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転生者は創造神  作者: 柾木竜昌
第一章 天寿・そして再会~神界編~
14/84

加納善一の神界日記

 5日目

 多分今が5日目だろうと思う。

 魂がここに来てから、となると全く自信はないが、少なくとも俺が目覚めて5日目だろうと思う、という程度だ。

 何日過ぎたかとか意味があるのか疑問だし、そもそも一日のカウントがアズとの挨拶が基準である。

 アバウトにも程がある。

 まあ、これを地上に持っていける可能性は低いだろうが、書き記すことは覚えるということでもある。

 毎日書くかどうかは不明だが、アズと夜?の会話を終えたら、日記を付けることにしよう。


 本日の成果は、神界でもちゃんと火が起こったということ。

 摩擦熱で起こした火種はフツーに火が点いたし、火力も維持出来た。

 少なくとも酸素とかそういう化学式は通用しそうだ。


 7日目

 アインに酸素のことを教えてやった。

 目の前でやってみせても、なかなか信じてくれなかった。

 念のために、先日えらい目にあった火の精霊に、精霊の力が及んでいるか尋ねたのだが、やはり精霊は何もしていないようだ。

 酸素のことを説明するために、コップ(仮)で消す小学生レベルの理科実験を行ってみせたのだが、納得しなかった。

 やはり見えないものを説明するのは難しいということと、概念レベルで価値観が全く違うのが問題だろう。


 最終的に、わざわざラピュータに来てもらって、精霊は関与していないと伝えてもらった。

 愕然としていたが、全部が全部精霊のおかげとか精霊のせいにするのは、やはりおかしいと思うんだ。

 ラピュータも同感だと言っていた。

 ですよねー。


 13日目

 昨日の日記は空白だ、アズのところにお泊りしてきたからな。

 しかし10日は長かった、もっと短くてもいいかもしれん。

 アズも満更ではないようだ、愛いやつめ。


 昨日はラピュータの元で妖精達とゆっくりくつろいだ。

 実のところ俺の傍には常に精霊がいるわけで、わざわざラピュータの元に行く必要は無かったりするのだが、ラピュータの近くに居た方が俺も見やすいのだ。

 ラピュータに言わせると、ルームの仕様と精霊の数の問題らしい。

 精霊がいっぱいいるところの方が、俺も意識せずに妖精に見えるということか。

 まあそうでなくても森の中というのは癒やし空間だ。

 眠るという精神的休息方法が取れない以上、これは必要経費みたいなもんだ、うん。


 26日目

 ヴァニスの適正調査によって判明した話だが、火法術・水法術といったいわゆる原始魔術、という術についての適正はやや低いのだそうだ。

 未だにザ・魔法みたいなもんは使えんし、それっぽい適正が低いとはがっかりだ。

 あれから随分時間がかかったが、今日ようやく術式について学び始めることになった。

 なんで今までかかったかと言うと、そもそもこっちの文字が読めなかったわけで、象形文字か何か?というレベルだったわけだ。


 シェラとアインに術式を理解するために必要な文字を教えてもらい、今日からスタートしたのだが、いきなり躓いた。

 精霊魔術の初歩である術式を教えてもらったのだが、全く発動しないのだ。

 俺が間違っているのかと思ったが、これはヴァニスもおかしいと判断したようで、精霊魔術用の水晶にやむをえず魔力を流した。

 すると、まさかの適正なし。

 どういうことか、というのは【解析】してみるとすぐに分かった。

 俺の【固有能力(ユニークスキル)】に【精霊魔法】が追加されていたのだ。


 ヴァニスはこの現象を信じ難いのだけれど、と前置きして、「ありえること」だと言う。

 つまり、精霊魔術よりも精霊魔法の方がカテゴリとして上位であり、スキルとして保有している以上、魔術で行使する必要はないのだそうだ。

