様とシャレット様の子は、このステータスボードにある能力の持ち主であることをここに宣言します」

 板を見ながら、男性が告げる。

 なんかめっちゃ汗かいてる、なんかまずった?

 その板の内容を見てみると、予定通りの情報が開示されていた……のだが、予定外が、あった。



 どうやらちょっとだけ魔術神(ヴァニス)の[鑑定]よりも高性能だったようだ。

 そこを読みそこなったせいで、どうも余計な情報が追記されてしまった。

 まさかそこが出てくるとは思わなかった、これアカンかもしれん。

 その場に静寂が訪れた。



 名前 ゼン・カノー 

 年齢 2歳

 種族 人類種エルフ族 <クォーターエルフ>  

 職業 なし

 筋力:D (S)

器用さ:E (S)

素早さ:E (S)

 魔力:E (S)

精神力:C (S)

スキル:【念話(テレパシー)



「なんじゃこりゃ!ゼンお前一体何なんだよ!?」

 アーアー聞きたくないー。

 多分親父様の言葉が全員分代行してる。

 まさかボードに出るとは思わんかってん、仕方ないんや、魔術神(ヴァニス)の[鑑定]より性能いいとか普通考えんやん?


「ウソでしょ……確かに先祖返りなのねゼン、こんなの見たことないわ!何コレ!全適正(オールラウンダー)にも程があるわよ!?」

 ええ、ウソですよ、ですから見ないでください。

 俺しか知らないと思ったんですー。

 しかもパラメータは本当にウソなんですよー。


「ゼン様凄すぎます!まさにゼン適正!」

 上手いこと言ったつもりかこの野郎(ネコミミ)

 つかあれだろ、これステータスボードにしか乗らん情報やろ。

 ステータスでこんなん無かったって。


「い、以上で宣言を終わります、こ、この結果につきまして、相違ないことをカルローゼ王国鑑定官オウリュの名において、誓います」


「……同じく、カルローゼ王国、鑑定官リシューの名において、誓います」


 引き攣りながら証明を誓う男性(オウリュ)女性(リシュー)

 えっと、何だっけ、俺も軽くフリーズしてしまったから、これに賛同しなきゃいけないんだっけ。


「えと、父親ゾーク、母親シャレットの前において、ゼン・カノーがこれが正しいことを明言します」


 こんな感じで終わるんだよな、確か。

 俺は誓わなくてもいいんだよな?

 まだ俺は国民じゃないから、国に誓う必要はないって聞いたし。


 間違ってはいないっぽいが、何やら雰囲気がおかしい、誰も何を言わない。

 えーっと、後は見届け人が終わりを、ってネリーだったわ、そうだったわ、そもそもこの役って必要なワケ?

 まあ儀礼的なもんだから、誰でもいいっぽいけどな。


(おい、ネリー、終われ)

 ネリーに念話を飛ばすと、ハッとしてネリーが告げる。


「これをもちまして、ゼン・カノーの鑑定式を終えることを、ネリーが宣言します!」



 何やら色々聞かれることを予想したのだが、オウリュは、

「ゼン・カノー殿は我が国民ではありませんので」

 と言うと、リシューと共にあっさり帰っていった。

 板は2枚組になっていたようで、写しはこちらに置いていってくれた。

 どう見ても板だったのに複写式か、都合よく出来てんなあ。


 さて我が家族の反応であるが、父さんは大変満足そうだ。

「ゼンは間違いなく最強になれるぜ!」

 うんわかりやすーい。

 分かりやすくてこの次の展開も読みやすい。

「よっしゃとりあえずやr「待ちなさいよ!」シャレットおめえ最近俺の邪魔ばっかしてるじゃねーか!」

 いやそれは父さんが直情馬鹿だから仕方ないよね。


 ただまあ、母さんも何やら納得したようだ。

「隠し事ってこれだったの?よっぽど前世(まえ)は戦いが嫌いだったのかしら……」

「まあ、好きでは、なかったかな」


 これは嘘ではない。

 別に何かと戦いたいワケではない、戦うのはあくまで手段だ。

 ついでに隠し事はコレではないが、都合が悪い情報が出たところで、都合のいい勘違いをしていただく。


 しかしまあ戦うことが本能のネリーからすれば……と思ったが、意外とまともなこと言ってきた。

「ゼン様!体作りを始めましょう!今ちょうど成長期みたいですから、ステータスに負けない体作りを!」

「そうだな、手伝ってくれ」

 はい!と元気よくネリーが答える。


 父さんは不満そうだが。

「父さんも槍を教えてくれよ、弓は前世(むかし)でも使ってたけど、槍は専門外だからさ」

 そうフォローすると、喜色満面とばかりに「任せろ!」と返ってきた。


「仕事もしなきゃならねーがな!魔法書も買わないといけねーだろ」

「ゾークにしちゃいいところに気付いたわね、そうね、魔法と弓は私が教えましょう」

「家のことと、ゼン様の体力作りは私にお任せに……お任せください!」


 ちょっと素が出かけたぞネリー。

 しかし魔法は……あー、とりあえず触りだけでも教えてもらうか。


「うん、俺も頑張るからさ。ただ、魔法書は初級レベルだけで十分だよ、とりあえず触りだけってことで。実は全く「魔法」を使えないわけじゃないからさ、ちょっとだけ使えるし、代用品はあるから」


 魔力が低かったからあまり使えなかったけど、と付け加えることで、そこはおいおい、ということにしてもらう。

 多分魔法書は、それなりに高いはずだ。

 触りの部分くらいは学んでみるのもいいが、パラメータの成長ありきだから、伸びてからでもいいと思う。


 さて、ある程度方針が決まったところで、これだけは聞かないとなるまい。


「さっきのさ、(S)ってのは、結局どういう基準なわけ?俺もあまり詳しくないんだ」

「あら?もしかして隠し事はそれじゃなかったの?」

 やぶ蛇だったか?


「いや、俺はステータスボードってあんまし興味なかったから」

「そういう時代だったのかしら?まあいいわ、(S)ってのはその能力についての伸びがどの程度あるかっていう、言って見れば「素質」みたいなものよ。私の魔力と精神力で(A)だったわね」

「ちなみに俺は腕力がSだったな。初期ステータスは低かったが、おかげで「槍王」だぜ」


 ふむ、確か父さんの腕力上昇値は(3~6)だったな、もしかしたら(0~1)みたいな人もいて、0~6でE~S評価みたいなもんかもしれん。


 まあ一応【擬態】で誤魔化すことは可能かもしれん。

 ただ、これほど良くしてくれる「家族」に、【擬態】を続けるのは、何とも気分が悪い。

 全てを教えるのは出来ない、何より自身の【完全解析】をまだ終えてない。


 自身の解析が済んだら、せめてパラメータだけでも教えるべきだろう。

 【擬態】を知っているかは不明だが、3歳になる頃に一次成長が終えるので、その時にでも一部話そう。

 場合によれば、俺の目的まで話すことになるだろうな。

次は3/24 12:00に予定しています

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