 じゃあ術式についてはどうなんの、と聞いてみると、すぐ他のということは考えていなかった、とのこと。

 ふりだしにもどる。


 39日目

 ガダースとアズの使徒を連れて、鉱石場で発掘作業を行った。

 なんでアズの使徒を連れて来たのかと言うと、自我が産まれた使徒には、色々見せたほうがいいらしい、とのアズ談。

 らしいってところに、シェラ辺りからの又聞きだろうと容易に推測できるものだ。


 はじめて来た鉱石場だが、思ったより小奇麗な小さな山になっていた。

 林なんかはあんまりなかった。

 つるはしは、先日俺のイメージ化した武器のハンマー(ガダースが作りやがった)を使った。

 どうもこの鉱石場、という呼び名に慣れなかったのだが、その言葉は正しいなと思った。

 採れる鉱石の種類があまりにも多くてただの鉱山とは呼びにくいのだ。

 金・銀・銅・砂鉄・亜鉛といったところに加え、白石・黒石・紫石などこちらの世界にしかなさげな鉱石類も採れる。

 ヒヒイロカネやらオリハルコンやらダマスカスやらアダマンティンやらも採れてしまった。

 神話やんけ、と思ったけどここは神界だからまあいいか。

 なお、アズの使徒はうろうろしてるだけで何も手伝わなかった、ガッデム。


 53日目

 色々と観測方法を探っていたのだが、3つある太陽の周期が概ね掴めて来た。

 原始的なカウンターを作って1つの日が昇るまでと、落ちるまでの周期を計算してみたのだ。

 3つあるように見えるというだけで、実際3つなのかは不明なのだが、どうやらおよそ8時間単位で、1つの日が昇り日が落ちるようだ。

 アズの周期とは1時間ほどズレがあるようで、アズの体内時計では1日は25時間ほど、ということになりそうだ。

 ただ他の神もそうなのかというと話が変わるようで、23時間ほどだったり、色々違うっぽい。

 全ての神が起きている時間というのは、案外少ないように思える。

 24時間単位で過ごさせるべきか、というのは悩ましい。


 72日目

 やっとのこさ初めての魔術の行使に成功した。

 火法術をはじめとした、水・土・風・雷の原始魔術である5法術より先に、俺が術式を解読出来たのは、召喚魔術だった。

 なんでキミは難しい術の方が適正が高いんだい、とヴァニスに素でケチをつけられたのだが、適正が高い魔術から覚えようと決めたのはお前だっただろーがと反論してやった。

 だったら適正なんてモンに拘らずに先に簡単な術式から教えろってんだ。


 それはともかく、初めての魔術には感動した。

 召喚魔術というのは、使い魔を使役して行使する術であり、使い魔を召喚し、何かをさせて、帰還させる、というややこしい術である。

 当然術式も難しいわけだが、魔力をあまり必要としないという点は俺向きらしい。

 ちなみにどんな術式を組んだのかと言うと、鳥を召喚し、的に突撃させて、帰還させる、という順番で組んだのだが、呼べたのはスズメか何か?というちっちゃい鳥だった。

 鳥を召喚、という点がアバウトだったね、という先生の指摘がありましたとさ。

 的に突撃したスズメは窓にぶち当たる小鳥の姿にとてもよく似ていた。


 98日目

 シェラに教わっていた文字の習得が完了した。

 まだ拙いところはあるが、読むだけであれば問題ない。

 これで魔術の術式習得も早まるかと思ったのだが、魔術というのは専門的な文字を使うことも多いため、それはそれで学ぶ必要があるらしい。

 なんて複雑な世界なんだと思ったが、地球での文字習得の経験はダテではない。

 おおよその文法は把握したし、練習中の召喚魔術の術式にも応用が効くのは理解している。

 問題はこの文字が、今の地上でも使われているかどうか、という懸念である。

 まあそうでなくてもさしたる問題ではない、1年も文字と接していれば習得出来るだろう。

 そもそも術式には別の文字を使うのだ、大きな問題にはならんだろう。


 134日目

 ついにヨシュアに「アタシの料理より美味しいかも」と言わせることが出来た。

 次々と作り出される神野菜(新種)に悩まされたのだが、食べなれてきた神野菜(旧種)と、魚のリソースを使って作ったブイヤベースがヒットしたようだ。

 それっぽく作るのにはさほど苦労はしなかったのだが、味だけでは美味しいと言ってくれないヨシュアさん。

 色合いやら何やら調整するのは大変だった。

 そもそもトマトの再現が大変であって、とある神野菜の味が近いと考え、「これの赤いやつ作って」とわざわざお願いしたくらいだ。


 種を蒔いて10日で出来上がる野菜の謎は、ヨシュアのスキルらしい。

 色々な意味で羨ましいのだが、スキルは教えてもらって覚えるものでもないので、こればかりは仕方ない。

 ちなみに個人的な感想では、とっくの昔に俺の料理の方が美味かったと思うんだ、なかなか認めてくれなかったけど。


 185日目

 アインの知る範囲では、薬の調合法について極めたのではないか、と言われた。

一応学んではみたものの、これについては若干懐疑的である。

 そもそもアインが知る限りでの話だし、使用した材料も神界で採れたものだ。

 地上でも同じものがあるとは限らないし、役に立つかどうかは不明である。

 何より薬の効果を知る術がないのだから、実験もしようがない。

 誰も怪我をしないワケだし。


 ただ、魔力回復薬についてだけは、効果を確認することが出来た。

 ヴァニスに魔力を消費してもらって、【解析】を使うことで、およそ魔力回復速度が3倍という効果アリ、とした。

 調合は俺が法則を考えてしたものなので、薬の名前が付いていなかった。

 マジックポーション3、と安易なネーミングにしてしまった、ごめんなさい。


 241日目

 そろそろいいだろうとホウセンが俺に戦いを挑んできた。

 軽くやるぞと言われたけど、死ぬかと思った。

 攻撃がクッソ重くて、打ち合うのに必死だった。

 ただこちらには疲れないというアドバンテージがある。

 「うむ、なかなかいいぞ」と軽く流されてしまったのだが。

 本気で打ち合ったらまだまともに戦えまい。

 とはいえ武神を相手にしたせいか、なんか強くなった気分になった。


 288日目

 時計が完成した。

 基準をどこに合わせるかは、結局アズの体内時計にすることで、みんなに了承をもらった。

 再現したのは振り子時計。

 ガダースのところに通いつめて作り上げた試作品をアズに渡しては修正するという地道な作業を繰り返してきた結果だ。

 同じものをみんなに渡して、たいそう喜ばれたのだが、そもそも「一日」をどういう基準にするか、ということに拘っていたのは俺だけだったことに今更気づいた。

 ここに住んでる者は、「一日」とは起きて寝るだけに過ぎなかった、というオチだ。

 まあ、それでもみんな喜んでくれたし、俺も満足したし、それでいいか。


 325日目

 召喚術について、ヴァニスから合格をもらった。

 最難関とも言える魔獣の召喚魔術の「行使」に成功したのだ。

 あくまで行使に成功しただけであって、実際には召喚できないわけだが。

 基礎魔力の低い俺では実際に召喚出来る召喚魔術のレベルは既に超えていたわけで、行使に成功したかどうかの判断はヴァニスにしか出来なかった。


 ともあれ術式への理解も相当深まったように思う。

 召喚魔術を最初に修めた俺なら、他の魔術の術式への理解も早いだろうということだ。

 大抵術式は覚えるものであり、理解するものではないのだそうだが、れっきとした「式」であることは確かなのだ。

 それを考えれば、そういうものではないだろうとヴァニスに答えたのだが、物凄く喜ばれた。

 そういう見方をしてくれる人はいなかった、という話だが、それはまたおかしな話だ、最初に「魔術」を作り出した人物(かどうかは知らんけど)は、理解する前提で「式」を作ったと思うのだが。

 そういう広まり方をしないと、何千通りもある術式を全て覚える、なんてマネは出来ないだろう。


 ともあれ、召喚魔術の術式をほぼマスターした俺は、他の魔術についても応用が利くようだ。

 ただし、原始魔術については本当に初歩の術式しか成功が望めないだろうということだそうな、うわっ、俺の魔力低すぎ...ということらしい。

 故に方針としては、原始魔術については術式構成文だけまとめたものを渡すので、自分で勉強するように、とのこと。

 なかなか無茶なことを言ってくれるものだ。


 377日目

 まだまだ学ぶことが多いのだが、シェラに転生する個体探しについて聞いてみた。

 優秀な母親候補は数多くいるのだそうだが、それとくっつきそうな優秀な父親となると、なかなか難しいようだ。

 転生するタイミングは選べない、何しろ個体が産まれるのを待つわけだから。

 俺の魂が入りそうな器の個体、というのは、既にいくつか候補があったらしい。

 ただ、そもそも性別が違ったり、環境が王族であったり、貴族であったりするらしく、しがらみが多そうな点が気になったようだ。

 俺のやることを考えれば、極力フリーな立場が望ましいのではないか、という配慮があるらしい。

 確かにその通りだが、時間は大丈夫なのかと聞いてみると、地上単位で200~300年は問題ないのだそうな。

 神界基準だとどーなんのよ?と聞くと、分かりませんと返答してきた、なんじゃそら。

 まあこのまま神界で100年単位で待ち続ける、ということにはならないらしいので、それで納得しておく。

 どこで産まれてもやりたいようにやるつもりだが、性別だけは男でお願いしたいものだ。


 423日目

 やってしまった。

 この日のことは、3人だけの秘密にしてもらうつもりなのだが、そのうちバレるだろうなと思う。

 ヨシュアに絶対神になって帰ってくるようにと告げられた。


 485日目

 ホウセンから出される課題という名の戦闘訓練が、かなり厳しくなってきた。

 技量は上がっているのだが、俺のステータスの数値自体は、一部を除いて変化しないのだというのに、相手がどんどん強くなってる。

 ホウセンのリソースを使って、徐々に強い魔物と戦っていたのだが、今日はさすがにしんどかった。

 魔物の攻撃を食らえば、死なないにしろ痛いのは確かなのだ。


 今日の相手は、7メートルくらいあるんじゃねという巨大な熊モドキだった。

 デカい相手は足元から、という原則を守り、自分で作った長弓で牽制しながら長鉈で足を切りつける。

 数時間に及ぶ戦いは、タフすぎる熊の足元をついに切断して、短剣で目玉を潰し、頭を鉈で切り飛ばした。

 その後動かなくなった魔物のコアを割る、というところまでが魔物の倒し方だそうだが、長鉈で叩きつけても割れなかったのだ。

 やむを得ずホウセンに割ってもらった。

 どうやら武器の性能が魔物の強さに追いつかなくなったようだ。

 いい機会だし、自分の神具を作れないか、という検証を行ってみることにする。


 541日目

 ガダースの指導の下、神鋼を作れないかと試行錯誤したのだが、ステータスがどうしても不足しているようだ。

 作り方はもうマスターしてあるというのに。

 そこて別のアプローチを考えた、神鋼以外でも金属武器の神具は作れるのではないか、という推測だ。

 アインの協力も得て、ダマスカスを元に、鋼・タングステン・ニッケル・黒石・紫石などを合金化した結果、未知のインゴッドが完成した。

 かなり複雑な化学式になったため、仕上がりについては不明だったのだが、ステータス的にはギリギリ加工出来るようだ。このインゴッドを作るまでどれだけ時間がかかったのやら。

 シビアな作業になりそうだったのだが、時間をかけて打つのも怖い。という思いがあったので、集中力を極限を超えるレベルにまで引き上げて打ち続けた。それこそガタースが引くほどに。何でも3日3晩打ち続けたそうな。

 その結果出来たのが、「謎の長鉈」「謎の短剣」「謎のハンマー」だった。

 ちなみに全て説明は、「神具の一種」とだけ書かれていた。

 再現出来るかは不明だが、合金名を「ミニッツ鋼」と名付けておいた。

 武器の銘については今のところ付ける予定はない、所有者認定されてからでもいいだろう、されるかどうか分からんが。


 587日目

 ヨシュアに何となく【成長促進(グロウアップ)】について話してみた。

 するとこのスキル、何とヨシュアも持っているのだとか。

 ただ、読み方は同じでもスキルの内容は僅かに異なるようで、【早期栽培(グロウアップ)】というのが彼女のスキルの名称らしい。

 もしかしたら似たようなものが魔術にもあるのではと思い、ヴァニスに尋ねてみたところ、[成長]という術式が天法術に存在することを教えてもらった。

 その結果だが、術式理解は出来たものの、発動させることは出来なかった。


 ただし、【成長促進(グロウアップ)】とはまた別のスキルを得ることが出来た。

 【固有能力(ユニークスキル)】である【成長指導(コーチング)】というものを得た、得てしまった。

 効果は対象の成長を早める、というもので、アクティブなスキルのようだ。

 効果の程はよく分からないので早速検証をした。

 試しにアインの栽培している薬草に使用してみたら、成長速度が2倍くらい早くなった。

 【早期栽培】と【成長促進】の間を取るようなスキルだろうか、人類相手にも通じる可能性はある、有益なスキルを得たような気がする。

 アインは「また消失能力(ロストスキル)が一つ蘇った」と喜んでいた。


 639日目

 空間魔術について学び終えた。

 召喚魔術と比べて更に複雑な術式に苦戦した。

 何しろ空間魔術は別次元から召喚するという難易度の高い術式に加え、その空間を固定するという術式なのだ。

 結局のところ、術式は学び終えたものの、空間魔術最大級の[転移]は発動させることが出来なかった。

 ただし、空間魔術中級クラスの{空間箱}については完璧だと自負している。

 まだちょっとした「倉庫(ストレージ)」レベルではあるが、魔力が高まれば「無限収納(インベントリ)」にすることも可能であるとのこと。

 今まで学んだ術式も大概それっぽかったが、この空間魔術は最高にゲームチックな術だと思う。

 術式展開に時間はかかるが、極めて実用的な魔術な魔術だから、何も文句はないのだが。


 683日目

 バレた。

 しかも相手がマズかった。

 でも誤魔化した、物理的に。


 724日目

 アインに中学レベルの化学について教え終わった、まあ酸化とかそんなレベルだが。

 教わっている錬金術についても残り僅かだろう。

 あとは医療を教わるだけだが、こっちは時間がかかりそうだ、とも思ったが、薬があればどうにかなることも多いらしい。

 まあ病とかあるだろうし、知っていることや、やるべきことについては教えてもらうつもりだ。

 むしろ最近はアインの方が聞きたがっていることが多い。

 ある程度は自分でお願いしたいところなんだがなあ。

 アインいじりも毎度のことだが、ラピュータを除けば一番神っぽくないのがコイツなのだから仕方ない。

 本来下級神のガダースの方がよほど神っぽいぞ、まあ俺にとっては、だけども。


 803日目

 アズと一緒にラピュータの元へ向かって妖精とコミュニケーションを取っていたわけだが、随分と言葉について覚えてきたようだ。

 俺の戦闘におけるジョーカーは、現時点では【精霊魔法(エレメントマジック)】だろう。

 実のところ結構な頻度で試しているのだ。

 その度に死にそうになったりしたもんだが、妖精達とは割と明確な意思疎通が出来るようになった。

 威力について抑えるようにすることで、だいぶ加減が出来るようになり、マトモに魔法を撃てるようになってきた。

 ただその場合、威力はお察しレベル、絶対的な魔力の低さはどうしようもない。

 全力で撃てば極めて高い威力で放てるものの、神界が吹っ飛ぶ可能性があるらしくヴァニスに自重するように言われている。


 ちなみにだが、俺にも唯一変化しているステータスが存在している、魔力量の最大値だ。

 自身への【解析】は鏡を見ないと出来なかったのだが、最近見なくても出来るようになった。

 いつそうなったのか、明確には不明なのだが、いきなり5桁になったのはだいぶ昔の話だ。

 今では6桁も後半になりつつある、そもそも消化出来る魔力量なんぞたかが知れてる身の上だ。

 精霊に力を借りている状態だと減少するようだが、10人くらいまでは同時に身に宿してもイケる感じだ。

 さすがに全部借りたら間違いなく倒れると思うので、それはやらない。


 863日目

 治癒魔術の術式をマスターした、なお成功はしなかった模様。

 [再生]まで使えるようになったのはデカいと思う、成功しないけど。

 残る神聖魔術・天法術・冥法術の時間の問題だろうということで、ヨシュアの元で軽くパーティ。

 そこでまたやらかしました。


 946日目

 ホウセンに一矢報いることが出来た。

 僅かながらダメージを与えることに成功したようだ、その後ぶっ飛ばされたが。

 ただ、勝つというのはこのままでは難しいだろう。

 でも俺の目標はホウセンを倒すことではなくて、地上で戦う術を覚えることだ。

 ちなみに神具の武器は、所有者は、既に俺になっていた。

 長鉈を「デスハチェット」短剣を「コアブレイク」ハンマーを「ピッケルハマー」と名付けた、安直だね。


 1032日

 ついに神具として拳銃と弓が完成した。

 材質はまた別だが、銃の機構がかなり特徴的であることと、弓は極めて複合した素材で作ったため、早速名付ける。

 銘は「ブロックガン」、複合弓は「ウィークリーダー」と名付けた。

 どちらも魔力を込めて使用する武器で、「ブロックガン」は弾丸こそ必要だが、それ以外は魔力で撃ち出せる自信作だ。

 殺傷力はそこまで高くはない、弾丸を何で作るかにもよるけど、ハンドガンでそんなに大きな口径を作るのもどうかと思ったし。

 「ウィークリーダー」には[看破]の術式を組み込んだ。

 普通の弓としても使えるが、魔力を込めて矢を放つと、弱点部分への誘導がある程度効いたりする。

 いずれにせよ使うのは俺だし、神界でしか使えないものなのだが、銃は重点して訓練することにしよう。

 地上で作れるかはまだ不明だし、作れるとしてもそう簡単に作ってもいいものかということもあるしな。


 1243日

 神の技術に比べればまだまだだろうが、【解析】で確認したところ、ステータスはともかく、相当多くのスキルを身に付けた。

 だが、今日はとあるスキルを使おうとしたところで、違和感が発生。

 使ったはずの【解析】が発動しなかったのだ。

 どうして、とはあまり思わない、少しずつそういう傾向が現れていたのは確かだし。

 転生してステータスを見られるようになれば、多分想定したものを持ってるだろう。

 そういうことがありえるのか知らないが、自身に何が起きたのかくらいは、流石にだいたい分かるというものだ。

 明日ヴァニスに聞いてみよう。



◆◆◆



 「ゼンちゃんってやっぱ色々な意味で適応力高すぎない?」


 「そうだなぁ、カノーは飲み込みが良すぎるんだよな、ってか俺様としちゃ知ってることが多すぎるってところだが」


 「あっさり【固有能力(ユニークスキル)】を取得したり、規格外だよね。理解力も桁外れだし、さすが創造神候補の魂、ということになるのかな」


 「我なぞ逆に教わる立場である、立つ瀬がないのである」


 「私としては、カノー様にいつまでも居て頂きたいのですが、そういうわけにもいけませんよね」


 「カノー様であれば何とかしてくれるだろうさ。人の身になってからどのように成長することやら」


 「もうしばらく遊びたいところだが……まあ、強くなってさっさと戻って来い、というところだな。戦い方は十分知りつつあるが、ステータスが伸びんのが最大の弱点だ」


 「ステータスが上がらないのに強くなるってのもおかしな話だけど、ボクもそう思う。「【汎用能力(スキル)】のレベルは上がってるからじゃない?」って言ってたけど、あまりピンと来ないね」


 「【汎用能力(スキル)】であるか、詳しいことは本人も知らないの一点張りであるが、研究しようにも比較対象がおらぬと難しいのである」


 「私も読めないしね。今更だけど日本語教えて貰うべきだったかなあ」


 「ゼンちゃんは「辞書が無いとかなりキツイ」って言ってたー。そもそも会話だけだとゼンちゃんも「日本語」で話してるつもりなんだって」


 「言葉は通じても文字がさっぱり分からないというのは不思議なものだな。それでよくカノー様は我々の文字を習得できたものだとつくづく思うよ」


 「ところでシェラさん、そろそろ転生先の個体が産まれそうってホント?」


 「はい、あと一押しと言ったところかと」


 「そっか、じゃあ、そろそろ一度お別れかな」


 「私とのリンクは繋いでありますので、いつか話が出来るようになるかもしれません。精霊達も地上についていくようです」


 「世界を救うような人になれば、神にもなれるだろうし。また会えるよね」


 「きっとなれますわ。私との魂のリンクも繋がりましたし」


 「それってどういうこと?」


 「まだ分かりませんが、少なくとも地上に降りる精霊達は転生したカノー様をほどなく見つけられます。もしかしたら私のところまでやり取り出来るかもしれんませんね」


 「それずるい!ラピュータさん出来るようになったら教えてよね!絶対だよ!」


 「その時が来たらみなさんに伝えますわ」


 「それじゃあ今日はここまで!私はあんまし教えられることないし、みんなよろしくね」


 「もうこっちがよろしくされてる気がするがのう」


 「同感である、むしろ出し惜しみされてる気分である」


 「我々も未知の知識が多すぎるということを知ったな。始原の世界恐るべし」


 「地上はなかなか楽しめたが、ここは退屈だ。カノーが羨ましいが、強者になって帰ってくれば俺はそれで構わん」


 「魔術がどうなってるとか知りたいね、シェラの調査じゃ分かんなかったし」


 「アタシも食べられるものが知りたいなー」


 「ついこないだまで世界の滅びを待っていたとは思えないわね……」


 「善一さんだもん、何とかしてくれるよ!」




 そういえば、とアズリンドはふと思う。

 (善一さんの魂って、ここで転生した後、次はどうなるんだろう?魂は始原の世界に向かっちゃうのかな?)

 まあみんな神として帰ってくるものと考えているようだし、あまり深く考えないことにしよう、とアズリンドは決めた。

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